1. ドアノブを まわす とき、ひじは うごいて いるの?
1. ドアノブを回すとき、ひじの関節も働いている
1. 手のひらを返す動きに、肘関節はどう関わるのか
ドアノブを まわす ときの 手を おもいだして ください。手のひらが、したを むいたり、うえを むいたり します。これは 手首だけの しごとでは ありません。ひじの 関節も、手のひらを かえす ひねりの ささえに なって います[2]。
ひじの 中には、ひじを まげのばしする ところと、ひねりを うけもつ ところが あります。ひじは まげのばしの ほかに、ひねりも して いるのです。
では、ひとつの ひじの 中で、どう ふたつの しごとを わけて いるのでしょう。
ドアノブを回すとき、手のひらは下を向いたり、上を向いたりします。この手のひらを返す動きを、前腕の回内・回外といいます。手首が回っているように感じますが、ひねりは手首だけで起きているのではありません。ひじの関節も、この動きの支点になっています[2]。
ひじは、腕を曲げ伸ばしする関節であると同時に、手のひらを返すひねりの支点でもある。ここが、この記事の答えの要点です。
では、1つのひじが、どうやって2種類の動きを受け持っているのでしょうか。
ドアノブを回す動作では、手のひらが下向きになる回内と、上向きになる回外が起きる。この回旋は手首だけの動きではなく、肘関節の一部が支点となって成り立つ[2]。肘は屈伸の関節であると同時に、前腕の回内・回外の支点でもある。
ここで注意したいのは、ひねりが「手首が回っている」ように感じられるため、手首の関節だけの運動と誤解されやすい点である。実際には前腕の2本の骨の動きであり、その支点が肘にある。
では、肘という1か所が、屈伸と回旋をどう両立させているのか。
2. ひじの 中の 3つの 関節は、どう やくわりを わけて いるの?
2. 1つの袋に入った3つの関節は、どう役割を分けているのか
2. 1つの関節包に入る3つの関節:屈伸とひねりの分担
ひじの 中には、関節が 3つ あります。この 3つは、ひとつの ふくろに まとめて つつまれて います[1]。
ひとつめは、ひじを まげたり のばしたり する 関節です。ドアの ちょうつがいの ように、おもに ひとつの むきに うごきます[1]。
ふたつめは、ひねりを うけもつ 関節です。くるくる まわる 車の じくの ような かたちで、ひじを まげて いても、手のひらを かえす ことが できます[2]。みっつめは、うでの 骨と、手のひらを かえす ときに まわる 骨が ふれ あう ところに あり、ひねる ときの うごきも いっしょに ささえます。
ひじを まげた まま、ドアノブを まわせるのは、この おかげと いえそうです。
肘関節は、腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節という3つの関節が、共通の関節包という1つの袋に包まれたつくりです。このような関節を複関節といいます[1]。
3つのうち、上腕骨と尺骨がつくる腕尺関節が、ひじの中心です。曲げ伸ばし(屈伸)は、主にこの関節が行います。形は、ドアの蝶番に近い関節にあたります[1]。
もう1つの上橈尺関節は、前腕の橈骨の頭と、尺骨の上の端のあいだにあります。車軸のように回る関節で、ひじを何度に曲げていても、手のひらを返すひねりができます[2]。3つ目の腕橈関節も、橈骨が回るときの受け皿として、ひねりに関わっています。曲げ伸ばしを受け持つ関節と、ひねりに関わる関節が、同じ袋に入って役割を分けているわけです。
では、ひねるとき、前腕の2本の骨は中でどう動いているのでしょうか。
肘関節は、腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節の3関節が、共通の関節包に包まれた複関節である[1]。
上腕骨滑車と尺骨の滑車切痕がつくる腕尺関節が肘の中心であり、屈伸は主にこの関節が行う。形としては蝶番関節にあたる[1]。
一方、橈骨頭と尺骨上端のあいだの上橈尺関節は車軸(回転)関節で、屈伸のどの角度でも回内・回外ができる[2]。蝶番型の屈伸関節と車軸型の回旋関節が1つの袋に入ることで、肘は「曲げたまま手のひらを返す」「伸ばしたまま返す」のどちらも可能になる。屈伸と回旋が互いを妨げないのは、運動の軸が別の関節に分かれているからだと読める。回旋は上橈尺関節を中心にしつつ、腕橈関節も関わる。
回内・回外の実際の動きは、前腕の2本の骨の関係で説明される。
3. 手のひらを かえす とき、骨は どう うごく の?
3. 手のひらを返すとき、前腕の2本の骨は交差する
3. 回内・回外は、尺骨と橈骨のどんな動きなのか
ひじから 手首までの ところには、骨が 2ほん ならんで います。手のひらを かえす とき、1ぽんの 骨を じくの ように して、もう 1ぽんが まわる、と せつめい される ことが あります[3]。
手のひらを うえに すると、2ほんは ならびます。したに すると、2ほんは ×の ように かさなります。
ひねる はんいは、あくまで ひとつの めやすですが、うえむきに 90ど、したむきに 90ど と されます。ぜんぶで 180ど、つまり 半分 まわる ことに なります[4]。まげのばしも 150どぐらいが めやすです。どちらも 人に よって ちがいます。
前腕には、親指側の橈骨と小指側の尺骨が、2本ならんでいます。手のひらを返すとき、尺骨を軸にするように橈骨が回る運動として説明する研究があります[3]。手のひらが上を向く回外では2本はほぼ並び、下を向く回内では交差します。ひじの中では、上橈尺関節が回旋の中心になり、腕橈関節も回旋に関わっています。
動く範囲の参考値を見ると、回内・回外はそれぞれ90度とされています[4]。合わせて180度、手のひらが半回転する大きさです。曲げ伸ばしは、屈曲145度と伸展5度を足して約150度が目安です。
ただし、これらは測定法で決めた目安です。資料によって、屈曲は140〜150度、伸展は0〜10度と幅があり、人それぞれでも変わります[4]。
ひじを伸ばすと、腕はどんな形になっているでしょうか。
回内・回外は、尺骨を軸に橈骨が回転する(交差する)運動として再現される研究がある[3]。実際には上橈尺関節を回旋の中心としつつ、腕橈関節も回旋に関わるため、「尺骨だけが固定された軸」と単純にはいえない。回外では手のひらが上向きで2本はほぼ平行になり、回内では橈骨が尺骨の上を交差する。
可動域の参考値として、一般的な測定法では、屈曲145度、伸展5度、前腕の回内・回外はそれぞれ90度とされる[4]。屈伸の弧は145+5=約150度、回内・回外の弧は90+90=180度である。
一方で、ほかの資料には屈曲140〜150度、伸展0〜10度と幅があり、伸展を−5度のように表す資料もある[4]。つまり、これらは基準となる測定法の値であり、個人差や測定条件で変わる。
ところで、肘を伸ばしたときの腕の形には、角度に関する別の特徴がある。
4. ひじを のばすと、うでは まっすぐに なるの?
4. ひじを伸ばしても、腕はまっすぐにならない
4. 肘を伸ばしたときに前腕が外へ開く運搬角とは何か
ひじを のばして、手のひらを まえに むけて みます。すると、うでと、ひじから 手首までの ところは、すこしだけ そとがわへ ひらきます[2]。
この ひらき ぐあいは、人に よって ちがいます。5ど〜15ど くらいと する しりょうが ありますが、ほんとうの かずは しりょうに よって ちがいます。
この かたむきには、うでを ふる とき、こしに ぶつかりにくく する やくわりが ある、と せつめい されて います[2]。
5. ひじを ぶつけると しびれるのは、骨の せいなの?
5. ぶつけてしびれるのは、骨ではなく神経
5. 肘の内側をぶつけると小指側がしびれるのはなぜか
ひじの うちがわを ぶつけると、ビリッと しびれる ことが あります。これは 骨が いたいので なく、ひじの うちがわを とおる 神経が、うでの 骨に ぶつかる ためです。しびれは、小ゆびと 薬指の ほうに はしります[5]。
この ところを、えいごでは ファニーボーン(おかしな ほね)と いいます。KidsHealthでは、へんな かんじ(funny feeling)から きた なまえと せつめい されて います[5]。ほかに、うでの 骨の なまえと「おかしい」を あらわす ことばの ごろあわせ、という せつも あります[6]。
ひじの内側を机の角などにぶつけると、小指と薬指のほうへビリッとしびれが走ることがあります。尺骨神経が、皮膚のすぐ下を通っていて、ぶつけたときに上腕骨にぶつかるためです。しびれは骨の痛みではなく、神経の感覚です[5]。
英語では、この場所を「ファニーボーン(funny bone)」と呼びます。KidsHealthは、しびれる「へんな感じ(funny feeling)」から来た名前だと説明しています[5]。別の資料には、上腕骨(humerus)と「おかしい」を意味する humorous の語呂合わせという説もあります[6]。
曲げ伸ばしとひねりを受け持つ関節のすぐそばを、神経が通っている。ひじは、動く仕組みと感覚の通り道が、近くにあるところでもあります。
肘の内側では、尺骨神経が皮膚の直下を通る。ここをぶつけると、神経が上腕骨にぶつかり、小指と薬指の側にしびれが走る。感じているのは骨ではなく神経の感覚である[5]。
英語名 funny bone について、KidsHealth はしびれる「へんな感じ(funny feeling)」から来た名と説明する[5]。一方、Word Histories は、上腕骨 humerus と humorous の語呂合わせが部分的に関わる可能性を挙げ、19世紀前半の用例を古い例として示す[6]。
屈伸とひねりを担う関節の近くを、皮膚の下の神経が通る。動くための骨の構造と感覚の経路が近い位置にあることが、この「へんな感じ」の背景にある。
6. 自分の ひじで、ひねりの ささえを さがして みよう
6. 自分のひじで、ひねりと曲げ伸ばしを確かめてみる
6. 自分の肘で確かめる:残っている問い
今日 できる こと
いすに すわって、ひじを からだの わきに つけます。ひじを 90どくらいに まげて、手のひらを うえに むけたり、したに むけたり して みましょう。つぎに、ひじを すこし のばして、おなじ ように かえして みます。ひじを まげて いても のばして いても、手のひらは かえせるでしょうか。
まだ きに なる こと
ひじを どこまで まげのばし できるかは、人に よって ちがいます。まわりの 人と くらべて、どちらが 上か 下かを きめる ものでは ありません。自分の ひじの うごきかたを、じっくり みて みましょう。
今日できること
椅子に座り、ひじを体のわきに付けて、90度ほどに曲げます。そのまま手のひらを上へ向けたり、下へ返したりしてみましょう。次に、ひじを少し伸ばして同じ動きをします。ひじの曲げ方がちがっても、手のひらを返せることが確かめられます。
残っている問い
曲げ伸ばしの範囲も、ひねりの範囲も、人によって幅があります。同じ動作をしても、見え方は人それぞれです。自分のひじが、資料の目安と比べてどう動くのかは、比べて優劣を決めるためではなく、自分の体の特徴を知るために見てみるとよいでしょう。
今日できること
椅子に座り、肘を体側につけて約90度に屈曲し、回内・回外を行う。次に肘を少し伸展して同様に行う。肘の角度を変えても回内・回外が可能なことを、自分の体で確かめられる。
残っている問い
屈伸・回旋の可動域も運搬角も、資料によって数値に幅がある。測定法の定義、年齢、性別、個人差のどれがどの程度ずれを生むのかは、ここで挙げた資料からは分けて読み取れない。可動域の参考値の出典として、日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定法」[4]があり、原典にあたると測定の手順まで確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- コトバンク「肘関節」(日本大百科全書・デジタル大辞泉). https://kotobank.jp/word/肘関節-97119 (3つの関節、屈伸の関節)
- Lecturio「Elbow joint」. https://lecturio.com/concepts/elbow-joint (ひねりの関節、運搬角)
- 麻布大学紀要の回内・回外の運動再現研究. https://az.repo.nii.ac.jp/record/4571/files/bull_jau_vol28-070.pdf (橈骨が尺骨を軸に回る運動)
- 日本リハビリテーション医学会「関節可動域表示ならびに測定法」. https://www.jarm.or.jp/member/document/kadou/02.pdf (ひじの動く範囲の参考値)
- KidsHealth「Funny Bone」. https://kidshealth.org/en/kids/funny-bone.html (ぶつけたときのしびれ)
- Word Histories「‘funny bone’: meaning and origin」. https://wordhistories.net/2021/03/24/funny-bone/ (funny bone の名前の由来)
なおした ところ
更新履歴
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