1. ざぶとんが どうして 頭を 守るの?
1. 椅子の上の座布団が、実は頭を守る道具でもある
1. 座布団になる頭巾 ── 普段使いと非常時を分けない考え方
学校の いすの 上に、ざぶとんが のっている。よく見ると、それが ぼうさいずきんの ことが あります。
ぼうさいずきんは、おりたたんで しまえる ものが 多く、ふだんは いすに つけて ざぶとんや せなかの クッションに できます[2]。ふだんの 道具が、いざという ときの 道具にも なるのです。
こういう 考え方は 「フェーズフリー」と よばれ、さいきん 大切に されて いると、しんぶんで しょうかい されて います[2]。では、ざぶとんの 中には 何が はいって いるのでしょう。
学校の椅子の背に、座布団のようなものが取り付けられている。実はそれが防災頭巾だった、という教室は少なくありません。
頭巾には、折りたたんで収納できる製品が多くあります。普段は椅子に付けて座布団や背当てのクッションとして使えるため、場所をとりません[2]。
河北新報の記事は、こうした使い方を「フェーズフリー」の考え方に結びつけて紹介しています。平常時と非常時を分けず、日ごろから災害に備えている状態にしておくという考え方で、河北新報は、これが近年重視されていると紹介しています[2]。
普段は座布団、いざというときは頭を守る道具。では、その座布団のような中身は、どんなつくりになっているのでしょうか。
2. なかみは ぬのと わただけ?
2. 中身は、2枚の布と綿だけ
2. 二枚の布と緩衝材 ── 何から守り、何に向かないか
ぼうさいずきんは、2まいの ぬのを はりあわせ、あいだに わたなどを つめて、頭に かぶる 形に した ものです[1]。
わたの あいだには、空気が たくさん あります。ものが あたると、わたが つぶれて 力を うけとめる ―― と 考えると、ざぶとんが やわらかい 理由に にて います。ただし、これは ふつうの 考え方で、ずきんの しけんの けっかを せつめいした ものでは ありません。
ずきんが 守る ものは、かるい ものです。ガラスの かけら、電球、本などの 落ちて くる ものや、ひのこから 頭を 守る ために つかわれます[1]。
反対に、重い ものが 落ちて くる ときや、とても 強い しょうげきには、むかないと されて います[1]。では、ヘルメットと くらべると、どうなのでしょう。
防災頭巾は、2枚の布を張り合わせ、その間に綿などの緩衝材をつめて、頭にかぶる形にしてあります[1]。
綿には空気を含んだ隙間が多く、物が当たると潰れて力を受けとめます。座布団がふかふかなのと同じ理由で、一般にはこう説明されますが、頭巾の試験結果から確かめた説明ではありません。
資料によれば、頭巾は軽い落下物の衝撃や、火災の火の粉から頭部を守るための防災グッズです。想定されているのは、ガラス片、電球、本といった軽いものです[1]。重い落下物や強い衝撃には向かないとも説明されていて、「何でも防ぐ」道具ではないことがはっきり書かれています[1]。
では、「軽いものに向く」という説明は、試験の数字ではどう見えるのでしょうか。試験の条件を比べると、頭巾とヘルメットで物差しがちがうことが分かります。
防災頭巾は、2枚の布を張り合わせ、内部に綿などの緩衝材をつめて、頭にかぶる形に仕立てたものである[1]。構造としては、繊維の層で衝撃をやわらげる、きわめて簡素なものといえる。
綿は空気を含んだ隙間が多く、当たった物の力を、潰れながら受けとめると一般には考えられている。この物理は頭巾の試験データから確かめた説明ではないので、ここでは一般的な考え方として紹介するにとどめる。
用途について、ピオマの解説は、軽い落下物(ガラス片、電球、本など)の衝撃と火災の火の粉から頭部を守るための防災グッズだとし、重量のある落下物や強い衝撃には向かない、と整理している[1]。つまり頭巾の設計は、はじめから「軽いものと火の粉」を相手にしており、「何でも防ぐ」とは書かれていない。
ここで問題になるのが、同じ頭を守る道具であるヘルメットとの関係だ。両者はどう違うのか。手がかりは、それぞれが受けている試験にある。
3. ヘルメットと おなじ しけんでは ないの?
3. 試験の高さは10cmと1m。勝負している相手がちがう
3. 衝撃試験の落下高さ10cmと1m ── 数字の比べ方
ずきんと ヘルメットは、ちがう しけんを うけて います。
ぼうさいの ブログの せつめいでは、ずきんは、にんげんの 頭の かたを した もけいに かぶせて、5kgの おもりを 10cmの 高さから おとす しけんが あると いわれます[1]。ヘルメットは、1mの 高さから おとします[1]。1mは 100cmですから、10ばいの ちがいです。
たとえば、つくえの 上から 落ちる ものと、たなの 上から 落ちる ものでは、あたった ときの いたさが ちがいますよね。ただし、しけんの きまりは ちがう ものなので、高さだけで ぴったり くらべられる わけでは ありません。
ずきんは、高い ところから 落ちる ものを うける ためではなく、かるい ものや ひのこから 守る ために 考えられた どうぐなのです。
防災ブログのピオマの解説によると、防災頭巾には日本防炎協会の認証基準があります。人の頭の模型にかぶせて、5kgのおもりを10cmの高さから落とし、加わる衝撃が7.4kN以下であること、という内容だとされています[1]。
同じ解説では、防災ヘルメットは厚生労働省の基準で、やはり5kgのおもりを1mの高さから落とし、衝撃が4.9kN以下とされています[1]。落とす高さは、10cmと100cmで10倍です。
この数字だけで「ヘルメットのほうがずっと強い」と決めつけるのは、少し早いのです。頭巾は防炎の認証、ヘルメットは労働安全の基準と、もとの制度がちがううえ、これはブログ経由の数字です。基準値の7.4kNと4.9kNを、そのまま並べて比べることもできません。それでも、頭巾が10cm、ヘルメットが1mという別の物差しで試されていることは、考え方がちがうことを表しています。
河北新報が紹介した国民生活センターの試験では、頭巾は衝撃を約5割、製品によっては約8割抑えたと紹介されています。一方で、ヘルメットは頭巾よりかなり高い衝撃吸収性をもつことも指摘されています[2]。新聞記事を通じた間接的な紹介なので、数字は目安として受けとめるのがよさそうです。
では、衝撃で劣るなら、頭巾にはほかの強みがあるのでしょうか。
防災ブログのピオマの解説によると、防災頭巾の日本防炎協会の認証基準は、人型模型に頭巾をかぶせ、5kgのおもりを10cmの高さから落としたとき、加わる衝撃が7.4kN以下であること、とされる[1]。防災ヘルメットは厚生労働省の基準で、同じく5kgのおもりを1mの高さから落として4.9kN以下とされる[1]。
落とす高さは10cmと1mで、10倍の差がある。頭巾の基準値(7.4kN)のほうが大きいので、一見すると頭巾のほうが甘いように見える。しかし、一方は防炎の認証、他方は労働安全の基準という別の制度であり、試験の高さも異なる。数字だけを並べて優劣は決められない。
別の角度から、河北新報が紹介した国民生活センターの試験では、頭巾は衝撃を約5割、製品によって約8割抑えたと紹介されている。ただしヘルメットは頭巾よりかなり高い衝撃吸収性をもつ、と同じ記事は指摘している[2]。新聞記事を通した間接的な紹介なので、目安にとどめる。
数字から言えるのは、頭巾とヘルメットは、まったく別の物差しで試されているということだ。だとすれば、頭巾にはヘルメットとは別の強みがあるはずである。
4. ずきんが とくいな ことは なに?
4. 頭だけでなく顔と肩まで、火の粉やガラスから包む
4. 被覆範囲と防炎 ── 頭巾が優位とされる場面
ずきんの とくいな ことは、頭だけでなく、顔や かたまで つつめる ことです。ひのこや、とびちった ガラスへの そなえに なるのが よい ところだと、ぼうさいの アドバイザーの 人は いいます[2]。
ものが 落ちて くる ことだけを 見ると、ずきんは 「ぼうし より 強いが、ヘルメット より 弱い」 くらいだとも いわれて います[2]。
それに、ずきんは 「ぼうえん」の しなものに 入って います。ぼうえんとは、火が つきにくいと いう ことです。ずきんの ぬのや わたも、ぼうえんの せいのうの たいしょうに なって います[3]。
だから、ずきんと ヘルメットは、どちらが 上と いうより、とくいな ことが ちがうのです。
減災アドバイザーの説明によると、落下物から頭を守る機能だけを見れば、防災頭巾は「帽子以上ヘルメット未満」です。けれども、火事で降ってくる火の粉や、割れて飛び散ったガラスから、頭に加えて顔や肩までおおえるのは良いところだとされています[2]。
頭全体をすっぽり包む形は、ヘルメットにはない強みです。ただし、火の粉への強さは、防炎の認定を受けた製品かどうかや、製品ごとのちがいにもよります。ガラスが割れて飛び散る場面や、火の粉が降りかかる場面を想像すると、顔や肩まで布で覆えることの意味が分かります。
火の粉への強さには、防炎の仕組みも関わっています。堺市がまとめた防炎製品の種類の一覧には、防災頭巾、その側地(外側の布)、詰物類(中わたやプラスチック発泡体)が区分されています[3]。頭巾は布と綿だけの簡単なつくりですが、布も中身も、防炎という考え方の対象になっているのです。
こうして見ると、頭巾とヘルメットは、どちらが上というより、守る相手と守る範囲がちがうといえます。では、この頭巾は、いつ、どこの学校に広まったのでしょうか。
河北新報に登場する減災アドバイザーは、落下物から頭を守る機能だけを見れば、頭巾は「帽子以上ヘルメット未満」と説明する。一方で、火災時の火の粉や割れて散ったガラスに対し、頭部に加えて顔と肩まで覆えることを長所に挙げる[2]。
ヘルメットが頭部の硬いシェルで衝撃を受けとめるのに対し、頭巾は布で頭・顔・肩を広く覆う。落下試験の高さは異なるが、火の粉やガラス片という別の脅威に対しては、覆う範囲の広さが意味をもつ、という整理になる。ただし火の粉への強さは、防炎の認定を受けた製品かどうかや製品ごとの差にも左右される。
火の粉への備えには、防炎の制度も絡む。堺市の防炎製品の種類一覧では、防災頭巾等、その側地、詰物類(防災頭巾用中わた、プラスチック発泡体)が、防炎物品の区分に挙げられている[3]。頭巾は外側の布だけでなく、中身まで防炎性能の対象になる。資料から分かるのは区分があることまでで、個々の製品の性能の違いまでは分からない。
では、こうした特徴をもつ頭巾は、いつごろ、どの地域の学校に広がったのか。
5. いつから 学校に あるの?
5. 東海地震への備えとして、学校に広まった
5. 普及の経緯と地域差 ── 東海地震への備えから国会まで
ぼうさいずきんは、1970年代から いわれはじめた 東海地震への そなえとして、学校に ひろまったと されて います[1]。もとに なったのは、むかしの せんそうの おわりごろに つかわれた ぼうくうずきんだと いわれます。
ひろまりかたは、ところに よって ちがいました。2012年3月の もんぶかがくしょうの ちょうさでは、ずきんや ヘルメットを 用意して いた 公立の 学校は、にほんけいざいしんぶんの きじに よると、東京と かながわで 6わりぐらい、おおさかと ひょうごでは 2わりぐらいだったと つたえられて います[4]。3ばいぐらいの ちがいです。
仙台では、1978年の みやぎけんおき地震の 1年後、いくつかの 小学校が ぼうくうずきんに にた ずきんを とりいれたと、かほくしんぽうが 当時 つたえて います[2]。
国会の 議員の せきの 下にも、ずきんが 用意されて いましたが、2017年から おりたためる ヘルメットに かわったと いわれます[5]。
防災頭巾は、太平洋戦争末期に使われた防空頭巾を原型にして、1970年代から提唱され始めた東海地震への備えとして、広まったとされています[1]。
広がり方は、地域によってはっきりちがいました。日本経済新聞によると、2012年3月末時点で、児童用の防災頭巾やヘルメットを備蓄していた公立学校は、東京や神奈川で6割、大阪や兵庫で2割程度でした[4]。6割と2割で、およそ3倍の開きです。
仙台では、1978年の宮城県沖地震の約1年後、「防空頭巾再び登場」という見出しの記事を河北新報が載せていて、一部の小学校が防空頭巾に似た頭巾を取り入れたことが分かります[2]。
頭巾は学校だけのものでもありません。ウィキペディアによると、国会議事堂の議員席の下にも防災頭巾が備えられていましたが、2017年から折りたたみ式のヘルメットに替わったとされます[5]。頭巾とヘルメットは、場所や考え方によって選ばれ方が変わってきた、ということかもしれません。
防災頭巾は、太平洋戦争末期に使われた防空頭巾を原型とし、1970年代から提唱され始めた東海地震への備えとして、関東や東海などの学校で広まったとされる[1]。
備えの広がりには、地域差が大きかった。文部科学省の調査(2012年3月末)をもとにした日本経済新聞の記事では、児童用の防災頭巾やヘルメットを備蓄する公立学校は、東京や神奈川で約6割、大阪や兵庫で約2割だった[4]。6割と2割は3倍の差であり、東海地震への警戒が強かった地域と、そうでない地域の差が表れたと見ることもできるが、資料から原因までは言い切れない。
仙台の例では、1978年の宮城県沖地震の約1年後に、河北新報が「防空頭巾再び登場」という見出しの記事を載せている。一部の小学校が、防空頭巾に似た頭巾を取り入れたという内容である[2]。地震を経験した土地で、頭巾が再び注目された経緯が見える。
さらに、国会議事堂の議員席の下にも防災頭巾が備えられていたが、2017年から折りたたみ式ヘルメットに替わったとされる[5](ウィキペディアによる)。頭巾は、学校用具から公共の場の備えにまで及び、その後ヘルメットに置き換わる例もある。では、頭巾を選ぶか、ヘルメットを選ぶかは、何で決まるのか。
6. ずきんを 見て、考えて みよう
6. 手もとの頭巾から、頭巾派とヘルメット派の考え方を見つける
6. 頭巾とヘルメットの選び方を、自分の目で確かめる
ずきんを 見る ことが できたら、うらの ラベルや、ぬのの かんじ、中の わたを 見て みましょう。ざぶとんと して つかえるのは、どんな ところですか。
つぎに、学校や おうちに ある ぼうさいの どうぐを 見て、おうちの 人や 先生に 聞いて みましょう。「どうして これを えらんだの?」
ずきんは 顔や かたまで おおえる ものが あり、ヘルメットは 落ちて くる ものの しょうげきを うけとめる 形です。このちがいを 知って いると、自分の ところでは 何が 大切かを 考える ヒントに なります。
学校や家に防災頭巾があるなら、実物を見てみましょう。ラベルや縫い目、中の綿の感じ、座布団として使える部分を観察すると、この記事の内容が目に見えてきます。
もうひとつ、学校や家にある防災用具を見て、家族や先生に「なぜこれが選ばれているのか」を聞いてみるのもいい方法です。頭巾でもヘルメットでも、ほかの用具でも構いません。落下物なのか、火の粉なのか、置き場所なのか。選んだ理由は、地域や学校によってちがうかもしれません。
調べを深めたいときは、日本防炎協会の認証基準や、国民生活センターの子ども用防災頭巾の試験の原典に当たると、この記事で「とされる」と書いた数字が、どんな条件のものか分かります。
手もとに防災頭巾があれば、観察から始められる。外側の布、中の綿、座布団としての使い勝手、防炎に関する表示など、見えるものを書き出すと、記事で読んだ構造が実物と結びつく。
次に調べる価値があるのは、頭巾とヘルメットの選ばれ方の違いである。本文では、備蓄率の地域差(6割と2割)と、国会議事堂での頭巾からヘルメットへの交代を紹介したが、学校や自治体が何を重視して選んだのかは、各地の教育委員会や自治体の防災資料に当たれば見えてくるかもしれない。
数字の原典も読む価値がある。本文の7.4kN、4.9kN、約5割・約8割はいずれも二次資料(ブログや新聞)経由なので、日本防炎協会の認証基準、厚生労働省のヘルメット基準、国民生活センターの試験報告に当たれば、おもりの重さや条件まで含めて比べ直せる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:防災ブログ、新聞記事、自治体の資料、百科事典を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- ピオマ「防災頭巾」。https://blog.pioma.jp/2022/12/12/bousaizukin/ (つくり、用途、試験の高さ、歴史について。防災ブログ)
- 河北新報「小学校の防災頭巾、効果ある?」。https://kahoku.news/articles/20211214khn000043.html (顔や肩を守れる強み、フェーズフリー、仙台の例、国民生活センター試験の紹介について。新聞記事)
- 堺市「防炎製品の種類」。https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/setubikijun.files/06.04-bouen-seihin.pdf (防災頭巾等・側地・詰物類が防炎製品の区分に入っていることについて。自治体の資料)
- 日本経済新聞「防災頭巾、普及は東高西低」。https://www.nikkei.com/article/DGXLASIH27001_X20C14A8AA1P00/ (2012年3月末の備蓄の地域差について。新聞記事)
- Wikipedia「防災頭巾」。https://ja.wikipedia.org/wiki/防災頭巾 (国会議事堂の例について。百科事典)
なおした ところ
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