1. わかい 人にだけ 聞こえる 音って?
1. 若い人にだけ聞こえる音は、どのくらい高いのか
1. モスキート音 ── 人の聞こえる範囲の最上部にある音
この 音は「モスキート音」と よばれます。かの とぶ 音に にた、キーンと した 高い 音だからです。
音の 高さは「ヘルツ」という 数で あらわします。数が 大きいほど、高い 音です。モスキート音は 17,000ヘルツで、人の 耳に 聞こえる はんいの、いちばん 上の ほうに あたります。
ニュースでは、25さいまでには、ほとんどの 人が この 音を 聞きとれなくなる と つたえられました[1]。もちろん、耳の よさは 人に よって ちがいます。ぜんいんが 25さいで 聞こえなくなる わけでは ありません。
それでは、耳の どこで 聞こえる、聞こえないが 分かれるのでしょうか。
装置が出す音は「モスキート音」と呼ばれ、周波数は17,000ヘルツです。ヘルツは1秒間の振動の回数で、数が大きいほど高い音になります。17,000ヘルツは、人の聞こえる範囲のいちばん上の端にあたります[1]。
報道は、25歳までにはほとんどの人がこの高さの音を聞き取れなくなる、と伝えています。ただし、聞こえ方には個人差があります。「25歳になった日に全員が聞こえなくなる」という意味ではなく、あくまで2006年の報道が述べた目安です。
10代には耳ざわりで、大人にはほとんど聞こえない。この差は、耳の奥のどこで生まれるのでしょうか。
モスキート音は17,000Hzで、人の可聴域の最上部にある。2006年の報道は、25歳までにはほとんどの人がこの高さの音を検出できなくなると述べている[1]。ただしこれは報道の記述で、聴力の年齢変化には個人差が大きい。25歳を境に全員が聞こえなくなる、という意味には読めない。
では、聞こえる範囲の上端が年齢とともに下がるとき、耳の中で何が減っているのか。まず、音を電気信号に変える場所の作りから見る必要がある。
2. 耳の おくの カタツムリは、音を どう わけるの?
2. 耳の奥のカタツムリは、入口側で高い音を受け持つ
2. 蝸牛の位置と周波数 ── 入口側の有毛細胞が高音を検出する
耳の おくには、カタツムリの 形を した「蝸牛」という ところが あります。ここで、音が 神経に つたわる 信号に かわります。
蝸牛の 中には、毛の ついた 細かい 細胞(有毛細胞)が ならんでいます。ここが おもしろい ところです。蝸牛の 入口がわの 広い ほうに ある 毛は 高い 音を 受け もち、ほかの 場所の 毛は べつの 高さの 音を 受け もちます[2]。
オルゴールを 思いうかべて ください。はりの 長さで、鳴る 音の 高さが 決まって います。蝸牛も、場所ごとに 受け もつ 高さが 決まっている、と 考えると わかりやすいです。ただし 本当の 蝸牛では、はりが 鳴るのでは なく、場所ごとに 毛が はんのうします。
つまり 高い 音の 係は、入口がわの 毛です。この 毛は、どうやって 音を 信号に するのでしょうか。
耳の奥には、カタツムリの形をした蝸牛があります。中には基底膜という膜があり、その上に有毛細胞が並んでいます。カタツムリの広い側、つまり入口側にある有毛細胞が高い音を、それ以外の場所の細胞がそれぞれ別の高さの音を検出します。たとえば赤ちゃんの泣き声のような高い音は、入口側で受けとめられます[2]。
オルゴールの歯に近い分担です。歯の長さごとに鳴る音の高さが決まっているように、蝸牛では場所ごとに担当する高さが決まっています。ただし、オルゴールでは歯そのものが振動して音を出しますが、蝸牛では、音に反応した場所の有毛細胞が信号を作ります。
この分担のおかげで、脳は「どの場所の細胞から信号が来たか」で音の高さを知ることができます。では、有毛細胞は音を、どうやって神経の信号に変えているのでしょうか。
蝸牛内の有毛細胞は基底膜上に並び、蝸牛の広い側(入口側)の有毛細胞が高音を、他の部位の細胞がそれぞれ異なる高さの音を検出する[2]。この場所と音の高さの対応は、音の高さを「どこの細胞が反応したか」に置き換える仕組みで、脳は細胞の位置から高さを読み取ると理解できる。入口側が高音、という対応は今回の資料で確かめた記述で、蝸牛の各部位の周波数の細かい割り当てや細胞の総数には触れない。
この分担が、後で加齢の影響を考える土台になる。高音を検出する場所は入口側にあるからだ。では、有毛細胞はどう音を信号に変えるのか。
3. 毛が ちょっと 曲がると、電気が 生まれる
3. 毛が曲がると、電気信号が生まれる
3. 機械的な曲がりが電気信号になる ── 有毛細胞の役割
音が 耳に 入ると、蝸牛の 中が ふるえて、毛が ちょっと 曲がります。すると、毛の さきに ある 小さな あなが ひらき、電気の 信号が 生まれます[2]。
この 信号が 神経を とおって、頭に とどきます。毛が はたらくから、音が 聞こえるのです。
毛が なくなったり、はたらかなく なったりすると、その 場所の 音は 信号に なりません。では、どの 毛から 先に なくなるのでしょうか。
4. どうして 入口がわの 毛から なくなるの?
4. なぜ入口側の毛から先に傷むのか ── まだ決着していない問い
4. 高音側の有毛細胞が先に失われる理由 ── 仮説の段階にある説明
年を とると、高い 音から 聞こえにくく なる 人が 多いと いわれます[4]。高い 音を 受け もつ、入口がわの 毛が、先に へるからと 考えられています[5]。
では、どうして 入口がわの 毛だけ 先に へるのでしょう。じつは、この 理由は まだ はっきり 分かっていません。
分かっているのは、へった 毛は、元に もどらないと いうことです。それは どうしてでしょうか。
5. 聞こえ方が かわると、ことばは どう 聞こえるの?
5. 高い音が弱まると、ことばの聞こえはどう変わるか
5. 高音域の低下とことばの聞き取り ── 有病率の数字の読み方
高い 音が 聞こえにくくなると、ことばの 聞こえ方にも えいきょうが 出ます。「さ行」と「か行」の 音は、高い 音の ぶぶんを ふくむので、ほかより 聞きとりにくくなる ことが 多いと いわれます[3]。
こうした かわり方は、60代の 後半ごろから 出る 人が 多いそうです。80さいでは、男の 人の 8わりより 多く、女の 人の 7わりより 多くに あるとも いわれます[3]。でも、これは ぜんいんでは ありません。
聞き返された ときに、聞こえにくい ことを わるく 言わない こと。それが、いちばん 大切です。
ところで、いたんだ 毛が 元に もどるなら、こまらないはずです。どうぶつは どうでしょう。
高い音が聞き取りにくくなると、高音の成分を多く含むさ行やか行の音が、ほかより聞き取りにくくなることが多いとされます[3]。音が全く聞こえなくなるのではなく、言葉の一部の音が埋もれる、という起こり方です。
日本の医療情報では、60歳代後半ごろから症状が現れる人が多く、80歳になると男性の8割以上、女性の7割以上が老人性難聴を示すとされます[3]。ただし、これは難聴の判定基準に左右される数字で、「全員」ではありません。
米国の国立機関は、65〜74歳の約3人に1人、75歳以上のほぼ半数に聞こえの困難がある、と説明しています[6]。これは米国の数字で、日本の数字とは調べ方が違うため、単純には比べられません。
ここまで見て、ひとつの疑問が残ります。傷んだ有毛細胞は、元に戻らないのでしょうか。
6. とりの 耳は なおるのに、人は どうして?
6. 鳥は治り、人は治らない ── 再生をめぐる問い
6. 有毛細胞の再生 ── 鳥類と哺乳類の違い
人を ふくむ 哺乳類では、耳の 毛の 細胞が 一度 きずつくと、また 生えて きません。だから、毛の 細胞が きずついて 起きた 聞こえにくさは、ひとりでには もどりにくいと いわれます[7]。
ところが 鳥は ちがいます。毛の 細胞が きずついても、まわりに ある 細胞から あたらしい 毛の 細胞が 生まれ、聞こえも もどります[7]。
鳥に できる ことが、なぜ 人には できないのか。この 問いに 答えを さがして いる 人たちが います。ここから 先は、まだ 分かっていないことが 多い ところです。
京都大学の研究ニュースは、哺乳類(人を含む)の聴覚の有毛細胞は、一度傷つくと再生しないと説明しています。そのため、有毛細胞の損傷による聞こえにくさは、自然には元に戻りにくいとされます[7]。
一方、鳥類では、有毛細胞が傷つくと、周りの支持細胞から新しい有毛細胞が再生します[7]。同じ「耳の毛の細胞」なのに、鳥と人とでは傷んだあとの運命が違うのです。
なぜ人は再生できないのか。その違いを探ることは、聞こえの研究の大きな問いのひとつです。答えが見つかれば、加齢や騒音で傷んだ耳に、新しい道が開ける可能性があります。
京都大学の研究ニュースは、哺乳類では聴覚の有毛細胞が一度傷害を受けると再生しないと述べる。そのため有毛細胞の損傷による聞こえにくさは、自然には元に戻りにくいとされる[7]。他方、鳥類では有毛細胞が傷害されると、支持細胞を起源に新たな有毛細胞が再生する[7]。
この差が、加齢性難聴が進行性で不可逆に感じられる理由の一つになっている。高音側の細胞が先に失われるのは、そこが弱いという性質による。失った後に補えないのは、哺乳類がもつ再生できない性質による。二つの理由が重なっている、と整理できる。
なぜ哺乳類は再生できないのかは、今回の資料では扱われていない。鳥にできることが人にはできない理由を探る研究は続いており、研究が進めば、傷んだ耳を取り戻す方法につながる可能性がある。
7. 家の 人に、聞いて みよう
7. 自分でも確かめてみる
7. 出口 ── 身近な人に聞く/原典に当たる
おじいさんや おばあさん、または 耳の 聞こえかたに ついて 話してくれる 家の 人に、聞いて よければ 聞いて みましょう。「話を 聞くとき、どんな ことが たすかる?」と。
ゆっくり 話す、顔を 見て 話す、そんな 答えが 返ってくるかも しれません。人に よって ちがいます。ちがって いて いいのです。
ほんとうの ところを もっと 知りたくなったら、京都大学の 研究ニュースを、大人と いっしょに 読んで みて ください。
身近な人に、耳の聞こえ方について聞いてよいか、まず確かめてみてください。聞いてよければ、「話を聞くとき、どんな工夫が助かる?」と尋ねてみましょう。答えは人によって違います。高い音が聞こえにくい人もいれば、そうでない人もいます。
原典を読むなら、京都大学の研究ニュースが日本語で公開されています[7]。鳥類の再生と哺乳類の違いが、専門家の言葉でどう書かれているかを見比べてみてください。
資料には、栃木県の広報誌や医療情報もあります[4]。公的な機関の説明と、医療情報を比べてみると、同じ現象でも書き方が違うことに気づけます。
身近な人に聞き取りの工夫を尋ねる場合は、相手が話してよいと言う範囲にとどめる。聞こえ方の個人差は大きく、高音が先に落ちるという一般的な型に当てはまらない場合もある。
原典に当たるなら、日本語では京都大学の研究ニュース[7]と、栃木県広報[4]が公開されている。英語の一次資料としては、米国NIDCDの「How Do We Hear?」[2]と「Age-Related Hearing Loss」[6]が、蝸牛の仕組みと有病率を説明している。
今回、高音側の有毛細胞が先に失われる点と両耳性・高音漸傾型は検索結果の抜粋で確認している。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの公式資料で、あらためて確かめるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
記事の材料にした資料です。医療の判断には使わず、聞こえに不安があるときは医療機関に相談してください。
- MPR News「Do you hear what I hear?」(2006)。 https://www.mprnews.org/story/2006/06/19/sound (モスキート音、17,000ヘルツ、25歳の目安)
- NIDCD「How Do We Hear?」。 https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear (蝸牛の入口側と高音、毛が曲がって電気信号が生まれる仕組み)
- Medical Note「加齢性難聴」。 https://medicalnote.jp/diseases/加齢性難聴 (感覚細胞の減少、さ行・か行、日本の割合)
- 栃木県広報「県広報 413号」。 https://www.pref.tochigi.lg.jp/c05/pref/kouhou/kouhoushi/413-3.html (高い音から徐々に聞こえにくくなる)
- 「Tonotopy in calcium homeostasis and vulnerability of cochlear hair cells」PMC6504959。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6504959 (高音担当の有毛細胞が最初に失われる。検索結果の抜粋で確認)
- NIDCD「Age-Related Hearing Loss」。 https://www.nidcd.nih.gov/health/age-related-hearing-loss (米国の割合)
- 京都大学 研究ニュース(2025年7月10日)。 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-07-10-0 (哺乳類で有毛細胞が再生しない、鳥類では再生する)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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