このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

森の 下の いせきを、空から どう 見つけるの?

緑の森の下の遺跡を、空からどう見つけるのか ── レーザーで地面だけを取り出す方法

航空レーザ測量(LiDAR)と森林下の遺跡 ── 点群のフィルタリング、アンコール周辺・マヤ低地・奥出雲の事例

分野:技術

ひこうきから 森を 見ると、木の 葉で 一面 みどり色です。地面は 見えません。

それでも、この 森の 下から、むかしの 町の あとが 見つかりました。どうやって 地面の 形を 知ったのでしょうか。

飛行機から見ると、森は緑のじゅうたんのようで、地面は見えません。それなのに、その下に隠れていた古い都市や神殿のあとが、次々に見つかっています。

使われているのは、光を使う測量の技術です。木の反射と地面の反射をどう分けるのか。カンボジア、マヤ、そして島根県の山での例を通して見ていきます。

航空レーザ測量(LiDAR)は、機体から発したレーザーの反射を高密度の点として記録し、そこから樹木の点を除いて地表面だけを取り出す技術だ[1]。森林に覆われた遺跡の探索で、成果が続いている。

この記事は、点群とフィルタリングのしくみを確認したうえで、カンボジアのプノン・クーレン、グアテマラなどのマヤ低地、メキシコのアグアダ・フェニックス、島根県奥出雲町の古墳の例を、出典ごとに強さを区別しながら読む。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 光を 何回も とばして、はね返りを はかる

1. 光を何度も飛ばし、返ってくるまでを測る

1. 航空レーザ測量の構成 ── 3つの機器と点群

山で「やっほー」と さけぶと、少し あとに こだまが 返ります。返るまでの 時間が 長いほど、山は 遠くに あります。

この 仕組みを 光で やるのが、レーザーの そくりょうです。ひこうきから 光の パルスを 下に 向けて 出し、物に 当たって 返った 光を きろくします[2]。返るまでの 時間で、その 物までの 長さが 分かります。

光は 一秒に 何回も 出します。あたった 場所ごとに、上から 見た いちと 高さを もつ「点」が 1つ できます。点が たくさん 集まった ものを、てんぐんと いいます。

山でさけぶと、少しあとにこだまが返ってきます。返るまでの時間が長いほど、山は遠くにあります。レーザーの測量は、これを光で行うものです。

航空レーザ測量では、ヘリコプターや飛行機に、レーザーを出して距離を測る機器のほか、機体の位置を測るGNSSと、傾きを測るIMUを積みます[1]。光を高い頻度で発射し、物に当たって返ってきた光を記録すると、距離が分かります[2]。

1つ1つの反射は、緯度・経度・高さをもつ点になります。点が大量に集まったものが点群です[2]。

航空レーザ測量は、GNSS(機体の位置)・IMU(姿勢)・レーザ測距儀の3機器で構成される。国土交通省の資料は、近赤外のレーザを高い頻度で発射して高密度の点群を取得し、樹木などをフィルタリングして地表面の三次元座標データを作る技術と説明する[1]。

個々の点の距離は、パルスが物に当たって戻るまでの時間から求める。NOAAの解説も、表面で反射した光をセンサーが記録して距離(range)を測ると述べ、各点は緯度・経度・高さの情報をもつ点群になる[2]。ここまでは、遺跡でなくても地形一般の測量の話だ。

2. 木に 当たった 光と、地面に とどいた 光

2. 木の反射と地面の反射を分ける

2. 樹冠の反射と地表面の反射 ── フィルタリングと「貫通しない」という前提

でも 森では、光の ほとんどが 葉や えだに 当たります。地面まで 光が 行くのでしょうか。

木もれ日を 思い出して ください。葉は しげって いても、地面には ところどころ、光の 点が 落ちて います。レーザーの 光も それと 同じで、葉の すきまを とおった 一部が 地面に とどきます。ただし 本当は、光が 葉を つきぬけるのでは ありません。

1回の 光でも、木の 上の ほうと 地面など、いくつかの 返りが 出る ことが あります。上の ほうの 点は 木、いちばん 下の 点が 地面の こともあります。あとで 木の 点を 取りのぞくと、地面の 形だけが のこります。

森の中では、出した光の多くが、葉や枝で反射します。地面まで届くのは、葉のすきまを通り抜けた一部です。光が葉を貫通するわけではありません。

そのため、1回の発射で、木の上のほうと地面など、複数の反射が返ってくることがあります。

フィルタリング

集めた点群から、樹木などの点を除き、地面の点だけを残す作業をフィルタリングといいます[1]。この地面の点をつないだ地形データを見ると、森の木が消えた姿になります。

数字を確かめておきます。この測量で、地面からの反射は、1平方メートルあたり平均2点でした[3]。全部の反射が2点ではなく、地面の反射だけの数です。これは、2012年4月のカンボジアの測量の数字です。

森林では、レーザの大部分は樹冠で反射し、葉のすきまを抜けた一部だけが地表面に届く。光が葉を貫通するわけではない。国土交通省の資料が「樹木などのフィルタリング処理」を含めて技術を説明するのは、この性質による[1]。1パルスから複数の反射(リターン)が得られるので、最後の反射が地表面の候補になることもある。

2012年4月にカンボジア北西部で行われた約370km²の測量では、地表面からの反射は調査範囲の平均でちょうど1m²あたり2点だった[3]。この2点は地表面の反射だけの数で、全反射数ではない。

どの点を地面とみなすかの選び方には、なお課題が残る。

3. カンボジアの 山で、森の 下から 町が 出て きた

3. カンボジアの山に、計画された都市のあと

3. プノン・クーレン ── 碑文でのみ知られた都市の景観が地形に現れた

カンボジアには、アンコールワットで 知られる クメールの 人たちの 大きな 国が ありました。北西の プノン・クーレンという 山の 森の 上を、2012年に ひこうきが とびました。

すると、森の 下の 山の 表面に、それまで きろくの なかった 道路や お寺の あとが 見えたと ほうこくされて います[3]。

この 山に、8〜9せいきごろの 町マヘンドラパルヴァタが あった ことは、石に ほられた 文字で 知られて いました。町の あとの 形が 見えたのは、これが はじめてでは ないかと いわれます。

カンボジアでは、アンコールワットで知られるクメール王朝の遺跡が、広い範囲の森の下に広がっています。2012年4月、北西部のプノン・クーレン周辺を含む約370km²で、レーザー測量が行われました[3]。

研究チームは、森の下の山の表面に刻まれた、それまで記録のなかった都市の景観が現れたと報告しました。道路や、未記録の寺院のあとも含まれます[3]。8〜9世紀の都市マヘンドラパルヴァタは、それまで主に碑文でしか知られていませんでした[3]。

その後の調べ

その後の研究では、レーザー測量と現地調査から、研究チームは、この都市をほぼ東西南北に向いた軸をもち、整った区画のある「計画都市」だった可能性があると解釈しています。クメールの世界で最初の大規模な格子状の都市とする見方です[4]。

プノン・クーレンでは、レーザー測量のデータが、森の下の山の表面に刻まれた、それまで記録のなかった都市景観全体を明らかにした。道路や未記録の寺院が含まれる[3]。8〜9世紀の都市マヘンドラパルヴァタは、それまで主として碑文でのみ知られていた[3]。文字で伝わる都市が、地形として初めて見えた例だ。

その後の研究(Antiquity)は、レーザー測量と地上調査から、この都市を、ほぼ東西南北に向いた軸をもつ計画的な都市と解釈する[4]。ただし、範囲や区画の大きさの数字は、今回は要約の経由でしか読んでいないので、ここには書かない。

4. マヤの 森と、台地の 発見

4. マヤの森で、数分と数年のちがい

4. マヤ低地とアグアダ・フェニックス ── 規模の推定と、「支配者の像がない」という示唆

中央アメリカの 森にも、マヤの 人たちの 町の あとが ねむって います。グアテマラ北部で、広い 森を レーザーで はかると、6万を こえる たてものの あとが 見つかったと ほうこくされました[5]。

研究した 人は、レーザーの おかげで 数分で 分かった ことが、歩いて 調べたら 何年も かかっただろうと 話して います[5]。

メキシコの アグアダ・フェニックスでも、しらべて いくと 大きな 台地が わかりました。長さは 1400メートルほどで、歩くと 20分ぐらいです。3000年ぐらい 前に つくられたと いわれます[6]。マヤの 人たちの しそんは、今も この 地方で くらして います。

マヤ文明は、中央アメリカの低地の森で栄えました。2016年のグアテマラ北部での測量を分析した研究チームは、調べた範囲に、約6万(61,480)の古代の構造物を見つけたと報告しています。650〜800年ごろの人口を700万〜1100万人と推定していますが、この人口は推定で、幅があります[5]。

研究者は、レーザーのおかげで数分で分かったことは、現地調査だけなら何年もかかっただろうと述べています[5]。

アグアダ・フェニックス

メキシコ南東部のタバスコ州のアグアダ・フェニックスでは、発掘と航空測量の調査で、約3000年前の巨大な人工の台地が明らかになったと報じられました。長さは約1400m、幅は約400mで、台地内には高さ約10mの盛り土があります。紀元前1000〜800年ごろのものとされます[6]。1400mは、歩いて20分ほどの長さです。

この場所からは、王のような高い身分の人を表す彫刻が見つかっていません。研究者は、高い身分の支配者がいなくても、大きな建設ができた可能性を示唆しています[6]。「証明された」ではなく、「そういう可能性がある」という段階の話です。マヤの人びとの子孫は今もこの地域に暮らしており、遺跡は過去に消えた文明のものではありません。

2016年のグアテマラ北部での測量を用いた研究では、調査域に約6万(61,480)の古代の構造物が確認された。後期古典期(650〜800年)の低地マヤの人口は、700万〜1100万人と推定される。この数字は約数と推定で、幅がある[5]。研究者は、レーザーのおかげで数分で分かったことが、現地調査だけなら何年もかかっただろうと述べる[5]。

メキシコ・タバスコ州のアグアダ・フェニックスは、発掘と航空測量で調べられ、巨大な人工の台地が明らかになった場所で、報道では長さ約1400m・幅約400m、台地内に高さ約10mの盛り土があり、紀元前1000〜800年ごろの築造とされる[6]。数値は二次資料(報道)による。原論文の確認はできていない。

この遺跡からは、王など高位の人物を表す彫刻が見つかっていない。研究者は、身分の高い支配者がいなくても大規模な建設が可能だった可能性を示唆する[6]。示唆の段階で、証明された結論ではない。なお、マヤの人びとの子孫は現在もこの地域で暮らしている。

5. 日本の 山にも、ふるい おはかが あった

5. 島根県の山で、町の地図から古墳が浮かんだ

5. 島根県奥出雲町 ── 森林管理の地図から前方後円墳の候補が浮かんだ

日本でも、同じような ことが ありました。島根県の おくいずも町では、ぜんぽうこうえんふんという ふるい おはかが 5つしか 見つかって いませんでした。

そこで まつえ市の 3人の 考古学者が、町が 森の 手入れの ために 作った 地図を 見ました。地面の 高さを 色で あらわした 地図です。かたむきが 急な ところは 赤く、なだらかな ところは 白っぽく なって、丸い もりあがりが 目立ちます。

そこから 目星を つけると、2023年11月の ほうどうでは、新しく 77この こふんが 見つかったと されています[7]。

日本にも同じ例があります。島根県奥出雲町では、それまで前方後円墳が5基しか知られていませんでした。2023年11月8日の報道によると、そこに77基が新たに見つかったとされます[7]。

手がかりは、町が森林管理のために作った「赤色立体地図」でした。傾斜が急なほど赤が濃く、なだらかだと白っぽくなる表現で、古墳のような人工の地形が浮かび上がるとされます[7]。この地図から古墳に目星をつけたのは、松江市の考古学者3人でつくる本庄考古学研究室です[7]。

77基は報道の時点の数です。目星をつけた段階のものを含むかもしれず、どこまで現地で確かめられたかは、この記事では確認できていません。

山陰中央新報の報道(2023年11月8日)によれば、島根県奥出雲町では、それまで5基しか確認されていなかった前方後円墳が、新たに77基見つかったとされる。町が森林管理のために作った赤色立体地図から古墳に目星をつけたのは、松江市の考古学者3人による本庄考古学研究室だ[7]。

赤色立体地図は、傾斜が急なほど赤を濃く、なだらかなほど白っぽくして立体感を出す表現で、人工的な地形が浮かびやすい[7]。地図の元データが、この町で航空レーザ測量によるものかどうかは、記事からは読み取れない。

77基は報道時点の数で、目星の段階を含む可能性がある。現地確認の範囲は、この資料では分からない。日本の例は今回この1件で、一般化はできない。

6. 自分の 町の 高まりを、さがして みよう

6. 近所の地形を、地図で読んでみる

6. 出口 ── 自分の町の地形を地図と現地で照らす

おうちの 人か 大人と いっしょに、昼に 近くの 公園や 神社へ 行って みましょう。森や みずべの 中には 入らず、道の 上から 見ます。

見る ところは、地面の 高さです。ふつうの 地面より、こんもり 高く なって いる ところは ありませんか。見つけたら、地図の 同じ 場所で、地面の 高さも 見て みると、おもしろいです。

もっと 知りたい 人は、図書館で「町の れきし」の 本を さがして みてください。近くの ふるい 場所の ことが 出て いるかも しれません。

おうちの人、または大人といっしょに昼間、近所の公園や神社の周りを歩き、地面の高さに注目してみましょう。森や水辺の中には入らず、道から見ます。周りより高くなっている場所、坂の向きが急に変わる場所を探します。

見つけたら、その場所を地図で見て、等高線が混んでいるかどうかを見比べます。地図は紙でもスマホでも、日本語のもので足ります。等高線が混んでいるところは、坂が急なところです。

町の広報誌や図書館の郷土資料に、同じ場所のことが載っていないかも探してみてください。地形と記録がつながると、遺跡の探し方が少し分かってきます。

近所の公園や神社を、大人と昼間に歩き、周囲より盛り上がった地形や、直線的な段差を探す。森や水辺には入らない。見つけた場所を地形図の等高線と照らし、等高線の間隔が狭い場所が急な斜面を示すことを確かめる。

町の広報誌や図書館の郷土資料に、同じ場所のことが載っていないかも探してみるとよい。地形と記録がつながると、遺跡の探し方が見えてくる。

もっと読むなら、[3]のPNAS論文(オープンアクセス)で点密度の記述を、[7]で赤色立体地図の使われ方を読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の数値と主張は、以下の資料にもとづいています(アクセス日:2026-09-29)。

  1. 国土交通省「航空レーザを利用した高精度な地表面データの取得」 https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/pdf/matching_180516_siryou_6.pdf (3機器の構成、点群、フィルタリング)
  2. NOAA National Ocean Service, What is lidar? https://oceanservice.noaa.gov/facts/lidar.html (反射で距離を測るしくみ、点群)
  3. Evans, D. H. et al. (2013) "Uncovering archaeological landscapes at Angkor using lidar," PNAS. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3732978/ (カンボジアの測量の規模・反射数・プノン・クーレン)
  4. Antiquity, "Mahendraparvata: an early Angkor-period capital defined through airborne laser scanning at Phnom Kulen" Cambridge Core (計画都市とする研究、要約のみ確認)
  5. Tulane University News(低地マヤの規模に関する研究の紹介) https://news.tulane.edu/pr/unprecedented-study-confirms-massive-scale-lowland-maya-civilization (構造物の数・人口推定・調査期間の比較)
  6. Science News のアグアダ・フェニックスの記事 https://www.sciencenews.org/article/lidar-reveals-oldest-biggest-ancient-maya-structure-found-mexico (アグアダ・フェニックスの規模・年代・彫刻の不在)
  7. 山陰中央新報の記事(奥出雲町の前方後円墳、2023-11-08報道) https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/478800 (赤色立体地図、本庄考古学研究室、77基)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。