1. ジーンズの いとの 中は、なぜ しろいの?
1. 芯が白い糸 ── 染め残しではなく染め方の結果
1. 外側は藍、芯は白 ── 中白の糸とは何か
ジーンズの 生地は、たて糸と よこ糸を くみ合わせて できて います。ふつうの ジーンズでは、あおい いろを つけるのは たて糸が 中心です[4]。よこ糸は、いろを つけないか、しろく して あります。ジーンズの 内がわが しろっぽいのは、そのためです。
その あおい たて糸の 中を 見ると、外がわは こい あおなのに、芯は 綿の しろの ままの ものが あります。これを 「中白」と いいます[1]。
では、いろを つけ わすれたのでしょうか。そうでは ありません。いろの つけ方に わけが あります。次の 章から、その やり方を 見て いきます。
2. いろの みずから 出した いとは、なぜ あおく ないの?
2. 青い色素は、いったん「青くない姿」で糸にしみこむ
2. インディゴは水に溶けない ── 還元して溶かし、酸化で青に戻す
あおい インディゴは、水に とけません。そのままでは、いとに しみこみません。
そこで、いろを つける ときは、とくべつな はたらきで 水に とける すがたに かえます。この ときの すがたは、うすい 黄色だと 説明されます[3]。
この すがたが しみこんだ いとを、いろの みずから 引きあげると、空気に ふれて、また あおい インディゴに もどります[3]。
いろの みずから 出した いとの 色は、いろの つけ方に よって ちがいます。空気に ふれると あおく なる ことを、見て おきましょう。
インディゴは水に溶けない色素です。そのままでは、糸にしみこみません。そこでアルカリ性の液の中で、化学の力で溶けやすい別の姿(インジゴホワイト、ロイコ体)に変えます。この姿は、淡い黄色だと説明されます[3]。
溶けた状態の色素は、糸の繊維の中へしみこみます。そして糸を液から出して空気に触れさせると、酸素と反応して、繊維の上で水に溶けない青いインディゴに戻ります[3]。
つまり、青く見えるのは、空気に触れてからです。染液から引き上げた糸は青くなく、時間とともに青くなるという話は、ここから来ています。ただし、引き上げた直後の糸の色の見え方は、染め方や設備によっても違うかもしれません。
伝統的な藍染めでも、染液から出して空気に触れさせることで、青く発色させます。同じ仕組みが、デニムの工場の染め方にも使われているのです。
インディゴは水に不溶である。染めるときは、アルカリ性の条件で還元(かんげん)し、淡黄色の水溶性のインジゴホワイト(ロイコ体)にする。この形なら繊維にしみこむ。そして液から出して空気に触れさせると、酸化されて、繊維の上で不溶性の青いインジゴに戻る[3]。
この「染液の中では青くなく、空気に触れて青くなる」という性質が、後述のロープ染色の工程の組み立てを決めている。染める(浸す)だけでは色は出ず、空気に当てるところまでが1回分になるからである。
ただし、引き上げた直後の糸の色の見え方について、本稿の資料は辞典の記述にとどまる。黄色〜黄緑色に見える、という説明も見かけるが、染液の条件や設備で違いうるため、「淡黄色の姿から、空気で青へ」という程度に受け取るのが安全だろう。
伝統的な藍染めにも、染液から出して空気に触れさせ、青く発色させる手順がある。デニムの工場の染色は、この性質を機械の流れに組み込んだものと考えられる。
3. いとは、どんな ふうに そめて いくの?
3. 浸して、絞って、空気に当てる ── ロープ染色の1回分
3. ロープ染色の1サイクル ── 浸漬・マングルでの絞り・空気酸化の反復
デニムの いとには、ロープせんしょくと いう いろの つけ方が あります。たくさんの いとを ロープの ように たばねて、いろの みずに つけます[1]。
つぎに、ローラーで しぼります。この ローラーを マングルと いいます。そして、空気に さらします。ここで あおく なります[1]。
これを 何回も くりかえして、すこしずつ こい いろに して いきます[1]。ある 外国の かいせつの 例では、いろの みずの 入れものは 6つ。ひとつの 入れものが おわるごとに、1〜3分くらい 空気に さらすそうです[4]。
これは 一つの れいで、工場に よって かずは ちがいます。
つまり、1回に つける 時間は みじかく、そのたびに 空気の 中で あおが ふえます。ぬりえを、うすい いろから 何かい も かさねて ぬる ことに にて います。ただし、ほんとうの しくみは もっと むずかしく、ぬりえと 同じでは ありません。
デニム用の糸は、「ロープ染色」で染められることがあります。数百本の糸を、ロープのように束ねます。このロープを染液に漬け、絞りローラー(マングル)で絞り、空気中で酸化させます。この一連を繰り返して、少しずつ濃い色にします[1]。
ある海外の解説では、標準的な染色ラインには染液の槽が6つあり、つまり6回浸すことになります。最新の設備では最大12槽にもなります。引き上げた後の空気酸化は、1回あたり60〜180秒だとされます。1つのロープは、380〜420本ほどの糸を束ねます[4]。
この解説の例で計算すると、6回浸す場合、空気に当てる時間だけでも合計6〜18分です。ただし、槽の数や秒数は工場や設備によって違います。
なぜこんなに何度も繰り返すのでしょうか。インディゴは繊維との親和性が低く、濃く染めるには、浸して空気に当てる作業を重ねる必要があるといわれるからです[3]。1回の浸し方は短く、色は少しずつ積み上がっていきます。
ロープ染色は、ロープ状に束ねた原糸を染液に漬け、マングル(絞りローラー)で絞り、空気中で酸化させるという一連を繰り返し、濃色へ変化させていく染め方である[1]。第2章のとおり、インディゴは液の中では青くなく、空気に触れて青くなる。そのため「浸す」と「空気に当てる」が必ず対になる。
海外の染色解説では、標準的なラインは染液槽6つ(6回浸漬)、最新設備では最大12槽、浸漬のあとの空気酸化(skying)は60〜180秒、1本のロープは380〜420本の糸の束とされる[4]。この解説の例で6槽なら、空気に当てる時間は合計6〜18分である。ただし、槽の数も時間も、工場や設備で違う。
回数を重ねる理由は、インディゴが繊維との親和性が低く、濃く染めるには浸漬と空気酸化の反復が必要とされることである[3]。一度に深く入るのではなく、短い浸漬で外側に薄く付き、酸化で固定され、それが何層も重なる。
では、その繰り返しの結果、糸の断面はどうなるのか。
4. 糸の 中の しろは、つけ わすれ なの?
4. 外側に色が重なり、芯が白く残る糸もある
4. リング状の染まり ── 芯が白く残る糸ができる工程
みじかく つけて、空気に ふれさせる。この くりかえしでは、色が いとの 外がわに かさなって いきます。まんなかまで 色が 入りにくく、しろい 芯が のこる 糸が あります。そのため、外が あおくて 中が しろい 糸に なります。
この 白い 中は、みじかく つけて 空気に ふれさせる ロープせんしょくの やり方から うまれます。そのような 糸を、ロープせんしょくが つくると 説明されて います[4]。
ただし、どうして 中まで 色が はいらないのかを くわしく 説明した 資料は、今回 見られませんでした。ですから 「こうだと 言われて いる」ぐらいに おぼえて ください。
短い浸漬と空気酸化を重ねた糸は、表面にインディゴが付いた、リング状の染まり方になります。この染まり方を、海外では「ring dye」と呼びます[4]。糸を輪切りにすると、青い輪の中に白い芯があるイメージです。
つまり中白は、短い浸漬を何度も積み重ねるロープ染色の工程から生まれる構造として説明されています[1]。
ただし、芯まで色素が届かないのがなぜか、という仕組みそのものを説明した学術的な資料は、この記事では取り上げていません。「周りから染まっていく」と説明する記事はありますが、細かい仕組みまでは言い切れません。
短い浸漬と空気酸化の反復で染めた糸は、色素が糸の表面側に付いたリング状の染まり(ring dye)になる。海外の染色解説は、ロープ染色がこの効果をよくつくり、良い色落ちには欠かせないと述べる[4]。国内の紹介でも、外側が濃い藍色で芯が綿の白という糸が、ロープ染色のカイハラの特徴として説明される[1]。
したがって、中白は「染め残し」というより、短い浸漬を重ねる工程の結果として生じる構造と考えるのが、資料に沿った見方である。
ただし、芯に色素が届かない機構(たとえば、色素が芯へ入り込む前に酸化して固定される、という説明)を述べた学術資料は、本稿では取得できていない。「周りから染まる」とする記事はあるが、機構は断定せず、「短い浸漬を重ねた結果」の範囲にとどめる。
この白い芯は、使われるうちにどんな働きをするのだろう。
5. はくほど 色が ぬけるのは、なぜ?
5. 表面の青がはげると、中の白が顔を出す
5. 縦落ちと経年変化 ── 白い芯が色落ちの表情をつくる
ジーンズを はいたり、あらったり すると、いとの 外がわの あおが すこしずつ おちて いきます。すると、中の しろが 顔を 出します[2]。
そのため、ひざや ふとももなど、よく こすれる ところから、しろっぽく なって いきます。こうして たて糸の いろが ぬけて いく ことを、「たておち」と よぶ ことが あります。
中が しろい いとだけが、こうした ゆっくりした いろ ぬけを つくると 説明されます[1]。ジーンズが 人によって ちがう すがたに なるのは、はき方で いろ ぬけの ばしょが かわるからです。
ジーンズをはいたり洗ったりしていると、糸の表面の青が少しずつ落ち、中の白い部分が顔をのぞかせます[2]。青い輪が削れて、白い芯が見える、というイメージです。
この変化は経年変化と呼ばれ、とくにたて糸が色落ちすることを「縦落ち」といいます。芯が白い糸で織ったデニムだけが、はくうちに少しずつ色が抜けるこの変化を生む、とメーカーの紹介記事は説明します[1]。
芯まで青い糸なら、表面が削れても青い部分が出てくるはずです。そう考えると、白い芯があることが、色の抜け方に濃淡と表情を生むのだと読めます(これは染まり方の説明からの推測です)。ひざやふとももなど、よく擦れる場所から白っぽくなるため、同じジーンズでも、人によって違う色落ちになります。
はく、洗うといった摩擦で表面のインディゴが落ち、徐々に中の白い部分が顔を覗かせる。この変化を経年変化といい、たて糸の色落ちを縦落ち(たておち)と呼ぶ[2]。芯白の糸で織ったデニムだけが、はくうちに少しずつ色が抜ける、とメーカーの紹介記事は述べる[1]。
理由は構造にある。リング状に染まった糸は、表面の青が擦れて落ちると、下に別の色(白)が出る。芯まで青い糸なら、擦れても青が出続けるので、色が抜けても濃淡が出にくい。ここまでは、第4章の染まり方の説明から導いた筋道であり、資料が直接そう書いているわけではない。
摩擦は体の動きによって場所が違う。ひざ、ふともも、腰まわりなど、よく擦れる部分から先に白くなり、同じ生地でも持ち主ごとに違う色落ちが生まれる。
では、なぜ、こんな染め方が広まったのか。
6. なぜ、わざわざ 中まで 青く しないの?
6. 濃い色を安く作る工夫が、味わいにもなった
6. 表面だけ染める発想 ── 開発の目的と、日本での導入
ロープせんしょくは、こい いろの ふくを、やすく たくさん つくる ために 考えられた やり方、という 説明が あります[2]。
中まで ぜんぶ あおく しなくても、外がわが こければ、あおく 見えるからです。
この ロープせんしょくを、日本で いちばん 早く 工場に 入れたと 紹介して いるのが、カイハラと いう 会社です。カイハラは、1970年に 日本で はじめて ロープせんしょくを 開発して 取り入れたと 紹介して います[1]。2016年の 時点で、1970年から 色を つけた いとを つなぐと、100万キロメートルを こえると 紹介されて います。地球を 25しゅう する 長さです[1]。
ただし、これは 会社の 紹介で、何のために 作られたかも、雑誌の 説明です。それが ぜんぶとは 言い切れません。
ロープ染色は安くて濃い色の服を作る目的で開発された染め方だ、とOCEANSの記事は説明しています[2]。内部までたっぷりインディゴを使わなくても、表面を濃く染めれば青く見えるからです。この目的は一誌の説明で、歴史として断定はできません。
日本では、カイハラが1970年に、国内で初めてロープ染色を開発・導入したと、同社は紹介しています。1970年以来染めた糸の長さは100万km以上、地球25周分とされます[1]。地球1周は約4万kmなので、25周で100万kmになる計算です。いずれも2016年時点の同社側の紹介で、「日本初」も同社の説明です。
コストの工夫として生まれた染め方が、結果としてはくほど変わる色落ちの味わいを生んだ。そう整理できそうですが、設計の最初からそれを狙っていたかどうかは、資料からは分かりません。
ロープ染色は、安価で濃色の服をつくる目的で開発された染め方とされ、内部までインディゴを使わなくてもよい、という発想が背景にある、と雑誌記事は述べる[2]。ただしこれは一誌の説明で、開発史の確かな記録としては扱えない。
国内では、カイハラが1970年に日本で最初にロープ染色を開発・導入したと、同社は紹介する。1970年以来の染色長は100万km超、地球25周分という(地球1周約4万kmとして、25周で約100万km)[1]。数字は2016年時点で、「日本初」も同社側の紹介である。
コスト面の工夫から生まれた染め方が、結果としてリング染めの芯白を生み、色落ちの味わいにつながった、という筋は読める。だが、そこまでが設計意図だったかは、本稿の資料からは言えない。
この染め方を、日本のどんな土地が育てたのか。
7. にほんの ジーンズは、どこで うまれたの?
7. 児島の藍染めの伝統と、今のデニム産地
7. 児島の国産ジーンズと三備地区 ── 藍染めの歴史とデニム産地
1965年の 4月、岡山県の 児島で、日本の 会社が はじめて ジーンズを つくりました[5]。
この あたりは、藍染が むかしから さかんな 土地でした。その ぎじゅつが、インディゴの いろづけを 始めやすく したと いわれます[5]。
2024年には、この 地方で 2605万へいほうメートルの デニムが 生産され、国内では ほぼ すべてだと 紹介されています[5]。
1965年4月、岡山県の児島で、国産ジーンズの製造が初めて実現したと紹介されています。児島を含む三備地区(岡山県と広島県東部のあたり)は、昔から藍染めが盛んな土地で、その技術が、インディゴ染色の導入を助けたとされます[5]。
2024年には、三備地区で2605万平方メートルのデニムが生産され、国内のシェアはほぼ100%と紹介されています。そのうち、福山市のカイハラは国内シェアの5割を超えます[5]。
なお、1965年の出来事は、資料により「製造に成功」「発表」など表現が違います。
藍で糸を染める土地の技術が、デニムの染めとつながった。中白の糸の背景には、そんな地域の歴史も関わっているようです。
nippon.comの記事は、1965年4月に岡山県児島で国産ジーンズの製造が初めて実現したとし、児島を含む三備地区では藍染めが古くから盛んで、その伝統がインディゴ染色を始める助けになったと述べる[5]。1965年の出来事は、資料により「製造成功」「発表」など表現が分かれる点に注意したい。
同記事によれば、2024年に三備地区で生産されたデニムは2605万平方メートルで、国内シェアはほぼ100%。福山市のカイハラは国内シェアの5割超である[5]。ロープ染色の導入(1970年)は、国産ジーンズが始まって数年後のことだったことになる。
ただし、藍染めの伝統がインディゴ染色の導入を助けた、という因果は「とされる」の範囲で読むべきで、技術のつながりを具体的に示した資料は、本稿には含まれていない。
家の ジーンズを 見て みよう
古いジーンズで、青い糸と白い芯を探す
原典と、確かめられる範囲
いえで できる こと
- はき ふるした ジーンズが あれば、ひざの あたりを 見て みましょう。ほかの ところと、いろの ぬけ方が ちがうでしょうか。
- うらがわを 見て みましょう。ここは しろっぽい でしょうか。たて糸と よこ糸の いろを、見くらべて みても いいですね。
- 糸の きり口が 見える ほつれが あれば、虫めがねで 見て みましょう。あおい 外がわと しろい 芯が 見える ことが あります。むりに ひっぱらず、はさみや ほどき作業は おうちの 人と やりましょう。
家でできること
- 古いジーンズの、糸の切り口が見えるほつれを、虫めがねで拡大して見てみましょう。青い外側と白い芯が見えることがあります。
- 裾や縫い目のほつれた糸を見て、たて糸とよこ糸の色の違いを比べてみましょう。ほどくときは、はさみやリッパーの扱いに気をつけ、家の人と一緒にしてください。
- 家族のジーンズの色落ちを見比べると、よく擦れる場所の違いが見えてきます。
記事を読むなら
- nippon.comの児島の記事は、国産ジーンズの出発点と今の産地を知る入口になります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った事実を確かめた資料の一覧です。槽の数や時間、会社の数字は、工場や年によって変わるため、最新の情報は各社・各機関で確認してください。
- ユニクロ「カイハラ」紹介記事(2016) https://www.uniqlo.com/jp/ja/news/topics/2016090601 (中白の糸・ロープ染色の工程・1970年の導入)
- OCEANS「デニムの経年変化」記事 https://oceans.tokyo.jp/article/detail/24452?page=3 (色落ちの様子・ロープ染色の目的。雑誌記事のため一例として)
- コトバンク「インジゴ」 https://kotobank.jp/word/インジゴ (インディゴの還元・酸化・繊維との親和性。辞典サイトの記述で、一次資料ではない)
- Denimhunters https://denimhunters.com/?p=102159 (たて糸だけ染める・槽の数・空気酸化の秒数・ring dye。英語の解説)
- nippon.com「誕生60年 国産ジーンズ発祥の地・児島」 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g02518/ (1965年の国産ジーンズ・三備地区の藍染めの伝統・2024年の生産量)
なおした ところ
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