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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

コウイカは 色が 見わけにくいのに、どうして まわりに とけこめるの?

コウイカは、色の見え方が限られていても明るさで背景に合わせる

色覚が1種類のコウイカはなぜ背景に合わせられるのか ── 色素胞・反射層・明るさの手がかり

分野:生きもの

コウイカは、色を見わける ことが にがてだと いわれて います。それなのに、すんで いる ばしょの うしろの けしきに あわせて、体の もようを かえて いきます。

色の 見え方が かぎられて いるのに、どうして あわせられるのでしょう。この きじを よむと、体の 中の しかけと、まだ わかって いない ことが わかります。

コウイカは、色の見え方が1種類しかないとされる動物です。それなのに、背景の明るさや模様に合わせて、体の色を一瞬で変えます。

色の見え方が限られているのに、どうやって合わせているのでしょうか。この記事を読むと、体の色を変える色の袋のしくみ、その下にある光を返す層、数万個の袋を同時に動かす脳の指令、そして皮膚が光を感じるかというまだ分からない問いが分かります。

ヨーロッパコウイカは、色の見え方が1種類しかないとされる。にもかかわらず、背景に合わせて体色を一瞬で変える。色が見えないのに、どうして合わせられるのか。

この記事を読むと、色素胞が筋肉で広がって色を出すしくみ、その下の虹色素胞・白色素胞が作る光学的な下地、数万個を同時に制御する運動ニューロンの働き、皮膚の光感受性をめぐる未解決の問いが分かる。

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1. 色が 見えないのに、どうして あわせられるの?

1. 色が見えないのに、背景に合わせられるのはなぜか

1. 色覚1種類の動物が背景に合わせる ── 明るさへの注目

コウイカは、まわりの 明るさや もように あわせて、体の もようを かえます。でも、色の 見わけは にがてな 生きものです。目で 見える 色は、1しゅるいだけだと いわれます[6]。

色の 見え方が かぎられて いるのに、どうやって あわせるのでしょう。水そうの 中で まわりの けしきが かわると、体の 色や もようも かわります。

ある けんきゅうでは、コウイカは まわりの ものの 「明るさ」に あわせて いる かのうせいが しめされました。目の 見え方に あわせて 明るさを そろえた 白黒の 台には、はんのうしませんでした。15%ぐらいの 明るい ところと くらい ところの ちがい(コントラスト)は 見わけられたそうです。ただし、これが 見わけられる いちばん 小さい ちがいと いう ことでは ありません。

さらに びっくりする ことが あります。コウイカは、たまごから 生まれた すぐ あとから、まわりに あわせる しごとが できると いわれます[3]。では、体の 色を かえて いるのは、どんな しかけなのでしょう。

コウイカは、背景の明るさや模様に合わせて体の模様を変えます。一方で、色の見え方は1種類しかない動物です。色の違いそのものは、あまり頼りにならないはずです。

ヨーロッパコウイカを使った2006年の研究では、背景の物の「明るさ」に合わせて体の色を決めている可能性が示されました。目の見え方に合わせて明るさをそろえた市松模様の台には反応せず、約15%のコントラスト差(明るい所と暗い所の差)は見分けていました。ただし、15%は見分けられる最小の差(閾値)ではありません[6]。

しかも、この力は練習で身につくだけではないようです。コウイカは、卵から孵った直後から、周りに合わせて模様を作る課題を解けると報告されています[3]。では、体の色を変えているのは、どんな部品なのでしょうか。

コウイカは背景の明るさや模様に合わせて体色を変える。一方、色の見え方は1種類で、色の違いを区別する手がかりは乏しい。ヨーロッパコウイカの2006年の実験では、背景の物の「明るさ(強度)」に合わせて体色を決めている可能性が示された。動物の目の見え方に合わせて明るさをそろえた市松模様の台に対しては、背景に合わせた反応を示さなかった。約15%のコントラスト差は見分けられたが、これは検出の閾値(最小の差)ではない[6]。この結果をすべての頭足類に広げて読むことはできない。

では、この能力は学習によるのか。2018年のNature論文の紹介記事によると、コウイカは孵化した直後から、周囲に合わせたパターンの課題を解けるという[3]。見えにくい色の代わりに明るさを手がかりに、しかも生まれつき背景に合わせる。そのとき皮膚の側では、何が起きているのか。

2. 色を かえる ぶひんは、スポークの ついた 色の ふくろ

2. 一瞬で色が変わるのは、スポークのついた色の袋のおかげ

2. 色素胞 ── 放射状の筋肉で袋を広げて色を出す

コウイカの ひふには、「しきそほう」と いう 小さな ふくろが たくさん あります。ふくろの 中には、きいろ、あか、ちゃいろの つぶが 入って います[2]。

ふくろの まわりには、15〜25ぽんの きんにくが、じてんしゃの スポークのように ついて います[1]。

きんにくが ちぢむと、ふくろが ひっぱられて ひろがり、まるい 色の ばんに なります。きんにくが ゆるむと、ふくろは ちいさく なって、色は めだたなく なります。

たとえば、ゴムの ふくろを 四ほうから ひっぱると ひろがる ようすに にて います。ただし ほんとうは、ふくろが ゴムのように のびるのでは なく、ふくろの 中の 色の つぶが ひろい ところに ひろがる のです。

この しかけは、岸に ちかい 海の イカや タコの なかまでは、いちばん はやくて めだつ 色の かえかた だと いわれます[5]。

でも、ふくろだけで せいかくな もようが できるのでしょうか。

体の色を変える部品は、色素胞と呼ばれる小さな袋です。色素の粒を入れた弾力のある袋に、15〜25本の筋肉が放射状についています[1]。黄・赤・茶の色素があり、筋肉は自転車のスポークのように袋から伸びて、周りに固定されています[2]。

筋肉が縮むと、袋が引っぱられて色のついた円盤に広がります。筋肉がゆるむと袋が縮み、色は目立たなくなります[1]。傘を開いたり閉じたりするように、色が出たり隠れたりするイメージです。ただし、本当は袋の中の色の粒が広い面積に広がるのであって、色の質が変わるわけではありません。

この方法は、沿岸近くの頭足類では、最も速く目立つ体色変化のしくみです。研究者のハンロンは、速さと多様さで頭足類に並ぶ動物群はいないと述べています[5]。それでも、袋の色素は黄・赤・茶です。青っぽい色や白い下地は、どこから来るのでしょうか。

体色変化の中心は色素胞である。弾力のある袋(嚢)に色素顆粒が入り、その周囲に15〜25本の放射状の筋肉がつく[1]。色素は黄・赤・茶で、筋肉は自転車のスポークのように袋から周辺へ伸びる[2]。筋肉が収縮すると袋が引かれて平らな円盤状になり、色が見える。弛緩すると袋が縮み、色は目立たなくなる[1]。

この仕組みの利点は速さにある。筋肉が袋を広げ、色素顆粒が広い面積に広がって色が見える。色素そのものを作ったり分解したりする必要がない。ハンロンは、沿岸近くの頭足類で色素胞が最も速く目立つ体色変化の機構であり、速さと多様さで並ぶ動物群はいないと述べた[5]。

ただし色素胞の色素は黄・赤・茶である。青みや白い下地は、どこで作られるのか。

3. 色の ふくろの 下に、ひかりを かえす そうが ある

3. 色の袋の下で、光を返す層が模様を引き立てる

3. 虹色素胞と白色素胞 ── 色素胞の下で光を返す層

色の ふくろの 下には、ひかりを はねかえす そうが あります[1]。

ひとつは、「にじしきそほう」と いう そうです。あおから きんいろまでの 色を つくります。もうひとつは、いちばん 下に ある 「はくしきそほう」で、まわりの ひかりを はねかえして、白い したじに なります[1]。

ひろがった 色の ふくろは、この 白い したじの 上に のります。すると、色が はっきり 見えて、もようの 明るい ところと くらい ところが きわだちます。

アメリカの 科学ばんぐみの サイトでは、白い そうは 神けいの はたらきが なくて、いつも 白い したじの ままだと せつめい されて います。にじの そうには、べつの 神けいが かかわるとも いわれます[2]。ただし、これは すべての 生きものに あてはまると かぎりません。

では、たくさんの ふくろは、だれが うごかして いるのでしょう。

色の袋の下には、光を返す2つの層があります。1つは虹色素胞の層で、青から金までの虹色を作ります。もう1つは最下層の白色素胞で、周りの光を反射して白い下地になります[1]。

広がった色素胞は、この白い下地の上に色をのせます。模様の濃淡が際立つのは、そのためです。

Science Fridayでは、白色素胞の層には神経による制御がなく、常に白い下地として働くと説明しています。虹色素胞の層は、別の神経がかかわるそうです[2]。ただし、種によって違う可能性があるので、すべての頭足類に当てはまるとは限りません。

では、袋の筋肉は、だれがどう動かしているのでしょうか。

色素胞の下には2つの層が重なる。虹色素胞は色素胞と白色素胞の間にあり、青から金の虹色(構造色)を作る。最下層の白色素胞は周囲の光を反射し、白い下地になる[1]。広がった色素胞が白い下地の上に色をのせることで、パターンのコントラストができる。

この2層の制御は、色素胞と異なる。Science Fridayは、虹色素胞の変化には別の神経がかかわり、最下層は神経の制御を欠いて白い基準面として一定だと説明する[2]。ただし、種によって異なる可能性があり、すべての頭足類に一般化はできない。

色の袋・反射層という部品はそろった。では、数万個の袋を、動物はどうやって一つの模様にそろえるのか。

4. たくさんの ふくろを、のうは どう うごかすの?

4. 数万個の袋を、脳はどう同時に動かすのか

4. 運動ニューロンによる制御と、3種類の背景パターン

コウイカの ふくろは、おおい ときには 何百まんこにも なるといわれます[3]。

ふくろの きんにくは、のうに ある すこしの 「うんどうニューロン」で うごかされます。ニューロンが はたらくと、きんにくが ちぢみ、ふくろが ひろがります[3]。

2018ねんの けんきゅうでは、すいそうの コウイカ 6ぴきの せなかを、1びょうに 60まいの はやさで、すうしゅうかん さつえいしました。ふくろを 1つ1つの さいぼうの レベルで 見わけて、もようの かわりかたを おいかけたのです[4]。

体の 色が かわる しげきを あたえる ことを くりかえすと、まいかい おなじ もくひょうの もようが でたと ほうこくされて います[4]。

もようは、大きく 3しゅるいに わけられます。ぜんたいが おなじ 色の「いちよう」、まだらの もよう、そして ふちを ぼかす もようです。コウイカは、この 3つを ぜんぶ つくれると いわれます[5]。

ところで、ひふ そのものは ひかりを かんじるのでしょうか。

コウイカの色素胞は、多いと数百万個にもなりうるといわれます。それぞれの袋の筋肉は、脳にある少数の運動ニューロンが制御していて、ニューロンが働くと筋肉が縮み、袋が広がります[3]。

2018年のNature誌の研究では、水槽にいるコウイカ6匹の背中側を、毎秒60フレームで数週間撮影しました。数万個の色素胞を単一細胞のレベルで見分け、模様の変化を追跡したのです[4]。

体の色が暗から淡に変わる刺激を何度か繰り返すと、毎回、同じ目標パターンにたどり着いたと報告されています[4]。数万個の色素胞の動きが、刺激のたびに同じ目標パターンにまとまりました。

カモフラージュの模様は、大きく3種類に分けられます。全体が一様、まだら、そして輪郭をぼかす分断です。コウイカはこの3つを、すべて動的に作れるとされます[5]。

では、皮膚そのものが光を感じて、色を変える手伝いをしているのでしょうか。

色素胞はコウイカで数百万個に及びうるとされ、それぞれが放射状の筋肉につながる。この筋肉は、脳にある少数の運動ニューロンの制御を受け、ニューロンの活動で筋肉が収縮して色素胞が広がる[3]。ここでの「数百万」は上限を示す表現で、固定値ではない。

2018年のNature論文の紹介によると、研究者は水槽の6匹のコウイカの外套膜背側を、毎秒60フレーム・数週間にわたって単一細胞の分解能で撮影し、数万個の色素胞を単一細胞レベルで分類し、模様の変化を追跡した[4]。体色を暗から淡へ変える刺激を繰り返すと、毎回同じ目標パターンへ収束したという。ただし、ここから制御の全体像までは分からない。

背景に合わせる体色は、一様・まだら・分断(輪郭をぼかす)の3つに分けられ、コウイカは3種類すべてを動的に作る[5]。では、皮膚自体は光をどう扱うのか。

5. ひふで 光を かんじて いるの? まだ わからない

5. 皮膚で光を感じているのか ── まだ分からないこと

5. 皮膚の光感受性 ── 擬態への関与は未解明

カリフォルニアツースポットタコの 切りとった ひふに、つよい 光を あてると、色の ふくろが ひろがりました[7]。

ひふには、光を かんじる たんぱくしつも ありますが、それは 色の ふくろではなく、ほかの ところに あります。

ただ、生きて いる タコが、この ひふの 光の かんじを つかって いるかは、まだ わかって いません[7]。

カリフォルニアツースポットタコの切りとった皮膚に強い光を当てると、色素胞が広がりました。皮膚には光を感じるたんぱく質(オプシン)もありますが、それは色素胞ではなく、繊毛と呼ばれる部分にあります[7]。

ただし、生きている個体でこれが使われているのかは、分かっていません[7]。皮膚で色を見て擬態している、とは言えない状態です。

色の見分けが苦手な目、明るさの手がかり、スポークの袋、反射する層、脳の指令。部品はそろっていても、全体がどうつながるのかは、まだ研究の途中です。

カリフォルニアツースポットタコの切除した皮膚に強い光を当てると、色素胞が広がった。皮膚には光を感じるオプシンがあるが、位置は色素胞ではなく繊毛にある。ただし、生きた個体でこの光感受性が使われているのか、あるいは使われているとして何のためかは、まだ分かっていない[7]。

したがって、皮膚で色を見て擬態している、と断定することはできない。目で色を見分けにくい動物が背景に合わせる謎のうち、明るさへの注目は実験で示されたが、皮膚の光感受性の役割は未解決のまま残る。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちで できること

色えんぴつの 赤と みどりを、白黒で コピーして みましょう。色は ちがうのに、うつる はいいろが にて いるかも しれません。コウイカは、こんな 「明るさ」を ひとつの てがかりに して いるのかも しれません。

でかけて できること

すいぞくかんで、イカや タコの 体を 見て みましょう。まわりの いろが かわると、体の 色や もようが かわるか、ゆっくり 見て みます。

こうしきの じょうほう

すいぞくかんの ホームページや、はくぶつかんの 本を 見て みましょう。

今日できること

赤と緑の色鉛筆を、白黒でコピーしてみましょう。色は違うのに、灰色の濃さが似て見えるかもしれません。コウイカが頼りにしている「明るさ」の感覚を、少し想像できます。

出かけてできること

水族館で、イカやタコの体を観察してみましょう。背景が変わったとき、体の色や模様がどう変わるか、じっくり見てみます。

公式情報

水族館や博物館の解説に、頭足類の体色変化が載っていることがあります。読み比べてみてください。

今日できること

赤と緑など、色の違う色鉛筆を白黒でコピーし、明るさ(濃さ)が似て見えるかを確かめる。色の違いと明るさの違いは別だという感覚をつかめる。

出かけてできること

水族館で、背景を変えたときのイカやタコの体色の変化を観察する。一様・まだら・分断のどれに近いかも見てみるとよい。

資料を読むなら

まずは、日本語で読める Nature ハイライトや、水族館・博物館の解説を読み比べるとよい。さらに進みたければ、Reiter ほか(2018, Nature)や Mäthger ほか(2006, Vision Research)の原論文で、実験の手順と、動物の目に合わせたコントラストの作り方を調べる道もある(英語・任意)。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

体色変化の細胞のしくみと実験の結果は、解説サイトと、論文の紹介記事を突き合わせて書いた。数値は、紹介記事に書かれた範囲だけを使った。

  1. The Cephalopod Page: Chromatophores https://thecephalopodpage.org/chroma2.php (色素胞の構造・虹色素胞・白色素胞の層)
  2. Science Friday: Secrets of Cephalopod Camouflage https://www.sciencefriday.com/articles/secrets-of-cephalopod-camouflage/ (スポーク状の筋肉・層の神経制御)
  3. ScienceDaily(Reiter ほか 2018, Nature の紹介) https://www.sciencedaily.com/releases/2018/10/181018105337.htm (運動ニューロンによる制御・孵化直後の擬態)
  4. Nature ハイライト(日本語) https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/pr-highlights/12736 (コウイカの皮膚パターンの追跡)
  5. ScienceDaily(Hanlon 研究室の発表) https://www.sciencedaily.com/releases/2009/01/090115164615.htm (3種類の体色パターン・体色変化の速さ)
  6. ScienceDaily(Mäthger ほか 2006, Vision Research の紹介) https://www.sciencedaily.com/releases/2006/04/060419072340.htm (色盲と明るさへの注目)
  7. National Geographic(Ed Yong, 2015) https://www.nationalgeographic.com/science/phenomena/2015/05/20/octopuses-and-maybe-squid-can-sense-light-with-their-skin/ (皮膚の光感受性)

なおした ところ

更新履歴

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