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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おなじ あおでも ぬの の なかに はいる あおと うえに のる あお

同じ青でも、しみこむ青と乗る青がある ── 染料と顔料のちがい

染料と顔料は、どう使い分ける? ── 藍と群青の例

分野:技術

おなじ「あお」でも、ぬのの なかに しみこむ あおと、ぬのの うえに こなが のって いる あおが あります。しかも あおい こなは、つぶを こまかく すると、うすく なって いきます。

どうして そんな ことが おきるのでしょう。「とける」と「とけない」という ちがいから、わかります。

藍染めの青は布の中に入り込み、日本画の群青は紙や絹の表面に粒として乗っています。同じ青なのに、色のつき方は逆です。しかも群青は、粉を細かくするほど色がうすくなり、白っぽい「白群」になります。

この差を生むのは、水に「溶けるか、溶けないか」です。さらに、溶けない藍が染料として使われている不思議や、染料が顔料に変わる例もあります。この記事では、それらの理由が分かります。

藍染めの青は繊維の中に入り、日本画の群青は表面に粒として乗る。同じ青でも定着の仕組みが逆であり、群青は粒を細かくするほど色がうすくなって白群になる。分かれ目は、色素が水に溶けるかどうかだ[1][3][6]。

ところが、水に溶けない藍が「染料」とされ、水溶性の色素を不溶にした「顔料」も存在する。では、両者の境目は何で決まるのか。この記事では、溶解性を軸に、その答えが物質の種類だけでなく使い方にもあることが分かる。

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1. おなじ あおなのに、なにが ちがうの?

1. 同じ青なのに、色のつき方は逆

1. 藍は繊維に入り、群青は粒で表面に付く

あいぞめの ぬのの あおと、日本がの そらの あお。どちらも あおですが、できかたが ちがいます。

あいぞめの あおは、いとの 中に しみこんだ あおです。日本がの あおは、つぶに なった いしの こなが、かみの 上に のって います。

この ちがいを あらわす ことばが あります。しみこむ ほうを「せんりょう」、のる ほうを「がんりょう」と いいます。

ちがいを みわける めやすの 1つは、みずに とけるか、とけないかです。ただし ほんとうは、れいがいも あります。それは あとで おはなしします。

しみこむ色と、乗る色

布を青く染める藍は、色素が繊維の中に入り込んで色をつけます。一方、日本画の群青は、藍銅鉱(らんどうこう)や青金石(せいきんせき)といった鉱物を砕いた粉が、粒のまま表面に乗っています[6]。

前者のような色素を「染料」、後者のような粉を「顔料」と呼びます。両者を見分ける目安の一つは、水や油に溶けるか溶けないかです[1][2]。

ただし、この軸には例外があります。溶けない藍が染料として使われる理由は、あとの章で扱います。

藍染めでは、色素のインジゴが繊維の内部に入って色をつける。これに対し、日本画の群青は藍銅鉱や青金石の粉末で、粒子として表面に乗る[6]。辞典の記述では、顔料は水や油に溶けない粉末で、分散した状態で物を着色する。一方、染料は水溶液から繊維を染める色素とされ、染める過程で溶解、またはそれに近い状態を経るものが多い[1][2]。

つまり目安の一つは溶解性である。ただしこの目安は、後の章で見るように、インジゴとレーキ顔料という二つの例で単純には成り立たない。

2. せんりょうは、どうやって ぬのに のこるの?

2. 染料には、洗濯や日光で色が変わりにくいことが求められる

2. 染料 ── 水溶液から繊維に入り、媒染剤で定着する

せんりょうは、みずに とけて、ぬのの なかに はいって いきます。ぬのの 中に はいって いろが つきます。いろが のこりやすい せんりょうも ありますが、しゅるいに よっては、あらったり 日に あてたりすると うすく なります。

もとの くさや きの いろは、そのままでは ぬのに つきにくい ことが あります。そこで、ミョウバンや てつなどを くわえて、いろを とめます。

たとえば、あかね という くさの いろは、ミョウバンを つかうと、あざやかな あかに なります[2]。

染料は、水に溶かした液から天然繊維や合成繊維を染めるのに使われてきた色素です。洗濯・日光・摩擦・汗などに対して、色が安定していることが求められます[2]。

天然の染料の多くは、そのままでは繊維に定着しにくく、鉄やミョウバンなどの媒染剤の助けを借りて発色し、定着します。たとえばミョウバン(アルミニウム)を媒染剤にすると、茜や蘇芳(すおう)から鮮やかな赤が得られます。鉄媒染を組み合わせると、紫から暗い赤までの色合いも出せます[2]。

染料は溶けて布に入る色、では顔料は何が違うのでしょうか。

染料は、水溶液から天然繊維・合成繊維を染める色素で、日光・洗濯・摩擦・汗などへの堅牢さが求められる[2]。天然染料の多くは、媒染剤を介して発色・定着する。アルミニウム(ミョウバン)媒染では茜や蘇芳から鮮やかな赤が得られ、鉄媒染との兼ね合いで紫から暗赤色までの色調が得られる[2]。

色素が繊維の内部に入るため、表面に乗るだけの色より、擦れや洗濯に強い面があると考えられる。では、溶けずに表面に乗る顔料は、どう色をつけるのか。

3. がんりょうは、どうして かみに くっつくの?

3. 顔料は、溶けない粒を「のり」で表面につける

3. 顔料 ── 不溶の粒子をバインダーで固定する

がんりょうは、みずに とけない こなです。そのまま かみに ふっても、はらはらと おちて しまいます。

そこで、つぶを つなぎとめる「のり」の やくわりの ものを まぜて、かみの うえに つけます。のりは、えのぐの 中の つぶを まとめて、かみに くっつける やくわりを します[3]。

こなの つぶは 下の いろを かくす ちからが つよいので、がんりょうは、いろを うえから かぶせる ことが できます[1]。ただし、これは「だいたい そう」という はなしで、れいがいも あります。

顔料は、水や油に溶けない粉末です。粉のまま分散した状態で、物を着色します[1]。粒は溶けて繊維に入るのではないので、絵具では、媒体(バインダー)と呼ばれる「のり」の役目のものと混ぜて、表面に付けます[3]。

粒は下の色を隠す力が一般に大きく、これを隠蔽力といいます。染料は、透明性が高い傾向があります[1]。ただし染料でも不透明なものはありえます。

顔料には、鉱物の粉や合成物の無機顔料と、鮮やかな色と大きな着色力をもつ有機顔料があります[1]。顔料は日光で褪せにくく、染料は紫外線で褪せやすい傾向があります。ただし、褪せやすい顔料もあるので、例外はあります[3]。

粒で色をつけるなら、粒の大きさは関係するのでしょうか。

顔料は通常、水や油に溶けない粉末で、分散状態で物を着色する[1]。溶けないため繊維には入らず、絵具では媒体(バインダー)に懸濁させて表面に付ける。染料は溶けて繊維に染着し、繊維との相互作用で定着するのに対して、顔料は溶けず、バインダーで表面に保持される、という整理が絵具メーカーの解説にある[3]。

顔料は一般に不透明で隠蔽力が大きく、染料は透明性が高い傾向がある。無機顔料は天然鉱物の粉末や合成物で耐光堅牢度・耐熱性に優れ、有機顔料は鮮明な色と大きな着色力をもつ[1]。耐光性についても、顔料のほうが褪せにくい傾向はあるが、ばら茜のように褪せやすい顔料もあり、あくまで傾向にとどまる[3]。表面に乗る粒であれば、粒の大きさが色に影響するはずだ。

4. つぶを こまかく すると、いろが うすく なるの?

4. 群青の粉を細かくすると、白っぽい「白群」になる

4. 群青の粒を細かくすると白群になる ── 粒度と色、人造ウルトラマリン

にほんがの ぐんじょうは、あおい いしを くだいた こなです。この つぶを こまかく して いくと、あおが だんだん うすく なります。

いちばん こまかく した ものは、しろっぽい あおで、「びゃくぐん」と よばれます[6]。おなじ いしなのに、つぶの おおきさで いろが かわるのです。

つぶが おおきい ほど、いろは こく なります[6]。いろを きめるのは、いしの しゅるいだけでは ないのです。

同じ石なのに、粒で色が変わる

日本画の群青や白群は、藍銅鉱や青金石の粉末が原料です。粒が小さくなるほど、得られる色がうすくなります[6]。同じ原石でも、粒の大きさで色合いが変わるわけです。

青い石は、とても高価だった

青金石(ラピスラズリ)から作った群青の顔料は、ヨーロッパではきわめて高価でした。「ウルトラマリン」の名は、ラテン語の「ultra marinum(海を越えた)」に由来するとされます[5]。

1820年代には、フランスが開発を奨励して、人造のウルトラマリンが作られました[5]。資料により年は1826〜1828年とずれますが、この頃のことです。

溶けない粒の顔料の話を見てきました。それなら、溶けない色素は、どうやって染料になれるのでしょうか。

日本画の群青・白群は、藍銅鉱や青金石の粉末を原料とし、粒が小さくなるほど色が淡くなる。同じ原石でも、粒径によって色合いが変わる[6]。したがって、顔料の色は物質の種類だけでなく、粒の大きさでも決まる。

青金石(ラピスラズリ)から得られる群青顔料は、ヨーロッパでは非常に高価だった。名称の ultramarine は、ラテン語 ultra marinum(海を越えた)に由来するとされる。1824年にフランスが人造化を奨励し、1820年代のうちに人造ウルトラマリンが作られた。ただし、成功の年は資料により1826〜1828年とずれる[5]。

顔料が溶けない粒だとすれば、「溶けない色素が染料として使われる」ことは矛盾するはずだ。その例が藍である。

5. とけない あいが、どうして せんりょうなの?

5. 水に溶けない藍が、染料になれるわけ

5. インジゴ ── 不溶性の青を還元して溶かし、酸化して発色させる

あいの あおい いろの もとは「インジゴ」といって、みずに とけません。それなのに、せんりょうと して つかわれます。

ひみつは、いちど だけ、すがたを かえる ことです。とくべつな ほうほうで、あおい インジゴを、うすい きいろの みずの ような ものに かえます。この みずに ぬのを つけると、ぬのの 中に はいります。

ぬのを みずから だして、くうきに ふれさせると、うすい きいろから、もとの あおに もどります[4]。

だから、ぬのを あおく そめる ときだけ、とけて いるのです。

藍の色素インジゴは水に溶けない青い染料です。これを還元剤で処理すると、淡黄色の「インジゴ白」という水溶液になります[4]。

この液に布を浸すと、インジゴ白が繊維に入り込みます。取り出して空気にさらすと酸化が起き、元の青いインジゴに戻って、青く染まった布が得られます[4]。

つまり、溶けない色素でも、染めるあいだだけ溶ける形になっていれば、染料として使えます。「溶ける・溶けない」という軸だけでは、藍は説明しきれません。

では、溶ける色素を、溶けない形にすることはできるのでしょうか。

インジゴは水に不溶の青色色素だが、染料として使われる。ハイドロサルファイトなどで還元すると淡黄色のインジゴ白の水溶液となり、これが繊維に入る。空気中で酸化すると元のインジゴに戻り、青い染色物が得られる[4]。

この例から、染料か顔料かは、色素が溶けないという性質だけでは決まらないことが分かる。染める過程のどこかで溶ける形をとるかどうかが、染料としての使い方を左右している。藍を染める液の作り方には、発酵を使う方法もある。

逆に、溶ける色素を溶けない形にして使う例もある。

6. せんりょうを、とけなく したら、どうなるの?

6. 染料を溶けなくすると、顔料として使える

6. レーキ顔料 ── 境目は物質ではなく使い方で決まる面がある

みずに とける いろを、とけない かたちに かえる ことが あります。そうすると、がんりょうとして つかえる ものが できます。

「レーキがんりょう」と いいます。みずに とけた いろの もとに、カルシウムなどを くっつけて、とけなく して つくる ものが あります[1]。

おなじ いろの もとでも、とけるように つかえば せんりょう、とけない かたちに すれば がんりょうに なれるのです。ただし、ぜんぶの せんりょうが がんりょうに なるわけでは ありません。

水に溶ける色素を、カルシウム塩やバリウム塩の形にして溶けなくしたものが、レーキ顔料の一種です。たとえば水溶性のアゾ色素を不溶にした「アゾレーキ顔料」があります[1]。

溶ける色素でも、不溶の形にすれば顔料として使えます。ですから、染料と顔料の境目は、色素の種類だけでなく、溶けるか溶けないか、つまり使い方で決まる面があります。ただし、染料をすべて顔料に変えられるわけではなく、これは一部の種類の話です。

藍の例では、溶けない青を一時的に溶かしました。レーキでは、溶ける色を溶けない形にしました。どちらも、「溶ける・溶けない」という軸の上で、使い方を変えています。

水溶性のアゾ色素をカルシウム塩やバリウム塩の形で不溶化したものがアゾレーキ顔料で、顔料に分類される[1]。したがって、染料と顔料の境目は、色素の化学構造だけでなく、溶けるか否かという使い方でも決まる面がある。ただし、これは一部の種類(レーキ)の話で、すべての染料が顔料に変わるわけではない。

インジゴは不溶なのに染料として使われ、アゾ色素は水溶性でも顔料として使える。両者を並べると、溶解性はあくまで目安であり、境目は用途や使い方で動くことが分かる。

自分でも しらべて みたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

みずを つかって、ペンの いろを ためして みましょう。

しろい かみに、すいせいペンで せんを ひきます。かわいたら、せんの はしに、みずを 1てきだけ たらします。いろが にじむか、にじまないかを みます。いろんな ペンで くらべて みましょう。

にじむ いろは、みずに とけやすいのかも しれません。ただし、ペンの 中に なにが はいって いるかは、ここでは わかりません。

水性ペンを数本用意し、白い紙に線を引いて、乾いてから端に水を1滴垂らしてみましょう。色がにじむペンと、にじみにくいペンがあるはずです。

にじみ方の違いは、色素が水に溶けやすいかどうかと関係があるのかもしれません。ただし、ペンの色の素が染料か顔料かは、この方法では決められません。結果は、あくまで「なぜだろう」と考えるきっかけとして楽しんでください。

もっと読みたくなったら、日本美術用語辞典の白群の項目[6]や、絵具メーカーの解説(英語)[3]を開いてみてください。

水性ペン数本で、紙に引いた線の端に水を1滴垂らし、にじみ方を比べてみる。にじむ色は水に溶けやすい色素を使っている可能性があるが、この方法でペンの色素が染料か顔料かを断定することはできない。結果は仮説を立てるきっかけにとどめる。

資料を読むなら、顔料と染料の定義は日本大百科全書系の辞典[1][2]、顔料と染料を比べた絵具メーカーの解説[3]、群青・白群の粒度と色は日本美術用語辞典[6]が、基準になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典(コトバンク)、絵具メーカーの解説、日本美術用語辞典を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. コトバンク「顔料」(日本大百科全書ほか)。https://kotobank.jp/word/顔料-49763 (顔料の定義、無機・有機顔料、レーキ顔料について)
  2. コトバンク「染料」。https://kotobank.jp/word/染料-89035 (染料の定義、堅牢さ、媒染剤について)
  3. Winsor & Newton "Difference between dyes and pigments"。https://uk.winsornewton.com/blogs/guides/difference-between-dyes-pigments (バインダーと耐光性の傾向について。英語の絵具メーカーの解説)
  4. コトバンク「インジゴ」。https://kotobank.jp/word/インジゴ-32883 (インジゴの還元と酸化について)
  5. コトバンク「ウルトラマリン」。https://kotobank.jp/word/ウルトラマリン-3144586 (群青の由来と人造化について)
  6. JAANUS(日本美術用語辞典)「白群」。https://www.aisf.or.jp/~jaanus/deta/b/byakugun.htm (白群と粒の大きさについて。英語の辞典)

なおした ところ

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