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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おにごっこや ごっこあそびは、ただの ひまつぶしなの?

国の指針は、子どもの遊びをなぜ「重要な学習」と呼ぶのか

遊びは「重要な学習」か:幼稚園教育要領・小児科学会の報告・ラット実験から読む

分野:からだ

にほんの ようちえんの きまりには、あそびは「たいせつな がくしゅう」だと 書いて あります。おにごっこも、ごっこあそびも、ただの ひまつぶしでは ないのです。

どうして、そこまで いうのでしょう。この ページを 読むと、あそびの なかで 子どもが なにを れんしゅうして いると 考えられて いるのかが わかります。

日本の幼稚園教育要領は、幼児の自発的な遊びを「重要な学習」と書いています[1]。鬼ごっこやままごとが、ひまつぶしではなく学習だというのです。

なぜ、そこまで言えるのでしょうか。この記事を読むと、国の指針、ラットの実験、ごっこ遊びの考え方、小児科学会の報告、子どもの権利条約が、遊びのどんな働きに注目しているのかが分かります。

幼稚園教育要領は、幼児の自発的な遊びを「心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習」と位置づけ、遊びを通した指導を中心に置いている[1]。遊びを学習と呼ぶ根拠は、どこにあるのか。

この記事を読むと、国の指針、ラットの実験、ごっこ遊びの理論、米国小児科学会の報告、子どもの権利条約が、それぞれ遊びのどの働きに注目しているか、そしてどこまでが実験で、どこからが仮説なのかが分かる。

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1. くにが あそびを「がくしゅう」と よぶ わけ

1. ひまつぶしに見える遊びを、国が「学習」と呼ぶ

1. 幼稚園教育要領は、遊びをなぜ指導の中心に置くのか

ようちえんで、いちにち ずっと おにごっこを して いる 子が います。大人から 見ると、あそんで いるだけに 見えるかも しれません。

でも、くにの ようちえんの きまりには、子どもが 自分から はじめる あそびは、からだも こころも バランスよく そだつ もとに なる 大じな がくしゅうだ、と 書いて あります[1]。だから ようちえんでは、あそびを ちゅうしんに して 教えるのです。

からだを うごかす ことも、そうです。3さいから 6さいの 子は、いろいろな あそびを ちゅうしんに、まいにち あわせて 60ぷん いじょう、たのしく からだを うごかすのが よいと されて います[2]。

幼稚園で一日じゅう鬼ごっこをしている子は、大人の目には遊んでいるだけに見えるかもしれません。ところが幼稚園教育要領は、幼児の自発的な活動としての遊びを、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習と位置づけています[1]。そして、遊びを通して教えることを指導の中心にするとしています。

体を動かすことについても、文部科学省は2012年に幼児期運動指針をまとめました。3歳から6歳の子が、さまざまな遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましいとしています[2]。この60分は、体育の授業のような時間ではなく、生活全体の中で体を動かした合計です。小学生の基準でもありません。

では、遊びのどこが「学習」なのでしょうか。実は、人の子どもだけでなく、ネズミの仲間のラットにも、同じことを調べた実験があります。

幼稚園教育要領(総則)は、幼児の自発的な活動としての遊びを、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習と位置づけ、遊びを通しての指導を中心にして、第2章に示すねらいが総合的に達成されるようにすると述べる[1]。つまり、遊びは授業の合間の息抜きではなく、教え方そのものの軸とされている。

体の面でも、文部科学省は2012年(平成24年)3月に幼児期運動指針を策定した[2]。3歳から小学校就学前の幼児を対象に、さまざまな遊びを中心として、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましいとする。注意したいのは、この60分が運動の時間割ではなく、生活全体の身体活動の合計であること、そして小学生向けの基準ではないことである。

ただし、指針が「重要」と書くことと、その理由が科学的に確かめられていることは別の話になる。では、遊びの何が発達に効くと考えられているのか。手がかりの1つが、動物を使った実験である。

2. ネズミの 子も、なかまと あそぶ

2. 仲間と遊んで育ったラットは、脳が変わっていた

2. ラットの実験:遊び好きな仲間と育つことと前頭前野

ネズミの なかまの ラットの 子も、なかまと じゃれあって あそびます。おいかけたり、おさえこんだり、まるで ぷろれすごっこのようです。

ある けんきゅうでは、あそびずきな なかまと そだった ラットは、あたまの まえの ぶぶんが かわり、かんがえて うごく ちからが よかった、と まとめられて います[3]。おとなの ラットと だけ そだった 子は、そう ならなかったそうです。

この ごっこでは、おいかける がわと にげる がわが、こうたいします。この「じゅんばんこ」が だいじなのでは、と 考える 人も います[4]。ただし、ラットの はなしで、まだ かせつです。

ラットの子どもは、仲間どうしで追いかけたり、取っ組み合ったりして遊びます。この遊びと脳の関わりを調べたのが、ペリスらの研究です。研究の紹介ページによると、若い時期に遊び好きな仲間と育てたラットは、脳の前頭前野に変化が見られ、計画や自己コントロールにあたる実行機能もよかったとまとめられています[3]。大人のラットのように遊びの少ない相手と育てた個体は、そうならなかったそうです。

面白いのは、遊びの中身です。仲間どうしの取っ組み合いでは、攻める側と受ける側がたびたび入れ替わります。この「順番の交代」が実行機能の発達にとって大切なのではないか、という仮説が紹介されています[4]。

ただし、これはラットの実験で、仮説の部分も含みます。人の子どもにそのまま当てはめて、「遊ばなければこうなる」と言うことはできません。では、人の子どもの遊びでは、順番や我慢はどこに現れるのでしょうか。

ペリスらの研究の紹介によれば、若い時期に遊び好きな仲間と育てたラットは、前頭前野が変化し、実行機能が向上した。一方、おとななど遊びの少ない相手と育てた個体は、同じ変化を示さなかったという[3]。実行機能とは、計画を立てたり自分の行動を抑えたりする力を指す。

なぜ遊び相手が違うと差が出るのか。有力な説明として挙げられるのが、遊びの中の役割交代である。仲間どうしの取っ組み合いでは、攻める側と守る側が入れ替わることが多く、この順番交代が実行機能の発達に重要だ、という仮説が書かれている[4]。つまり、相手が遊びの上手な仲間だと、自分も立場を変えながら動く練習になる、という筋書きである。

限界も明確にしておく。この2点は、一次の論文でなく研究の紹介ページに基づくうえ、ラットの結果であり、順番交代は仮説として記されている。人の子どもへの当てはめは、実験では示されていない。では、人の遊びで同じ働きを示唆する考え方は何か。

3. ごっこあそびには、ひみつの ルールが ある

3. ごっこ遊びの中には、自分で守るルールがある

3. ヴィゴツキーの説明:想像の場面がつくる自己調整

おみせやさんごっこで、スープを はこぶ 子を 思いうかべて ください。ほんとうは ぐるぐる はしりたくても、スープを もって いるときは、はしりません。こぼれて しまうからです。

だれも「はしるな」と 言って いないのに、ごっこの なかの きまりを、自分で まもって います。ヴィゴツキーと いう 学者の 考えでは、これが「したい きもちを おさえる」れんしゅうに なる、と いいます[5]。

これは 考え方で、かならず そうなると しょうめいされた はなしでは ありません。

おままごとで、お客さんにスープを運ぶ役の子を想像してください。本当は走り回りたいのに、スープを持っているあいだは走りません。こぼれるからです。

誰も「走るな」と命じていません。それでも子どもは、想像の場面の中で決めたルールを自分で守ります。心理学者ヴィゴツキーの考え方では、このとき目の前の衝動を調整する必要があり、それが自分を抑える練習になるとされています[5]。ごっこ遊びと実行機能の関係を扱った研究論文でも、この考え方が紹介されています。

ここで大切なのは、これが理論上の説明で、実験で原因と結果が証明されたものではないことです。それでも、鬼ごっこで鬼を交代する場面や、ままごとで役を決める場面にも、ラットの「順番の交代」と似た場面があります。共通するのは場面の似かたで、同じ働きだと証明されたわけではありません。では、医者の団体は、遊びをどう見ているのでしょうか。

ヴィゴツキーの理論では、ごっこ遊びで子どもは想像の場面を作り、その場面が示すルールに従う。たとえば、スープを運んでいる役なら、走らない。目の前の衝動とは別の行動を選ぶ必要があるため、衝動を調整する練習の場になる、という説明である[5]。ごっこ遊びと実行機能を扱った論文でも、この理論が紹介されている。

この説明がラットの話とつながるのは、どちらも「その場の欲求のまま動かず、相手や場面に合わせて行動を変える」点で共通するからである。ただし、ラットの順番交代は実験にもとづく仮説であり、ヴィゴツキーの説明は理論である。種類の違う2つの話を、同じ結論の証拠として足し算してはいけない。

では、実際の医療や教育の現場では、遊びをどう位置づけているのか。米国小児科学会(AAP)の報告を見る。

4. おいしゃさんの なかまも「あそびは 大じ」と いう

4. 小児科医の学会は、遊びを「脳を育てるもの」とまとめた

4. 米国小児科学会の2018年の報告:遊びと実行機能・ストレス

アメリカの 子どもの おいしゃさんの かいは、あそびは 子どもの あたまを そだて、ストレスの わるい えいきょうを やわらげる、と まとめました[6]。しんさつの ときに、お医者さんが「あそびの おくすり」を すすめる ことも、すすめて います。

ようちえんに はいる のが ふあんな 3さいから 4さいの 子の けんきゅうも しょうかいされて います。せんせいや ともだちと 15ふん あそんだ 子は、ただ すごした 子より、ストレスから 2ばい おおく ときほぐされた そうです[6]。

ただ、これは 1つの けんきゅうです。「あそべば かならず ふあんが なくなる」と 言える わけでは ありません。

米国小児科学会(AAP)は2018年に、遊びについての臨床報告を出しました。報告をまとめたヨグマンらは、遊びは脳の構造と働きを高め、実行機能、つまり計画や自分をコントロールする力を育て、ストレスの悪い影響をやわらげる、と結論づけています[6]。小児科医が健診の場で、遊びを「処方箋」のようにすすめることも勧めています。

学会の普及資料には、小さな実験の紹介もあります。入園に不安をもつ3〜4歳の子が、先生や友だちと15分遊ぶと、ストレスから解放された度合いが、そうでない子の2倍だったという研究です[6]。ただし、これは1つの研究の結果です。

国の指針、ラットの実験、医者の学会。それぞれ、遊びを「ただの暇つぶし」ではなく、育ちに関わるものとして見ています。では、世界の約束は、遊びをどう扱っているのでしょうか。

米国小児科学会(AAP)の2018年の臨床報告(Yogmanら)は、遊びが脳の構造と機能を高め、実行機能を育て、ストレスの悪影響を緩和するとまとめた[6]。実行機能は、計画や自己コントロールの力のことである。さらに、小児科医が健診で、遊びを「処方箋」の形で保護者に勧めることを提案している。

この普及資料には、入園に不安をもつ3〜4歳の子が、先生や仲間と15分遊んだ場合に、読み聞かせを受けた同年齢の子と比べて、ストレスから2倍多く解放されたという研究が紹介されている[6]。「不安が半分になった」という意味ではない点に注意したい。また、1つの研究の結果である。

ここまで見た3つの資料のうち、実験にもとづくのは一部、ほかは理論や学会のまとめである。それでも、国の指針も学会の報告も、遊びを「ひまつぶし」とは見ていない点では一致する。では、遊びは、世界的な約束の中ではどう書かれているか。

5. せかいの やくそくでは、あそぶ ことは「けんり」

5. 子どもの権利条約は、遊ぶことを「権利」と書いた

5. 子どもの権利条約31条:遊びを権利として位置づける

せかいの くにが きめた「子どもの けんりじょうやく」の 31じょうには、子どもは、やすんだり、あそんだり、文化や げいじゅつの かつどうに 入ったり する けんりが ある、と 書かれて います[7]。

あそぶ ことは、ごほうびでは なく、子どもが もっている けんりだと されて いるのです。

ここで 読んだ 文は、日本ユニセフきょうかいの かんたんな ほんやくです。くわしい 文は、げんぶんで 読めます。

子どもの権利条約の第31条は、子どもが休んだり、遊んだり、文化芸術活動に参加したりする権利をもつと定めています[7]。遊びは、宿題を終えたごほうびではなく、子どもが生まれながらにもつ権利として書かれているのです。

ここで引いたのは、日本ユニセフ協会がつくった抄訳(要約したもの)です。年齢に適した遊びやレクリエーションを行う権利を認めるという言い方で紹介されることもありますが、正式な訳文の細かい言い回しは、この記事では確認できていません。

国の指針は遊びを「学習」とよび、学会は「脳を育てる」と見て、条約は「権利」とよびました。見方は少しずつ違っても、遊びを軽く扱わない点では重なっています。では、私たちは遊びを、どう見ればよいのでしょうか。

子どもの権利条約の第31条は、子どもが休息し、遊び、文化的・芸術的な活動に参加する権利を認める[7]。参照したのは日本ユニセフ協会の抄訳であり、「年齢に適した遊びやレクリエーション」という外務省訳の細かな文言は、今回は原文で確認していない。

ここでの遊びは、教育の手段としてではなく、それ自体が子どもの権利として扱われている。これまで見た資料と比べると、幼稚園教育要領は「学習」、AAPは「脳と実行機能」、ラットの研究は「前頭前野」と、遊びの効果の側面に注目していた。条約は、効果の有無にかかわらず、遊ぶことを権利として認める点で、立場が違う。

だから、「遊びは役に立つから大切」という理由だけでは、条約の考え方を言い尽くせない。役に立つことが確かめられていない遊びがあっても、遊ぶこと自体を守る、という発想がそこにある。では、この考えを日常の遊びに戻して見たら、何が見えるのか。

6. きょうの あそびを「じゅんばん・ルール・がまん」で みて みよう

6. 今日の遊びを、「順番・ルール・我慢」の目で見る

6. 今日の遊びで、順番交代・ルール・抑制を観察する

おにごっこで、おにを こうたいする とき、どうやって きめて いますか。ごっこあそびでは、だれが どの やくを するか、どうやって きめて いますか。

いつも する あそびを、「じゅんばんこ」「ルール」「がまん」の 3つの 目で、おもいだして みましょう。おともだちや おうちの人と、「あの ときは どうして きめたかな」と おはなしして みるのも いいです。

今日の遊びを、「順番」「ルール」「我慢」の3つの目で思い返してみてください。鬼ごっこの鬼を、どうやって交代させましたか。ごっこ遊びで、役やきまりを誰がどう決めましたか。やりたいことを少しがまんして、相手に合わせた場面はありましたか。たとえば、鬼の順番が回ってくるまで待ったときや、役が決まるまで自分のやりたい役を少し待ったときです。

原典にあたるなら

文部科学省の幼稚園教育要領と幼児期運動指針は、公式サイトで読めます。子どもの権利条約第31条は、日本ユニセフ協会の条文の抄訳があります。この記事の「学習」「脳」「権利」を、自分の目で確かめられます。

確かめる道すじは3つある。1つめは、幼稚園教育要領と幼児期運動指針を文部科学省のサイトで読み、遊びがどんな言葉で位置づけられているかを見ること。2つめは、AAPの2018年の報告(Pediatrics誌)の本体にあたり、実行機能とストレス緩和の記述が実験によるものか、まとめなのかを区別すること。3つめは、ラットの研究(ペリスら)の原論文で、順番交代が仮説として書かれているのかを確かめることである。

日常に戻すなら、今日の遊びを順番交代・ルール・抑制の3つで観察するとよい。抑制は、鬼の順番が回ってくるまで待つ、やりたい役を少し待つといった場面に現れる。鬼ごっこの鬼の交代や、ごっこ遊びで役とルールを決める場面が、この記事で見た説明に当たるかどうかを、自分の目で考えられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。ラットの実験とごっこ遊びの説明は、研究の紹介ページに基づいており、人の子どもへの影響は実験で確かめられたものではありません。

  1. 文部科学省「幼稚園教育要領 第1章 総則」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/sou.htm (遊びの位置づけ)
  2. 文部科学省「幼児期運動指針」 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm (60分の目安・2012年策定)
  3. National Institute for Play, Adult-juvenile play fighting in rats(ペリスらの研究の紹介) https://nifplay.org/adult-juvenile-play-fighting-in-rats-insight-into-the-experiences-that-facilitate-the-development-of-socio-cognitive-skills/ (ラットの実験の紹介)
  4. National Institute for Play, Juvenile peer play experience and the development of the orbitofrontal and medial prefrontal cortices https://nifplay.org/juvenile-peer-play-experience-and-the-development-of-the-orbitofrontal-and-medial-prefrontal-cortices/ (順番交代の仮説)
  5. ごっこ遊びと実行機能の研究(PMC8685249) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8685249/ (ヴィゴツキーの考え方の紹介)
  6. American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org, The Power of Play(2018年の臨床報告の紹介) https://healthychildren.org/English/news/Pages/healthier-children-play-according-to-the-AAP.aspx (学会の報告と不安の研究)
  7. 日本ユニセフ協会「子どもの権利条約 条文(抄訳)」 https://www.unicef.or.jp/kodomo/nani/siryo/pdf/CRCshouyaku/sentence.pdf (第31条)

なおした ところ

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