1. ジャックより つよい ふだが ほしく なったのは?
1. ジャックより強い札が、ほしくなった
1. ユーカーの「バウアー」── 最強の切り札に、もう1枚ほしくなった
1860ねんごろの アメリカで、「ユーカー」という ゲームが にんきでした[1]。
この ゲームでは、きりふだに きめた しゅるいの ジャックが、いちばん つよい ふだに なります。おなじ いろの ほかの ジャックも、にばんめに つよいのです[4]。
あなたが ゲームを つくる ひとなら、どうしますか。「その ジャックよりも つよい ふだが あったら、もっと おもしろく ならない?」と おもうかも しれませんね。
そこで 52まいに くわえて、いちばん つよい きりふだと して つかう 1まいが つくられました。それが ジョーカーの はじまりです[1]。
では、その 1まいは、さいしょ どんな ふだ だったのでしょう。
1860年ごろのアメリカでは、「ユーカー」というカードゲームが人気でした[1]。このゲームでは、切り札に決まったマークのジャックが「ライト・バウアー」と呼ばれ、いちばん強い札になります。同じ色のもう1枚のジャックは「レフト・バウアー」で、2番目に強い札です[4]。
ジョーカーは、この2枚のさらに上に立つ「ベスト・バウアー」、つまり最強の切り札として使われました[4]。52枚の中のジャックでは「いちばん」になれないので、52枚の外に1枚足したわけです。
では、その1枚は、最初はどんな見た目だったのでしょうか。
ジョーカーは、トランプが広まってからだいぶ後、1860年ごろにアメリカで人気だったユーカーのために加わった[1]。ユーカーでは、切り札のスートのジャックが「ライト・バウアー」として最強になり、同じ色のもう1枚のジャックが「レフト・バウアー」として2番目に強い[4]。バウアー(Bauer)はドイツ語で農民を指し、ここではジャックのことだ[4]。
ジャックのうち2枚が上位を占めるこの強さの序列に、さらに上の1枚を足したのが「ベスト・バウアー」で、ジョーカーはこの役として使われた[1]。つまり、ジョーカーは「あまった札」ではなく、52枚の中では作れない強さを補うために生まれた札だった。
では、その最初の1枚は、どんな札だったのか。
2. しろい かみを、ふだに して つかった?
2. 最初の「ジョーカー」は、絵のない白紙だった
2. 白紙の札 ── 専用の札がない時代の「ベスト・バウアー」
さいしょは、ジョーカーの ための ふだは ありませんでした。アメリカの プレーヤーが、なにも かいて ない しろい ふだを 「いちばん つよい ふだ」と きめて、つかい はじめたと いわれます[2]。
さいしょは、ただの しろい かみ です。それでも「これが いちばん つよい」と みんなで きめれば、ちゃんと ゲームが できました。
ことばの うえでは、1868ねんの ルールの ぶんしょうに、ジョーカーが でて きます。そこでは、あそびに つかう ためでは ない、しろい みほんの ふだとして ジョーカーが でて くるそうです[3]。
ただし、はじまりの ねんだいは、しりょうに よって すこし ちがいます。1860ねんごろと いう せつの ほかに、1850ねんだいと いう せつも あります[2][3]。
最初は、ジョーカー専用の札そのものがありませんでした。アメリカのプレーヤーが、何も印刷されていない白紙の札を「ベスト・バウアー」と決めて使い始めたのが、1860年ごろだといわれます[2]。
白紙の札は、絵がなくても、全員が「これが最強」と了解していれば、ゲームの中で立派に働きます。文字で残っている古い例として、ジョーカーが1868年のルールの文章に登場し、実際に遊ぶためではない白紙の見本札として、ジョーカーが出てくる、という紹介もあります[3]。
始まりの年代は資料によって幅があり、1860年ごろとする説のほか、1850年代にユーカー用に加わったとする説もあります[2][3]。この記事では「諸説あり」として読んでください。
そんな白紙の札に、やがて絵が付きます。
当初は専用の札がなく、アメリカのプレーヤーが白紙の札を「ベスト・バウアー」として使い始めたとされる。時期は1860年ごろとされるが[2]、Wikipedia が引くパーレットの説では1850年代にユーカー用に加わったとされ、年代には幅がある[3]。
なぜ白紙でも成り立ったのか。強さの序列はゲームのルールとして共有されているので、「この白紙が最強」という約束さえあれば遊べた、と考えられる(これは資料の事実からの筆者の推測だ)。
文章での最初の言及としては、1868年のルールにジョーカーが現れ、実際に遊ぶためではない白紙の見本札として登場することが挙げられている(パーレットの紹介)[3]。
白紙のままだった札は、いつ、誰が絵にしたのか。
3. えが ついて、なまえが ついた
3. 絵が付き、名前が付いた
3. 絵入りのインペリアル・バウアーと、「ジョーカー」の名が付くまで
1863ねん、アメリカの トランプの かいしゃ サミュエル・ハートしゃが、えの ついた いちばん つよい ふだを つくった、と いわれて います[3]。なまえは「インペリアル・バウアー」です。
それまでは、しろい かみを いれて しゅっかして いました。この ふだは、はじめから「いちばん つよい きりふだ」と なまえを つけた ふだだった という しょうかいが あります[6]。
「ジョーカー」と いう なまえが ふだに ついたのは、1867ねんの イーグル・カードしゃの ふだが さいしょ、という みかたも あります。ふだには、どうけの ひとの えが かかれて いました[6]。
ただ、これは ある しゅうしゅうかの ブログに ある はなしで、「なにを さいしょと するのか」には ぎもんも のべられて います[6]。
では、ジョーカーという なまえは、どこから きたのでしょう。
1863年、アメリカのトランプ会社サミュエル・ハート社が、絵入りの「ベスト・バウアー」を印刷し、「インペリアル・バウアー」と名付けた、と紹介されています[3]。ただし、これが本当に最初かどうかは、研究者の間でも議論があります。
ある収集家のブログは、それまで白紙で出荷していたところに、「最強の切り札」という名前そのものを付けた札を初めて売ったのがこの例だと述べます[6]。
「ジョーカー」という名前が付いた札としては、1867年のイーグル・カード社の道化師の札が最初に見える、という見方もあります。1872年ごろには、ダハティ社が「ジョリー・ジョーカー」という言葉を使いました[6]。ただしこれは個人のブログで、書いた本人も「何を最初とするか」に疑問を示しています。「という見方もある」くらいに受け取るのがよさそうです。
では、そもそも「ジョーカー」という名前は、どこから来たのでしょうか。
1863年、アメリカのサミュエル・ハート社が絵入りのベスト・バウアーを作り、「インペリアル・バウアー」と名付けたと紹介される[3]。これが最初の絵入りの例かどうかは、研究者の間でも議論がある。ある収集家のブログは、これを「白紙を出荷する代わりに、最強の切り札として名前を付けた札」の最初の例とみる[6]。
さらに、同じブログは、1867年のイーグル・カード社の道化師の札を、「ジョーカー」の名が付いた最初のデックらしいとし、1872年ごろにダハティ社が「ジョリー・ジョーカー」の語を使った例も挙げる[6]。ただし、これは個人の収集家の整理で、筆者自身が「何を最初とするか」に疑問を示している。
このため、白紙・絵入り・名前入りの順番は、およその流れとして読むのが無理がない。1枚の資料で年を確定できない部分が、まだ残っている。
だとすると、「ジョーカー」という名前は、いったいどこから来たのか。
4. ジョーカーと いう なまえは、どこから?
4. 「ジョーカー」の名前は、どこから来たのか
4. 名前の由来 ── ユッカー説・偶然説・「変わる者」説
1つの せつは、「ユーカー」の もとに なった ゲームの なまえに にて いるから、と いうものです。ユーカーは、フランスの アルザスちほうの ふるい ゲーム「ユッカー」から きたと いう せつが、いちばん ゆうりょくです[4]。
でも、トランプを つくる かいしゃの バイスクルしゃは、「ただの ぐうぜんだと おもう」と いって います[1]。
もう1つの せつも あります。ベスト・バウアーが できた あと、アメリカの ひとたちは、ほかの ゲームにも、ふえた 1まいを いれる ように なりました。その ころ、「かわる もの」「ひょっこり でて くる もの」と いう いみで、ジョーカーと よばれる ように なったのかも しれない、という ものです[5]。
ほんとうの りゆうは、まだ きまって いません。
1つめの説は、ユーカーの元になったゲームの名前に似ているから、というものです。ユーカーは、フランス東部アルザス地方の古いゲーム「ユッカー(Jucker)」に由来するという説が最有力で[4]、その音から「ジョーカー」になったのではないかと考えられました。
ところが、トランプメーカーのバイスクル社は、これを「ただの偶然だと確信している」と述べています[1]。
国際トランプ協会(IPCS)には別の見方があります。ベスト・バウアーが導入されたあと、アメリカ人は他のゲームにも余分な1枚、多くは万能札を足すようになりました。そのころ、「性格が変わるもの」「ひょっこり現れるもの」という意味で、ジョーカーと呼ばれるようになったのかもしれない、という考えです[5]。
どの説にも決め手はなく、語源は決着していません。分かっていないところが、この札のおもしろさでもあります。
名前の由来には、少なくとも2つの説がある。第1は、ユーカーがアルザス地方の古いゲーム「ユッカー(Jucker/Juckerspiel)」に由来するという有力説[4]を前提に、その音が「ジョーカー」に通じたとする見方だ。ところが、トランプメーカーのバイスクル社は、これを「ただの偶然だと確信している」と述べ、否定的だ[1]。
第2は、IPCS の推測だ。ベスト・バウアーの導入後、アメリカ人が他のゲームにも余分な1枚(多くは万能札)を足すようになり、その札が「性格が変わるもの」「ひょっこり現れるもの」という意味でジョーカーと呼ばれるようになったのかもしれない、と述べる[5]。ただし「かもしれない」という推測の段階で、決定的な証拠が示されているわけではない。
では、なぜ札の絵は道化師になり、なぜ標準のデックには2枚入っているのか。次の章で見るように、確かな理由は示されておらず、いくつかの可能性が語られているだけだ。
5. どうして ピエロの えで、2まいも あるの?
5. なぜ道化師の絵で、なぜ2枚なのか
5. 道化師の絵と2枚入りの理由、ポーカーへの広がり
どうけの えに なった わけも、はっきり しません。キングや クイーンなど、おしろの ひとたちを えがいた ふだに、あわせやすかったから、という かのうせいが あります[1]。
ふつうの トランプに 2まい はいって いる わけも、わかって いません。ユーカーで「ベスト・バウアー」として たされた ふだは 1まいだけ なので、トランプの かいしゃが、そう する ならわしに したのかも しれません[1]。
それでも、ジョーカーという かんがえは、ほかの ゲームにも ひろがりました。1875ねんごろ、ポーカーでは「ミスティグリス」と いう なまえで、なんにでも なれる ふだと して つかわれました[3]。
ひとつの ゲームの「たりない つよさ」を おぎなう ために うまれた ふだが、いろんな ゲームで つかわれる ように なって いったのです。
ジョーカーが道化師の絵になった理由は、はっきりしていません。王や女王など、中世の宮廷をテーマにした札に合うから選ばれた、という可能性が述べられています[1]。
標準のデックに2枚入っている理由も不明です。ユーカーのベスト・バウアーは1枚だけなので、メーカーが慣習にしたのかもしれない、といわれます[1]。
一方、ジョーカーという考え方そのものは、他のゲームにも移りました。1875年ごろには、ポーカーで「ミスティグリス」という名前の万能札として使われたと、パーレットが紹介しています[3]。
特定のゲームの「足りない強さ」を補うために生まれた1枚が、のちには別のゲームの万能札として使われていく。ジョーカーの歴史は、そんな広がり方をしています。
道化師の絵になった理由は明確でなく、王・女王など宮廷をテーマにした札と調和するから選ばれた可能性がある[1]。標準デックに2枚入る理由も、ユーカーのベスト・バウアーが1枚だけであることを考えると不明で、メーカーが慣習にした可能性が指摘される[1]。
一方で、考え方は他のゲームに広がった。ジョーカーの概念はのちにポーカーに移り、1875年ごろ「ミスティグリス(Mistigris)」の名で万能札として使われたとパーレットは述べる[3]。
IPCS は、ジョーカーはヨーロッパの発明ではなく、アメリカがトランプの歴史にもたらした最も個性的な貢献のひとつだとする[5]。特定のゲームで「足りなかった強さ」の穴埋めから始まった札が、他のゲームでも使われていった過程は、ルールの需要が札を生んだ例として読める。
6. しろい かみで、じぶんの ジョーカーを つくって みよう
6. 白紙の札で、自分のジョーカーを作ってみる
6. 出口 ── 白紙の札を自分で作る/原典に当たる
うちに トランプが あれば、いらない かみを トランプと おなじ おおきさに きって、しろい ふだを 1まい つくって みましょう。はさみを つかう ときは、おうちの ひとと いっしょに します。
その かみを「いちばん つよい ふだ」と きめて、かぞくや ともだちと、いつもの ゲームを して みます。つよすぎて つまらなく ならないか、ルールを どう かえたら たのしいか、かんがえて みましょう。
むかしの ひとも、こうして ジョーカーを つくったのかも しれません。
家にあるトランプと同じ大きさに、いらない紙を切って白紙の札を1枚作ってみましょう。はさみを使うときは、大人と一緒にします。
その白紙を「いちばん強い札」と決めて、いつものゲームで使ってみます。強すぎて勝負にならないか、どんなルールにすると楽しいか。昔のユーカーのプレーヤーも、似たことを考えたのかもしれません。
ジョーカーが2枚ある理由や、名前の由来について、自分の説を考えてみるのも楽しいです。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:一般向け記事・百科事典・国際トランプ協会の解説・収集家のブログを突き合わせました。年代や語源は資料によって異なるため、本文では「とされる」「諸説あり」と書いています。
- Mental Floss「Why Are There Two Jokers in a Deck of Cards?」 https://www.mentalfloss.com/fun/games/why-do-card-decks-have-jokers (ユーカーでの登場、ベスト・バウアー、道化師・2枚入りの理由、バイスクル社の見解)
- Saturday Evening Post「Why Do Playing Cards Have a Joker?」 https://saturdayeveningpost.com/2021/06/why-do-playing-cards-have-a-joker (白紙の札を使い始めた時期)
- Wikipedia「Joker (playing card)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Joker_(playing_card) (ハート社の1863年の札、1868年のルール、ポーカーでのミスティグリス)
- Wikipedia「Euchre」 https://en.wikipedia.org/wiki/Euchre (バウアーの強さの順、ユッカー由来説)
- International Playing-Card Society「Joker development」 https://i-p-c-s.org/faq/history_11.php (アメリカ生まれの札であること、名前の由来の推測)
- Amused by Joker Sami「The earliest jokers and my questions」 https://www.amusedbyjokersami.com/2023/11/the-earliest-jokers-and-my-questions.html (収集家による、名前入りの最初の札の整理。個人のブログ)
なおした ところ
更新履歴
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