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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

はちみつは、どうして くさらないの?

はちみつが腐りにくい3つの理由 ── 乾いた蜜、酸、ミツバチの酵素

はちみつの保存性 ── 低水分・低pH・グルコースオキシダーゼ(過酸化水素)と、水が入ったときの発酵

分野:自然

あまくて とろりと した はちみつ。おうちの たなに、ずっと おいて あった びんを おもいだして ください。ふしぎと、カビが はえて いません。

ごはんや パンは すぐ ダメに なるのに、なぜ はちみつは へいきなのでしょう。この メモでは、その わけを 3つに わけて、しらべて いきます。

棚の奥に置きっぱなしにしていた、はちみつの瓶。ふたを開けても、カビは見当たりません。糖がたっぷり入った、菌にとってはごちそうのような食べ物のはずなのに、どうして育たないのでしょうか。

この記事では、水分の少なさ、酸性であること、ミツバチの酵素が作る過酸化水素の3つを、複数の資料から確かめます。読むと、「腐らない」はちみつが発酵することもある理由が分かります。

はちみつは、主成分が糖であるにもかかわらず、カビや細菌が育ちにくい食品として知られる。水分が少ないこと、酸性であること、ミツバチ由来の酵素が過酸化水素を作ることが、主な要因として挙げられている。

一方で、水分が増えれば発酵する。本稿は、公正競争規約、日本語の総説(越後 1970年代)、食品科学・養蜂の英語資料から、「腐りにくい」の条件と限界が分かる。

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1. はちみつは、どのくらい かわいて いるの?

1. まず「乾いている」── 水分は2割ほど

1. 低水分 ── 規約は20%以下(国産は22%以下)

はちみつの ほとんどは、さとうの なかまです。水は、ぜんぶで だいたい 2わり くらいしか ありません[1]。

はちみつを つくる ハチの 巣すでも、しぼった あとの びんの なかでも、水が 少ない ことが だいじ、と せつめい されます[4]。

たとえば、ぎゅっと しぼった あとの かわいた スポンジを おもいうかべて ください。まわりに 水が あれば、すぐに すいこみます。はちみつも、水を すいやすい たべものです。ただし、ほんものの はちみつは スポンジのように あなが あいて いるわけでは ありません。

この ため、カビや 菌きんが すむのに ひつような 水が、はちみつの なかには 少ないのです。

はちみつの主成分は、グルコースとフラクトースという2種類の糖と水です。水分はおよそ17〜20%が目安で、公正競争規約は、水分を20%以下(国産は22%以下)と定めています[1]。日本養蜂協会の国産天然はちみつの規格も、20℃で水分22%以下です[2]。

もう一つ面白いのが、はちみつの「水の吸いやすさ」です。日本語の総説には、水分17.4%のはちみつは湿度58%の空気と、21.5%では湿度66%の空気と、水分のやりとりがつり合うと書かれています[3]。これより湿った空気にふれると、はちみつは水を吸いやすい、と読めます。

カビや多くの細菌は、水が少ない場所では育ちにくいといわれます。はちみつのように水が少ない食べ物は、その条件に近いと考えられます。

はちみつの組成は主に糖(グルコース、フラクトース)と水である。日本の公正競争規約は水分20%以下(国産は22%以下)と定め[1]、日本養蜂協会の国産天然はちみつ規格も20℃で22%以下と一致する[2]。17〜20%は目安であり、規約の上限と混同しない。

吸湿性については、越後の総説が、水分17.4%で相対湿度58%、21.5%で66%の空気と平衡になると記す[3]。原文に「水分活性」の語はないが、相対湿度58%は水分活性約0.58に相当する換算になる。

2. はちみつは、すっぱい?

2. 二つめは「酸性」── 花の蜜より、はちみつのほうが酸っぱい

2. 低pH ── 平均3.9(3.4〜6.1)と、花蜜からの変化

はちみつは、レモンほど すっぱく ありませんが、さんせいです。かがくで、すっぱさを はかる 数を pH と いいます。はちみつは、ふつう 3.9 ほどと つたえられて います[4]。

もとの 花の みつは、5.1 で、ほとんど 中せいに ちかい そうです[3]。ミツバチが はちみつに かえる うちに、すっぱく なって いくのです。

この すっぱさが、菌きんが ふえるのを おさえる 助けに なると いわれます[4]。ただし、はちみつごとに 数は ちがいます。

はちみつは酸性の食べ物です。平均のpHは3.9で、種類によって3.4〜6.1の幅があると報告されています[4]。pHは、数が小さいほど酸性が強いことを表します。

日本語の総説には、花の蜜のpHは5.1で、はちみつになると3.7になったという記述もあります[3]。1つの資料の例なので「すべてのはちみつがこうなる」とはいえませんが、蜜がはちみつに変わる間に酸っぱくなる、という方向は英語の資料とも合っています。

酸性の環境は、細菌が育ちにくくなる一因と説明されています[4]。では、その酸はどこから来るのでしょうか。

はちみつの平均pHは3.9で、範囲は3.4〜6.1とされる[4]。越後の総説は、花蜜のpH 5.1に対してはちみつは3.7と報告している[3]。単一の試料の値であり、はちみつごとの差が大きい。3.9は平均で、個々の値ではない。

酸性は、細菌の生育を抑える要因の一つと説明される[4]。花蜜から蜂蜜になる過程でpHが下がる向きは、二つの資料で一致する。酸の主体は次章のグルコン酸である。

3. すっぱさは、どこから きたの?

3. 三つめは「酵素」── ミツバチが蜜に混ぜるもの

3. グルコースオキシダーゼ ── グルコン酸と過酸化水素、「インヒビン」の正体

ミツバチの からだから でる、酵素こうそという ものが かぎです。この 酵素こうそが、みつの あまい ぶぶんに はたらくと、すっぱい ものと、菌きんを よわらせる ものが できる といわれます[4]。

すっぱい ものは グルコンさん、菌きんを よわらせる ものは かさんかすいそ です。

おどろく ところは、この 酵素こうそが はちみつが うすまった ときだけ はたらく らしい ことです[5]。ふだんは ねむって いて、水が ふえると めを さます、という わけです。

酸っぱさの主な原因は、ミツバチ由来の酵素、グルコースオキシダーゼです。この酵素が蜜のグルコースにはたらくと、グルコン酸と過酸化水素という2つの物質ができます。グルコン酸ははちみつが酸性になる理由の一つで、過酸化水素は細菌の増えるのを抑える一因と説明されています[4]。

意外なのは、この酵素の動くタイミングです。ある論文には、この酵素は蜜の中では働く状態にあり、はちみつが水で薄まったときにだけ活発になる、と書かれています[5]。濃いままのはちみつでは、過酸化水素はあまり増えないと読めます。

1937年ごろ、ドルドらははちみつが細菌の育ちを止める物質を「インヒビン」と名づけました。その後、ホワイトらが、それはこの酵素が作る過酸化水素だと示したと総説は紹介しています[3]。

総説の著者は、細菌の生育を抑える作用は、糖の濃さや低いpHだけでなく、過酸化水素の生成も要因と考えられる、とまとめています[3]。

はちみつの酸性は、主にグルコン酸による。これはミツバチ由来のグルコースオキシダーゼが蜜中のグルコースを変えて生じ、同じ反応で過酸化水素もできる。この二つが酸性化と細菌増殖の抑制に部分的に関わる[4]。酵素の由来はミツバチの下咽頭腺(と細菌 Gluconobacter)とされる[5]。

この酵素は、蜜中では希釈されたときにのみ活性を示すと述べられている[5]。したがって、濃いはちみつでは過酸化水素は増えにくく、水が入ったときに増える面がある。

歴史的には、1937年ごろDoldらが阻止物質を「インヒビン」と名づけ、Whiteらが、それがグルコースオキシダーゼの生成する過酸化水素であるとした[3]。越後は、阻止作用は糖濃度や低pHだけでなく過酸化水素の生成にもよると述べる[3]。

4. 水が はいったら、どうなるの?

4. 「腐らない」には条件がある ── 水が増えると発酵する

4. 発酵の条件と結晶 ── 水分19%以上・10℃以上、結晶で水分が偏る

はちみつも、水が ふえると、はっこうします。あわが たって、すっぱい におい に なる ことが あります[3]。

ある 本では、水が 19%より ふえると、そのうち はっこうしやすく なる、と かかれて います[3]。すこし あたたかい ほうが、はっこうしやすい そうです。

もうひとつ、ふしぎな ことが あります。びんの なかの はちみつが しろく かたまる ことが あります。これを けっしょうと いいます。かたまった ぶぶんから 水が おしのけられて、かたまって いない ぶぶんは 水が 多く なる、と せつめい されます[3]。

だから、はちみつは かたまって いても、いたんだわけでは ありません。ただ、水が 入らない ように ふたを して おく ことが だいじです。

はちみつも、水が増えれば発酵します。日本語の総説によると、発酵は水分量と温度で決まり、水分が19%以上だと早晩発酵し、10℃以上で発酵しやすくなります。発酵すると泡立ち、アルコールを経て酢酸ができ、酸っぱくなります。変質はごくゆっくり進み、結晶したあとに起こることが多いとされています[3]。

英語の資料には、水分が18%を大きく超えなければ事実上いつまでももち、約25%を大きく超えると発酵が始まりやすい、という説明もあります[4]。日本語の総説の19%とは数字が違いますが、資料の年代や条件(酵母の量、温度)が違うためだと考えられます。ここでは、細かい数字より「水が増えると発酵しやすくなる」ことに注目しましょう。

結晶にも注意が必要です。はちみつが結晶するのは、成分の糖の一部が固まるためで、規約や養蜂協会の規格でも、はちみつは結晶を生ずることがあると書かれています[1][2]。部分的に結晶すると、まだ固まっていない部分に水が集まって多くなり、そこが発酵しやすくなる、と総説は述べています[3]。

越後の総説は、はちみつの発酵は水分量と温度で決まり、19%以上では早晩発酵し、10℃以上で発酵しやすくなると述べる。発酵が進むと泡立ち、アルコールを経て酢酸ができて酸っぱくなる。変質は非常にゆっくりで、結晶した後に起こることが多い[3]。

英語版Wikipediaは、水分が約18%を大きく超えないかぎり保存期間は事実上限りなく、約25%を大きく超えると発酵が始まりやすいとする[4]。18%は保存が続く目安、25%は発酵が始まる目安で別の閾値であり、1970年代の日本語総説の19%とは、対象・温度・酵母の条件が異なるため、一つの値にまとめない。

結晶については、公正競争規約が「結晶を生ずることがある」旨を、日本養蜂協会の規格が「早晩結晶を伴う」旨を記す[1][2]。部分結晶では、結晶していない液相の水分が相対的に多くなるので、そこが発酵しやすくなる[3]。結晶自体は劣化ではない。

5. ずっと もつって、ほんとう?

5. 数千年前の壺のはちみつは本当に残っていたのか ── 「ふたをして水を足さなければ」の条件

5. 「永遠の保存」の言い方と、免疫学者ハリスの説明

むかしの エジプトの おはかから、なん千ねんも まえの はちみつの つぼが みつかった、という はなしが つたえられて います[6]。ただし、たべられる 状態じょうたいの はちみつが 見つかった、というのは、そう つたえられて いる だけの はなしです。

アミナ・ハリスさんという 先生は、こう せつめい して います。ふたを して、水を くわえなければ、はちみつは くさらない。でも 水が 入れば、くさるかも しれない、と[6]。

おうちの はちみつも、水が はいらない ように ふたを して おくと、くさりにくく なります。ただし、おいて おく ところや ときの ながさで、かわる ことが あります。

「古代エジプトの墓から、数千年前のはちみつが入った壺が見つかった」という話は、広く知られています。雑誌の記事も、考古学者が墓で数千年前のはちみつの壺を見つけ、今も保たれていた例があると紹介しています[6]。ただし、壺が見つかったという話はあっても、食べられるはちみつが実際に出土したかどうかは、そう伝えられているだけの話です。

雑誌のインタビューで、免疫学者のアミナ・ハリスさんは、水分が少ないこと、pHが3〜4.5程度であること、過酸化水素の3つを理由に挙げています。そして「ふたをして、水を加えなければ、はちみつは腐らない。水を加えると、腐るかもしれない」と話しています[6]。

つまり、はちみつの「腐らなさ」には、乾いた状態が保たれているという条件がつきます。

古代エジプトの墓から数千年前のはちみつの壺が見つかったという話は広く流布している。Smithsonian Magazineも、考古学者が墓で数千年前のはちみつの壺を見つけた例があると紹介する[6]。ただし、壺が見つかったことと、食べられる状態の蜂蜜が出土したことは別であり、後者は確認できない。伝聞として扱う。

同誌は、UCデービスの免疫学者ハリスが、水分の少なさ、pH 3〜4.5程度、過酸化水素の3点を挙げたうえで、「蓋をして水を加えなければ、はちみつは傷まない。水を加えると傷むかもしれない」と述べたと伝える[6]。この3点は、1〜3章の低水分・低pH・酵素由来の過酸化水素と対応する。

なお、はちみつは包装前に加熱しないため、ボツリヌス菌の芽胞を含むことがあり、1歳未満には与えない(厚生労働省の注意喚起)。この点は既存メモ「ミツバチとはちみつ」で扱ったので、ここでは深入りしない。

6. じぶんでも しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

おうちに はちみつが あれば、ラベルを 見て みましょう。「みず」の ことが かいて あるかも しれません。そして、びんを ひっくりかえさないで、ふたの まわりを ながめて ください。しろく かたまって いる ところは ありますか。

もし かたまって いても、たべる 前に、あわが ないか、すっぱい におい が しないかを、おとなと いっしょに たしかめて ください。

かたまって いる ところと、かたまって いない ところを、見くらべて みるのも おもしろいです。

家にあるはちみつのラベルや、ふたの内側を観察してみましょう。産地、水分についての表示、結晶している部分はないか、泡や酸っぱいにおいがないかを、おうちの人といっしょに確かめます。

はちみつが結晶している場合は、そこから発酵が始まっていないかも見てみましょう。結晶した瓶があれば、結晶していない部分がさらさらのままか、泡やにおいが出ていないかを、おうちの人といっしょに見比べてみましょう。

もっと詳しく読みたい人には、日本養蜂協会の「品質規格」のページが、水分の基準など、はちみつの決まりを短くまとめています[2]。

家庭では、はちみつのラベルの水分表示と、結晶や泡の有無を観察できる。結晶した瓶では、結晶部分と液状の部分の見た目やにおいを見比べられる。

  • 公正競争規約の別表で、水分20%以下(国産は22%以下)と、結晶の記述を読み、日本養蜂協会の規格と見比べる[1][2]。
  • 越後の総説で、吸湿度・発酵・インヒビン(過酸化水素)の説明を読み、19%と18%・25%という数値の出どころの違いを整理する[3]。
  • 家にある複数のはちみつのラベルを比べ、産地や水分の表示、結晶のしかたの違いを書き出してみる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:公的な規約、養蜂の団体の規格、日本語の総説、英語の百科事典と論文、雑誌記事を突き合わせて使った。何に使ったかは項目の最後に書いた。

  1. はちみつ類の表示に関する公正競争規約(別表). https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/e03_H_hachimitu.pdf (水分20%以下・国産は22%以下、結晶を生ずることがある旨について)
  2. 日本養蜂協会「ハチミツの品質規格」. https://beekeeping.or.jp/products/quality/ (国産天然はちみつの水分22%以下、結晶について)
  3. 越後多嘉志「ハチミツの化学」化学と生物 13(3). https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/13/3/13_3_192/_pdf (吸湿度、pH、インヒビン、発酵の条件、結晶について)
  4. Wikipedia "Honey". https://en.wikipedia.org/wiki/Honey (平均pH、グルコースオキシダーゼの反応、水分18%・25%の目安について)
  5. "Malaysian Meliponini honey" PMC8021062. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8021062/ (酵素が薄まったときにだけ働く、という記述について)
  6. Smithsonian Magazine "The Science Behind Honey's Eternal Shelf Life". https://www.smithsonianmag.com/science-nature/the-science-behind-honeys-eternal-shelf-life-1218690/ (エジプトの墓の話と、ハリスの3つの説明について)

なおした ところ

更新履歴

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