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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

牛が 子牛を うむとき、人は なにを して いるの?

牧場の牛の出産で、人はどんなときに手を出すのか

牛の分娩に介助はいつ必要になるのか 見守る判断と生まれた直後の仕事

分野:生きもの

牧場ぼくじょうで 牛が 子牛を うむとき、人が 子牛を ぐいぐい 引っぱり出すと 思って いませんか。ところが、県の 資料しりょうには「早く 引っぱると、母牛と 子牛の あぶない ことに つながる」と 書かれて います[5]。

人は、いつ 手を 出して、いつ 見守るのでしょう。手を 出す 目安、生まれた すぐ あとの 仕事、夜の 見はりを 助ける 機械きかいの ことが 分かります。

牧場で牛が子牛を産むとき、人の仕事は「子牛を引っぱり出すこと」だと思われがちです。ところが県の資料には、正常に進んでいるお産で早く引っぱることは、かえって母牛と子牛のリスクになると書かれています[5]。

では人は、お産のどこで何をしているのでしょうか。牛が自分で進める部分、人が手を出す境目、生まれた直後の数時間、夜の見守りを助けるカメラやセンサーのことが分かります。

牛の分娩は、人が引っぱり出すものと思われやすい。しかし日本の県の資料は、正常に進行している分娩で牽引を始めるのは早すぎ、不必要な介助や牽引は母子のリスクになると述べる[5]。介助は、必要なときだけ行うものとして扱われている。

では、人はいつ手を出すと判断し、それまでの時間と生まれた直後の数時間に何をしているのか。日本と米国の公的な資料や試験場の報告から、判断の目安、初乳の時間的な制約、夜間の監視を助ける機器の位置づけが分かる。

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1. 牛の 出産しゅっさんは、だれが すすめるの?

1. 牛のお産は、ほとんど牛が自分で進める

1. 分娩は母牛が進める 立ち会いの目的は兆候の発見

夜の 牛舎ぎゅうしゃで、おなかの 大きい 母牛の そばに、人が しゃがんで います。でも、なにも して いないように 見えます。

これが、牛の 出産しゅっさんの ふつうの 立ち会い方です。自然しぜんの 中では、動物は 自分の 力で 子どもを うみます。県の 資料しりょうも、おてつだいは 本当は いつも いる わけでは ない、と 書いて います[5]。

5つの 農家で 調べた 研究では、566頭の 出産しゅっさんの うち 414頭(およそ73%)が、人の 手を かりずに 終わりました[7]。5つの 農家の 話なので、日本じゅうの 数字では ありません。

それなら、人は なんの ために そばに いるのでしょう。

夜の牛舎で、お産が近い母牛のそばに人がしゃがんでいます。見ているだけで、何もしていないように見えますが、これが牛のお産の基本的な立ち会い方です。

岩手県の資料は、自然界では動物は自力で分娩するので、介助は本来必ずしも必要ではないと説明しています[5]。ネブラスカ大学の資料も、ほとんどの牛は問題なく子牛を産むとしています[1]。日本の乳牛5農家(約18か月)の調査では、分娩566頭のうち414頭(73.1%)が自然分娩で、介助は152頭でした[7]。5農家の調査なので、全国の割合ではありません。

それなら、人は何のためにそばにいるのでしょうか。岐阜県の資料は、兆候を見逃さず、分娩が始まったら立ち会うよう勧めています[10]。分娩が近づくと、外陰部や乳房が張り、尾の付け根がくぼみ、前日には体温が大きく下がるとされます[9]。人は手を出すためではなく、「いつもと違う」を見つけるために、そこにいるのです。

分娩の主体は母牛であり、介助は本来必ずしも必要ではない。岩手県の資料は、自然界では動物は自力で分娩するとし、不必要な介助が母子のリスクになると述べる[5]。ネブラスカ大学の資料も、ほとんどの牛は合併症なく子牛を産むとする[1]。

実際の割合は調査によって異なる。麻布大学の紀要が報告したホルスタイン種5農家・約18か月の調査では、分娩566頭のうち414頭(73.1%)が自然分娩、152頭が介助で、介助の理由には人手や子牛の安全確保といった人の側の事情も含まれた[7]。対象が5農家であるため、全国の割合として読むことはできない。

それでも農場で人が立ち会うのは、介助の要否を判断する機会を逃さないためである。岐阜県は、兆候を見逃さず分娩開始から立ち会うことを勧める[10]。和歌山県の資料によれば、分娩が近づくと外陰部や乳房が張り、尾の付け根がくぼみ、前日には体温が著しく低下する[9]。立ち会いの役割は、手を出すことより、異常の早期発見にある。

2. 人は、どんな ときに 手を 出すの?

2. 人が手を出すのは、「いつもと違う」ときだけ

2. 介助の要否を分ける向きと経過時間

1つめの 目安は、子牛の 向きです。後ろ向きなど、ふつうと ちがう 向きは、手助けを 考える 大事な しるしと されます[2]。

2つめは、時間です。赤ちゃんを つつむ 水の 袋ふくろが 見えてから、ふつうは 2時間ぐらいで 生まれると されます[3]。はじめての 出産しゅっさんの 牛は、3時間まで 待つ 資料しりょうも あります。資料しりょうに よって、70分から 3時間ぐらいまで、はばが あります[4]。

たとえば、自転車の 練習を 後ろから 見ている おとなを 思いうかべて ください。ころびそうな ときだけ 手を そえます。ただし 本当は、牛の 出産しゅっさんは 練習では ないので、目安の 時間と 向きを 見て、手を 出すかを 決めます。

では、手を 出したほうが いいと 分かったら、すぐ 引っぱって よいのでしょうか。

手を出す境目には、いくつかの目安があります。一つは子牛の向きです。BQA(米国の牛肉生産者団体系の資料)は、後ろ向きなど正常でない向きは、介助を考える重要なサインだとしています[2]。進み具合の確認と合わせて見ます。

もう一つは時間です。モンタナ州立大学の資料は、水の袋が見えてから通常2時間以内に生まれるとし、初産の若い牛では最長3時間としています[3]。オハイオ州立大学の乳牛の資料では、羊膜の袋が外に出てから生まれるまでの時間を、通常70分ほどとしています[4]。BQAは、子牛を押し出す期間が30分〜4時間続くとしたうえで、2時間の時点で手助けが必要かを見きわめるとしています[2]。強くいきんでいるのに30分たっても進まない、いきみの合間の休みが20分を超える、といった目安もあります[1]。

数字がそろわないのは、資料ごとに牛の種類や、数え始める時点が違うためです。「何時間」を一つの答えにはできません。和歌山県の資料は、前あしは見えるのに鼻先に触れない、といった状態も難産を疑う目安にあげています[9]。

たとえば、自転車の練習を後ろから見ているおとなに似ています。ころびそうなときだけ手を出します。ただし牛のお産は練習ではなく、時間と向きという具体的な目安で判断します。

介助の要否を分けるのは、主に胎子の向きと、分娩の進行に要した時間である。BQA(米国の牛肉生産者団体系の資料)は、後ろ向きなど正常でない向きを、介助を検討する重要なサインとみなす(進行状況の確認と合わせて見る)[2]。和歌山県の資料も、前あしは見えるのに鼻先に触れない場合などを、難産を疑う目安にあげる[9]。

時間の目安は、資料によって数字が異なる。ネブラスカ大学は、胎子を押し出す第2期が30分〜4時間続きうるとし、強くいきんでも30分進まない場合や、いきみの合間の休みが20分を超える場合に手助けを考えるとする[1]。BQAは同じ30分〜4時間の幅を示しつつ、2時間の時点で介入の要否を評価するとする[2]。モンタナ州立大学は、水の袋が見えてから通常2時間以内(初産牛は最長3時間)とし[3]、オハイオ州立大学は、乳牛で羊膜が陰門の外に出てから出生までの通常の目安を約70分とする(平均時間として示される)[4]。

これらの数字は、牛の種類、初産かどうか、そして数え始める時点が資料ごとに違うため、単純には比べられない。固定の基準を一つ決めるのではなく、複数の目安を重ねて「いつもと違う」を判断する、というのが共通した読み方になる。

たとえば自転車の練習を後ろから見るおとなは、倒れそうなときだけ手を出す。ただし牛の分娩は練習ではないので、見る対象は向きと時間という、測れる指標である。では、指標が基準を超えたら、すぐに引っぱればよいのか。

3. すぐ 手を 出したほうが、あんしんなの?

3. すぐに手を出したほうが、安心なのか

3. 早い牽引がリスクになる理由と、観察基準の導入例

じつは、早すぎる 手助けの ほうが 問題に なる ことが あります。県の 資料しりょうは、うまく 進んで いる 出産しゅっさんで 引っぱり始めるのは 早すぎる、と 書いて います[5]。

北海道の 試験場しけんじょうは、「ようすを 見ながら 待つ」決まりを 作りました。すると、乳牛にゅうぎゅうの 農場の 報告ほうこくでは、むずかしい 出産しゅっさんの 割合わりあいが およそ11%から およそ5%に へりました[6]。「待つ」ことも、人の 大切な 仕事です。

手を 出す ときも 注意が あります。手を 出す かどうかや、どう するかは、農場のうじょうの おとなが 決めます。子牛の あごは おれやすいので、引っぱらない ように 資料しりょうに 書いて あります[3]。手助けしても 進まない ときは、牛の お医者さんに 相談そうだんします[4]。子どもは 牛に 近づかず、おとなに まかせましょう。

岩手県の資料は、正常に進んでいる分娩で牽引を始めるのは早すぎ、不必要な介助・牽引は母子のリスクになるとしています[5]。一方で、「いつもと違う、異常かな」と感じたら、獣医師に往診を頼むよう勧めています[5]。

北海道立根釧農業試験場は、二次破水のあと、胎子や産道に異常がないことを確かめ、初産牛で約3時間、経産牛で約2時間は観察しながら介助の要否を判断する基準を作りました。報告では、経産牛の難産発生率は11.1%から4.7%に、初産牛の無介助分娩率は33.3%から56.3%になっています[6]。乳牛の農場群の結果で、肉牛や全国の数字ではありません。

手を出すときの注意もあります。モンタナ州立大学の資料は、子牛のあごは折れやすいので引っぱらないよう注意しています[3]。介助が必要かどうか、どう対応するかは農場の人が判断し、必要なら獣医師に相談します。オハイオ州立大学の資料は、介助しても30分進まなければ獣医師を呼ぶとしています[4]。見学する人が自分で手を出す場面ではありません。

難産のもとは、母牛側と子牛側に分けられます。宮崎県の黒毛和種905農場の研究(2006〜2010年)では難産は8.5%、死産は2.1%でした。要因には、陣痛が弱い、産道がせまい、胎子が大きい、向きが正しくない、双子などがあります[8]。最もよくある原因は、母牛の産道に対して子牛が大きすぎることで、初産の若い牛に起こりやすいといいます[3]。

早く手を出すほど安全、とは限らない。岩手県の資料は、正常に進行している分娩での牽引開始は早すぎ、不必要な介助が母子のリスクになるとする。判断の基準は、「いつもと違う、異常かな」と感じたときに獣医師へ往診を依頼することである[5]。

この考え方を数字にした例が、北海道立根釧農業試験場の報告である。二次破水後に胎子と産道の異常がないことを確認し、初産牛で約3時間、経産牛で約2時間観察しながら介助の要否を判断する基準を作ったところ、経産牛の難産発生率は11.1%から4.7%に、初産牛の無介助分娩率は33.3%から56.3%になった[6]。ただしこれは乳牛の農場群での結果で、肉牛や全国の値ではない。

なぜ難産が起こるのかも整理しておく。宮崎県の黒毛和種905農場(2006〜2010年)の研究では、難産は8.5%、死産は2.1%で、要因は母牛側(陣痛の弱さ、産道の狭さ)と胎子側(過大、向きの異常、双子、奇形)に分けられた[8]。モンタナ州立大学は、最も多い原因は産道に対して胎子が大きすぎること(母胎・胎子の不均衡)で、初産牛に起こりやすいとする[3]。

介助が必要と判断した場合も、方法に注意がある。同大学は、胎子のあごは折れやすいので引っぱらないよう述べる[3]。介助の要否と方法は農場の人が判断し、獣医師に相談する。オハイオ州立大学は、介助しても30分進展がなければ獣医師を呼ぶことを基準にする[4]。待つ時間と、手を出したあとの見きわめがそろって、はじめて判断になる。

4. 生まれた すぐ あと、人は なにを するの?

4. 生まれた直後、人は何をするのか

4. 娩出直後の処置 呼吸・乾燥・母牛による刺激の代行

子牛が 生まれたら、人が まず する ことは、呼吸こきゅうの 確認かくにんです。つぎに、ぬれた 体を かわかします。へそから ばいきんが 入らない ように します[10]。

ふつうは、母牛が 子牛を ぺろぺろ なめます。なめると、体が かわき、血の めぐりも よくなる と いわれます[11]。

はじめての 出産しゅっさんなどで、母牛が なめない ことが あります。そのときは、かわいた くさを かけたり、人が わらや タオルで 体を ふいて、さすったり します[11]。母牛の 仕事を、人が 代わりに やるのです。

子牛が生まれたら、人はまず呼吸を確認します。次に、ぬれた体を乾かします。へその緒から細菌が入らないように、へその手入れもします[10]。

体を乾かす仕事は、本来は母牛がします。母牛が子牛をなめることは、体を乾かすだけでなく、マッサージのように血液のめぐりを促し、初乳の免疫の吸収を高めるとされます[11]。

初産などで母牛がなめないときは、乾草をかけます。それでもなめなければ、人が敷きわらやタオルで体をふき、マッサージする対応が示されています[11]。つまり人は、母牛がやるはずの仕事を、必要なときに代わりに引き受けています。そして、この直後にもう一つ、時間との勝負になる仕事が待っています。

娩出された子牛に対して、岐阜県は、まず呼吸を確認し、次に濡れた体を乾燥させ、へその緒から細菌が侵入しないよう処置することを求める[10]。処置の順番として、呼吸の確認が最初に挙げられている。

乾燥は、本来は母牛のなめる行動(リッキング)が担う。沖縄県の資料によれば、リッキングは体を乾かすだけでなく、マッサージ効果で血液循環を促し、初乳免疫の吸収を高める[11]。そのため、母牛がなめない場合(初産などの例が示される)には、乾草をかけ、それでもなめなければ、人が敷きわらやタオルで体をふいてマッサージする対応が勧められている[11]。

母牛が子牛をなめないとき、人が体をふいて助ける。次に気を配るのは、子牛に初乳を飲ませる時間だ。

5. はじめての ミルクは、なぜ いそぐの?

5. 初乳は、なぜ生後6時間以内といわれるのか

5. 初乳の給与時期と、夜間分娩で起きる遅れ

子牛は、生まれた ときには、病気を ふせぐ 力を ほとんど もって いません。その 力は、母牛の さいしょの ミルク、初乳しょにゅうから もらいます[12]。

初乳しょにゅうは、生まれてから 6時間の うちに 飲ませるのが 基本きほんです。自分で 飲めない ときは、しぼってでも、4〜6時間の うちに あげるように すすめる 資料しりょうも あります[12]。

福井県ふくいけんの 調査ちょうさでは、初乳しょにゅうが 足りなかった 子牛が 39頭中 9頭 いました。その 8わり以上いじょうは、6時間 たってから 飲んで いました。母牛が 夜に うんだ ために、はじまりが おくれて いたと 書かれて います[13]。

子牛は生まれた直後、ほとんど免疫を持っていません。免疫(抗体)は、母牛の最初の乳である初乳から受け取ります。岐阜県の資料は、初乳を生後6時間以内に飲ませるのが基本としています[12]。沖縄県の資料は、子牛が自分で飲めないときは、搾乳してでも生後4〜6時間以内に与えるよう勧めています[11]。

ここで、お産の時間帯が効いてきます。福井県の調査では、初乳の摂取が不十分だった子牛が39頭中9頭(23.1%)で、そのうち80%以上は分娩後6時間以上たってから初乳を飲んでいました。背景には、母牛が夜間に分娩したため、初乳の開始が遅れたことがあるとされています[13]。

岐阜県の資料は、立ち会いやすい昼間に分娩させるよう勧めています[10]。夜の見守りは、牛だけでなく、人にとっても大きな負担になります。

子牛は出生直後、ほとんど免疫をもたず、抗体は初乳から受け取る。岐阜県の資料は、初乳を生後6時間以内に給与するのを基本とし[12]、沖縄県の資料は、子牛が自力で飲めないときは搾乳してでも生後4〜6時間以内に与えるよう勧める[11]。

ところが、この時間は夜間分娩のときに守りにくい。福井県の畜産試験場の調査では、初乳の摂取が不十分だった子牛は39頭中9頭(23.1%)で、その80%以上が分娩後6時間以上たってから初乳を飲んでいた。背景には、母牛の夜間分娩で初乳の摂取が遅れたことがあるとされる[13]。1つの調査であり、頭数も小さいため、一般的な割合としては読めない。

この結果は、先の「待つ」判断とは別の問題を示している。夜に生まれた子牛ほど、初乳を飲ませる手が遅れやすい、という見方である。岐阜県は、立ち会いやすい昼間に分娩させるよう勧めている[10]。夜の見守りという負担そのものを、機器で軽くする試みもある。

6. 夜の 見はりは、だれが 助けるの?

6. 夜の見守りを、カメラやセンサーはどう助けるのか

6. 夜間の監視負担と、機器による通知の位置づけ

出産しゅっさんが 近い 牛は、夜も 見に 行かなければ なりません。岩手県の 資料しりょうは、寒い 夜に 家と 牛舎ぎゅうしゃを 何度も 行き来するのは たいへんで、牛にも ストレスに なると 書いて います[14]。

そこで、機械きかいが 見はりを 助けて います。カメラと AIで、出産しゅっさんの 前の 牛の ようすの 変化へんかを 見つけて、スマホに 知らせる ものが あります。売っている 会社の 紹介しょうかいでは、1日の 見はりの 時間が へったと されます[15]。

機械きかいが 知らせて くれる ことで、人は 大事な ときに 牛の そばに いられます。

お産が近い牛は、夜も牛舎を見回る必要があります。岩手県の資料は、夜間、特に冬に自宅と牛舎を何度も往復するのは大変な労力で、牛にもストレスになると指摘しています[14]。

この負担を軽くする機器があります。サーマルカメラとAIで、分娩前の行動の変化を牛に機器をつけずに検出し、兆候が見えたら農家のスマホに通知する製品があります。販売元の紹介記事は、北里大学の実証農場の調査で、1日の監視時間が減ったとしています[15]。効果は販売元の資料によるもので、第三者の検証ではありません。

機器は、人の代わりに助けるのではなく、人が「いつ行くか」を絞る道具です。九州沖縄農業研究センターの研究では、膣温センサーで分娩を見ると、一次破水から娩出まで平均で約2時間(中央値は約1時間18分)かかり、難産になるほどその時間が延びました。黒毛和種の経産牛・1農場での調査です。破水後の経過時間から、介助や難産を判断できる可能性が示されています[16]。機器が示した時間でも、手を出す判断の中心は、前の章と同じ「いつもと違う」の見きわめです。

分娩の前後は夜間も見回る必要があり、岩手県の資料は、夜間(特に冬季)に自宅と牛舎を何度も往復するのは大変な労力で、牛にもストレスになると指摘する[14]。そのため、見回りの回数を減らす機器が使われている。

サーマルカメラとAIで分娩前の行動の変化を非接触で検出し、兆候が見えた時点でスマホに通知する製品がある。販売元の紹介記事は、北里大学獣医学部の実証農場の調査で、1日の監視時間が減ったと報告する[15]。これは販売元の資料による効果であり、第三者の検証ではない。

機器が示す情報は、前の章の判断基準とも結びつく。九州沖縄農業研究センターの肉用牛の研究では、膣温センサーで監視すると一次破水から娩出まで平均で約2時間(中央値は約1時間18分。黒毛和種の経産牛、1農場の調査)かかり、分娩の難易度(自然分娩、介助1人、難産=2人以上と獣医師)が上がるほどその時間が延びた。破水後の経過時間から、介助や難産を判断できる可能性が示されている[16]。機器は通知と記録を担うが、手を出すかどうかの判断は、人の見きわめに残る。

7. 手を 出す ときと、見守る ときを 考えて みよう

7. 手を出すときと見守るときを、身近な場面で考えてみる

7. 試験場の資料で、待つ基準を読みくらべる

牧場ぼくじょうに 行ける ときは、牛の 近くに かってに 入らず、係の 人の 話を 聞きましょう。そして、牛が ふだんと どこが ちがうか、1つ 見つけて みてください。

おうちでは、ノートに「待つ」を 考えて みましょう。自転車の 練習、はじめて 一人で する おつかいなど、手を 出さずに 見守った ことは ありますか。いつなら 手を 出すか、3つ 書いて みましょう。

牧場や、牛を見られる施設に行ける機会があれば、勝手に近づかず、係の人の話を聞いてください。牛が普段とどこが違うか、遠くから静かに一つ探してみましょう。

身近なことで試すなら、「手を出さずに見守る」場面を思い返してみます。自転車の練習や、初めて一人で行うお使いなどで、いつなら手を出すと決めたかをノートに書きます。牛の目安が「向き」と「時間」だったことと比べると、見守る側が何を見ているのかが具体的に分かります。

日本の資料は、都道府県の畜産試験場や家畜衛生情報で読める。北海道立根釧農業試験場の観察基準[6]と、福井県の初乳の調査[13]を読みくらべると、何を基準の始点とするか(二次破水後か、分娩後か)が資料ごとに違うことが確かめられる。

読んでみたい資料。

  • 北海道立根釧農業試験場の研究成果(農研機構公開資料)[6]。観察しながら介助を判断する基準と、難産発生率の変化が読める。
  • 福井県畜産試験場の報告[13]。夜間分娩と初乳の遅れの関係が読める。
  • 農研機構 九州沖縄農業研究センターの研究成果[16]。膣温センサーによる分娩経過時間が読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:大学の普及資料、団体の解説、各都道府県の畜産関係資料、試験場や大学の報告、製品の紹介記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Nebraska Extension, Calving Problems: When to Intervene。https://beef.unl.edu/calving-problems-when-intervene (出産の段階と、手助けを考える目安について)
  2. BQA (NCBA), Monitoring calving stages and when to intervene。https://www.bqa.org/about-us/newsroom/monitoring-calving-stages-and-when-to-intervene (2時間での見きわめと、子牛の向きについて)
  3. Montana State University Extension, Dystocia in Beef Cattle (MontGuide)。https://extension-store.montana.edu/montguides/dystocia-in-beef-cattle (難産の原因と、水の袋が見えてからの時間について)
  4. Ohioline (Ohio State University), VME-29 Calving。https://ohioline.osu.edu/factsheet/VME-29 (乳牛の時間の目安と、獣医師を呼ぶ基準について)
  5. 岩手県 畜産関係資料(分娩介助)(PDF)。https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/065/959/0507tyuou.pdf (自然分娩と、不必要な介助がリスクになることについて)
  6. 北海道立根釧農業試験場 研究成果(農研機構 公開資料)(PDF)。https://www.naro.go.jp/karc/prefectural_results/files/30_3_22a.pdf (観察しながら介助を判断する基準と難産発生率について)
  7. 麻布大学 紀要 29巻(PDF)。https://az.repo.nii.ac.jp/record/5276/files/bull_jau_vol29-080.pdf (5農家の自然分娩と介助の頭数について)
  8. 宮崎大学リポジトリ 黒毛和種の死産・難産に関する研究(PDF)。https://miyazaki-u.repo.nii.ac.jp/record/4177/files/a1yhakuron.pdf (難産・死産の発生率と、難産の要因について)
  9. 和歌山県 家畜衛生だより 2022-4(PDF)。https://wakayama.lin.gr.jp/jyoho/eiseidayori/2022-4.pdf (分娩が近い兆候と、難産を疑う目安について)
  10. 岐阜県 家畜衛生情報(PDF)。https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/134620.pdf (立ち会いと、生まれた直後の処置について)
  11. 沖縄県 子牛育成のポイント(PDF)。https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/041/152/kousiikuseipoint3.pdf (母牛がなめる行動と、初乳を与える時間について)
  12. 岐阜県 家畜衛生情報(PDF)。https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/221244.pdf (初乳の給与時期について)
  13. 福井県 畜産試験場 報告(PDF)。https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/chikushi/report_d/fil/334.pdf (夜間分娩と初乳の摂取の遅れについて)
  14. 岩手県 畜産関係資料(分娩監視カメラ)(PDF)。https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/001/845/chikusan08-1.pdf (夜間の見回りの負担について)
  15. AIsmiley「牛の分娩兆候をAIで検出」(販売元の紹介記事)。https://aismiley.co.jp/ai_news/ai-detects-signs-of-labor/ (カメラとAIで兆候を通知する仕組みについて。効果は販売元の説明)
  16. 農研機構 九州沖縄農業研究センター 研究成果(PDF)。https://www.naro.go.jp/org/warc/research_results/r1/pdf/10_chikusan/29_1004_19.pdf (破水後の経過時間と分娩の難しさについて)

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