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柔道じゅうどうの うけみは、なにを まもって いるの?

柔道の受け身は、どこを守る技術か ── 0.3秒のあいだに起きていること

柔道の受け身と頭頸部の保護 ── 加速度を測り、感覚とのずれと初心者の事故報告を読む

分野:からだ・スポーツ

柔道じゅうどうでは、なげられた 人が、畳たたみを バン!と たたきます。せなかから おちて いるのに、あたまを まもる ための わざだと いわれます。

あの うごきは、いったい なにを して いるのでしょう。むかしの じっけんと、けがの ほうこくを 見ながら、かんがえて みます[1][2]。

柔道の試合で、投げられた選手が腕で畳を強くたたく場面があります。背中から落ちているのに、頭を守るための技術だと説明されます[1][2]。

受け身は、ただ痛くない倒れ方なのでしょうか。守っているものは何で、そのあいだに体で何が起きているのでしょうか。昔の測定実験と、事故の報告の分析を手がかりにたどります。

柔道の受け身は、投げられたときの衝撃を減らし、頭を畳に打ちつけないための技術と説明される[2]。目的は頭部と胴体の保護で、とくに頭部の保護が第一とされる[1]。

では体の各部分に、実際にはどんな衝撃がどの順で加わるのか。1960年代ごろの測定実験[1]と、重篤な頭部外傷の報告の分析[2]、成人の受け身をまとめた2022年の系統的レビュー[3]を突き合わせて整理する。

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1. うけみは、なんの ために ある?

1. 受け身の第一の目的は「頭を守ること」

1. 受け身の目的 ── 頭部の保護が第一とされる

うけみは、なげられた ときに、からだを まもる わざです。なかでも いちばん だいじに されて いるのは、あたまを まもる ことです[1]。

だから、柔道じゅうどうを はじめた ばかりの 人は、なげる れんしゅうより さきに、うけみを ならいます。

うでで 畳たたみを たたく ことも、うけみの 一つです。ほかに、あたま・くび・おなか・あしを まげて、ぶつかる ときの ちからを へらす うごきも ふくまれると せつめいされます[2]。

柔道を始めたばかりの人には、投げ技の練習より前に、投げられたときに身を守る受け身を練習させるのが通例だと、昔の論文は書いています。受け身の目的は頭部と胴体の保護で、なかでも頭の保護が第一に扱われてきました[1]。

受け身というと、腕で畳をたたく動きが目立ちます。しかし説明の上では、それだけではありません。頭と首、体の幹、脚を曲げる動きも合わせて、畳にふれるときの衝撃を減らし、頭がぶつかるのを防ぐ技術とされています[2]。

つまり、たたく動きは全体の一部です。この一部が何をしているのか、次の章から測定の結果で見ていきます。

初心者の柔道指導では、投げ技の練習の前段階として、投げられて身を安全に処す技術、つまり受け身を練習させるのが通例である。目的は頭部と胴体の保護で、とくに頭部の保護が第一義的に扱われる[1]。

越田(2020)は受け身を、腕で畳を強く叩く動作に加え、頭頸部・体幹・下肢の屈曲動作で畳との接触時の衝撃を減らし、頭部の衝突を防ぐ技術と説明する[2]。腕で叩く動作は定義の一要素にすぎない。

この定義を、実測データで確かめた研究がある。次章以降、真柄・内匠屋の実験[1]を中心に見る。

2. うけみは、どれくらいで おわる?

2. 順天堂大学の実験 ── 受け身は約0.3秒で終わっていた

2. 加速度計と高速度撮影 ── 手の接地から約0.3秒で終了

むかし、じゅんてんどう大学で、うけみを はかる じっけんが ありました。じょうずな 3だんの 人と、しょだんの 人の 2人が、きょうりょくしました[1]。

からだの あちこちに きかいを つけて、なげられた ときの ようすを しらべます。すると、てが 畳たたみを うって から 0.3びょうほどで、うけみは ほとんど おわって いました。

0.3びょうは、「いち、に」と かぞえる よりも みじかい あいだです。

ただし、これは 2人の じっけんです。みんなが いつも 0.3びょうだと いう わけでは ありません。

受け身を体の各部分で測った実験が、順天堂大学で行われました。熟練の3段と初段の2人が協力し、右の釣込腰で投げられたときの動きを、加速度の測定と高速度撮影で調べています[1]。

結果は、手が畳を打った瞬間から約0.3秒後には、受け身はほぼ終わっていた、というものでした。投げられてから畳にふれ、衝撃を受け流すまでが、それほど短い時間に収まっています。

ただし、協力したのは2人だけの実験です。「受け身はいつも0.3秒」と一般化はできません。それでも、かなり短い時間で済んでいることは、この数字から分かります。

真柄・内匠屋の実験では、順天堂大学で熟練の3段と初段の2人が、右釣込腰で投げられたときの受け身を、加速度計と高速度撮影で測定した[1]。

報告では、手が畳を打った瞬間から0.3秒後には、受け身をほぼ終了したとみなせる。被験者は2人で、技も1種類のため、この時間を一般化することはできない。

ただ、意識して調整する余裕のない短時間で、衝撃の受け渡しが済んでいることは分かる。その受け渡しの順序が、次章の論点になる。

3. さいしょに ふれる ところは どこ?

3. 「手・腰・足が同時」のつもりが、先に手がついていた

3. 主観と測定のずれ ── 接地の順序

この じっけんの 人たちは、「てと こしと あしが、いっしょに つく」と かんじて いました[1]。

ところが、5人の はんてい役の 人たちは、ぜんいん「てが さきに ついて いる」と みました。きかいの さつえいも おなじでした。

じょうずな 人は、てが さき、つぎに こし、その あとに あし。もう 1人は、て、あし、こしの じゅんでした。

じぶんの かんじと、じっさいの ようすは、ちがう ことが あります。ろんぶんを かいた 人たちも、そこに ちゅういを よびかけて います。

おもしろいのは、本人の感覚と実際のずれです。実験に協力した2人は、畳につく順序を「手・腰・足がほぼ同時」と感じていました[1]。

ところが、5人の判定員は全員が、手から先に畳にふれていると判定しました。高速度撮影の映像も同じ結果です。熟練の人は手・腰・足の順、もう1人は手・足・腰の順でした。

論文は、感覚的な印象をそのまま物理的な事実として扱うことには注意が必要だと述べています。速い動きは、自分の感覚だけでは追いきれないのかもしれません。

被験者は接地の順序を「手・腰・足がほぼ同時」と感じていた。しかし判定員5名中5名が、いずれも手から先に畳に接触していると一致して判定し、高速度撮影でもそうだった。熟練者は手→腰→足、もう1人は手→足→腰の順だった[1]。

論文は、感覚的な印象を直ちに物理的事実として扱うことに注意を促している[1]。この実験では、感覚と実際の接地順が一致しなかった。

また同じ研究は、腕と体側の角度が、一般に言われる30〜40度になるのは受け身を終えるころで、手が畳を打つ瞬間はほぼ直角に近かったと報告する[1]。

4. しょうげきは、どこに いくの?

4. 手と腰で大きく受け、頭に近い肩は小さかった

4. 部位別の加速度 ── 手・腰と肩・首の差

たかい ところから とびおりる とき、ひざを まげずに おりると、あしに ひびきます。ひざを まげて ゆっくり とめると、らくです。うけみも、ちからを 一か所で うけずに、ひろげる うごきに 少し にて います。ただし、ほんとうは もっと ふくざつです。

じっけんでは、てと こしに 大きな しょうげきが かかりました。てには、じゅうりょくの 50ばいほどの 大きさの 数字が でて います[1]。

いっぽう、あたまに ちかい かたは、じょうずな 人で とても 小さい 数字でした。もう 1人の かたは、その 2ばいあまりでした。

くびの ふれかたも ちがいました。ふれが 大きかった 人は、からだ ぜんたいに ちからを いれて、くびを かためて いました。

この 2人の くらべだけでは、ぜんぶは いえません。でも、あたまから とおい ところで うけて、あたまへ いく ぶんを へらす と いう すがたが 見えて きます。

高い所から飛び降りるとき、ひざを曲げれば、衝撃を時間をかけて受け止められます。受け身も、力を一か所で受けず、体のあちこちに分ける動きにどこか似ています。ただし、これはあくまでたとえで、実際の体はもっと複雑です。

実験では、手と腰に大きな衝撃がかかっていました。手の加速度のピークは、重力加速度の約50倍にもなっています。一方、頭に近い肩の加速度は、熟練の人で2.5G前後、もう1人で5.5G前後でした[1]。

首の動きも比べています。首の角速度の最高は、熟練の人が毎秒530度、もう1人が1,260度で、熟練の人は半分以下でした。首の揺れが大きく長く続いたのは、全身に力を入れて首を固めていたほうです。

これは2人の比較で、この実験ではそうだった、という範囲の話です。ただ、頭から遠い部分で衝撃を受け、頭へ届く分を減らす姿が見えてきます。

加速度のピークは、手で約50G(Gは重力加速度の倍数)、腰も大きく、いっぽう頭に近い肩は、熟練者で約2.5G前後、もう1人で約5.5G前後だった[1]。首の角速度は最高で毎秒530度と1,260度で、熟練者は半分以下だった。全身に力を入れ首を固めた側の揺れが大きく、長く続いた。

ただし、比較は2人のみである。「手と腰が衝撃を受け持つ」と一般化せず、この実験ではそうだった、と読むのが妥当だろう。

成人の受け身の3次元バイオメカニクス研究を集めた2022年の系統的レビューは、173件から16件を分析し、受け身をした場合は後頭部が直接畳に当たる場合より運動学的な値が小さく、傷害の閾値を常に下回ったと報告する[3]。ただし対象は成人で、子どもの結果ではない。また本文全体は未確認で、要旨に基づく。腕で叩く動作が主因かどうかは、資料により見解が分かれる。

6. はじめは、どう ならうの?

6. 初心者の練習は、低い姿勢から段階的に

6. 全柔連の指針 ── 段階的な受け身指導と事故件数の推移

はじめた ばかりの 人には、じゅんばんに ならう ほうほうが すすめられて います。まず すわった まま、つぎに ひくい しせい、そして ひざを ついて、さいごに たった まま。あたまの いちを、すこしずつ たかく して いきます[2]。

はじめの 3か月ほどは、しあいの ような れんしゅうに 出さない、たかい ところから なげない、おおそとがりという わざを うけさせない、という きまりも しめされました。

こうした しどうの あと、おもい けがは へって きたと ほうこくされて います。ただし、その りゆうが しどうだけかは、はっきり しません。

全日本柔道連盟は、始めて3か月ほどの初心者について、次の指針を示しています。試合形式の自由練習(乱取)に参加させない、高い位置からの投げ込みをしない、大外刈を受けさせない、の3つです[2]。

受け身の練習も段階的で、座った姿勢から、蹲踞、膝をついた姿勢、立った姿勢へと、頭の位置を少しずつ高くしていくのが望ましいとされています。

重い頭部外傷の報告は、2012年ごろから減りました。急性硬膜下血腫は、2003年6月から2011年末は36件(年平均4件。前の30件とは集計の期間と対象が別)、2012年以降の8年は19件(年平均2.4件)です。減少は安全指導の広がりの反映と「考えられる」とされ、原因が確定したわけではありません[2]。

受け身は、はじめから完成した形を目指すものではなく、頭が低い位置から順に慣れていく技術だと言えそうです。

全柔連は、初心者が競技を始めてからおよそ3か月は、(1)乱取に参加させない、(2)高い位置からの投げ込みを行わない、(3)大外刈を受けさせない、という指針を示す。受け身の指導は、座位→蹲踞→膝つき→立位の順で、頭の位置を徐々に高くする段階的な方法が推奨される[2]。

越田(2020)によれば、重大な急性硬膜下血腫は2003年6月〜2011年末の約9年で36件(年平均4件。前章の30件とは集計の期間・対象が別)、2012年以降の8年で19件(年平均2.4件)と減った。減少は安全指導の教育啓発を反映すると「考えられる」とされる。因果は推定で、指導の効果と断定する根拠は示されていない[2]。

なお、初心者向けの指針や件数は、この論文による引用を通じて確認したもので、全柔連の原資料そのものは照合していない。原典にあたる場合は、全柔連の公表資料を確かめたい。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

うけみは、じぶんで ためす ものでは ありません。かならず、しどう者の いる どうじょうで ならいます。

いま できる ことは、見る ことです。学校の じゅぎょうや、ちかくの たいかいで うけみを 見る きかいが あれば、たたく まえの あしや あたまの うごきを 見て ください。

「なぜ、あたまが いちばん さいごに つくのだろう」。そう かんがえて 見るだけで、ずいぶん ちがって 見えるはずです。

くわしく しりたい 人は、ぜんにほん柔道じゅうどうれんめいの 「柔道じゅうどうの あんぜんしどう」を よんで みて ください。

受け身は、自己流で試すものではありません。学ぶときは、指導者のいる道場や学校の授業で、順序を踏んで習うものです。

いまできるのは、見て考えることです。近くで柔道の授業や大会を見られる機会があれば、腕で畳をたたく動きの前後で、脚や頭がどう動くかに注目してみてください。本文で見た「手が先」という順序は、実際の映像でどう見えるでしょうか。

さらに調べるなら、全日本柔道連盟が公表している「柔道の安全指導」が、初心者の指針の原典です。この記事はJ-STAGEの論文の引用をもとにしているので、原資料との照合は今後の課題です。

受け身は自己流で試す動作ではなく、指導者のもとで段階的に習うものである。

観察するなら、実際の受け身を、腕で叩く瞬間だけでなく、脚・体幹・頭の位置の変化に注目して見るとよい。本稿の実験結果(手→腰→足の順、頭に近い肩の加速度が小さい)が、実際の動きでどう現れるかを考える材料になる。

原典としては、真柄・内匠屋の論文[1]と、越田(2020)[2]、系統的レビュー[3]がJ-STAGEやMDPIで公開されている。全柔連の「柔道の安全指導」もあわせて読みたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

研究論文の結果は、それぞれの条件(被験者・年代・技)のもとでの報告です。この記事は一般的な安全の助言ではありません。柔道を習うときは、指導者の指示に従ってください。

  1. 真柄・内匠屋「身体各部分の加速度からみた柔道の受け身」『武道学研究』9巻3号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/budo1968/9/3/9_15/_pdf/-char/ja (受け身の目的、0.3秒、接地の順序、部位別の加速度)
  2. 越田「柔道における頭頚部外傷の疫学,危険因子,受傷機転および予防対策」『日本AT学会誌』6巻1号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/6/1/6_25/_pdf/-char/ja (受け身の定義、受傷機転、初心者の事故報告、全柔連の指針の引用)
  3. Systematic Review on the Biomechanics of Breakfall Technique (Ukemi), Int J Environ Res Public Health, 2022 https://www.mdpi.com/1660-4601/19/7/4259 (成人の受け身の系統的レビュー。要旨に基づく)

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