1. ぬれた 髪は、よわいと いわれるのは ほんとう?
1. 濡れた髪は、本当に傷みやすいと説明されているのか
1. 濡れた髪は乾いた髪より小さな力で伸び、切れやすい
おふろの あとの 髪を ゆびで さわると、いつもより やわらかく 感じませんか。
花王という 会社の せつめいでは、ぬれた 髪は かわいた 髪より やわらかく、小さな 力でも 表面の うろこのような ところ(キューティクル)が けずれたり、はがれたり しやすいと されて います[1]。ひっぱると、かわいた ときより 小さい 力で のびて、切れやすい ことも 書かれて います。
アメリカの 皮ふの 先生たちの あつまりも、ぬれた 髪は とかしたり ブラシを かけたり すると 切れやすいので、さわるのは できるだけ 少なくしたほうが よいと すすめて います[5]。
つまり、ぬれた 髪が よわいと いうのは、いくつもの しりょうに 出て くる 話です。では、髪の 中で 何が かわって いるのでしょう。
お風呂上がりの髪は、乾いているときより柔らかく感じます。気のせいではなさそうです。
花王のヘアケア解説によると、髪は濡れていると乾いているときより柔らかく、こすったり引っ張ったりする小さな力でも、いちばん外側のうろこ状のキューティクルが削れたりはがれたりします。髪が伸びきってしまうこともあります。引っ張る実験でも、水中の髪は乾いた髪より小さい力で伸び、切れやすいことが示されています[1]。
米国皮膚科学会(AAD)の一般向けページも、濡れた髪はとかしたりブラシをかけたりすると切れやすいので、多くの人はできるだけ触らないほうがよい、と説明しています。ただし、強くカールした髪などでは、切れ毛を減らすために、濡れた状態でのブラッシングをすすめる例外もあるようです[5]。
花王の解説とAADのページは、どちらも濡れた髪は切れやすいと説明しています。では、髪の内部では、濡れるとどんな変化が起きているのでしょうか。
濡れた髪は弱い、という説明は、化粧品メーカーの解説と皮膚科学会の一般向け資料の両方に見られる。花王の解説は、髪が濡れていると乾いているときより柔らかく、より小さな力でもキューティクル最表面が削れたりはがれたりし、髪が伸びきることもある、とまとめている。引っ張り試験でも、水中の髪は乾燥時より小さな力で伸び、切れやすい[1]。
米国皮膚科学会(AAD)の一般向けページは、濡れた髪はとかしたりブラシをかけたりすると切れやすいため、多くの人はできるだけ触れないようにすべきだとしている。ただし、強くカールした髪などでは、切れ毛を減らすために濡れた状態でのブラッシングを勧める例外もある[5]。これは一般向けの助言で、髪質や傷み具合による個人差は、これらの資料からは特定できない。
弱くなる向きは確かでも、それだけでは理由が分からない。濡れて太くなった髪の内側では、何が変わるのか。
2. 2ふんで ふくらむ 髪の 中は、どうなって いるの?
2. 水を吸った髪の内側で、キューティクルの層が変わる
2. 吸水でエンドキューティクルが膨潤し、脆い層になる
キューティクルは、髪の 表面を おおう、うすい うろこの ような ものです。そのうろこは、おなじ かたさの 一まいでは なく、いくつもの うすい かわが かさなって できて います。
ブラジルの ざっしに のった ろんぶんには、髪が ぬれると、うろこの 中の いちばん 内がわの かわが 水を すって ふくらみ、かたい かわと、ゼリーのように やわらかい かわが、かわるがわる ならぶようになると 書かれて います[2]。
ふくらんだ かわは、もろく なります。そのため、ぬれた まま とかすと、髪が 切れたり、うろこが はがれたり しやすいのです[2]。
ぬれた 髪は、すべりも わるく なります。ゆびで すべらせると、摩擦(こすれる 力)が、かわいた ときより 大きいと されて います[2]。
ただし、ぬれただけで 外がわが 勝手に はがれる という わけでは ありません。あくまで 「ぬれて もろく なった ところを、こする、とかす」ときに きずが ふえやすい、という 話です。
キューティクルは、髪の表面をおおううろこ状の部分です。ただし、一枚岩ではなく、性質の違う層が重なっています。ブラジルの化粧品科学の雑誌に載った論文は、キューティクルが濡れると、内側にあるエンドキューティクルという層が水を吸ってふくらみ、硬い層と、ゲルのように柔らかい層が交互に並ぶ構造になると説明しています[2]。
ふくらんだエンドキューティクルは脆くなります。このため、濡れたまま髪をとかすと、髪が切れたり、うろこがはがれたりしやすい、と同じ論文は述べています[2]。
もう一つ、表面の性質も変わります。同じ論文は、濡れた髪のほうが乾いた髪より摩擦係数が高い、つまりこすれると引っかかりやすい、と説明しています[2]。
ここまでの話は「濡れる→内側の層がふくらむ→脆くなる→とかす力で壊れる」という順番です。水に濡れること自体ではなく、濡れて脆くなった状態で力が加わることが、傷みにつながる、という筋道になっています。
では、その力は、日常のどんな場面でかかるのでしょうか。
髪を水に浸すと、約2分で吸水量が最大になって安定し、見かけの直径は10〜12%ふえる。これは日本の研究で、直毛の赤毛・黒毛、波状毛の黒毛のいずれでも差がなかった[3]。たとえば直径100の髪が110〜112になる比率で、肉眼では分かりにくい。この大きさの変化が内部の層にどう影響するかは、次に述べる膨潤の仕組みが手がかりになる。
Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences に掲載された論文は、キューティクルが濡れると、剛性の高い層のあいだに、ゲルのように柔らかい層が交互に挟まる構造になると述べる。内側のエンドキューティクルが膨潤して脆くなるため、濡れたままとかすと、毛髪の切断と、うろこ状の脱落の両方が起こりやすい[2]。同じ論文は、濡れた髪の摩擦係数が乾いた髪より高いことも、表面の凹凸が強調されるためと説明している[2]。
この因果は、「濡れる→膨潤→脆化→力が加わると破壊」と読める。膨潤そのものがキューティクルを剥がすのではなく、膨潤で弱くなった層に、とかす・こするといった力が加わることが、損傷の引き金になる。ただし、この論文を使って分かるのは大づかみな筋道で、層ごとの膨らみ方の詳しい力学は、ここで使った資料の範囲では示されていない。
では、日常でその力が加わるのは、どんな場面か。
3. タオルや くしは、ぬれた 髪に どう はたらく?
3. 髪が濡れた直後の、拭く・とかす場面で何が起きるか
3. 濡れた直後の機械的な力:タオルとくしの場面と、毛流れの乱れ
おふろから 出て、タオルで ごしごし ふく。くしで いきおいよく とかす。だれでも やりそうな ことです。
花王の せつめいでは、塩素の 多い 水に 長く さらされた 髪の 話として、とくに ぬれた ままで こすれると、キューティクルが はがれやすく なると されて います[6]。ぬれた 髪は 水を すって もろい ようすです。そこへ、タオルや くしの 力が くわわるわけです。
このため、さわる 回数を へらす、つよく こすらない、という やり方が、しりょうから 読み取れる ヒントです。ただし、「こう しなければ いけない」という きまりでは ありません。
もう 一つ 気づく ことが あります。かわいた 髪に 水を つけると、髪の 中の つながりが ほどけて、形が かわりやすく なります。もとの くせが 出て、髪の ながれが みだれるのは、この ためだと せつめい されて います[7]。
お風呂から出て、タオルでごしごし拭く。ブラシでいきおいよくとかす。多くの人が無意識にやる動作です。
花王の解説では、塩素濃度の高い水に長くさらされた髪の話として、とくに濡れた状態でこすれると、キューティクルがはがれやすくなる、とされています[6]。前の章の筋道でいえば、水を吸って脆くなった層に、タオルやブラシの摩擦という力が加わる場面です。AADがすすめる「濡れた髪はできるだけ触らない」も[5]、この場面を指していると読めます。
実際の手入れの仕方を決めるのは、髪質や傷み具合にもよるので、ここでは資料から読み取れることだけを挙げます。力を加える回数を減らす、強くこすらない。この二つが、資料に共通する方向です。
濡れた髪が変わるのは強さだけではありません。花王の別の解説では、乾いた髪に水を与えると、髪内部の水素結合が切れて形が変わりやすくなり、もとのくせが出て毛流れが乱れる、と説明されています[7]。
では、濡れた状態をなるべく早く終わらせるために、ドライヤーを使うのは良いことなのでしょうか。
濡れた髪に最も力が加わりやすいのは、洗髪直後にタオルで拭き、くしやブラシを通す場面である。花王は、塩素濃度の高い水に長くさらされた髪について、特に濡れた状態でこすれるとキューティクルがはがれやすくなると述べる[6]。膨潤で脆くなった層に、摩擦という外力が加わる場面だと読める。AADの助言も、この場面に当たる[5]。
ここで引用した資料は、メーカーの解説と学会の一般向け資料で、拭き方・とかし方の最適な手順を比べた実験ではない。したがって、「こうすべき」と断定できる根拠は、資料からは得られない。力を加える回数や強さが損傷の要因になる、という読み取りにとどめる。
変わるのは強度だけではない。花王の技術解説は、乾いた髪に水を与えると水素結合が切れて形が変わりやすくなり、元の癖が出て毛流れが乱れると説明している[7]。髪の形が水で変わりやすくなる、という点が、ここで読み取れることである。
だとすれば、濡れた状態を短くするドライヤーは、髪を守る道具になりうるのか。それとも、熱という別の損傷を持ち込むのか。
4. ドライヤーは、髪に わるい もの?
4. 自然乾燥とドライヤーを比べた研究は何を示したか
4. 熱と乾燥時間のどちらが髪を傷めるか:自然乾燥との比較
ぬれた 髪が よわいなら、はやく かわかすのが いいのでは? でも、ドライヤーの あつい かぜは どうなのでしょう。
アメリカの 医学の ろんぶんに のった 研究が あります。ドライヤーを 髪から 15センチ はなして、休まず 動かしながら かわかすと、しぜんに かわかす やり方より、髪の きずが 少なかったと ほうこく されて います[4]。
この研究では、髪の 内がわまでの きずは 見つからず、髪の 表面が 内がわを まもる かべの やくわりを して いるのかも しれない、と 考えられました[4]。
ただし、これは 一つの 研究です。この 研究でも、しらべる ところに よって わかった ことが ちがい、しぜんに かわかすのと ドライヤーの どちらが いいかは、まだ 一つに きまっては いません。
濡れた髪が弱いなら、乾く前の時間を短くしたほうがよさそうです。しかし、ドライヤーの熱風は、別の傷みを持ち込まないのでしょうか。
アメリカ国立医学図書館のPMCに載った研究は、ドライヤーの熱と乾燥時間が髪の軸に与える傷を調べました。結論の一つは、ドライヤーを15cm離して、連続的に動かしながら乾かすと、自然乾燥より髪へのダメージが少ない、というものです[4]。
この研究では、髪の内側にあたる部分(コルテックス)の傷は見られませんでした。研究者は、髪の表面が内側を守るバリアのような役目をしているのかもしれない、と考えています[4]。
ただし、この研究でも、どの部位を評価するかによって結果が異なります。自然乾燥とドライヤーのどちらがよいかは、これだけでは一つに決められません。上の結果は、15cm離して動かし続けるという条件での結果で、近づけたり、同じ所に当て続けたりした場合に当てはまるとは限りません。
では、ここまでの話を、自分の髪や家でのいつもの動作で確かめるには、どうすればよいのでしょうか。
濡れた時間が長いほど脆い状態が続くなら、ドライヤーは守りになりうる。一方で、熱は別の損傷要因になりうる。この両面を調べた PMC 掲載の研究は、ドライヤーを髪から15cm離し、連続的に動かして乾かす場合は、自然乾燥よりダメージが少ないと報告している[4]。
同じ研究では、コルテックス(髪の内部)の損傷は一度も見られなかった。著者らは、髪の表面が内部の損傷を防ぐバリアとして働く可能性を示唆している[4]。表面(キューティクル)が熱から内側を守るとすれば、濡れて弱った表面を、乾燥でなるべく早く元の状態に戻すことには、意味があるかもしれない。ただし、これは著者の推測をつなげた筋道で、研究が直接示した因果ではない。
ところが、この研究でも、評価する部位によって結果が異なり、自然乾燥とドライヤーのどちらが優れるかは、これだけでは一つに決められない。また、結果は「15cm・連続移動」という条件つきで、距離を近づけた場合や同じ位置に当て続けた場合には当てはまらない可能性がある。髪質や傷みの有無による違いも、ここで使った資料からは特定できない。
傷んだ髪では、内部の水の分布も異なる。クライオSEMによる観察では、ダメージ毛はコルテックスの細胞膜複合体(CMC)などに水が集まりやすい部位が見られた[8]。これは濡れた髪の弱さが、傷み具合によっても変わりうることを示唆するが、抄録では窪みの程度と破断強度の相関が報告されているが、水の分布が強度にどう影響するかという因果は、この資料だけでは分からない。
5. おうちで ためして みよう
5. 自分の髪と道具で確かめる
5. 日常の動作で確かめ、原典に当たる
きょう できる こと
あらった あと、まず タオルで 髪を そっと おさえて 水を すわせます。ごしごし こすらず、ゆびで さわって、かわいた ときと くらべて どれくらい やわらかいか、たしかめて みましょう。
ドライヤーを つかう とき
ものさしで 15センチを はかって、ドライヤーとの きょりを おぼえて おきます。ドライヤーは あつくなるので、おうちの 人と いっしょに つかい、同じ ところに 長く あてないように します。
もっと しりたい とき
花王の ホームページの ヘアケアの ページ[1]に、髪の あつかい方の せつめいが のって います。
手ざわりで比べる
髪を洗ったあと、まず乾いたタオルで軽く押さえて水を吸わせます。ごしごしこすらず、指で触って、乾いたときの手ざわりと比べてください。柔らかさの違いを、自分の指で感じることができます。
ドライヤーの距離を知る
研究の15cmがどのくらいか、定規で測って覚えておきます。熱くなる道具なので、家の人といっしょに使い、同じ場所に長く当てず、動かしながら乾かしてください。
資料を読むなら
花王のヘアケア解説[1]と、髪の含水量の研究[3]は日本語で読めます。濡れた髪の弱さと、水を吸ったときの変化のようすが分かります。
日常の動作で確かめる
洗髪後、拭く前に髪を指で触り、乾燥後の手ざわりと比べて、柔らかさの違いを体感できる。続いて、こすらずにタオルで押さえる方法と、こする方法で、毛先の絡まり方を比べる。ただし、こうした比較は自分の感覚による観察で、キューティクルの状態を調べたことにはならない。損傷の評価には、顕微鏡などの測定が必要である。
ドライヤーを使う場合は、研究の条件にならって15cmの距離を定規で測り、同じ位置に長く当てずに動かし続ける。熱による火傷に注意し、保護者のそばで行う。
資料を読むなら
花王の解説[1]・[6]・[7]は日本語。含水量と直径の変化は日本の研究[3]、ダメージ毛内部の水の分布は[8]、層の膨潤とその影響は論文[2]、乾かし方の比較は[4]、一般向けの助言は[5]にある。英語の論文は、図表が多く、条件が明記されているので、結論だけでなく、「どの条件での結果か」を読むのがよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 花王 ヘアケア「濡れていると傷みやすい」. https://www.kao.com/jp/haircare/hair/3-4/ (濡れた髪の柔らかさ・切れやすさ)
- Hair fiber characteristics and methods to evaluate hair physical and mechanical properties. Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences. https://www.scielo.br/j/bjps/a/XZrwDJrKKXh4Q3JwswHJ4vq/?lang=en (キューティクル内側の層の膨潤・摩擦係数)
- 含水量による頭毛の形状変化. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/yca/10/0/10_KJ00000042355/_article/-char/ja/ (吸水の時間・直径の増加)
- Hair Shaft Damage from Heat and Drying Time of Hair Dryer. PMC. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3229938/ (ドライヤーと自然乾燥の比較)
- American Academy of Dermatology, Hair styling without damage. https://www.aad.org/public/diseases/hair-loss/hair-care/styling/ (濡れた髪の扱い方)
- 花王 ヘアケア「その他の影響」. https://www.kao.com/jp/haircare/hair/3-8/ (濡れてこすれたときの影響)
- 花王 ヘアケア技術「キメ(毛流れ)を揃える」. https://www.kao.com/jp/haircare/technology/12-6/ (水素結合と毛流れ)
- クライオSEMによるダメージ毛内部の水分布状態の観察. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/46/4/46_264/_article/-char/ja/ (ダメージ毛内部の水の分布)
なおした ところ
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