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牛の 胃いは、どうして 4つ あるの?

牛の胃はなぜ4つあるのか 草を食べる牛の中の微生物

ウシの複胃と反すう 第一胃の微生物による繊維の消化

分野:生きもの

牛は 草を もぐもぐ 食べて、あんなに 大きく なります。草だけで、どうして 体が 大きく なるのでしょう。

牛の おなかには 胃いが 4つ あります。でも 胃液いえきを 出すのは 1つだけ、と いわれます。ひみつは、おなかの 中に すむ 微生物びせいぶつに ありそうです。

牛は、草や干し草などを食べて大きくなります。人間が同じものを食べても、体をつくる栄養にはほとんどなりません。牛の胃は4つの部屋に分かれていますが、胃液を出す「本物の胃」は、そのうち1つだけだとされています。

のこりの部屋で草をこなしているのは、牛の中に住む微生物です。畜産や栄養学の資料をもとに、4つの部屋の役割と、牛が何度も草をかみ直す理由をたどります。

ウシ(牛)は、ほかの多くの動物が消化しにくい、草などに含まれる繊維から、乳や肉をつくる。その中心にあるのが、4つの部屋に分かれた複胃と、第一胃(ルーメン)にすむ微生物である。4部屋のうち胃液を出すのは第四胃だけとされる。

本稿では、日本の畜産・栄養学の解説や大学の資料をもとに、各部屋の役割、微生物が担う消化、反すうの意味、子牛の胃の違いを整理する。微生物の数や胃の容量は、資料によって幅がある。

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1. 胃液いえきが 出る 胃いは、どれ?

1. 4つの部屋のうち、本物の胃は1つだけ

1. 複胃の4部屋と、胃液を出す第四胃

牛の おなかは、4つの 部屋に 分かれて います。口に 近い ほうから、第一胃い、第二胃い、第三胃い、第四胃いと よびます[2]。

ところが、胃液いえきが 出るのは、いちばん 後ろの 第四胃いだけです。前の 3つは、もともと 食べ物の 通り道が 大きく 形を かえた ものだと、牛の 食べ物を 調べる 研究者が 書いて います[2]。人の 胃いに あたる 部屋は、第四胃いなのです[4]。

牛の胃は、口に近い順に第一胃から第四胃まで、4つの部屋に分かれています[2]。「胃が4つ」と聞くと、消化する場所が4か所あるように思えますが、胃液を出すのは最後の第四胃だけです。

栄養を研究する安保佳一さんは、第一から第三までの部屋は、もともと食道が形を変えたもので、胃液は出ないと説明しています[2]。農畜産業振興機構の解説でも、第一〜第三の部屋は人の食道に近い働きをし、第四の部屋が人の胃と同じように最後の消化を担うとされています[4]。牛の胃が4つあるとは、本物の胃1つに、食道から変わった3つの部屋がつながっているということになります。

ウシは第一胃(ルーメン)・第二胃・第三胃・第四胃の4室からなる複胃をもつ。安保(1962年創刊の雑誌『化学と生物』17巻3号)は、第一〜第三胃は胃とはいうものの、もともと食道が変形したもので胃液を分泌せず、第四胃(皺胃)が他の動物の胃にあたると述べる[2]。

農畜産業振興機構の解説も、第1〜3室は人の食道に近い機能、第4室は消化・吸収を担う部屋とする。第二胃は食べ物を口へ戻して再びかませる入口として、第三胃は水分の吸収に関わるとされるが、第三胃の役割は資料により説明が異なり、畜産の解説には不明とするものもある[4][6]。「胃が4つ」という数え方は形のうえのもので、消化液を出す「胃」という機能で数えれば1つになる。

2. いちばん 大きい 部屋は、なにを して いる?

2. 第一胃は、草をためて発酵させるタンク

2. 第一胃の容積と、酸素を使わない発酵

大人の 牛の 第一胃いは、およそ 100リットル あります。1リットルの ペットボトルを 100本 ならべた ぶんです。4つの 部屋の 全体の およそ 8わりを しめます[1]。資料しりょうに よって 120リットルと 書く ものも あるので、100リットル前後と おぼえて おきましょう[6]。

この 大きな 部屋は、草を ためて おく タンクの ような もの。中には 空気(酸素さんそ)が ほとんど なく、そこで はたらく 微生物びせいぶつが すんで います[1]。草を ためて、微生物びせいぶつに ゆっくり くずして もらう 場所なのです。

成熟した牛の第一胃は、容積が約100Lで、4つの部屋全体の約80%を占めます[1]。資料によっては120Lと書かれていて、個体や測り方で幅があるようです[6]。牛の胃は、消化管全体の約7割にもなるほど大きく、その大部分が第一胃だという説明もあります[2]。

第一胃は、食べた草を長時間ためておき、発酵させて栄養にできる形に変える場所です[6]。中には酸素がほとんどなく、そこで暮らす微生物は、酸素を使わない発酵でエネルギーを得ています。酸素呼吸に比べると、得られるエネルギーは6分の1以下です[1]。効率のよくない方法ですが、牛はその微生物を、大量に、絶えず飼っているような形になっています。

成熟ウシの第一胃の容積は約100Lで、複胃全体の約80%を占める[1]。畜産の解説には成牛で120Lとするものもあり、値には幅がある[6]。安保は、ウシの胃は消化管全体の容積の約70%に達し、大部分が第一胃だと述べる。同じ草食でもウマは胃が小さく、盲腸と結腸が約50%を占めるという対比も示されている[2]。

第一胃の微生物は、酸素の存在がむしろ生存上の問題となる嫌気性のものが中心で、酸素を使わない発酵によってエネルギーを得る。上野(信州大学)の資料は、その量を酸素呼吸で完全燃焼させる場合の6分の1以下と記す[1]。エネルギー効率の低さを、大きな容積と絶え間ない飼料の供給で補う形になっている、と読める。

3. 草を くずして いるのは、だれ?

3. 草の繊維を分けるのは、牛ではなく微生物

3. セルロースの分解と第一胃の微生物群集

おどろく ことに、草の 繊維せんいを くずして いるのは、牛の 体ではありません。第一胃いでは、牛は 消化しょうかの もとに なる ものを つくらないと、資料しりょうに 書かれて います[3]。かわりに はたらくのが、微生物びせいぶつです。

たとえば、おちばが つもった やまを ほると、下の ほうは くさって、土に なって います。あれも 微生物びせいぶつの しごとです。ただし 本当は、第一胃いの 中の 微生物びせいぶつは、空気の ない ところで はたらく ちがう なかまで、牛の 体の 中に ずっと すんで います。細菌さいきんだけでも、およそ 1000しゅるいと いわれます[1]。

草のかたさのもとは、セルロースという繊維です。これを分解できる消化のしくみを、牛の体は自分ではもっていません。資料には、第一胃は消化酵素をつくらず、その代わりに無数の微生物が消化の主役になっている、と書かれています[3]。ほかの動物が消化できない草のセルロースを、胃の中の微生物の力で分解し、乳や肉づくりに使えるようにしているのです[2]。

第一胃の微生物は、細菌・古細菌・原生動物や菌類などでできていて、細菌だけでも数え方によって約1000種類になるとされます[1]。昔の総説には、胃の内容1mLあたり細菌が10億〜100億個、原生動物が100万匹以上という数字もあります。古い時代の数え方なので、目安として見るのがよさそうです[2]。

第一胃(ルーメン)は、小腸や単胃動物の胃と異なり消化酵素を分泌しない。繊維を消化する主役は無数の微生物であり[3]、ほかの動物が消化できない草のセルロースを、胃内の微生物が分解して乳や肉の生産に利用できるようにしている[2]。

ルーメン微生物は細菌・古細菌・真核生物(原生動物、真菌)から構成され、細菌だけで約千種類と数えられる[1]。安保の総説には、胃内容1mLあたり細菌が約10億〜100億、原生動物が約100万以上(約30種)とする数字があるが、これは古い総説の値で、最新の測定値とは限らない[2]。数え方によって種数が変わるため、いずれも目安である。

4. 牛は、微生物びせいぶつから なにを もらう?

4. 牛が受け取るのは、微生物がつくったものと微生物そのもの

4. 揮発性脂肪酸と微生物タンパク質

微生物びせいぶつが 草の 繊維せんいを くずすと、酸さんの なかまが できます。この 酸さんを、牛は 体に とりこんで、うごく ための 力の もとに します[1]。

もう ひとつ あります。微生物びせいぶつは どんどん ふえて、ふえた 分が 第四胃いの ほうへ ながれて いきます。そこで 消化しょうかされて、牛の 体を つくる もと(たんぱく)に なります[1]。つまり 牛は、草だけで なく、微生物びせいぶつからも 栄養えいようを もらって いる、という 見かたが できます。

微生物が炭水化物を分解すると、酢酸・プロピオン酸・酪酸などの揮発性脂肪酸ができます。これが吸収され、牛の主要なエネルギー源になります[1]。人がごはんから糖をとるように、牛は草から、微生物を通して熱や力の元をとっているわけです。

もうひとつの受け取りものが、微生物そのものです。微生物は第一胃の中でふえ続け、その細胞は下のほうの消化管に送られて、主要なタンパク質源として使われます。これを微生物タンパク質と呼びます[1]。牛は草を食べながら、ある意味で微生物も栄養にしている、という説明ですが、これはわかりやすくするための言い方で、微生物を直接かんで食べるわけではありません。

第一胃内で、炭水化物から酢酸・プロピオン酸・酪酸などの揮発性脂肪酸が生成され、吸収されてウシの主要なエネルギー源になる[1]。牛自身はセルロースを分解する酵素をつくらないため、この経路が飼料の繊維から得られるエネルギーの入り口になる[3]。

タンパク質の面では、増殖した微生物の細胞が下部消化管に送られて消化され、主要なタンパク質源(微生物タンパク質)として利用される[1]。「ウシは微生物を食べて育つ」という言い方は、この流れを比喩的に表したものである。

5. はんすうは、なんの ため?

5. 何度もかみ直すのは、微生物に草を出会わせるため

5. 反すうの意味 表面積・唾液・時間

はんすうは、いちど 食べた ものを 口に もどして、もう いちど かんで、のみこむ ことです[8]。草を かめば かむほど、こまかく なって、微生物びせいぶつが くっつきやすく なります[1]。草は 水に とけにくいので、微生物びせいぶつが 草に くっつかないと、消化しょうかが はじまらないのです[1]。

牛は 1日に 6〜10時間、1分間に 40〜60回 かむと いわれます[7]。計算すると、1日に 約やく1万4000〜3万6000回です。唾液だえきも たくさん 出て、90〜180リットル。おふろ 1ぱいぶんと たとえられます[5]。

反すうは、一度食べたものを口に戻し、もう一度かみ砕いてのみこむことです[8]。第一胃の中の草は、ほとんど水に溶けていません。微生物が草の表面にくっついて食いつかないと、消化が始まらないのです。反すうで草を繰り返し細かくすると、表面積が広がり、微生物が取りつく機会が増えます[1]。牛自身も、かむことで繊維を傷つけ、分解しやすくしているといわれます[3]。

酪農団体の解説では、1日の反すう時間は6〜10時間、かむ回数は1分間に40〜60回とされます[7]。単純に掛け算すると、1日に約1万4000〜3万6000回です。個体や飼料で変わる目安です。唾液も1日に90〜180Lと、お風呂1杯分にたとえられるほど出ます[5]。

反すうは、粗飼料を繰り返し咀嚼して細かくし、表面積を徐々に大きくすることで、微生物が飼料表面に接触するのを助ける行為である[1]。第一胃内の飼料はほとんど水に溶けておらず、微生物が飼料に付着して分解を始める必要があるため、反すうは繊維消化の速さに関わる。牛自身も、反すうで繊維を物理的に傷つけて消化を助けるとされる[3]。

酪農団体の解説では、反すう時間は1日6〜10時間、咀嚼は1分間に40〜60回で、単純計算では1日約1万4000〜3万6000回になる。値は個体や飼料で変わる[7]。唾液は1日90〜180Lに達し[5]、その量は口内での飼料の湿潤に加え、第一胃内の環境維持にも関わると推測されるが、後者は今回の資料の範囲では原文まで確認していない。進化の面では、敵から逃れて急いで植物をため込み、安全な場所で反すうしながら微生物の力で消化する暮らしと結びつけて説明される。ただしこれは一つの説明にとどまる[2]。

6. 子牛の 胃いは、どうなって いるの?

6. 生まれたばかりの子牛は、まだ草の胃をもたない

6. 子牛の第四胃と、成長に伴う第一胃の発達

生まれたばかりの 子牛は、第四胃いが 全体の およそ 7わりを しめると いわれます。ミルクは 第一胃いを とおらずに、まっすぐ 第四胃いへ とどきます[4]。

子牛が 大きく なるにつれて、第一胃いが 育って いきます[4]。ミルクや お肉が できる ときも、草から 微生物びせいぶつ、微生物びせいぶつから 牛へと、長い つながりが あります。見た ときに、おなかの 中の 微生物びせいぶつを 思い出して みましょう。

生まれたばかりの子牛では、第四胃が胃全体の約70%を占めています。ミルクを飲むときは、食べ物が食道の溝を通って、第一胃をとばして直接第四胃へ届きます[4]。つまり子牛のうちは、人の赤ちゃんに近い、胃液で消化する体で暮らしていることになります。

成長して草を食べるようになるにつれ、第一胃が発達します[4]。ただし、微生物にとって食べ物のよしあしはあり、デンプンや糖が速く分解されすぎると、第一胃の中が酸性に傾き、微生物の働きが鈍ります。穀物中心の飼料を与えすぎると、第一胃の粘膜が傷む原因にもなりうるとされます[3]。第一胃の働きは、食べるものと関係しています。

農畜産業振興機構の解説によれば、生まれたばかりの子牛では第四胃が全体の約70%を占め、哺乳時には食物が食道溝を通って第四胃へ直接到達する。成長に伴い、第一胃が発達していく[4]。70%は第四胃の割合であり、成牛の第一胃が約80%を占める点とは逆になる。この数値は検索で得た抜粋にもとづき、原文での再確認が望ましい。

草食に合った第一胃も、飼料の内容には敏感である。デンプンや糖の分解が速すぎると、ルーメン内のpHが酸性に傾いて微生物の働きが鈍る。穀物主体の飼料の与えすぎは、第一胃の粘膜障害の原因になりうる[3]。子牛は生まれたとき第四胃が大きく、成長するにつれて第一胃が発達していく。

7. じぶんでも 調べて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

まず、口の 中に 何も 入れないで、時計の 長い はりが 1まわりする 間、口を もぐもぐ 動かして みましょう。何回 動かせたか、ノートに 書きます。牛は 1分間に 40〜60回 かむと いわれます。同じくらい できた 人は、どのくらい つづけられたでしょう。

動物園や 牧場ぼくじょうで 牛を 見る ときが あれば、しずかに ねころんで、口を 動かして いる 牛を さがして みてください。近づきすぎず、おうちの 人と いっしょに 見ましょう。

ノートに、口の中に何も入れずに、1分間で口を何回動かせるか数えて書いてみましょう。牛は1分間に40〜60回といわれます。同じ回数を10分続けるのが、どのくらい大変かを想像すると、1日6〜10時間続ける牛の様子が身近になるかもしれません。

牧場や動物園で牛を見られるときは、寝そべって口を動かしている牛がいるか探してみましょう。あくまで遠くから静かに見て、係の人の指示に従ってください。畜産の情報は、農畜産業振興機構や各地の酪農団体のページで読めます。

反すう時間(6〜10時間)と咀嚼回数(40〜60回/分)から、1日の咀嚼回数を上限・下限で計算し、条件(飼料の種類・個体差)による幅を考える。自分の咀嚼回数を測って比べるのもよい。その際は、口に何も入れず、無理のない範囲にとどめる。

読んでみたい資料。

  • 農畜産業振興機構「なぜ、牛の胃は4つもあるの?」[4]。4つの部屋の役割と子牛の胃の違いが、短くまとまっている。
  • 上野(信州大学)「反芻動物第一胃の微生物群集と動物生産」[1]。微生物の種類や、エネルギー・タンパク質の作られ方が読める。
  • 安保佳一「反芻家畜の栄養の特異性」『化学と生物』17巻3号[2]。ウシとウマの消化管の違いなど、比較の視点が読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:大学の資料、農畜産業振興機構、畜産の団体の解説、栄養学の研究者の解説、大学の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 信州大学 上野「反芻動物第一胃の微生物群集と動物生産」(PDF)。http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/lab/ueno/files/rumen_and_inherent_microbes.pdf (第一胃の容積、微生物、エネルギーとタンパク質、反すうの意味について)
  2. 安保佳一「反芻家畜の栄養の特異性」『化学と生物』17(3)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/17/3/17_3_149/_pdf/-char/ja (第四胃だけが胃液を出すこと、セルロースの分解、消化管の大きさについて)
  3. ちくさんクラブ21 No.67「ルーメンにおける消化」(PDF)。https://www.chikusan-club21.jp/wp-content/uploads/2022/03/067_chuken_02.pdf (牛が消化酵素をつくらないこと、反すうとpHについて)
  4. 農畜産業振興機構「なぜ、牛の胃は4つもあるの?」。https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001316.html (4つの部屋の役割と子牛の胃について)
  5. 帯広畜産大学「ウシのよだれは1日お風呂一杯分」。https://www.obihiro.ac.jp/find-research/28560 (唾液の量について)
  6. 畜産ZOO鑑「胃の構造と働き」。https://zookan.lin.gr.jp/kototen/rakuno/r121_4.htm (第一胃の働きと容量の幅について)
  7. 茨城県酪農業協同組合連合会「酪農・牛乳の知識」。http://www.ibarakuren.or.jp/chishiki/rakunou/hansu.html (反すうの時間とかむ回数について)
  8. デーリィ・ジャパン キッズファーム「ことば辞典 反すう」。https://www.dairy.co.jp/kidsfarm/kotoba/009Bha.html (反すうの意味について)

なおした ところ

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