1. ひょうの 食べものは、なに?
1. ひょうの食べものは、冷たいのに凍っていない水の粒
1. ひょうは何を材料に育つのか:0℃より低くても液体のままの過冷却水滴
ひょうは、積乱雲から ふる、直径 5mm いじょうの 氷の かたまりです。5mmより 小さい ものは、あられと よばれます。
ひょうの 食べものは、雲の 中に ういている 水の つぶです。ただし、ふつうの 水では ありません。0℃より つめたい 空気の 中に いるのに、こおらないで 水の ままで いる つぶです。これを 過冷却の 水の つぶと いいます。
地上が あつい 夏でも、高く そびえる 積乱雲の 中は、とても つめたく なって います。そこで できた 氷の つぶに、水の つぶが ぶつかると、その まわりに こおりついて、氷が 少しずつ 大きく なります。
では、大きな ひょうには、その 水の つぶが いくつ いるのでしょうか。
ひょうは、気象庁の用語では、積乱雲から降る直径5mm以上の氷のかたまりです。5mm未満のものはあられと呼ばれます[1]。
地上が暖かい季節でも、背の高い積乱雲の中は気温が低く、水滴が凍って氷の粒ができます[2]。では、その氷の粒は、何を取りこんで育つのでしょうか。
材料は「過冷却」の水滴です。0℃より低い空気に囲まれているのに、液体のままでいる水滴のことです。ひょうはこの水滴にぶつかり、凍りつくことで大きくなります[4]。
育ちはじめの芯は、小さな氷のかけらです。カナダの百科事典は、凍った雨粒や雪あられが、大きな上昇気流のとなりの小さな上昇気流の中で育って芯になる、と説明しています[5]。芯が1種類に決まるわけではありません。
では、その水滴は、ひょう1つにつき何個ぶん必要なのでしょうか。
真夏の地上が暑くても、背の高い積乱雲の内部は気温が低く、水滴が凍って氷の粒ができる[2]。気象庁の予報用語では、積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊がひょう、5mm未満の氷の粒があられである[1]。では、この氷の粒は、何を取りこんで育つのか。
材料は過冷却水滴、つまり0℃より低い空気に囲まれているのに液体のままの水滴である。ひょうはこれに衝突して凍りつき、層をなして大きくなる[4]。水は0℃で凍ると考えがちだが、雲の中には、氷点下でも液体のままの水滴が浮かんでいる。
育ちはじめの芯は、小さな氷のかけらである。凍った雨粒や雪あられが、主な上昇気流の隣の小さな上昇気流の領域で育って芯になる、という解説がある[5]。芯は一つの種類に決まらない。そこに水滴が凍りつき、氷の結晶どうしが衝突することでも、氷のかたまりは大きくなる[3]。
では、材料となる水滴は、ひょう1個につき何個ぶん必要なのか。
2. 大きな ひょうは、雲の つぶを いくつ 食べるの?
2. 直径2cmのひょうは、雲の粒およそ10億個ぶん
2. 直径2cmのひょうは雲粒何個ぶんか:体積比による概算
雲粒の 半径は、0.01mmほどだ、と いう 話が あります。とても 小さいので、1つの つぶだけでは ひょうに なりません。
1円玉と おなじ 直径 2cmの ひょうを、この つぶだけで 作ると して けいさんすると、約 10億こぶんに なります。雨粒 1つは 雲の つぶ 100万こぶんと いわれるので、雨粒に すると 1000こぶんです。
ただし、これは おおよその けいさんです。ほんとうは、氷の つぶどうしが ぶつかって 大きく なる ことも あります。
雲粒の大きさは、資料によって表し方が異なります。半径約0.01mmとする解説があり[7]、ここではその値を使います。直径にすると0.02mmです。
直径2cm(20mm)のひょうと雲粒の直径の比は、20÷0.02=1000です。体積は長さの3乗で決まるので、1000の3乗、つまり10億になります。雲粒だけで直径2cmのひょうを作るとすると、約10億個ぶんの水が必要という計算です。直径5cmなら、2500の3乗で約160億個ぶんです。
雨粒1つは雲粒およそ100万個ぶんの体積とされます[7]。そこで、直径2cmのひょうは、雨粒に直すと1000個ぶんほどです。
この数字は、雲粒の大きさを仮定した概算です。氷は水より少し軽く、氷の結晶どうしの衝突でも大きくなるので[3]、目安として読んでください。
それほどの量を集めるには時間がかかります。その間、ひょうはどうして落ちずにいられるのでしょうか。
雲粒の大きさは、資料により表し方が異なる。半径約0.01mmとする解説や、直径100分の2mm以下とする資料があり[7]、ここでは半径0.01mm(直径0.02mm)として計算する。
直径2cm=20mmのひょうと雲粒の直径の比は、20÷0.02=1000。体積は長さの3乗に比例するので、1000の3乗で10億(10の9乗)になる。雲粒だけで直径2cmのひょうを作ると仮定すれば、約10億個ぶんの水が要る。直径5cmなら、(50÷0.02)の3乗で約1.6×10の10乗、およそ160億個ぶんである。
雨粒1つは雲粒約100万個ぶんの体積とされる[7]。これを使うと、直径2cmのひょうは雨粒およそ1000個ぶんにあたる。
この値には限界がある。雲粒の大きさは出典により表し方が異なるうえ、氷は水より少し軽く、氷の結晶どうしの衝突でも成長する[3]ため、この個数は、半径0.01mmの雲粒だけで作ると仮定した概算である。実際の成長の過程を表す値ではない。
では、それだけの量を集める間、ひょうは落ちずにいられるのか。
3. どうして 落ちないで、雲の 中に いられるの?
3. 食べ続ける間、ひょうを支える上昇気流
3. ひょうの大きさに関わる上昇気流の強さと滞在時間
ひょうが 雲の 中で 食べ つづけて いる 間、下から ふき上げる 強い 風が ささえて います。これを 上昇気流と いいます。
小さな 氷の つぶは、風に のって、何度も 上や 下へ うごきます。その 間に 水の つぶを あつめて、大きく なります。やがて 風が ささえきれなく なると、地上へ 落ちて きます。
アメリカの 資料では、直径 約 2.5cmの ひょうに、時速 約 80kmの 風が めやすです。約 10cmの ひょうには、時速 約 160kmの 風が めやすです。風が 強いほど、大きな ひょうが できます。
ゴルフボールの 大きさに なるまでには、雲の 中を 5〜10分ほど うごかないと いけない、と いう 話も あります。この 時間は めやすです。
落ちずにいる間、氷の粒は強い上昇気流に乗って何度も上下を繰り返し、そのたびに水滴が表面に凍りついて大きくなります[2]。やがて上昇気流が支えきれなくなったとき、氷のかたまりは落下します[3]。
つまり、ひょうの大きさは上昇気流の強さの影響を受けます。NOAA(米国海洋大気庁)の表では、直径約1インチ(約2.5cm)のひょうに約22m/s(時速約80km)、直径約4インチ(約10cm)のひょうに約44m/s(時速約160km)の上昇気流が目安とされています[4]。
時間にも幅があります。ゴルフボール大になるには雲の中を5〜10分たどる必要がある、という解説があり[6]、10〜50m/sの上昇気流が、ひょうを最長で約30分、雲の中にとどめるともいわれます[5]。どちらも目安で、固定の値ではありません。
先の概算とつなげてみます。ゴルフボール(直径約4cm)を雲粒だけで作ると約80億個ぶんで、これを5〜10分で集めるなら、1秒に1000万個を超える計算です(この記事の概算です)。
こうして取りこまれた氷には、どんな姿が残るのでしょうか。
10億個ぶんを集めるには時間がかかる。落ちずにいる間、氷の粒は強い上昇気流に乗って何度も上下を繰り返し、そのたびに水滴が表面に凍りついて大きくなる[2]。上昇気流が支えきれなくなったとき、氷のかたまりは落下する[3]。
したがって、ひょうの大きさは上昇気流の強さの影響を受ける。NOAAの表では、直径約1インチ(約2.5cm)のひょうに約49mph(約22m/s、時速約80km)、直径約4インチ(約10cm)に約98mph(約44m/s、時速約160km)の上昇気流が目安とされ、上昇気流が強いほど大きなひょうができる[4]。
時間の面では、ゴルフボール大になるのに雲の中を5〜10分たどる必要があるという解説があり[6]、10〜50m/sの上昇気流が、ひょうを最長で約30分、雲の中にとどめるともいわれる[5]。いずれも目安で、固定の値ではない。
前章の概算とつなげる。ゴルフボール(直径約4cm)を半径0.01mmの雲粒だけで作るなら約80億個ぶんで、5分なら1秒あたり約2700万個、10分でも約1300万個を取りこむ計算になる。1秒に1000万個を超える速さである。ただし、これは雲粒だけで作ると仮定した概算であり、実際の成長の速さを直接示すものではない。
では、そうして取りこまれた氷は、どんな姿になるのか。
4. ひょうの 氷が 白い ところと すきとおる ところが あるのは、どうして?
4. 白くにごった氷と透明な氷は、凍り方の違い
4. 乾燥成長と湿潤成長:氷の見た目は、何の違いを映しているのか
ひょうの 氷には、白く にごった ところと、すきとおった ところが あります。ちがいは、水の つぶが どんな ふうに こおるかです。
水の つぶが ひょうの 表面で すぐに こおると、空気の あわを とじこめて、白く なります。水が たくさん あって、表面が ぬれた まま ゆっくり こおると、あわが にげて、すきとおります。
ただし、白い ところと すきとおった ところの 数が、雲の 中を 上下した 回数と 同じ とは いえません。
ひょうの氷には、白くにごった部分と、透明な部分があります。違いは、水滴がどう凍るかにあります。
雲粒がひょうの表面でほぼ一瞬で凍ると、空気の泡を閉じこめて白くなります(乾燥成長)。水が多く、表面がぬれたままゆっくり凍ると、泡が逃げて透明な氷になります(湿潤成長)[4]。
ただし、白い層と透明な層の数が、雲の中を上下した回数とそのまま対応するとは言えません。
では、そうして育った氷は、どこまで大きくなるのでしょうか。
ひょうの氷は一様ではない。雲粒がひょうの表面でほぼ瞬時に凍ると、空気の泡を閉じこめて白く濁る。これを乾燥成長という。水が多く、表面がぬれたままゆっくり凍る場合は、泡が逃げて透明な氷になる。こちらは湿潤成長である[4]。
つまり、白さと透明さは、取りこんだ水の量と凍る速さの違いを映している。ただし、層の数を数えれば雲の中を上下した回数が分かる、とは言えない。層の数と上下の回数は、そのまま対応させられない。
では、そうして育った氷は、どこまで大きくなるのか。
5. いちばん 大きな ひょうは、どのくらい?
5. 日本と米国に残る、大きなひょうの記録
5. 熊谷と米国ビビアンで記録された大きなひょう
日本には、1917年(大正6年)6月29日に、埼玉県の 北の ほうで、直径 約 29.5cm、重さ 約 3400gの ひょうが ふった、と いう 記録が あります。かぼちゃ ほどの 大きさです。くまがやの 気象台が しょうかい して います。
ただし、はかったのは お寺の 人で、重さは とけた あとの 話を 人づてに 聞いた ものです。ていねいに はかった 数字では ありません。
アメリカでは、2010年7月23日に、サウスダコタ州の ビビアンで、直径 約 20cm、重さ 約 880gの ひょうが 見つかりました。アメリカで 集められた ものの 中で いちばん 大きく 重い、と みとめられて います。
大きな ひょうほど 落ちる 速さも 上がり、直径 5cmで 時速 100kmを こえる、と いう 話が あります。大きな ひょうは、畑の 作物や 車を いためる ことが あります。
落ちて きた ひょうの 大きさは、雲の 中の 風の 強さを 想ぞうする 手がかりに なります。
日本の記録としては、1917年(大正6年)6月29日に埼玉県北部の熊谷付近で、直径約29.5cm、重さ約3,400g、かぼちゃ大のひょうが降ったと、熊谷地方気象台が紹介しています[10]。
ただし、この数字は精密な観測値ではありません。大きさはお寺の住職の計測、重さは溶けたあとの値を伝え聞いたものです。「観測史上最大」とは言い切れず、29.6cmとする資料もあります。
米国では、2010年7月23日にサウスダコタ州ビビアンに降ったひょうが、直径8.0インチ(約20cm)、重さ約880gで、米国で回収された最大・最重のひょうとされています[9]。溶けて、測った時には小さくなっていた可能性もあります。
測り方が違うので、2つの数字を並べて優劣はつけられません。ひょうは大きいほど落ちる速さも増し、直径5cmで時速100kmを超えるという解説があります[8]。大きなひょうは、農作物や車を傷めることがあります。
落ちてきたひょうの大きさは、雲の中の上昇気流の強さを想像する手がかりになります。
日本の記録として、熊谷地方気象台は、1917年(大正6年)6月29日に埼玉県北部(熊谷付近)で直径約29.5cm、重さ約3,400g、かぼちゃ大のひょうが降ったと紹介している[10]。
ただし、この数字は精密な観測値ではない。大きさは住職の計測、重さは溶けた後の値を伝え聞いたものとされ、「観測史上最大」と断定はできない。29.6cmとする資料もある。
米国では、2010年7月23日にサウスダコタ州ビビアンで直径8.0インチ(約20cm)、重さ1.9375ポンド(約880g)のひょうが降り、米国で回収された最大・最重と認定された[9]。溶けて、測定時には小さくなっていた可能性もある。
2つの数字は、測り方も、「回収した」か「伝聞」かも違うので、優劣を並べて決めることはできない。落下速度は大きいほど速く、直径5cmで時速100kmを超えるという解説があり[8]、大きな粒ほど農作物・車などへの被害も大きい。
落ちてきたひょうの大きさは、雲の中の上昇気流の強さを見積もる手がかりになる。前章の表では、約10cmなら約44m/sの上昇気流が目安であった。
6. 1円玉と おなじ 大きさの ひょうを、でんたくで けいさんして みよう
6. 1円玉と同じ大きさのひょうは、雲粒何個ぶんか電卓で計算しよう
6. 1円玉の大きさのひょうを自分の電卓で数え、原典で確かめる
きょう できる こと
1円玉の 直径は 2cmです。定規で はかって、たしかめて みましょう。電卓で、20を 0.02で わります。答えを 3回 かけると、10億に なります。
1円玉と おなじ 大きさの ひょうが、雲の つぶ 10億こぶん、と いう けいさんです。ほかの 大きさの ものでも、同じ やり方で 数えられます。
ひょうが ふって きたら
外に 出ないで、窓の 中から 見ましょう。大きさや、落ちる ようすを、家の 人と 話して みてください。
もっと 知りたい とき
くまがやの 気象台の ホームページに、日本の 大きな ひょうの 話が のって います。
今日できること
1円玉の直径は2cm(20mm)です。定規で測って確かめ、電卓で20mm÷0.02mmを計算し、答えを3回かけると10億になります。ほかの硬貨や丸いものの直径でも、同じ手順で、雲粒何個ぶんかを数えられます。
ひょうが降ったとき
外に出ず、窓の内側から見ます。粒の大きさや、落ちるようすを家の人と話してみてください。
資料を読むなら
熊谷地方気象台のひょうのページ[10]と、気象庁の予報用語[1]は日本語で読めます。NOAAのページ[4]は英語ですが、上昇気流と大きさの表が見られます。英語が難しければ、電卓での計算や、ひょうの大きさと氷の見た目の観察だけでも続けられます。
今日できること
1円玉の直径は2cm(20mm)である。定規で測り、電卓で20mm÷0.02mmを計算して3乗すると、10億になる。ほかの硬貨や球の直径でも、同じ手順で雲粒の個数を見積もれる。ただし、前提は半径0.01mmの雲粒であり、雲粒の大きさを変えれば個数も変わる。
ひょうが降ったとき
外に出ず、窓の内側から見る。大きさとあわせて、白い部分と透明な部分があるかを観察すると、凍り方の違いに気づけるかもしれない。
原典にあたる
日本語では熊谷地方気象台のひょうのページ[10]と気象庁の予報用語[1]が出発点になる。成長のしくみはNOAA JetStream[4](英語)が、上昇気流と大きさの表をまとめている。なお、雲粒の大きさは日本の公的機関の原文で確かめた値ではなく、解説記事[7]に依拠している点に注意したい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 気象庁 予報用語(降水に関する用語). https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html (ひょうとあられの定義)
- Yahoo!天気・災害「ひょうとあられの違い」. https://weather.yahoo.co.jp/weather/promo/column/knowledge/hail-and-graupel.html (積乱雲の中での成長)
- 神戸市 危機管理室 トピックス(ひょう). https://www.city.kobe.lg.jp/z/kikikanrishitsu/topikkusu19.html (上昇気流が支えきれなくなって落下)
- NOAA JetStream: Hail. https://www.noaa.gov/jetstream/hail (過冷却水滴、上昇気流と大きさの表、乾燥成長と湿潤成長。英語)
- The Canadian Encyclopedia: Hail. https://thecanadianencyclopedia.ca/en/article/hail (ひょうの芯、雲の中にとどまる時間。英語)
- LibreTexts 14.02 Precipitation and Hail. https://geo.libretexts.org/Bookshelves/Meteorology_and_Climate_Science/Atmospheric_Processes_and_Phenomena/14%3A_Thunderstorm_Hazards/14.02%3A_Precipitation_and_Hail (ゴルフボール大になるまでの時間。英語)
- セライ「雲の大きさ」解説. https://serai.jp/living/1242401 (雲粒と雨粒の大きさ。概算の前提)
- ウェザーニュース 防災ハンドブック. https://weathernews.jp/s/gensai/handbook/page1-6.html (ひょうの落下速度)
- MPR News「New US record hailstone falls in South Dakota」. https://www.mprnews.org/story/2010/07/30/new-us-record-hailstone-falls-in-south-dakota (米国の記録。英語)
- 気象庁 熊谷地方気象台 ひょう(雹). https://www.data.jma.go.jp/kumagaya/shosai/chishiki/hyou.html (日本の大きなひょうの記録)
なおした ところ
更新履歴
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