1. まどの そとが しろい。きり? もや?
1. 窓の外が白い朝 ── 霧か、もやか
1. 白く見える朝 ── 霧ともやはどちらも水滴の現象
あさ おきて カーテンを あけたら、まちが しろく ぼやけて います。とおくの たてものが、うっすら しか 見えません。
こんな ときに 「きりだ」と いう ひとも いれば、「もやだね」と いう ひとも います。どちらも まちがいでは ありません。
ふたつは、ちいさな みずの つぶが くうきの なかに うかんで いる ところが にています[1]。では、なにで なまえを わけて いるのでしょう。
朝、カーテンを開けると、街が白くぼやけていて、遠くのビルがうっすらとしか見えない。そんな景色を、霧と呼ぶ人もいれば、もやと呼ぶ人もいます。
実は、どちらも空気中に浮かぶ細かい水の粒が主な原因で、成り立ちはよく似ています[1]。では、ふたつを分けているものは何でしょうか。見た目の白さでしょうか。濃さでしょうか。
朝、窓の外が白くかすんでいるとき、それを霧と呼ぶか、もやと呼ぶかは、日常ではあいまいに使われることが多い。しかし気象庁の予報用語では、霧は「微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態」、もや(靄)は「微小な浮遊水滴や湿った微粒子により視程が1km以上10km未満となっている状態」と、はっきり区別されている[1]。
どちらも水滴が主役であることは共通している。そのため、現象の種類が違うのではなく、同じ現象を別の基準で切り分けていると読める。では、その基準は何か。
2. ふたつを わける 「1キロ」って、なに?
2. 分かれ目は「1キロ先が見えるか」
2. 視程1kmという線 ── 見通しの距離で分ける理由
こたえは、「まっすぐ よこに、どれだけ とおくまで 見えるか」です。これを してい(見とおせる きょり)と いいます。
1キロ さきまで 見えなく なって いたら、きりです。1キロより とおくまで 見えて いて、10キロ さきまでは 見えない ときは、もやと よびます[1]。
1キロは、ゆっくり あるいて 15ふん ほどの きょりです。そのくらい さきの たてものが 見えなければ、きり、という ことです。
この きまりは、にほんだけでは ありません。せかいの きしょうの なかまたちも、おなじ 1キロで わけて います[3]。
答えは、「水平方向に、どこまで遠くが見えるか」です。この見通せる距離を「視程」といいます。
視程が1キロ未満なら霧、1キロ以上で10キロ未満ならもや、と気象庁は決めています[1]。同じ気象庁の子ども向けの解説も、1キロを境にする点は同じです[2]。10キロより遠くまで見えているときは、もやとは呼びません。
1キロは、大人がゆっくり歩いて15分ほどの距離です。それだけ先の建物が見えなければ霧、ということになります。
この線は日本だけの決まりではありません。世界気象機関の国際雲図帳も、水平視程が地表で1キロ未満になれば「fog(霧)」、そこまで下がらなければ「mist(もや)」と、同じ1キロで区分しています[3]。
視程とは水平方向に見通せる距離であり、霧ともやはこの値だけで区別される。微小な水滴による視程が1km未満なら霧、1km以上10km未満ならもやで、10km以上見通せる状態は、もやとは呼ばない[1]。気象庁の気象台向けQ&Aも「水平視程が1km未満をきり、1km以上をもや」としており、同じ機関の説明の中で基準は揃っている[2]。
この基準は国内だけのものではない。WMOの国際雲図帳は、微小な水滴が地表での水平視程を1km未満にしたときに「fog」、1km未満まで下がらないときに「mist」と使い分ける[3]。国や言語が違っても、境目の数字が同じなのは、人や車、船、飛行機の動きに直結する見通しを、共通の物差しで伝える必要があるからだと考えられるが、資料はこの理由を明記していない。
一方で、見た目にも違いはあるとされる。同じ雲図帳は、霧を景色をおおう白っぽいベール、もやをやや薄い灰色がかったベールと述べ、霧の中では空気が湿って感じられ、霧の粒が肉眼で見えることもあるという[3]。ただし、区別の基準はあくまで視程であり、色ではない。
3. きりは、じめんに おりて きた くも?
3. 霧は、地面におりてきた雲?
3. 霧と雲 ── 名前を決めるのは位置
きりの しょうたいは、じめんに くっついた くもだと いわれます[4]。くもと きりは、どちらも ちいさな みずの つぶが あつまった ものです。
そらの たかい ところに あれば くも、じめんに ふれて いれば きり、と よび わけるのです。
やまに のぼって、くもの なかに はいった ことが ある ひとは、まわりが しろく なって、まえが よく 見えなく なったのを おぼえて いるかも しれません。じめんに くもが ふれて いれば、そこは きりの なかと いえます。
ただし、くもは くもで、きりは きりです。なまえが ちがうのは、つぶの しゅるいでは なく、いる ばしょの ちがいです。
霧の正体は、「地面に接した雲」と説明されます[4]。雲も霧も、中身は細かい水滴(雲では氷の粒をふくむこともあります)で、地面に接していれば霧、接していなければ雲と、便宜的に呼び分けているのです。
山に登って雲の中に入ると、あたりが真っ白になって見通しが悪くなります。下の町から見れば雲ですが、そこにいる人にとっては、霧の中にいるのと同じ状態、と考えると想像しやすいでしょう。
注意したいのは、「霧=雲」とは、どちらも水滴でできているという意味だということです。呼び名を分けているのは、空のどこにあるかです。
ここで、もう一つ疑問が浮かびます。空の高いところにできる雲が、なぜ、地面のそばにできるのでしょうか。
霧の正体は地面に接した雲である、という説明が気象の解説では広く使われる[4]。霧と雲は、いずれも微小な水滴の集まりで(雲は氷の粒を含むこともある)、地面に接していれば霧、接していなければ雲と便宜的に呼ぶ。位置で名前が決まる。
たとえば山の斜面で雲の中に入れば、地面に接した状態になる。下から見上げる人には雲でも、その中にいる人には霧の中にいるのと同じ状況になる、と理解できる。ただし、この山の例は、資料の定義をもとにした筆者の読み替えであり、個々の場面で霧と呼ぶか雲と呼ぶかは気象台の判断による。
ここで、雲が地面近くにできるにはどんな条件がいるのか、という疑問が生じる。次に、霧のできかたを見る。
4. きりは、どんな よるに できるの?
4. 霧ができやすい夜と場所
4. 霧の生まれかた ── 冷える地面、暖かい水面
きりが できやすい よるの ひとつは、はれて かぜが よわい よるです[6]。
そらに くもが ないと、じめんの あつさが、よるの うちに そらへ にげて いきます。じめんが ひえると、そばの くうきも ひえて、みずの つぶが でて きます。
これを、ほうしゃぎりと いいます。ふかい たにや、まわりを やまに かこまれた ところに できやすいと いわれます。
ほかにも、つめたい うみの うえに あたたかい くうきが ながれこんで できる きりや、つめたい くうきが あたたかい みずの うえに きて できる きりも あります[6]。
霧ができやすい夜の一つは、晴れて風が弱い夜です。雲がないと、昼のうちに温まった地面の熱が夜のあいだに空へ逃げていき、地面と、そのすぐ上の空気が冷えます。空気は冷えると水蒸気を抱えておけなくなり、細かい水の粒になって現れます。
こうしてできる霧を「放射霧」といい、夜半から早朝に出やすく、盆地や谷に多いとされます[6]。
ほかにも、冷たい地面や海の上に暖かい空気が流れ込むとできる「移流霧」、冷たい空気が暖かい水面にふれてできる「蒸気霧」(冬の川や湖など)があります[6]。
どれも、空気が水蒸気を抱えておけない温度まで冷える、という点は共通しています。では、霧が濃くなると、どこまで見えなくなるのでしょうか。
霧のできかたには複数の型がある。空気が冷えて水蒸気を保持できなくなると、余った水蒸気が水滴になる。代表的なのは、晴れて風の弱い夜に地表が放射冷却で冷えて生じる放射霧で、夜半から早朝に出やすく、盆地や谷に多い。ほかに、冷たい地面や海面に暖かい空気が流れ込んでできる移流霧、冷たい空気が暖かい水面に触れてできる蒸気霧(冬の川や湖など)がある[6]。
共通するのは、空気が水蒸気を保持できる限界の温度まで冷えると、余った水蒸気が微小な水滴に変わる点である。ただし、この節の型分けは気象衛星センターの資料の抜粋による整理で、個々の霧がどの型に当たるかは、場所や気象条件を見て判断される。
それでは、霧が濃いとき、見通しは具体的にどこまで悪くなるのか。
5. とても こい きりは、どれくらい 見えないの?
5. 濃い霧では、どこまで見えないのか
5. 濃霧の目安 ── 陸上100m、海上500m
きりの なかでも とくに こい ものを、のうむと いいます。りくの うえで、100メートルくらい さきまでしか 見えない ときが めやすです。うみの うえなら、500メートルくらいです[5]。
100メートルは、1キロの 10ぶんの 1 です。がっこうの プールの 4 ばいくらい さき で、もう 見えなく なります。
りくと うみでは、のうむちゅういほうの めやすが ちがいます。
のうむの ときは、てんきよほうで「のうむちゅういほう」が でる ことが あります。ちいきに よって きじゅんも かわるので、ここで しょうかいした 100メートルと 500メートルは、ひょうごけんの れいです。
霧の中でも特に濃いものは「濃霧」と呼ばれ、視程が陸上でおよそ100メートル、海上で500メートル以下の霧とされます[5]。100メートルは、1キロの10分の1。50メートル走のコースの倍の先が、もう見えない状態です。
この値は濃霧注意報の目安にも使われ、兵庫県の例では、陸上は視程100メートル以下、海上は500メートル以下を目安に出されます[5]。注意報の基準は地域ごとに違うので、これは一つの例です。
海上のほうが基準が長くなっている理由は、資料に書かれていません。船の速さや止まるまでの距離と関係があると想像できますが、ここでは推測にとどめます。
霧のうち、視程が陸上でおよそ100m、海上で500m以下のものを濃霧という。霧の定義(1km未満)よりずっと短い距離で、1kmの10分の1と2分の1に当たる。濃霧注意報もこの値を目安に出され、兵庫県の例では陸上100m以下、海上500m以下である[5]。
注意報の基準は地域ごとに異なるため、ここで示した数字は一つの例にすぎない。海上の値が陸上より大きい理由は、資料には記載がなく、船の速度や制動距離との関係を想像することはできても、確かな説明ではない。
霧ともやの線が1kmで、濃霧がその10分の1や2分の1であると分かると、見通しの数字が天気の言葉の中でどう使い分けられているかが、少し見えてくる。では、ここまで出てこなかった「霞」は、どこに入るのか。
6. かすみは、ちがう ことばなの?
6. 「霞」は天気の言葉ではない
6. 霞・煙霧・もや ── 水の粒かどうかという区別
はるの ころに、とおくの やまが ぼんやり して 見える ことが あります。これを「かすみ」と よぶ ことが あります。
でも、かすみは てんきよほうでは つかわない ことばです[2]。きしょうの ことばでは ありません。くうきの なかに ちりや けむりの つぶが うかんで、とおくが しろっぽく 見える けしきを「かすみ」と よぶ ことが あります。
かすみの もとは、みずでは なく、ほこりや かふん などの つぶだと いう せつめいも あります[4]。そうすると、ぬれた みずの つぶで できた きり・もやとは、ちがう ものです。
春の遠くの山がぼんやり見えるとき、「霞がかかる」と言います。けれども、霞は気象用語ではなく、天気予報には使われません。空気中に小さなちりや煙の粒がたくさん浮かんで、白っぽく見えることをまとめて呼ぶ言葉です[2]。
民間の解説には、霞をちりや花粉、黄砂などの細かい粒で遠くがぼんやり見えることとするものもあります[4]。つまり、霧やもやが水の粒なのに対し、霞は水以外の粒が中心、という見方になります。
気象庁の用語には「煙霧」もあります。乾いた微粒子で視程が10キロ未満になった状態で、水の粒かどうか、つまり湿っているか乾いているかが、もやとの違いです[1]。
霞は気象用語ではなく、空気中にちりや煙の粒が多く浮かんで白っぽく見えることを、まとめて呼ぶ言葉である。天気予報では使われない[2]。民間の解説では、ちりや花粉、黄砂などの細かい粒で遠方がぼんやり見える状態とされ、水滴が主体の霧・もやとは成り立ちが異なる[4]。
似た言葉に、気象庁の用語としての煙霧(えんむ)がある。「乾いた微粒子により視程が10km未満となっている状態」で、もやとは、粒が水か乾いた粒子か(湿っているか乾いているか)で区別される[1]。
整理すると、見通しの距離で霧とももやを分け、粒が乾いているかで煙霧を分け、霞は天気の言葉の外にある。同じ「白くかすむ」景色でも、何を基準に見るかで名前が変わる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
まどから 見える、いちばん とおくの たてものや やまを ひとつ えらびます。ちずちょうや ちきゅうぎの ものさしを つかって、そこまで 何キロ あるか しらべて みましょう。ちずを 見る ときは、おうちの ひとと いっしょに します。
つぎの 日から、その たてものが 見える 日と、見えない 日を ノートに かいて みます。
出かけてできること
きりや もやの 日に、そとの けしきを 見て みましょう。どこまで 見えるか、ちかくに 目じるしに なる ものが あるかを さがして みます。あぶないので、くるまの とおる ところや うみ・かわの ちかくには 行かないで ください。
こうしきの 情報
きしょうちょうの ホームページに、きりや もやの せつめいが あります。こどもむけの ページも あります。
今日できること
窓から見える一番遠い建物か山を決めて、そこまで何キロあるかを地図で調べてみてください。次の日から、その目印が見える日と見えない日をノートにつけて、くらべてみましょう。
出かけてできること
霧ともやが出た日に、どこまで見通せるかを観察してみましょう。白い紙と灰色の紙を用意して、景色の色がどちらに近いかを見比べてみましょう。道路や川、海のそばは危ないので、安全な場所から見てください。
公式情報
気象庁の予報用語(視程に関する用語)と、子ども向けのQ&Aを読むと、霧・もや・煙霧・霞の違いが短い文で書かれています。
今日できること
窓から見える最も遠い目標物を決め、地図で距離を測る。その目標物が見える日と見えない日を記録し、天気や湿り気の違いと並べて比べる。
出かけてできること
霧ともやが出た日に、見通せる距離を目標物で見積もり、景色の色合い(白っぽいか、灰色がかるか)を白と灰色の紙に描いて比べる。道路・水辺の近くは避け、安全な場所から観察する。
公式情報
気象庁「予報用語(視程に関する用語)」に霧・もや・煙霧の定義がある。WMO国際雲図帳(英語)の「Fog compared with mist」には国際的な区別がある。ここで触れなかった霧の種類(放射霧など)の物理は、気象衛星センターの資料で読める。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、気象庁の予報用語と子ども向けQ&A、WMOの解説で視程の線引きを確かめた。tenki.jpは霧と雲・霞の説明、神戸市の資料は濃霧の目安、気象衛星センターの資料は霧の型に使った。
- 気象庁「予報用語(視程に関する用語)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kori.html (霧・もや・煙霧の定義)
- 気象庁 子ども向けQ&A(霧・もや・霞) https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a2_12.html (1kmの線引き・霞は気象用語でない)
- WMO International Cloud Atlas: Fog compared with mist https://cloudatlas.wmo.int/en/fog-compared-with-mist.html (国際的な区別・見た目の違い)
- tenki.jp「霧の正体と関連現象」 https://tenki.jp/suppl/m_seta/2025/05/06/32635.html (霧は地面に接した雲・霞の粒)
- 神戸市 気象台の情報解説 https://www.city.kobe.lg.jp/z/kikikanrishitsu/topikkusu23.html (濃霧の目安。兵庫県の例)
- 気象庁 気象衛星センター資料(第7章) https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/prod/pdf/book/2-chapter7.pdf (霧のでき方の型)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。