このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

うでは、ひじを まげる ほかに、どんな ことが できるの?

引っぱることしかできない腕の筋肉で、なぜ曲げる・ひねる・投げるまでできるのか

引くことしかできない筋肉で、腕はなぜ曲げ・ひねり・投げができるのか

分野:からだ

ボールを なげる とき、かたの なかでは、いっしゅんだけ ものすごい はやさで ほねが まわる ことが あります。にんげんの からだで いちばん はやい うごきだと いわれて います[6]。

でも きんにくは、ひっぱる ことしか できません。ひっぱる だけで、どうして まげたり、ひねったり、なげたり できるのでしょう。うでの はたらきを 見ると、そのひみつが わかります。

ボールを投げるとき、肩の中では上腕の骨が、ほんの数ミリ秒のあいだに毎秒9,000度を超える速さで回ることがあります。人間の体が生み出す動きのなかで最も速いと報告されています[6]。

ところが筋肉は、縮んで引っぱることしかできません。押すことができない筋肉で、なぜ曲げる・ひねる・振る・投げるまでできるのでしょうか。力こぶのしくみから肩の作りまで見ていくと、その理由が分かります。

投げる動作で、肩の上腕骨は数ミリ秒のあいだに毎秒9,000度を超える速さで内旋しうる。これは人体が生み出す最速の動きと報告されている[6]。毎秒9,000度は、1秒あたり25回転にあたる速さだが、続くのはごく短い瞬間だけである。

一方、筋肉の仕事は収縮して引くことだけで、自分で伸びて押すことはできない[1]。引くだけの部品で、なぜここまで多様な動きが生まれるのか。ペア構造、前腕の回旋、肩の作り、歩行時の腕振り、投てきの順に、理由と限界が分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. ちからこぶを つくった とき、ひじの うらがわは どうなって いるの?

1. 力こぶをつくると、ひじの裏側の筋肉はゆるんでいる

1. 拮抗筋 ── 上腕二頭筋と上腕三頭筋が、引くだけの筋肉で曲げ伸ばしを分担する

ひじを まげて、ちからこぶを つくって みましょう。もりあがる のは、うでの うちがわの きんにくです。きんにくは ちぢんで、ひっぱります[1]。

でも きんにくは、じぶんで のびて おす ことが できません[1]。ひもは ひっぱれても、おせないのと にています。あやつり にんぎょうは、まえにも うしろにも ひもが ついて いるから、りょうほうに うごきます。

ひじを のばす ときは、うでの うらがわの きんにくが ひっぱります。むきが はんたいの きんにくが、ペアで はたらく のです[1]。ただし ほんとうの うでには ひもでは なく、ほねと つながった きんにくが あります。

では、うでは まげのばし だけ なのでしょうか。つぎは、てのひらを うらがえして みます。

ひじを曲げて力こぶをつくると、腕の内側が盛り上がります。これは上腕二頭筋という筋肉が縮んだ姿です。筋肉は縮んで引っぱることと、その力をやめることしかできません。自分で伸びて押すことはできないのです[1]。

では、曲げたひじをもとに戻すときは何が働くのでしょう。名古屋市科学館の展示解説では、上腕の背中側にある上腕三頭筋がひじを伸ばすと説明されています[1]。ひじの曲げ伸ばしには、反対向きに働く筋肉が関わっているという考え方です。

あやつり人形で考えると分かりやすくなります。ひもは引けても押せないので、前に動かすひもと後ろに動かすひもを両方つけます。腕の二頭筋と三頭筋は、そのひもの組に当たります。ただし人形のひもと違い、筋肉は骨にくっついて関節をまたいでいます。

二頭筋・三頭筋という名前は、肩側の端が2つ・3つに分かれていることに由来します[1]。曲げ伸ばしの仕組みは、これで説明がつきます。では、腕にできるのは曲げ伸ばしだけでしょうか。

力こぶで盛り上がる上腕二頭筋は、ひじを曲げる主役である。ところが筋肉は、収縮して引くことはできても、自分で伸びて押すことはできない[1]。そのため、曲げたひじを伸ばす側には、反対向きに引く筋肉が関わる。この役を担うのが、上腕の背中側にある上腕三頭筋である[1]。

このように、関節をはさんで反対の働きをする筋肉の組を拮抗筋(きっこうきん)という。名古屋市科学館の解説は、上腕の内側の二頭筋と背中側の三頭筋が、ひじの曲げ伸ばしを分担すると説明している[1]。二頭・三頭の名は、肩側の端(頭)が2つ・3つに分かれていることによる[1]。

操り人形のひもにたとえると、前向きのひもと後ろ向きのひもの組になる。ただしこれは働きの比喩にとどまる。実際の筋肉は骨に付着し、関節をまたぐ位置が動きの向きと強さを決めるので、ひもの本数だけでは説明できない。

では、引くだけの部品が組になれば、曲げ伸ばし以外の動きも生まれるのか。次は手のひらを上下に返す動きを見る。

2. てのひらを うらがえすと、うでの なかで なにが おきて いるの?

2. 手のひらを返すとき、前腕の2本の骨は交差する

2. 回外と回内 ── 橈骨が尺骨のまわりを回る前腕のひねり

ひじを まげた まま、てのひらを うえに、つぎに したに むけて みましょう。ひじから てくびまでの ところには、ほねが 2ほん あります。

てのひらを うえに むけると、2ほんは ならんで います。したに むけると、てくびに ちかい ほうの ほねが、もう 1ほんの ほねの まわりを まわって、2ほんが ×の ように かさなります[2]。

ひじの ほうの ほねの はしは、わっかの ような すじの なかで、しゃりんの ように くるくる まわります[2]。ドアノブを まわす てが、この うごきです。

この ひねりは、うでの どの きんにくが して いるのでしょう。

ひじを曲げたまま手のひらを上に向け、それから下に向けてみましょう。これは前腕の「ひねり」の動きです。ひじから手首までの前腕には、橈骨と尺骨という2本の骨があります[2]。

手のひらを上に向けたとき、2本の骨は平行に並びます。下に向けると、手首側の橈骨が尺骨のまわりを回って、2本が交差します[2]。交差するのは、手のひらを下にしたときです。ひじ側の橈骨の端は、輪のような靭帯の中で車輪のように回ります[2]。

手のひらを上に向ける動きを回外、下に向ける動きを回内といいます。ドアノブを回すとき、ネジを回すときに使っている動きです。

ひねりを起こす筋肉の1つが、力こぶの上腕二頭筋です。この筋肉は、ひじを曲げる働きが主で、ひじを曲げているときに前腕を回外させる働きもあります[2]。名古屋市科学館の解説にも、腕を内側や外側にねじることができると書かれています[1]。

ひじから先の筋肉は、ほかにも大きな仕事をしています。

前腕には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨があり、この2本の関係が変わることで前腕のひねりが生まれる。手のひらを上に向けた回外(かいがい)では2本は平行になり、下に向けた回内(かいない)では、橈骨の手首側が尺骨のまわりを回って2本が交差する[2]。「交差する」のは回内位のときで、回外位ではない。ひじ側の橈骨頭は、輪状の靭帯の中で車輪のように回転する[2]。

この回旋には複数の筋肉が関わる。上腕二頭筋は、主な働きはひじの屈曲で、ひじを曲げたときには回外筋としても働く[2]。一方、名古屋市科学館の解説は、二頭筋の頭が肩を越えて2つあるため、ひじを曲げるほかに腕を内側と外側にねじることができると述べる[1]。科学館の「ねじる」が解剖学の回外と厳密に同じ意味かどうかは資料から言えないので、ここでは二頭筋が回外にも関わる、という強さにとどめる。

つまり、ひじ関節の曲げ伸ばしは二頭筋と三頭筋の組で、前腕のひねりは橈骨の回転と複数の筋肉で、と役割が分かれている。では、手首や指を動かす筋肉は、どこにあるのか。意外な場所にある。

3. ゆびを うごかす きんにくは、どこに あるの?

3. 指を動かす筋肉の多くは、手ではなく前腕にある

3. 前腕の屈筋群と伸筋群 ── 上腕より多い筋肉が手首と指を担う

じゃんけんの グーと パーを して みましょう。ゆびを まげのばし して いる とき、うでの ひじと てくびの あいだを さわって みると、きんにくが うごいて いるのが わかります。

ひじから てくびまでの ところには、うでの うえの ほうよりも ずっと たくさんの きんにくが あります[1]。てくびや ゆびを まげる きんにくと、のばす きんにくが、ここに あります[1]。

ゆびを 1ほんずつ うごかす きんにくや、まえうでを ひねる きんにくも あります[1]。

では、うでぜんたいを うごかして いる 大きな ところは どこでしょう。かたです。

グーとパーを繰り返しながら、ひじと手首のあいだを反対の手でそっと触ってみましょう。指を動かすたびに、前腕の筋肉が動くのが分かります。

名古屋市科学館の解説によると、ひじから手首までの前腕には、上腕よりずっと多くの筋肉があります[1]。手首や指を曲げる筋肉は「〇〇屈筋」、伸ばす筋肉は「〇〇伸筋」と呼ばれます。さらに、指を1本ずつ動かす筋肉や、前腕をひねる筋肉もあります[1]。

指先そのものは小さく細いので、太い筋肉を指先にたくさん付けることはできません。前腕に筋肉を置き、細いすじ(腱)で指までつなぐ作りになっていると考えれば、細い指が細かい仕事をこなせる理由が見えてきます。これは筋肉のある場所から考えた見方で、資料の主張というよりこの記事での整理です。

指も手首も前腕も動くとして、腕を上げたり回したりする大きな動きはどこが担うのでしょうか。

前腕の屈筋群・伸筋群は、手首や指を動かす働きの多くを担っている。名古屋市科学館の解説によると、前腕には上腕よりずっと多くの筋肉があり、手首や指を曲げるものは「〇〇屈筋」、伸ばすものは「〇〇伸筋」と呼ばれる[1]。1本ずつの指を動かす筋肉や、前腕をひねる筋肉もここにある[1]。

この配置は、指先に太い筋腹を置けないことと結びつけて考えられる。筋肉を前腕に集め、腱で指まで力を伝えれば、指は細いまま多様な動きができる。ただしこれは資料が明記する因果ではなく、筋肉の位置からの整理である。

ここまでは、ひじから先の話である。腕を耳の横まで上げたり、後ろに回したりする大きな動きを可能にしているのは、肩の構造のほうである。

4. うでは、どうして 大きく まわせるの?

4. 肩甲骨も動くから、腕は耳の横まで上がる

4. 肩甲骨が動くと腕を大きく上げられる ── 肩の構造と可動域

うでを よこに あげて みましょう。かたの ほねを うごかさないで あげると、よこまでしか あがらない はずです[3]。

ところが ふつうに あげると、みみの よこまで あがります。うでの ほねと いっしょに、せなかの 大きな ほね(けんこうこつ)も うごいて いるからです[3]。

かたは、ほねどうしが ふれあう ところが ちいさい つくりだと いわれます[3]。ゴルフの ティーに ボールを のせた ようなものです。ただし ほんとうの かたは、きんにくや すじが ささえて います。

この うでは、からだの よこで ぶらぶら して います。ぶらぶらの うでは、とても おもいのです。

腕を横に上げてみてください。肩甲骨を動かさないようにして上げると、水平より下までしか上がりません[3]。ふだん腕が耳の横まで上がるのは、腕の骨が動くのと同時に、背中側の肩甲骨も動くからです[3]。

整形外科医の解説では、肩は骨どうしの接する面が小さく、肩甲骨は鎖骨の下にぶら下がるように体につながっていると説明されます[3]。そのため、肩甲骨が動くことで腕を大きく上げられます。

ゴルフのティーにボールを置いた形に似ています。ただし本当の肩は、筋肉や靭帯が周りで支えています。

動きやすい肩は、その分、腕の重さを常に引き受けています。腕1本はどれくらいの重さなのでしょうか。

腕を横に上げるとき、肩甲骨を動かさなければ腕は水平より下までしか上がらない[3]。ふだん腕が頭の横まで上がるのは、上腕骨の動きに肩甲骨の動きが組み合わさるからである。この協調は肩甲上腕リズムと呼ばれる。

この大きな動きの背景に、肩の構造がある。整形外科医の解説では、肩は骨の接する面が小さく、肩甲骨は鎖骨の下にぶら下がるような形で体につながる[3]。つまり、骨で支える面が小さいぶん、肩甲骨が動いて腕の可動域を広げる作りである。

骨の面が小さいぶん、肩を安定させる仕事は筋肉と靭帯に回る。腕を自由に動かせる代わりに、肩の周りの筋肉が働き続ける構造だと言える。では、その肩は、普段どれくらいの重さを支えているのか。

5. あるく とき、うでは どうして ふれるの?

5. 歩くときの腕振りは、ほとんど振り子の動き

5. 歩行時の腕振り ── 受け身の振り子運動と、固定したときの代謝コスト

うで 1ぽんの おもさは、たいじゅうの 6パーセントくらい だと いわれます[4]。たいじゅう 40キロなら、40の 6パーセントで、およそ 2.4キロです。

この おもい うでを、かたは いつも ささえて います。あるく とき うでが ふれるのは、きんにくで ふって いるからでしょうか。

そうでは なく、あしの うごきに つられて、ふりこの ように ゆれる ことが おおいと いう けんきゅうが あります。うでを ふらない ように じぶんで とめて あるくと、あるくのに つかう エネルギーが 12パーセント ふえた という けんきゅうが あります[5]。

ふだんは、うでが かってに ふれて くれる ので、らくに あるけるのです。

腕1本の重さは、体重の約6パーセントだとされます(資料によっては6〜8パーセントと幅があります)[4]。体重40キロなら、40×0.06=2.4で、およそ2.4キロです。二足で歩くようになって腕は体からぶら下がる形になり、肩はその重さを常に支えています[4]。

歩くとき腕が前後に振れるのは、筋肉で振っているからでしょうか。2009年の研究では、腕振りは足の動きにつられる振り子のような受け身の動きが中心で、筋肉の力はあまり要らないと報告されています[5]。実際、腕を意識して固定したまま歩いてもらうと、歩くのに使うエネルギーが約12パーセント増えました[5]。体に縛りつけた場合の増加は約7パーセントです。

この研究は、腕振りが足の地面への回転の力を小さくする助けになる、という説明も示しています[5]。ただしその仕組みは今も研究が続いているので、「そう考えられている」と受け止めるのが安全です。

歩くときには、腕は静かに揺れています。では、腕が力いっぱい働くとき、体はどんな動きをするのでしょうか。

腕1本の重さは体重の約6パーセントとされ、資料によっては6〜8パーセントと幅がある[4]。体重40キロなら約2.4キロである。二足歩行では腕が体からぶら下がり、肩は常にこの重さを受ける[4]。

では歩くときの腕振りは、この重い腕を筋肉で振っているのか。Collins らの研究(2009)は、そうではなく、足の動きにつられる受け身の振り子運動が中心で、筋肉の力はあまり要らないと報告している[5]。根拠として、協力した人が腕を意識して固定したまま歩くと、歩行の代謝エネルギーが約12パーセント増えた[5]。腕を体に縛った場合の増加は約7パーセントで、条件で値が違う。腕を固定すると損をするので、腕振りは楽に起こり、かつ全体として得になる、と読める。

得になる理由として、この研究は、腕振りが足が地面に与える鉛直軸まわりの回転力(モーメント)を小さくすると示している[5]。原著は体幹の角運動量には変化がないと述べており、腕振りは足からの回転力を小さくする助け、という位置づけである。ただし機構の詳細は研究が続いており、「〜とされる」の強さで読むべきである。

歩くときは、腕は静かに揺れるだけである。では、腕が全力で働く動きでは、肩の中で何が起きるのか。投げる動作に、その答えがある。

6. ボールを なげる とき、かたの なかは どんな はやさ?

6. 投げる肩は、人体で最も速い動きを生む

6. 投てき動作の内旋 ── 弾性エネルギーの蓄積と放出、200万年前の進化

ボールを なげる とき、かたの なかで うでの ほねが ぐるっと まわります。この まわる はやさは、ほんの すうミリびょうの あいだに、1びょうあたり 9,000どを こえる ことが あると いわれます[6]。1びょうに 25かい まわる はやさ です。ただし、ごく みじかい いっしゅんだけです。

にんげんの からだが だす うごきの なかで、いちばん はやいと ほうこく されて います[6]。

この はやさは、きんにくの ちから だけでは ありません。かたの まえがわの きんにくや すじに、ゴムの ように ちからを ためて、いっきに はなす からです[6]。ゴムを ひっぱって はなすと、はやく とびます。それと にた しくみ です。

この つくりは、およそ 200まん ねんまえ、ホモ・エレクトスの ころに そろいはじめたと かんがえられて います[6]。かりに やくだった のかも しれないと いう ことです。

冒頭の問いに戻ります。投げるとき肩の中では、上腕の内旋と呼ばれる回転が、数ミリ秒のあいだに毎秒9,000度を超えることがあります。人体が生み出す最速の動きと報告されています[6]。9,000度は25回転ぶんで、毎秒25回転が続くわけではなく、ごく短い一瞬のピークです。

筋肉が縮む力だけでこの速さを出しているのではありません。論文は、肩の前側の筋肉・腱・靭帯に弾性エネルギーをため込み、ゴムを引いて放すように一気に解放するのだと説明しています[6]。引くだけの筋肉が、ためて放す仕組みをつくることで、押すような速い動きを生み出している、と読めます。

この論文は、こうした投げる動きに必要な体の特徴が、約200万年前のホモ・エレクトスの頃にそろい始めたことも示しています[6]。狩りで役立って自然選択が働いた可能性が高い、というのが論文の結論で、断定はされていません。

曲げ、ひねり、振り、投げる。腕の働きは、筋肉は引くことしかできないという一点から広がっていました。

投げ動作の最終局面では、上腕の内旋が数ミリ秒のうちに毎秒9,000度を超えうる。9,000度は1秒あたり25回転に相当するが、これは瞬間的なピーク値であり、持続する回転速度ではない。Roach らの研究(2013)は、この回転を人体が生み出す最速の動きと報告している[6]。

筋肉は収縮して引くだけである。それでもこの速度に達するのは、肩の前側の筋・腱・靭帯が弾性エネルギーを蓄え、ゴムを引いて放すように一気に解放するからである[6]。つまり、引くだけの筋肉でも、「ためて放す」構造を組み合わせれば、押し出すような爆発的な動きが可能になる。

同研究は、肩の構造に関するこうした特徴が、約200万年前のホモ・エレクトスの時代にそろい始めたと示している[6]。結論は、狩りに役立って自然選択が働いた可能性が高い、というもので、投げる動作と狩りの因果が断定されたわけではない。

腕は「引く筋肉の組」を基本に、前腕の回旋、動きやすさを優先した肩、受け身の振り子、ためて放す弾性を重ねて、多様な動きを実現している、というのが一連の資料から読める全体像である。

もっと しりたく なったら

腕の働きを、自分の体で確かめるには

腕の構造を、自分の体と原典で確かめるには

おうちで

ひじを まげた まま、てのひらを うえ、した、うえ、した と かえして みましょう。もう かたほうの てで、まえうでを そっと にぎって いると、なかで ほねが うごく ようすが わかります。

あるく とき、うでを ふらずに あるいて みましょう。ふると ふらないで、じぶんでは どう かんじるか くらべます。けんきゅうの けっかを たしかめる わけでは ありません。

しらべる ときは

がっこうの としょかんで、からだの ほんを ひらいて みましょう。「きんにく」の ページに、うでの ずが あります。

家でできること

ひじを曲げて、反対の手で前腕を軽く握ったまま、手のひらを上向き・下向きと返してみましょう。前腕の中で骨が動く感触が分かります。

歩くとき、腕を振らないようにして数十歩進んでから、普通に振って歩いてみましょう。体のひねりや疲れ方の違いを感じるか、観察してみます。数字の差は人によって違い、自分では測れません。

調べるには

名古屋市科学館の展示解説(L401)は、日本語で腕の筋肉をまとめています。体の資料では、筋肉のペアがほかの関節にもあるかを探してみると、広がります。

家でできること

ひじを曲げ、反対の手で前腕を軽く握って、手のひらを上下に返す。手首側の骨が動き、2本の骨の位置関係が変わる感触を確かめる。次に腕を振らないようにして歩き、普段との違いを自分の感覚で観察する。研究結果の確認ではなく、感じ方の比較である。

資料を読むなら

Collins ら(2009)と Roach ら(2013)は、どちらも要旨が公開されている。腕を固定した条件と縛った条件で値が違うこと、投げる動作と狩りの関係が可能性として述べられていることなど、結論の強さが条件に左右される点を、自分で読み取ってみるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

ひじの曲げ伸ばしと前腕の筋肉は名古屋市科学館の展示解説、前腕のひねりと肩は解剖学・整形外科の解説、歩行と投げる動きは英語の研究論文による。論文は要旨をもとに読んでいる。

  1. 名古屋市科学館 展示解説 L401「腕の動きと筋肉」 https://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibit_files/pdf/L401.pdf (筋肉のペア・上腕二頭筋と三頭筋・前腕の筋肉)
  2. Kenhub "Pronation and supination" https://www.kenhub.com/en/library/anatomy/pronation-and-supination (前腕の回内・回外と二頭筋)
  3. 幻冬舎ゴールドオンライン(整形外科医の解説) https://gentosha-go.com/articles/-/9619 (肩の構造と肩甲骨)
  4. 幻冬舎ゴールドオンライン(整形外科医の解説) https://gentosha-go.com/articles/-/46663 (腕の重さと肩の負担)
  5. Collins, Adamczyk & Kuo (2009) Proc R Soc B 276:3679 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2817299 (歩行時の腕振り)
  6. Roach et al. (2013) Nature 498:483 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3785139 (投げる動作と肩の弾性エネルギー)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。