1. ごみが さいしょに ふれる ところは、どんな ところ?
1. ほこりがまず触れる場所 ── 薄くて透明な角膜
1. 角膜の大きさと構造 ── 直径約12mm、厚さ約0.5mm、血管なし
黒目の 上には、角膜と いう すきとおった まくが あります。ひろさは、はばが 12ミリメートルぐらいです。あつさは、まん中で 0.5ミリメートルぐらいと いわれます[1]。0.5ミリの シャープペンの しんと、同じ ぐらいの あつさです。
この まくには、血管が ありません[1]。酸素の 多くは、空気から なみだに とけこんで、目に とどきます。だから、ふつうは 目を あけると、外の 空気や ちいさな ごみが すぐ ふれる ところに あります。
2. 角膜の 神経は、どれくらい 多いの?
2. 皮膚の300〜600倍と推定される角膜の神経
2. 知覚神経の密度 ── 三叉神経第1枝と、推定300〜600倍
この うすい まくには、いたみや ふれた ことを 知らせる 神経が、とても たくさん 通って います[1]。角膜の 神経の 多くは、かおの 神経の 1つから 分かれた ものだと 書かれて います[2]。
どれぐらい 多いのか。しらべた 人たちは、皮膚の 300から 600ばいぐらい だと、見つもって います[3]。
つまり、皮膚より、神経が ずっと こまかく ひろがって います。ただし、いたさが 300ばいに なる という 意味では ありません[3]。
角膜には、三叉神経の第1枝(眼神経)の先が、極めて高い密度で分布しています。体の中でも、とくに痛みに敏感な組織の一つとされます[1]。神経眼科の学術誌の抄録も、角膜の神経の大部分は、この第1枝から分かれた知覚神経でできていると述べています[2]。
密度の比較もあります。角膜の神経の分布について、ある総説は、皮膚より約300〜600倍、歯の中の神経(歯髄)より約20〜40倍多いと推定しています[3]。この数字は、以前の測定をもとにした「推定」です。
誤解しやすい点があります。倍率は神経の分布についてで、痛みの強さが300〜600倍になるという意味ではありません[3]。それでも、見えないほこりに反応できる理由の一つになりそうです。
角膜には、三叉神経第1枝(眼神経)の末梢枝が極めて高密度に分布する。生体で最も知覚(特に痛覚)が敏感な組織の一つとされる[1]。神経眼科誌の抄録も、角膜神経の大部分が第1枝から分岐する知覚神経でできていると述べる[2]。なお、後者は抄録のみを確認した。
密度の比較として、Frontiers in Cellular Neuroscience(2020)の総説は、角膜の神経分布が皮膚より約300〜600倍、歯髄より約20〜40倍多いと推定している。Müllerら(2003)の推定を引いた数字で、原論文は未確認である[3]。
倍率は神経の分布密度であり、痛みの強さの倍率ではない。この比較も推定値であることに留意する。
3. いたみを 感じる しくみは、1つだけ?
3. 痛みのセンサーには、種類がある
3. 侵害受容器の型 ── 機械・多種・冷たさ
角膜の いたみの センサーには、はたらきの ちがう ものが あると、まとめて いる ぶんしょうが あります[3]。
1つめは、ごく かるい 力にだけ こたえる ものです。表面が きずつき はじめる ぐらいの、よわい 力に だけ こたえる と 書かれて います。ほこりが ちょっと ふれた だけでも 知らせが 出る のは、この おかげかも しれません。
2つめは、力や ねつ、くすりの ような もの など、いろいろな しげきに こたえる ものです。3つめは、つめたさに こたえる ものです[3]。
角膜の痛覚の受容器は、反応する刺激で大きく3種類に分けられる、と総説はまとめています[3]。
1つめは、機械的な刺激、つまり物が触れる力にだけ反応するものです。角膜の表面の細胞が傷つき始める程度の、ごく弱い力に反応する、と説明されています。ほこりが1粒触れただけでも信号が出うるのは、このタイプが関わっているからかもしれません。ほこりへの反応には、複数のタイプが関わる可能性があります。
2つめは、力・熱・化学的な刺激のどれにも反応するもの、3つめは冷たさに反応するものです[3]。
Frontiers in Cellular Neuroscience(2020)の総説は、角膜の侵害受容器を3型に整理する。(1)機械侵害受容器:上皮細胞が損傷する程度に近い弱い機械刺激にのみ反応する。(2)多種侵害受容器:機械・熱・化学の複数の刺激に反応する。(3)冷受容器:冷たさに反応する[3]。
(1)の閾値の低さは、微小な異物でも信号が出うる理由の候補になる。ただし、異物の種類や大きさごとにどの型が何割働くかを示した資料は、今回は見ていない。その対応は仮説として扱う。
4. なみだが 出るのは、どうして?
4. 痛みの知らせが涙腺へ戻る「反射」
4. 涙反射弓 ── 第5脳神経と第7脳神経
目の 表面が ごみなどで しげきされると、神経の 知らせが のうに とどき、なみだを 出せと いう めいれいが もどって きます。この 道すじを、反射と いいます。ほとんど 考えなくても、体が じどうで うごく しくみです[4]。
この 道すじには、ふたつの 神経が かかわります。1つは、さっき 出て きた、いたみを 知らせる かおの 神経です。もう 1つは、なみだを 出す ほうの かおの 神経です[4]。
たとえば、あつい やかんに ふれると、考える まえに 手が ひっこみます。ただし 本当は、目の なみだは 手の 話とは べつの 道すじで、同じ しくみとは かぎりません。
目の表面が乾いたり、ほこりなどで刺激されたりすると、第5脳神経(三叉神経)と第7脳神経(顔面神経)の反射弓が働き、涙の分泌が増える、と眼科の専門誌『EyeNet』(米国眼科学会)は説明しています[4]。
ここでいう反射とは、意識して命令しなくても自動で起こる反応のことです。感覚を伝えるのは三叉神経、涙を出す指令を送るのは顔面神経、という役割分担です。この説明では、目に触れた異物は「痛い」と感じるだけでなく、涙を出す反応にもつながります。
なお、この記事では涙腺へ出力する神経の細かい種類までは、この専門誌の説明の範囲にとどめます。
眼表面の乾燥や刺激は、第5脳神経(三叉神経)と第7脳神経(顔面神経)の反射弓を刺激し、涙の過剰分泌を生じる。米国眼科学会の専門誌『EyeNet』の記事に、この趣旨の記述がある[4]。
求心路が三叉神経、遠心路が顔面神経に含まれる副交感線維、という整理は一般的だが、今回は、遠心路の詳細を独立した資料で確かめていない。この記事では、記事[4]の範囲(第5・第7脳神経の反射弓)にとどめる。
痛覚(前章)の受容器が反射弓の入口となる、という接続は、資料から読み取れる範囲の理解であり、受容器ごとの寄与を実験で示した資料は見ていない。
5. なみだは、どれぐらい ふえるの?
5. 涙は最大で約100倍に増え、ごみを流す
5. 基礎分泌と反射性分泌 ── 約1.2μL/分と最大約100倍
ふだんの なみだは、とても すこしです。1分間に 1.2マイクロリットルぐらい。1マイクロリットルは、1ミリリットルの 1000分の 1です。
でも、しげきを 受けると、多いときは 100ばいまで ふえる ことが あります[4]。毎回 100ばいに なる わけでは ありません。
なみだの 90パーセントより 多くは 水です。いちばん 外がわは 油の うすい まくで、水が すぐ かわくのを ふせ ぎます[5]。なみだは、目の 表面を うるおし、酸素や 栄養を はこび、細菌を こわす もの(リゾチーム)も ふくみます[6]。
ごみが 入ったときの なみだは、目を まもる ための「反射の なみだ」と よばれます[5]。かなしい ときの なみだとは、出る 道すじが ちがう、と 書かれて います[5]。
基礎分泌の涙は、毎分約1.2μL(マイクロリットル)です。1μLは1000分の1mLなので、0.0012mLにあたります。反射性の分泌は、これを最大で約100倍に増やせる、と『EyeNet』にあります[4]。計算すると、最大で毎分約0.12mLです。小さじ1杯(5mL)分だと、100倍のときで約42分かかる量で、洪水のような量ではありません。「最大」で、毎回100倍になるわけではありません。
東北大学の医療系メディアは、目にごみが入ったときの涙を「反射性の涙」と呼び、刺激から目を守る防御反応で出ると説明しています。涙の90%以上は水で、いちばん外側の油の層が水分の蒸発を防ぎます[5]。
涙は、目の表面を覆って乾燥を防ぎ、細胞に酸素や栄養を運びます。殺菌作用のあるリゾチームも含みます[6]。感情で出る涙は、大脳辺縁系を介して自律神経が刺激されて出る、と別の経路として説明されています[5]。涙の層の数は、資料によって二層や三層と分かれるため、ここでは数を言いません。
基礎分泌は約1.2μL/分で、反射性分泌はこれを最大約100倍に増やせる[4]。約100倍は「最大」であり、常にそうではない。1.2μL×100=120μL=0.12mL/分で、5mLの小さじ1杯分は約42分(5÷0.12)に当たる。
東北大学医療系メディアLIFEは、異物混入時の涙を「反射性の涙」と呼び、防御反応で出ると説明する。涙の90%以上は水で、最外層の油の層が蒸発を防ぐ[5]。機能面では、乾燥防止、酸素・栄養の運搬、殺菌作用のあるリゾチームを含む点が挙げられる[6]。
感情による涙は、大脳辺縁系を介して自律神経が刺激され涙腺から分泌される、と別の経路として説明される[5]。涙の層の数は資料により二層・三層と分かれるため、数は断定しない。なお、毎分の測定値は測定法で大きく異なるため、ここでは[4]の一つの資料の数字に限って示した。
6. ごみが 入った とき、どう すれば いいの?
6. こすらず、流して、取れなければ眼科へ
6. 異物が入ったときの案内 ── まばたき、こすらない、受診の目安
ごみが 入ると、強い いたみと なみだが 出ます。でも、ほとんどの ときは、まばたきを くりかえす うちに、ごみが なみだと いっしょに ながれ出る と、ある 眼科の 医者は 書いて います[7]。
むやみに こするのは、やめましょう。上の まぶたの うらの みぞに ごみが 入りこんで、とれなく なる ことが あります。角膜を きずつける おそれも あると いいます[7]。
自分で 見つけられない ときや、とれない ときは、早めに 眼科へ 行きましょう。くすりなどが 入った ときは、すぐに おうちの 人に 話して、水で ながし ながら、眼科へ 行って ください[7]。
これは 1つの 眼科の あんないです。目の 中に 何か あると 感じたら、おうちの 人と 相談して ください。
池袋サンシャイン通り眼科診療所の案内では、異物が入ると強い痛みと涙が出ますが、ほとんどの場合、まばたきを繰り返すうちに異物が涙とともに流れ出す、とあります[7]。反射性の涙が、洗い流しの役目をするわけです。
同じ案内は、むやみにこすることを勧めていません。上まぶたの裏の溝に異物が入り込んで取れにくくなり、角膜が傷つくおそれもあるからです[7]。
異物が自分で見つけられない、取れそうにないときは、早めに眼科を受診すること、と案内しています[7]。
化学物質が入ったときは、ふつうの異物とは違って急ぎです。すぐ流水で15分以上洗い、洗いながら眼科へ連絡・受診すること、とも案内しています[7]。ただし、これは一つの診療所の案内です。目に何かあるときは、大人に伝えて、眼科で相談してください。
池袋サンシャイン通り眼科診療所は、異物が入ると強い痛みと流涙が生じるが、ほとんどの場合、まばたきを繰り返すうちに涙とともに流れ出す、と案内する[7]。反射性の涙が洗い流しに働くという前章の話と、つながる記述だ。
同じ案内は、むやみにこすると上眼瞼の裏の溝(瞼結膜の溝)に異物が入り込んで取れにくくなり、角膜が傷つくおそれもあると述べる。自分で異物を見つけられない、取れそうにないときは早めの受診を勧める[7]。
化学物質は、通常の異物とは別の緊急対応になる。同じ案内は、直ちに流水で15分以上洗眼し、洗眼しながら眼科へ連絡・受診するよう示す[7]。
これは一診療所の案内である。個別の判断は、眼科医に相談してほしい。
7. じぶんでも しらべて みたく なったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
やってみよう。かがみの 前で、じぶんの 黒目を 見て みましょう。まばたきを すると、目が ぬれて 光る ようすが 見えるかも しれません。目には さわらず、見る だけに して ください。
目が いたい、ごみが とれない、見えにくい ときは、おうちの 人に 話して、眼科で 相談して ください。このメモは 目の 話を まとめた もので、病気の なおし方を 書いた ものでは ありません。
やってみよう。鏡の前で、自分の目をよく見てみましょう。まばたきをすると、目の表面がぬれて光る様子や、涙の変化が見えるかもしれません。目にはさわらず、見るだけにしてください。
調べたくなったら、次のような問いを持って原典をたどってみてください。
「皮膚の300〜600倍」という推定は、どんな測り方から出たのでしょう。総説[3]が引いている元の論文をたどると、確かめられます。反射弓の説明[4]は、涙が出すぎる「流涙」の診断の記事で、涙が出る理由がいくつも並んでいます。
ほこりが入ったときの反射性の涙と、感情による涙は、出る道すじが別だといわれます[5]。同じ「涙」でも、どんな違いがあるのか。東北大学のページを読むと、さらに問いが広がります。
このメモは説明であり、診断や治療の助言ではありません。目の痛みが続く、異物が取れない、見えにくいなど気になる症状があるときは、眼科で相談してください。
原典で確かめたい点が3つある。(1)神経密度の推定値300〜600倍は、Frontiersの総説[3]が引くMüllerら(2003)の推定である。元の測定法を原論文で確認したい。(2)反射性の涙の流量は、測定法で値が大きく異なる。基礎分泌との比較を、複数の研究で読み比べたい。(3)涙腺への出力路の詳細(副交感線維)を、眼科学の教科書などで確かめたい。
反射弓の骨格を示した『EyeNet』の記事[4]は、涙が出すぎる症状の診断を扱っており、涙の量が増える原因が他にも並ぶ。「異物による反射」の位置づけを、そこで探してみるのもよい。
このメモは説明であり、診断や治療の助言ではない。目の痛みが続く、異物が取れない、見えにくいなど気になる症状があるときは、眼科で相談してほしい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:辞典的な解説(Wikipedia)、神経眼科の学術誌の抄録、角膜神経の総説、米国眼科学会の専門誌の記事、大学の医療系メディア、目薬会社の解説、診療所の案内などを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Wikipedia(日本語版)「角膜」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/角膜 (角膜の大きさ・厚さ、血管がないこと、神経の分布について)
- 「角膜疾患と神経」『神経眼科』40巻1号(J-STAGE、抄録)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinkeiganka/40/1/40_11/_article/-char/ja/ (角膜神経の大部分が三叉神経第1枝から分かれた知覚神経であることについて。抄録のみ確認)
- Frontiers in Cellular Neuroscience, 2020(角膜神経の総説)。 https://www.frontiersin.org/journals/cellular-neuroscience/articles/10.3389/fncel.2020.610342/full (神経密度の推定値と、痛みのセンサーの種類について)
- American Academy of Ophthalmology, EyeNet "The Tearing Patient". https://www.aao.org/eyenet/article/tearing-patient-diagnosis-management (涙の反射のしくみと、涙の量の変化について)
- 東北大学医療系メディアLIFE「涙をめぐる10の質問」。 https://www.life.med.tohoku.ac.jp/features/37292/ (反射性の涙、涙の成分、感情の涙との違いについて)
- 大塚製薬「涙の働きと構造」。 https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/dry-eye/functions-of-tears/ (涙の働きについて)
- 池袋サンシャイン通り眼科診療所「目に異物が入るとどうなるの?」。 https://www.ikec.jp/mailmag/mailmag-14519/ (異物が入ったときの経過とこすらないことについての一診療所の案内)
なおした ところ
更新履歴
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