1. フォークが シリンダより 高く 上がるのは、なぜ?
1. シリンダが10センチ伸びると、フォークが20センチ上がるのはなぜか
1. フォークの上昇量がシリンダの伸びの2倍になるのは、なぜか
フォークリフトの 前には、2本の フォークが あります。この フォークは、マストと いう 高い 柱に そって、上がったり 下がったり します。うごかして いるのは、油の ちからで おす シリンダと いう つつです[3]。
シリンダが 10センチ のびると、フォークは 20センチ 上がる ことが あります。しかけは、チェーンです。チェーンは、シリンダの 先の かっしゃに かかって いて、りょうがわから ひっぱられます。そのため、うごきが ちょうど 2ばいに なります[4]。
ただし、2ばいに なるのは、よく ある つくりの はなしです。きかいに よって、しくみが ちがう ことも あります。
これで 高い ところまで 上げられます。でも、にもつを 上げるほど、車は ぐらぐら しそうです。
フォークリフトの前には、2本のフォークがついています。フォークは車体の前にあるマストに沿って、油圧シリンダの力で昇り降りします[3]。荷を積んだフォークの台を持ち上げる部品には、シリンダのほかにリフトチェーンなどがあり、マストを前後に傾けるのは、また別のティルトシリンダです[1]。
面白いのはチェーンです。イギリスのフォークリフト訓練の解説では、チェーンはシリンダ側の滑車に掛けられ、両側から引かれるため、フォークはシリンダが動いた距離のちょうど2倍上がる、とされています[4]。シリンダが1メートル伸びれば、フォークは2メートル上がる計算です。ただし、これは一般的な構成の話で、すべての機種が同じとは限りません。
高く上げられても、荷は車体の前に突き出たままです。前に倒れないのでしょうか。
フォークは車体前部のマストに沿って、油圧シリンダで昇降する[3]。荷役装置は、リフトシリンダ、リフトチェーン、インナマスト・アウタマストなどからなり、マストを前後に傾けるのは別のティルトシリンダが受け持つ[1]。つまり「持ち上げる」と「傾ける」は、別々の油圧の動きである。
ここで目を引くのが、リフトチェーンの掛け方だ。英国のフォークリフト訓練資料によると、チェーンはシリンダ側の滑車に掛けられ両側から引かれるので、フォークの上昇量はシリンダの伸びのちょうど2倍になる。シリンダが10cm動けばフォークは20cm上がる計算になる[4]。動滑車と同じ考え方で、シリンダの動きが2倍に拡大されて荷に伝わる。
ただし、この資料は特定の構成を例にした説明であり、全機種に共通とは言えない。しかも、持ち上げる高さがいくら増えても、荷が車体の前に突き出している事実は変わらない。では、前に倒れる力はどう抑えているのか。
2. おもい にもつを 前に 出しても、どうして ひっくりかえらないの?
2. 荷を前に出しても、前に倒れにくいのはなぜか
2. 荷を車体の前で支えながら、倒れずにいられるのはなぜか
シーソーを おもい だしてみましょう。かるい 子と おもい 子が のると、おもい ほうが 下がります。おもい 子が シーソーの まん中に ちかづくと、つりあいます。
フォークリフトも にた ことが おきます。にもつを 前に もつと、車は 前に かたむこうと します。だから、車の うしろに カウンタウェイトと いう おもりを つけて、つりあいを とって います[1]。
フォークリフトの 車たいは、わりと おもい つくりです。スピードも ゆっくりで、いちばん はやくて 1じかんに 10〜20キロメートルほどです[1]。
ただし、シーソーは たとえです。ほんとうは、車の おもさと にもつの おもさを あわせた「まん中の ところ」が、どこに あるかで きまります。
学校のシーソーを思い出してください。軽い子と重い子が乗ると、重い子のほうが下がります。重い子が支点(真ん中)に寄ると、つり合います。
これは「力のモーメント」で説明できます。モーメントは「力×支点からの距離」で、支点の左回りと右回りが等しければ、シーソーは止まります[2]。フォークリフトでも、荷が車体から前に離れるほど、前に倒れる向きの回す力が大きくなると考えられます。
そこで、フォークリフトは車体の後ろにカウンタウェイトという重りを付け、安定性を高めています。車体は比較的重く、最高速度は約10〜20km/hとゆっくりです[1]。
荷を積むと、車体と荷を合わせた重心が前へ寄ります。アメリカの労働安全衛生局(OSHA)の教育資料では、止まっている状態で、前の左右の車輪と後軸の中心を結ぶ三角形の内側にその重心があることが、倒れない条件だと説明されています。外へ出ると倒れます[5]。走っているときは、急ブレーキや急ハンドルでも倒れる危険があるので、油断はできません。
では、荷の重さと位置のどちらが、どれほど効くのでしょうか。
荷を車体の前方で支えるため、フォークリフトは後部にカウンタウェイトを取り付けて安定性を高めている。車両重量は比較的大きく、最高速度は約10〜20km/hの低速である[1]。重りで安定性を高める設計と、低速で走る機械であることは、並べて押さえておきたい特徴である。
考え方の土台は、力のモーメント(力×距離)のつり合いである。天秤のように、支点の左回りと右回りのモーメントが等しければ静止する。フォークリフトでは、フォークの根元から荷の重心までの距離によって、モーメントのつり合いの上で積載できる荷重が制限される[2]。荷の重さが同じでも、荷の重心が支点から2倍遠くなれば、前に倒れる向きのモーメントは2倍になる。
荷を積むと、車体と荷を合わせた重心は前へ寄る。米国のOSHAの教育資料は、前の左右の車輪と後軸中心を結ぶ三角形(安定三角形)を使い、静止状態で合成重心がその内側にあることを安定の条件とし、外に出ると転倒すると説明している[5]。走行・旋回中の転倒リスクがなくなるわけではない。この三角形は米国の安全教育での説明であり、日本の資料の定義とは別に読む必要がある。
では、荷の重さと荷までの距離は、積める重さにどう表れるのか。
3. にもつの おもさは、どれくらい まで つめるの?
3. 積める重さは、荷の位置でどう変わるのか
3. 最大荷重とは何か ── 荷の重心の位置で変わる積載限度
フォークリフトには、のせられる おもさの きまりが あります。「さいだい荷じゅう」と よばれ、きまった 場しょに にもつを のせた ときの、いちばん おもい おもさの ことです[1]。
この きまりは、にもつの まん中が フォークの つけねから どれだけ はなれて いるかで かわります。はなれる ほど、のせられる おもさは へります[1]。
シーソーで いうと、おもい 子が はしに すわるほど、あいての 子を うんと おもく しないと つりあわない のと おなじです。
フォークリフトには「最大荷重」という数字があります。基準になる荷重中心に載せられる最大の重さのことで、マストを垂直にし、フォークの上面を地面から300mmの高さに上げた状態で決められています[1]。
ここで大事なのは、荷の重心がフォークの根元から遠くなるほど、許容荷重表で積める重さは下がることです[1]。シーソーで、重い子が端に座るほど、反対側をうんと重くしないとつり合わない、というのと同じ関係です。同じ荷物でも、細長くて重心がフォークの先のほうにあれば、安全に運べる重さは小さくなります。
後ろに重りがあっても、積める重さに上限があるのは、こうした条件つきで決められているからです。次は、倒れにくさとは別の工夫、曲がり方です。
最大荷重は、基準荷重中心に負荷できる最大の荷重である。基準負荷状態とは、基準荷重中心に最大荷重を積み、マストを垂直にしてフォーク上面を地上300mmにした状態を指す[1]。
荷の重心がフォークの根元から遠いほど、許容荷重表で積める重さは下がる[1]。前章のモーメントで考えれば、荷までの距離が増えたぶん、同じ重さでも倒れる向きのモーメントが大きくなるので、重さを減らして釣り合わせるしかない、という理屈になる[2]。つまり、最大荷重の数字は「どんな荷でも、その重さまで積める」ことを保証する数字ではなく、決められた条件で積んだときの上限である。同じ荷物でも、細長くて重心が先に寄る形なら、安全に運べる重さは小さくなる。
倒れにくさと並んで、もう1つ、この機械には自動車と逆の工夫がある。それが曲がり方だ。
4. フォークリフトは、なぜ うしろの 車りんで 曲がるの?
4. 自動車と逆に、なぜ後ろの車輪でかじ取りをするのか
4. なぜ、操向を前輪でなく後輪で行うのか
ふつうの 車は、前の 車りんの むきを かえて 曲がります。でも フォークリフトは、うしろの 車りんの むきを かえて 曲がります[1]。
そうこの せまい とおりでも 走りやすく する ためです[1]。それに、すぐ ちかくに ある にもつの 下へ、フォークを ぴったり さしこむ ためでも あります[3]。
前の 車りんは、すすむ ちからを 出す ほうに なって います[3]。うごかす ほうと、むきを かえる ほうを、前と うしろで わけて いる のです。
倉庫の通路で、荷の真下にフォークを差し込む場面を想像してください。ずれたら荷を押してしまいます。そのため、フォークリフトは自動車と逆に、前の車輪で走り、後ろの車輪でかじ取りをするのが一般的です[3]。
理由は、倉庫のような狭い通路でも走りやすくするためです[1]。小回りがきき、すぐ近くの荷の下に正確にフォークを差し込まなければならないから、とも説明されています[3]。前の車輪が走る力を出し、後ろの車輪が向きを変える、という役割分担です。
動力にはガソリン、ディーゼル、液化ガス、蓄電池式などがあります[3]。では、この機械はいつ日本に来て、どう広がったのでしょうか。
フォークリフトの一般的な方式は前輪駆動・後輪操向で、自動車とは操向の方式が異なる[1]。厚生労働省の講習資料は、その理由を、倉庫内のような狭い通路を走りやすくするためと説明している[1]。別の百科事典は、四輪でありながら小回りがきき、至近の荷の下に正確にフォークを差し込む必要があるからだ、と述べる[3]。
前輪が走る力を担い、後輪が向きを変える。四輪でも小回りがきくのは、この分担のおかげと読める。
なお、動力にはガソリン機関が最も多く、ディーゼル機関、液化ガス式、蓄電池式などもある[3]。動力が何であれ、荷を前で支えるという条件は変わらない。
では、こうした設計は、日本でいつ、だれが作り始めたのか。
5. にほんの フォークリフトは、いつ、だれが 作りはじめたの?
5. 日本では、フォークリフトをどう作り始めたのか
5. 日本のフォークリフト量産の始まりと、機械遺産としての評価
フォークリフトは、1930ねんだいの はじめごろに アメリカで うまれた と いわれます[2]。そのころは、小さな にもつは 人の ちからで はこんで いました。
日本では、東洋うんぱんきの さいしょの しゃちょう、にわ のぼるさんが、あるとき アメリカの ぐんたいが もちこんだ フォークリフトを 見ました。それを 見て、自分たちでも 作ろうと きめた そうです[2]。
1949ねん、6,000ポンド(やく 2.7トン)の フォークリフトが、神戸の かいうんきょくに 4だい おさめられました[2]。その 1ごうきは、のちに 日本きかい学会の「きかい いさん」に えらばれました。みなとの にもつを あつかう しごとの たいへんさを かるく した ことなどが、ひょうかの ポイントと いわれます[2]。
1956ねんには、なんきょくでも フォークリフトが かつやくして、はなしに なった そうです[2]。
アメリカでは、フォークリフトは1930年代初めごろに生まれたといわれます。当時は小物の荷役は、たくさんの労働者に頼っていました[2]。起源の年は資料で少しずつ違い、クラーク社は自社の年表で、1922年に油圧を使うリフト車、1924年にフォーク付きの内燃機関式フォークリフトの出荷を挙げています。「世界初」とも書かれていますが、これは同社の主張です[6]。
日本では、東洋運搬機(今のTCM)の初代社長・丹羽昇が、日本に持ち込まれたアメリカ軍のフォークリフトを見て、自分たちで作ると決意したと伝えられています[2]。
6,000ポンド(約2.7トン)の車が、昭和24年(1949年)に当時の神戸海運局へ4台納められました。その1号機は、2010年度に日本機械学会から機械遺産に認定されています。評価されたのは、日本の物流機器開発の起爆剤になったことと、港での荷役作業の負担を軽くしたことです[2]。
昭和31年(1956年)には、TCM製のフォークリフトが南極でも使われたことが、話題になったそうです[2]。
今日、倉庫や店で見かけるフォークリフトを、自分の目で確かめられないでしょうか。
米国でのフォークリフトの誕生は、1930年代初頭とされ、当時の小物の荷役は労働者の人海戦術に頼っていた[2]。ただし起源の年は資料により異なる。クラーク社は自社年表で、1917年にフォークのないTructractor、1922年に油圧を使う内燃機関式のTruclift、1924年にフォーク付きの内燃機関式フォークリフトの出荷を挙げ、「世界初」と称する。第三者による裏づけは本稿では扱っていないため、同社の主張として読むのが妥当である[6]。
日本では、東洋運搬機(現TCM)の初代社長・丹羽昇が、日本に持ち込まれた米軍のフォークリフトを見て、開発と生産を決意したと伝えられる[2]。その成果が、昭和24年(1949年)に神戸海運局へ4台納入された6,000ポンド車(約2.7t)である。1号機は、2010年度に日本機械学会の機械遺産に認定された[2]。
認定の評価点は、日本の物流機器開発の起爆剤になったことと、港湾での荷役作業の負担を軽くしたことだったようだ[2]。昭和31年(1956年)には、TCM製が南極でも活躍して話題になった。ただし、この件は同じ資料の写真説明が根拠で、詳細は書かれていない[2]。
この記事の主張を、手元で確かめる道すじはある。
6. じぶんでも ためして みるには?
6. シーソーのつり合いを、手で確かめてみる
6. つり合いと資料を、自分で確かめる
やってみよう。つくえに じょうぎを おき、半分 くらいを つくえの 外に 出します。外に 出た 先に けしゴムを のせます。つくえの 上に のこった ほうには ふでばこを のせて、おちない ばしょを さがして みましょう。けしゴムを 先に のせるほど、ふでばこ がわに おもい ものが いります。
お店や こうじょうの そとから、フォークリフトを 見られたら、うしろの 車りんと、おもりの ところを 見て みましょう。見えない ときは、見える 車りんだけで だいじょうぶです。ちかくへは、行かないで ください。
つくえの端に定規を半分ほど出し、先に消しゴムを載せて、定規の根元側に筆箱などを載せます。落ちないぎりぎりの位置を探して、消しゴムを先に出すほど、後ろに重いものが必要になるかを見てみましょう。フォークリフトの後ろの重りと、同じ考え方です。
店や倉庫の外から、フォークリフトを見られる機会があれば、後ろの重りと、後ろの車輪の位置を探してみます。近づくのは危険なので、遠くから見るだけにしてください。後ろ側が見えなければ、見える車輪だけで十分です。荷を持ち上げているとき、フォークの高さがどれくらいかも見てみましょう。
もっと知りたい人は、厚生労働省の講習資料[1]や、日本建設機械施工協会の機関誌[2]に、荷役装置の名前や1号機の写真が載っています。
定規と筆箱でつり合いを試し、資料どうしで起源の年を読み比べてみよう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事実は、下の資料をもとに自分の言葉で書いています。企業の年表は、その会社自身の主張として読んでください。
- 厚生労働省 フォークリフト運転技能講習 資料 https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000628483.pdf (荷役装置・後輪操向・カウンタウェイト・最大荷重)
- 日本建設機械施工協会『建設の施工企画』2011年1月号 https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2011/01/011.pdf (モーメントのつり合い・日本の1号機・機械遺産)
- 世界大百科事典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%95%E3%83%88-123439 (油圧昇降・後輪操向・動力の種類)
- Fork Lift Training (UK)「Lift cylinders and chains」 https://fork-lift-training.co.uk/technical/forklift-masts/lift-cylinders-and-chains.html (チェーンと滑車による2倍の動き)
- OSHA「Powered Industrial Trucks」教育スライド https://obis.osha.gov/dte/library/pit/ppt/slide35.html (合成重心と安定三角形。米国の安全教育資料)
- CLARK History https://www.clarkmheu.com/en/company/history (クラーク社の自社年表)
なおした ところ
更新履歴
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