1. データセンターが とまると、なにが こまるの?
1. データセンターが止まると、何が困るのか
1. データセンターが止まると、利用者側では何が起きるのか
データセンターは、コンピュータを たくさん あつめて おく、せんようの たてものです[2]。ばらばらに おくより、まとめた ほうが、むだな コンピュータを ふやさずに すみ、でんきも へらせると いわれて います。
もし ここが とまると、インターネットの じゅうしょが きえたり、メールが とどかなく なったり します。ある しりょうは、そういう ことが おきると せつめいして います[1]。
だから データセンターは、とても まもりが かたく できて います。それでも、でんきが とまる ことだけは、むずかしい もんだいです。
データセンターは、分散していたコンピュータを一か所に集め、効率よく動かすための専用の建物です[2]。ふつうのオフィスビルよりずっと多くの通信回線が引き込まれ、複数の会社の回線を選べます。
集めると、台数を処理の量に合わせて決められるので、よぶんなコンピュータを置かずにすみます[2]。オフィスの片すみでサーバを動かすと、人のいない夜や休日にも冷やすために空調が動き、電気がむだになります[3]。
その分、止まったときの影響は大きくなります。ドメイン名(インターネット上の住所)を管理するサーバが止まると、住所そのものが引けなくなります。メールのサーバが止まれば、メールが届きません[1]。
そのため、建物は耐震構造にされ、火災のときは機器をいためないよう、水ではなく二酸化炭素などで消す設備を持っています[2]。残る問題は、電気が長く止まる場合です。
データセンターは、分散していたIT機器を集約し、効率よく運用するための専用施設である[2]。通常のオフィスビルより多くの通信回線が引き込み済みで、複数の事業者の回線を使える。集約すれば、処理量に見合った台数で運用でき、余分な計算資源を持たずにすむ[2]。逆にオフィスでサーバを運用すると、人のいない夜間や休日にも冷却のため空調を動かす必要があり、電力の無駄が出る[3]。
集約の利点は、止まったときの影響の広さと裏返しである。DNSサーバが停止すれば、ドメイン名が引けずインターネット上の住所が存在しないのと同じ状態になり、メールサーバが停止すればメールが届かなくなる[1]。
そのため建物は耐震構造とされ、火災時には機器を傷めないよう、スプリンクラーではなく二酸化炭素やフロンガスによる消火設備を備える[2]。だが、こうした設備で防げない種類の問題がある。電力が長時間止まる場合だ。
2. でんきが とまった とき、そなえは どれくらい もつの?
2. 停電が3回続くと、バックアップはどうなるのか
2. 備えを重ねても、停電が重なるとなぜ弱点が残るのか
でんきが とまっても、すぐには とまらない しかけが あります。まず、たくわえた でんきで つなぐ そうち(UPS)です。でも これは、5ふんから 30ぷん くらいしか もちません[1]。
つぎに、じぶんで でんきを つくる はつでんきの 出番です。ところが ねんりょうが 8じかん ぶんしか ないと、どうなるでしょう。
3じかん とまる ことが 3回 あると、ぜんぶで 9じかんです。8じかんより ながいので、はつでんきが つかえなく なる おそれが あります[1]。
ある しりょうは、けいかくていでんの たいしょうに ならない ちいきに、システムや バックアップを おく ほうほうを あげて います[1]。ばしょを わける ことも、そなえの ひとつです。
電気が止まったとき、最初に働くのが無停電電源装置(UPS)です。ただし想定されているのは5分から30分ほどの短い時間で、長い停電には向きません[1]。長い停電では、自家発電機の出番です。
ここで計算してみます。燃料が8時間分だとして、3時間の計画停電が3回あれば、合計は9時間です。8時間を1時間こえるので、バックアップ機能を失うおそれがあると、日本データセンター協会の資料は述べています[1]。
同じ資料は、対策として、燃料を追加で確保することのほか、計画停電の対象にならない地域のデータセンターへシステムを移したり、データのバックアップを置いたりすることをあげています[1]。場所を分けて持つことは、備えの選択肢のひとつです。
これが、地方に置く理由のひとつめです。では、もうひとつの理由は何でしょうか。
停電時、最初に負荷を受け持つのはUPSだが、想定は5分から30分程度の短時間にとどまり、長時間の計画停電には対応できない[1]。そこで自家発電機が引き継ぐ。ところが燃料備蓄が8時間分なら、3時間の計画停電が3回行われた場合、停電時間は合計9時間となり、バックアップ機能を失うおそれがある[1]。
協会の資料が挙げる対策は、燃料の追加確保に加え、配置の工夫である。計画停電の対象エリア外にあるデータセンターへのシステム移転やデータのバックアップも、リスク回避の方法とされる[1]。
ここまでは災害と停電の側から見た理由である。ただ、東京から遠い地方に置く理由は、電気の「使い方」の側にもある。次章で見る。
なお、この資料は計画停電を想定した記述であり、地域をどれだけ離せば十分かという距離の基準までは示していない。
3. ちほうには、どんな でんきが あるの?
3. 地方には、どんな電気があるのか
3. なぜデータセンターは都市に集まり、脱炭素電源は地方に多いのか
データセンターは、おおきな まちに あつまって います。ところが、たいようの ひかりや かぜなどで つくる、くりかえし つかえる でんきは、ちほうに ひろがって います[4]。
そこで、ちほうに データセンターを おけば、ちかくの きれいな でんきを つかいやすく しよう という ねらいが あります。
ただし、むずかしい ところも あります。たいようの でんきが いちばん できるのは ひるです。でも データセンターは、よるも ずっと はたらきます[4]。ひるに たくさん できた でんきを、よるまで どうやって つかうか、かんがえる ひつようが あります。
データセンターは大都市の近くに集まる一方、二酸化炭素を出さない電源は地方に散らばっています[4]。電気の使い手と作り手が離れているのです。
データセンターを地方に置けば、電気を遠くまで運ぶ代わりに、地方の発電を活用しやすくする、というねらいがあります。これが地方に置くもうひとつの理由で、電力と通信回線を組み合わせて考える動きは「ワット・ビット連携」と呼ばれています[4]。
ただし、そう簡単ではありません。太陽光などの再生可能エネルギーが多く発電するのは日中ですが、データセンターは24時間365日動かすことが求められます[4]。発電のピークと、使う時間とのずれに、どう対応するかが課題です。
データセンターは大都市圏に集中する一方、脱炭素電源は地方に分散している。この需要と供給の位置のずれが、地方分散の2つめの理由である[4]。送電線で電気を都市へ運ぶのではなく、電気のある場所へ計算を寄せ、地方の脱炭素電源を活用しやすくする狙いがある。電力と通信を組み合わせて最適化する考え方が、ワット・ビット連携として論じられている[4]。
ただし、条件がある。再生可能エネルギーの発電ピークは日中だが、データセンターは24時間365日の稼働が要求される[4]。つまり、地方の再エネを生かすには、時間的なずれへの対応が欠かせない。
この資料は民間シンクタンクの解説記事であり、再エネ100%での運用が稼働率やコストにどう影響するかという比較データは示していない。理由としては有力だが、効果を数字で確かめた段階には至っていない。
4. とおくても、ちゃんと つかえるの?
4. 遠くのデータセンターを、東京と同じように使えるのか
4. 東京と石狩を結ぶAPNは、遅延の問題をどう扱うのか
ほっかいどうの いしかりしに、さいせいかのうエネルギー100%と される データセンターが できました。2026ねん3がつ27にちに できあがったと、いしかりしが おしらせして います[5]。
とうきょうと は、ひかりで つうしんする せんで つなぎます。この せんは、つうしんの おくれを おさえる しくみだと せつめいされて います[5]。
きゅうしゅうでは、あちこちに ちいさな データセンターを おいて、ひかりの せんで つなぐ しけんも ありました。はなれた ところを、ひとつの ものの ように つかう ためです[6]。
遠いと遅くなる、という心配があります。そこで、通信そのものを工夫します。
北海道の石狩市では、再生可能エネルギー100%で動くデータセンターが2026年3月27日に竣工しました。石狩市の発表では、このデータセンターと東京の大手町は、NTT東日本のIOWNにおけるAPN(All-Photonics Network)でつなぎ、通信の遅延を抑える仕組みとされています[5]。APNは、途中で電気信号に変えずに、光のまま通信する考え方の回線です。
九州でも、九州各地に小規模なデータセンターを置き、APN接続する実証が行われました[6]。離れた拠点を、ひとつのもののように使う試みの例です。
こうして、遠隔地に置く試みも始まっています。ただし遅延がどこまで許されるかの具体的な数字は、今回の資料には出ていません。
遠隔地の弱点は通信遅延である。これに対し、北海道石狩市では再エネ100%で稼働するグリーンデータセンターが2026年3月27日に竣工した[5]。市の発表によれば、このデータセンターと東京(大手町)間は、NTT東日本が提供するIOWNのAll-Photonics Network(APN)で接続され、通信遅延を抑えるとされる[5]。APNは、機器の間を光信号のまま結ぶ構想である。
同様の発想は九州でも試された。九州電力などは、九州各地に小規模データセンターを設置し、光信号で通信するAPN接続で結ぶ「九州版ワット・ビット連携」の実証を進めた[6]。離れた拠点を一体のように使う仕組みの一例である。
ここで注意が要る。遅延を抑えるという説明は発表上の表現であり、どの距離・用途で何ミリ秒まで許されるかという基準は示されていない。また、実証は一例であり、すべての用途に当てはまるとはいえない。
光の回線は、地方に置く選択肢を支える技術の一つである。
5. ちほうに おけば、ぜんぶ かいけつ するの?
5. 地方に置けば、すべて解決するのか
5. 地方分散にも残る課題と、計算技術の側の工夫は何か
そうでは ありません。ひるに できる でんきを よるに つかう ことの ほかに、AIなどの あたらしい つかいかたで、でんきを たくさん つかう ように なる という もんだいも あります[7]。
そのため、はやく うごかしながら、でんきも すくなくする ぎじゅつを けんきゅうする ことが たいせつだと、くにの きかんが まとめて います[7]。
ばしょを わけるのは、そなえの ひとつです。ほかの くふうと いっしょに すすむ ものだと かんがえられます。
地方に置くことは、万能の答えではありません。AI時代の膨大な処理は、続けるのが難しいほどの消費電力の増加をともなう、と科学技術振興機構の研究開発戦略センターの報告は述べます[7]。置き場所を変えても、使う電気の量が減るわけではありません。
だから同じ報告は、高速化と省電力化を両立させる分散コンピューティング技術の研究が必要だとしています[7]。
集約して効率を上げる流れ、場所を分けて備える流れ、電力を減らす技術の流れ。集約して効率を上げながら、必要な場所に分散し、計算の電力も減らす工夫が求められます。
分散にともなうセキュリティのバランスについては、資料の間で結論は分かれていません。
地方分散は万能ではない。第一に、再エネの発電時間帯と24時間稼働のずれが残る[4]。第二に、AI時代の処理は、継続的な運用が困難になるほどの消費電力増大をともなうとされる。JST研究開発戦略センターの報告は、高速化と省電力化を両立する分散コンピューティング技術の研究が必要だと位置づける[7]。置き場所の工夫と、計算そのものの省電力化は、別の層の対策である。
また、集約は余分な計算資源を持たずにすむ省エネの利点があった[2]。分散するほどこの利点は薄まりうる。分散の物理的なアクセスなどのセキュリティ上の得失と、集約の利点とのバランスは、出典間で明確な結論が示されていない。
以上から、データセンターの地方分散は、災害対策と電力の事情の両方に根拠があり、光回線がその実現を支える一方、時間的なずれ、消費電力の増加、集約の利点の減少といった条件つきの選択だといえる。
6. おうちで かんがえて みよう
6. 家のスマホから、データの置き場所を考える
6. 一次資料で確かめる:協会・自治体・研究機関のページ
おうちの ひとと いっしょに、スマホの せっていを ひらいて みましょう。しゃしんが スマホの 中だけに あるのか、ネットの うえにも ほぞん されて いるのか、見られます。
ネットの うえに あるなら、その さきには、どこかの データセンターが あります。もし 9じかん でんきが とまったら、おうちでは なにが つかえなく なるか、かみに かいて みても おもしろいです。
もっと しりたい ときは、いしかりしの ホームページに、できた データセンターの おしらせが のって います。
家族のスマホの設定画面を開いて、写真やデータが「本体の中だけ」にあるのか、「ネット上にも」保存されているのかを見てみます。後者なら、その先のどこかにデータセンターがあり、そこが東京にあるのか、離れた地方にあるのかは、普段は見えません。
次に、9時間停電したら、家の中で何が使えなくなるかを紙に書き出してみます。
石狩市のページには、再エネ100%のデータセンターの竣工が載っています[5]。日本データセンター協会のページでは、災害対策や停電対策の考え方が読めます[1]。
本稿の根拠は次の資料にある。災害・停電対策は日本データセンター協会の該当ページ[1]、石狩の事例は石狩市の発表[5]、AI時代の電力は科学技術振興機構研究開発戦略センターの報告[7]に当たれる。
読むときは、次の点が手がかりになる。何時間の停電を想定しているのか、「遅延を解消」はどの用途・距離での話か、再エネ100%はどう算定されているのか。これらは今回の資料からは細部まで読み取れず、一次資料で条件を確かめる価値がある。
自分でできる確認としては、スマホのデータの保存先を設定画面で見て、ネット上にあれば、その先にデータセンターがあることを意識するとよい。家の停電時間を9時間と仮定して、使えなくなるものを書き出すと、8時間の燃料という数字の重さが実感できる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
データセンターの役割、災害・停電対策、再生可能エネルギーと立地、遠隔地を結ぶ通信、AI時代の電力について、次の資料を参照しました。
- 日本データセンター協会「災害対策・停電対策」 https://www.jdcc.or.jp/activity/earthquake/ (UPSの時間、燃料8時間の例、DNS・メールへの影響、対象エリア外への移転)
- 日本データセンター協会「データセンターとは」 https://www.jdcc.or.jp/activity/datacenter/ (データセンターの定義、通信回線、耐震構造、消火設備、集約の省エネ)
- 日本データセンター協会「データセンターの効用/メリットと課題」 https://www.jdcc.or.jp/activity/effect/ (オフィスでサーバを動かすときの空調の無駄)
- ビジネスネットワーク「AIデータセンターと脱炭素の両立は『地域分散化』がカギ 三菱総研が語るワット・ビット連携の可能性」 https://businessnetwork.jp/article/26630 (都市への集中と地方の脱炭素電源、発電ピークと24時間稼働のずれ)
- 石狩市「石狩再エネデータセンター第1号」 https://www.city.ishikari.hokkaido.jp/sangyo/yuchi/1007173.html (竣工日、東京との光ネットワーク接続)
- Cloud Watch「九州電力・IIJ・1FINITYらがオール光で『九州版ワット・ビット連携』実証」 https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2049534.html (小規模データセンターをAPNで結ぶ実証)
- 科学技術振興機構 研究開発戦略センター「AI時代に向けたコンピューティング技術の革新」 https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2026-WR-03.html (AI時代の消費電力と分散コンピューティング研究の必要)
なおした ところ
更新履歴
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