1. ごはんを 食べる とき、ほっぺは なにを して いるの?
1. 食べるとき、ほっぺは舌やくちびると一緒に動いている
1. 咀嚼は唇・舌・頬の協力でできている
ごはんを 食べて いる ときの 口の 中を、そうぞうして みましょう。
食べ物は、舌と くちびると ほっぺが いっしょに うごいて 口に はいり、舌や 歯で こまかく なって、のみこまれて いきます[1]。ほっぺは、この チームの なかまです。
ほっぺは、食べ物が よこへ にげないように 口の まわりを かこむ、やわらかい かべの ようなものです。ただし ほんものの かべと ちがって、じぶんで うごいて 食べ物を おしもどします。
では、ほっぺの 中の なにが、どう はたらいて いるのでしょうか。
ごはんを食べているとき、口の中では顎だけが動いているわけではありません。厚生労働省の健康情報サイトは、食べ物や飲み物が、くちびる・舌・頬の協調した動きで口に入り、細かくされ、飲み込まれて消化管へ運ばれると説明しています[1]。ほっぺは、この動きに加わる一員です。
舌は食べ物を動かし、くちびるは口を閉じて食べ物を逃がしません。では、口の両側にあるほっぺは何を受け持っているのでしょうか。ここでは、ほっぺが口の側面をふさぐ「壁」として働いていると考えると分かりやすくなります。ただしこの壁は、じっとしているのではなく、自分で動いて食べ物に力を加えます。
その仕事をしているのが、頬の内側にある筋肉です。
咀嚼は、顎を動かす筋肉だけの仕事ではない。厚生労働省の健康情報サイトは、食べ物や飲み物が唇・舌・頬の協調的な動きで口に入り、細かくされ、飲み込まれて消化管に運ばれると記している[1]。頬は、舌や唇と並ぶ、このしくみの一員である。
ただし、このページに頬が具体的に何をするかの記述はない。舌が食べ物を動かし、唇が口の前をふさぐなら、口の側面を受け持つ頬は、どんな力を食べ物に加えているのか。その答えは、頬の内側にある筋肉の働きにある。
2. ほっぺの 中の 筋肉は、食べ物を どうして いるの?
2. 頬の内側の筋肉が、食べ物を奥歯の上にとどめる
2. 頬筋は頬を奥歯に押しつけ、食べ物を口の中央に保つ
ほっぺの うちがわには、頬筋という 筋肉が あります。
かむ とき、この 筋肉は ほっぺを 奥歯に おしつけます。すると 食べ物の かたまりは 口の まんなかに とどまり、ほっぺが 歯の あいだに はさまる ことも ふせげると いわれて います[2]。
ほっぺを かんでしまいにくいのは、この 筋肉が かかわって いるからかも しれません。
ただし この 筋肉は、あごを うごかして かむ 筋肉とは べつの ものです。顔の 表情を つくる なかまの 筋肉で、顔の 神経が うごかして います。
では、まだ 歯が はえていない 赤ちゃんの ほっぺは、どんな しごとを して いるのでしょう。
頬の内側には、頬筋という筋肉があります。噛むとき、頬筋は頬を奥歯に押しつけます。すると、食べ物のかたまりが口の真ん中あたりにとどまり、頬が歯のあいだにはさまることも防げる、と解剖学の解説サイトで説明されています[2]。
食べるときにほっぺたを噛みにくいのは、この筋肉が一因だと説明されています。ただし、ここでの説明は解剖学の解説サイトによるものなので、「そう説明されている」という範囲で受け取ってください。
面白いのは、頬筋が顎を動かして噛む「咀嚼筋」ではなく、顔の表情をつくる「表情筋」の仲間だという点です。動かしているのは顔面神経で、笑うときに動く筋肉と同じ仲間が、食事でも働いています[2]。
では、まだ歯の生えていない赤ちゃんには、ほっぺたの仕事はあるのでしょうか。
頬筋は、頬の内側にある筋肉で、噛むときに頬を奥歯へ押しつける。その結果、食べ物のかたまり(食塊)が口腔の中央に保たれ、頬が歯の間に挟まることも防がれる、と解剖学の解説では説明される[2]。口の側壁が動いて食べ物を歯の上へ戻し続けるわけで、頬は受け身の壁ではない。
分類のうえでは、頬筋は顎を動かす咀嚼筋ではなく表情筋で、顔面神経が支配する[2]。笑顔をつくる筋肉の仲間が、食事ではこの仕事を受け持つことになる。
頬筋は、噛むとき以外にも働く。吹く・吸うといった動きで、唇まわりの筋肉と協力するとされる[3]。では、歯の生えていない乳児の頬には、どんな仕事があるのか。頬のふくらみは何のためにあるのか。
3. 赤ちゃんの ほっぺの ふくらみは、なんの ため?
3. 赤ちゃんの頬には、吸うときのための「パッド」がある
3. 頬脂肪体は乳児の吸啜を支える ── ただし仮説の段階
赤ちゃんは、おっぱいや ミルクを 吸います。吸う ときには、口の 中が 外より 気あつが ひくく なります。
ほっぺの そとがわには、頬脂肪体と いう 脂肪の かたまりが 左右に あります。赤ちゃんでは、とくに めだちます[4]。
この かたまりは、吸う とき ほっぺが へこまないように ささえる「吸う ための パッド」と よばれる ことが あります[4]。吸う 力を たかめて いるのでは、とも かんがえられて います[5]。
ストローで ジュースを 吸う ときに、ストローが つぶれると 吸えなく なります。ほっぺの 中が へこむと、同じように 吸いにくく なるのかも しれません。ただし これは たとえ話で、本当の しくみは まだ 研究中です。
赤ちゃんの ぷくぷくした ほっぺの ぜんぶが この かたまりと いうわけでは ありません。
赤ちゃんは、おっぱいやミルクを吸って栄養をとります。吸うとき、口の中の圧力は外より低くなります。そのとき、ほっぺがへこんでしまわないように支えるものがある、と考えられています。
頬の外側には、頬脂肪体という脂肪のかたまりが左右にあり、新生児や乳児でとくに目立ちます。総説では、吸うときの頬への負の圧力を打ち消す「吸うためのパッド(サクション・パッド)」と呼ばれることがあると紹介されています[4]。頬筋と脂肪体が、吸う動きを一緒に支えているわけです。
別の研究では、頬脂肪体が乳児の吸う力を高めていると考えられており、脂肪体の育ちが吸う動きに関わっているかもしれない、という見方が示されています[5]。咀嚼筋のあいだで滑りをよくしたり、衝撃をやわらげたりするという説明もあります[4]。
ただし、ここで使われているのは「考えられている」「かもしれない」という言い方です。赤ちゃんのふっくらした頬は吸うためにある、と言い切れる段階ではありません。頬のふくらみの全部が脂肪体だと言えるわけでもありません。
吸うとき、乳児の口の中は外より圧力が低くなる。その状態で頬が内側へ引き込まれると、吸う動きの効率が落ちると想像できる。実際、総説論文は、頬脂肪体が吸啜中に頬へかかる陰圧を打ち消す役割をもつと整理し、「サクション・パッド」という別名を紹介している[4]。頬脂肪体は頬の外側、咀嚼筋のあいだにある脂肪のかたまりで、新生児・乳児で目立つ。
この役割を支える研究もある。乳児の頬脂肪体を調べた論文は、頬脂肪体が咀嚼筋の吸う力を高めると考えられていると述べている[5]。ただしいずれも "thought to" "may be" という推測の表現であり、因果関係が確かめられたわけではない。
このほか、総説は、咀嚼筋のあいだで筋肉の滑りをよくする、衝撃をやわらげるといった説明も紹介している[4]。一つの構造に複数の役割が提案されている、という状態である。
そのため、赤ちゃんのふっくらした頬は、吸うためだけにあるとは言えない。頬のふくらみの全部が脂肪体だと言えるわけでもない。では、この脂肪のかたまりは、大人になるとどうなるのか。
4. 大きく なると、ほっぺの あぶらは どう なるの?
4. 頬脂肪体は、成長とともに中身も大きさも変わる
4. 頬脂肪体は成長とともに変わり、大人では平均約10mL
赤ちゃんの 頬脂肪体の 中身は、生まれて すうしゅうかんの あいだは、おもに 褐色脂肪と いう しゅるいの 脂肪だと されます。そのあとは 白色脂肪に なって いきます[5]。
大人の 頬脂肪体は、おとこの 人で へいきん 10.2ミリリットル、おんなの 人で 8.9ミリリットルです。小さじ 2はい ぶんくらいです[4]。
としを とると、ほっぺの そとがわへの はりだしは 小さく なります。そして、からだ ぜんたいの 重さとは かんけいが ないと いわれて います[4]。
ほっぺが ふっくらして いるのは、太って いるからとは かぎりません。
頬脂肪体の中身は、成長とともに入れ替わります。満期で生まれた乳児32人のMRI(体の断面を撮る検査)を調べた研究では、生後数週間の頬脂肪体は主に褐色脂肪組織で、その後は白色脂肪組織になると報告されています[5]。この研究は、なぜそう変わるのかまでは示していません。
大人の頬脂肪体の体積は、総説によると平均で男性10.2mL、女性8.9mLです[4]。小さじ(5mL)で言えば2杯ほどで、思ったより小さい量です。成人の平均なので、子どもの数字ではありません。
年齢とともに、頬側への張り出しは小さくなります。また、頬脂肪体の体積と体重とのあいだには関係が見られなかった、とも書かれています[4]。ほっぺたがふっくらしているかどうかは、体全体の重さだけでは決まらないようです。
頬脂肪体の組成は、成長とともに変わる。満期産の乳児32名のMRIを調べた研究では、生後数週間の頬脂肪体は主に褐色脂肪組織で、その後は白色脂肪組織になると報告された[5]。ただし、この研究では「体温をつくるため」といった機能は示されておらず、変化の理由までは分かっていない。
大きさについては、総説が成人の平均体積を男性10.2mL、女性8.9mLと整理している[4]。小さじ(5mL)で2杯ほどで、顔の両側の外見のわりに小さい。これは成人の平均で、子どもの値ではない点に注意が要る。年齢とともに頬側への張り出しが小さくなること、頬脂肪体の体積が体重とは相関しないことも同じ総説に記されている[4]。
ここから、頬の「ふっくら感」について、いくつかの読み方が出てくる。乳児期に目立つ脂肪体が、吸う動きに関わると考えられている一方で、大人になると張り出しは小さくなり、体積は体重とも関係しない。頬のふっくら感だけで、その人の体重は分からない。
では、食べ物をためて運べる動物のほっぺは、ヒトのほっぺとどうちがうのか。
5. ハムスターの ほっぺと、人の ほっぺは なにが ちがうの?
5. ハムスターの頬袋と、ヒトのほっぺは別のもの
5. 頬袋をもつ動物と、袋をもたないヒトの頬
ハムスターや リスの ほっぺの うちがわは、ポケットの ように なって います。食べ物を つめこんで、じぶんの すに はこぶ ことが できます[6]。
人の ほっぺは、ポケットでは ありません。筋肉と 脂肪と 粘膜で できた かべで、食べ物を ためて はこぶ ためには つかいません。
そのかわり、人の ほっぺは、食べ物を 歯の ほうへ おして かむのを たすけ、赤ちゃんの ときには 吸うのを ささえると かんがえられて います。同じ「ほっぺ」でも、はたらきが ちがうのです。
ハムスターやリスは、両方の頬の内側がポケット状になっていて、食べ物を入れて巣へ運べます[6]。頬を「食べ物の運び袋」に使う動物がいるのは確かです。
ヒトの頬は、袋ではありません。筋肉と脂肪と粘膜でできた、口の側面の壁です[1][2][4]。食べ物をためて運ぶためには使われません。噛むときに食べ物を奥歯の上に保つのは頬筋の働きです。また、乳児の吸う動きを頬脂肪体が支えているのではないか、という説があります。
名前は同じ「頬」でも、動物によって使い方がちがう、ということです。
こうして見ると、顔の「ふくらみ」にも、場面ごとにちがう仕事があることが分かります。最後に、自分のほっぺでそれを確かめる道すじを書いておきます。
ハムスターやリスは、頬の内側が袋状になり、食べ物を入れて巣へ運べる[6]。この資料は子ども向けの図鑑で、袋の構造や容量までは示していない。
一方、ヒトの頬は袋ではなく、頬筋・頬脂肪体・粘膜などでできた口の側壁である。食べ物を貯めて運ぶ用途はなく[1][2][4]、仕事としては、頬筋が噛むときに食べ物を歯の上に保つことが説明されている。乳児の吸う動きを頬脂肪体が支えるという見方は、まだ仮説の段階にある。
ここまでで、題名の問いに対する資料の範囲での答えはそろう。頬は、食べ物を奥歯の上にとどめる壁であり、乳児の吸う動きを支える構造の一部でもある。ただし脂肪体の役割は仮説の段階で、これから変わりうる。
6. つぎの ごはんで、自分の ほっぺを かんじて みよう
6. 食事とストローで、自分のほっぺたを観察する
6. 自分の頬で確かめる ── 観察の道すじと、原典の読み方
つぎの ごはんの ときに、ひとくちだけ ゆっくり かんで みましょう。舌や ほっぺが 食べ物を 歯の ほうへ おしもどして いる ことが、すこし かんじられるかも しれません。
もう 1つ。ストローで むぎ茶を 吸って みます。ストローの 上から そっと ほっぺに 手を あてて、ほっぺの 動きを 見て みましょう。ほっぺが へこむのか、へこまないのか。ゆっくり 吸って、むせないように 気を つけて ください。
赤ちゃんの ほっぺの ひみつは、まだ 研究が すすんで いる ところです。
次の食事で、ひと口だけゆっくり噛んでみましょう。舌とほっぺが、食べ物を歯の上へ戻していることが感じられるかもしれません。ただし食事中に話したり、急いで食べたりすると、むせることがあります。ゆっくり、しっかり噛んでください。
もう一つは、ストローで麦茶を吸う観察です。外側から指をそっと当て、ほっぺたの動き方を見てみます。強く吸うと、大人でもほっぺたがへこむことがあります。力を変えて、ほっぺたの形がどうなるか観察してみてください。これは頬の動きを見るだけの観察で、赤ちゃんの頬脂肪体の働きを確かめる実験ではありません。
赤ちゃんを見かけたら、ふっくらした頬のことを思い出してみてください。吸うために役立つと考えられている構造が、そこにあります。
ほかに、くわしく読みたい人には、厚生労働省「e-ヘルスネット」の咀嚼のページ[1]が、日本語で短く読めます。
観察は二つある。一つは、食事のとき、ひと口をゆっくり噛んで、舌と頬が食べ物を歯の上へ戻す動きを探ることである。もう一つは、ストローで麦茶を吸うとき、外側から頬にそっと指を当てて、頬が内側へ引き込まれるかどうかを見ることである。吸う力を変えて比べると、頬の動き方の違いを観察できる。ただし食事中はむせやすいので、無理に急がない。
資料を読むなら、次のページが入口になる。①厚生労働省のページ[1]は、日本語で咀嚼の全体像が短く読める。②頬脂肪体の総説[4]は英語だが、構造・役割・成人の体積が整理されている。③乳児の頬脂肪体のMRI研究[5]は、褐色脂肪から白色脂肪への変化と、吸う力についての仮説が書かれた原典である。
頬筋の働きは、今回は解剖学の解説サイトでしか読んでいない。教科書や大学の資料でどう書かれているかは、読み比べてみる価値のある問いである。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:公的機関の健康情報、解剖学の解説サイト、論文・総説、子ども向けの図鑑を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「咀嚼」。https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-001.html (咀嚼が唇・舌・頬の協調した動きであることについて)
- Kenhub「Buccinator muscle」。https://kenhub.com/en/library/anatomy/buccinator-muscle (頬筋の位置・働き・神経支配について。解剖学の解説サイト)
- StatPearls「Anatomy, Head and Neck, Buccinator」。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK541018/ (頬筋が吹く・吸う動きでも働くことについて)
- 「The Buccal Fat Pad: A Unique Human Anatomical Structure」。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11505344/ (頬脂肪体の位置・役割の説・成人の体積について。総説論文)
- 「Brown Adipose Tissue in the Buccal Fat Pad during Infancy」。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3931802/ (乳児の頬脂肪体の組成と、吸う力についての仮説について。MRI研究)
- 学研キッズネット なぜなに(今泉忠明 監修)。https://kids.gakken.co.jp/box/nazenani/pdf/01_doubutu/X1020101.pdf (ハムスターなどの頬袋について。子ども向けの図鑑)
なおした ところ
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