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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

でんしレンジで あつく なる うつわと ならない うつわが あるのは どうして?

電子レンジで熱くなる器と、ならない器 ── 電波を通す土と、水と、金の模様

陶磁器と電子レンジ ── 誘電損失・吸水性・上絵付けから見る加熱のちがい

分野:技術

でんしレンジで あたためた ごはんは あつあつ。でも、のせていた おさらは ひんやり していることが あります。ところが、べつの うつわは、さわると あつい ことも あります。

どちらも 土や 石で できた うつわなのに、どうして ちがうのでしょうか。うつわの 中に かくれている ものを、じゅんばんに 見て いきます。

電子レンジで温めたおかずは湯気が立っているのに、のせていた皿はほとんど熱くない。そんな経験がある人は多いと思います。かと思えば、同じような器なのに、取り出すと持てないほど熱くなっていることもあります。

器の材料の土は、電子レンジの電波を、ほとんど吸わないと説明されています。それなのに熱くなる器があるのは、器に水や装飾がある場合や、中身の熱が伝わる場合があるようです。その正体を、3つの手がかりで追います。

電子レンジ内で、磁器の皿は温まりにくく、陶器の茶わんや金彩入りの器は熱くなることがある。素地そのものは電波をほとんど吸わない材料とされ[2]、差を生むのは吸水性と、釉薬の上の装飾だと説明されている[4]。

誘電損失の目安値、陶器と磁器の焼き方の違い、上絵付けの扱いを、出典をつけて整理する。

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1. おなじ レンジに いれても、ちがうのは なぜ?

1. 同じ電子レンジに入れたのに、熱くなり方がちがう

1. 問い ── 器の熱くなり方は何で決まるのか

おさらと ちゃわんを、でんしレンジに いれます。あたためが おわって 出して みると、あつい ものと、ぜんぜん あつくない ものが あります。

でんしレンジは、電波を つかって ものを あたためる 道ぐです。その 電波を うけとって あつく なる ものと、そのまま とおして しまう ものが あるようです。

うつわは、どちらなのでしょうか。

お皿は冷たいままなのに、お茶わんは持てないほど熱くなる。同じ台所の道具で、同じ時間温めたのに、こうした差が出ることがあります。

これは、器の形や大きさだけでは説明がつかないようです。ヒントは、電子レンジが「何を温めているのか」にあります。次の章で仕組みを短く確かめ、そのあと器の中身にふみこみます。

同じ条件で加熱しても、器によって温度の上がり方が違う。本稿は、この差を素地の電気的な性質、吸水性、表面の装飾の3点に分けて整理する。

火花が出る金属の問題は別の記事で扱っているので、ここでは陶磁器の素地・釉薬・絵付けに絞る。

2. レンジは、水を ゆらして あたためる

2. 電子レンジは、水の分子を揺らして温める

2. 誘電加熱 ── 極性分子の振動が熱になる

でんしレンジの 電波は、ものの 中に ある 水の つぶを ゆらします。電波に あわせて 水の つぶが むきを かえ、そのとき 電波の エネルギーが ねつに かわります[1]。

だから、水を たくさん ふくむ ごはんや スープは、すぐ あつく なります。

ただし 水の つぶは 目に 見えないほど 小さく、「ゆらす」は わかりやすく した 言い方です。

電子レンジは、電波(マイクロ波)を当てて、食べ物の中の水の分子を細かく振動させます。電波の向きの変化に合わせて分子の向きが変わり、その過程で電波のエネルギーが熱に変わります。こうした温め方を、誘電加熱といいます[1]。

外側から炎で温めるのではなく、電波が入り込んだ部分で熱が生じる。水の多い食べ物が温まりやすいのは、このためです。ただし温まり方は、食品の形や性質、庫内の電波の分布でも変わります。

ここで、器の材料の土は電波に反応するのか、という疑問が出てきます。

電子レンジは誘電加熱を利用している。電界の変化に合わせて極性分子が振動し、その過程で自己発熱(誘電損失)として熱が生じる[1]。水は代表的な極性分子で、水分を多く含む食品ほど温まりやすい。

逆に言えば、電波を吸って熱に変える度合い(誘電損失)が小さい材料は、加熱されにくい。次章で、この度合いを数字で比べる。

3. じきは、電波を すいにくい

3. 磁器の素地は、電波を吸いにくい

3. 磁器の誘電損失率 ── 水の約5000分の1の目安値

磁器じきという かたい やきものは、電波を ほとんど すいません。ガラスの まどを 光が すーっと とおりぬける ように、電波も とおりぬけます[2]。

ためしに 数字を 見ると、電波の すいやすさは、水が 12、磁器じきが 0.0023 と いう めやすが あります。水の ほうが 5000ばい いじょう すいやすい ことに なります。

ただし 本当は、電波は 光では ありません。「まどのように とおる」は、イメージの ための たとえです。

工業用のマイクロ波装置の資料には、物質ごとの「電波の吸われやすさ(誘電損失率)」の目安が載っています。25度の水が12であるのに対し、磁器と石英ガラスは0.0023です[2]。12を0.0023で割ると約5200なので、水は磁器の約5000倍、電波を吸いやすいことになります。

この資料では、磁器のような物質を「電波を通す」材料に分類しています。数値は温度や周波数によって変わる目安ですが、水と磁器の差が桁ちがいだという点は変わりません。

電波を通してしまうので、磁器の素地そのものは温まりにくいと考えられます。器が熱くなるとすれば、そこに電波を吸うものが入り込んでいるはずです。

Püschner社の資料は、誘電損失率が高い物質ほどマイクロ波の中で加熱されやすいと述べ、25℃の水をεr″=12、磁器・石英ガラスを0.0023とする[2]。比は12÷0.0023≒5200で、水は約5000倍吸収しやすい目安になる。

同資料は、この種の「透過性」の材料を、添加物なしでは効果的に加熱できないものとして扱う(損失率0.01未満)。値は周波数・温度に依存する目安値である。

個人による解説サイトも、陶磁器は誘電損失が少なく電波をあまり吸わず、熱くなる場合は含まれる不純物や水分が動くためだ、と説明する[8]。ただし個人サイトなので、断定でなく一つの説明として読む。

4. とうきは 水を すって、あつく なる

4. 陶器は水を吸い、その水が電波で温まる

4. 素地の吸水性 ── 磁器と陶器の焼き方の差

やきものには、磁器じきと 陶器とうきが あります。磁器じきは、高い ねつで しっかり やいて あり、水を ほとんど すいません。陶器とうきの 土は あらく、水を すいこみます[3]。

陶器とうきの 土が 水を すって いると、その 水が 電波で ゆれて あつく なります[4]。すなの 中の 水は かわきにくい ように、しみこんだ 水は 中に のこります。ただし 本当は、水は すなではなく、土の 小さな あなに はいって います。

つまり、土は 電波を とおしても、しみこんだ 水が 電波を うけとる、と かんがえられます。

磁器は、陶石という石を原料に、およそ1300度で焼くことが多いといいます。素地がぎゅっと詰まっていて、素地にも釉薬にも吸水性がありません。陶器は、陶土という土を原料に、およそ1200度前後(楽焼のように1000度以下のものもあります)で焼かれます。素地は粗く、水を吸います[3]。

陶器の表面には釉薬(ガラス質の膜)がかけられ、外から見ると水を通さないように見えます。それでも、釉薬のない部分やごく細かなひびから水がしみこむことがあります。素地に水が入っていると、水の分子が電波で振動し、温度が上がるとされています[4]。

メーカー系の資料は、ぎゅっと焼き締まった磁器のほうが、多孔質の陶器より電波の損失が小さいと説明します。理由は、吸い込んだ水が強い電波の吸収体として働くからだそうです[7]。

砥部町の説明では、磁器は陶石を原料に1300度前後で焼かれ、素地が緻密で素地にも釉薬にも吸水性がない。陶器は陶土を原料に約1200度前後(楽焼など1000度以下もある)で焼かれ、素地が粗く吸水性があるが、釉薬によって吸水性がなくなる[3]。温度は「一般に」の幅を持った説明である。

陶芸家による解説は、陶器は高温で焼き締めても多孔質で水を吸い、含まれた水の分子がマイクロ波で振動して温度が上がる、急な温度上昇で壊れる可能性もある、と述べる[4]。

メーカー資料は、緻密にガラス化した磁器は多孔質の陶器より損失が小さいと説明し、その理由を、吸った水が強い吸収体になることに求める[7]。吸水率の具体的な閾値は、今回参照した資料には示されていない。

5. 金や 銀の もようは、電波を うけとる

5. 釉薬の上の金や銀の模様は、電波を直接受けとる

5. 上絵付けと金銀彩 ── 釉薬の上の装飾が加熱される

うつわに かいた 金や 銀の もようは、うわぐすりの 上に のって います。うわぐすりとは 釉薬ゆうやくの ことです。うつわの 土は 電波を とおしても、金や 銀は じかに 電波を うけとって、あつく なります[4]。

ひどい ときは、バチバチと おとを たてて こげる ことも あると いいます。

うつわを つくる 人たちも、金や 銀の もようが ある 品は、でんしレンジを ひかえるように しらせて います[5]。

陶器や磁器には、焼いた釉薬の上から絵を描く「上絵付け」があります。金や銀で描いた模様(金銀彩)も、ふつうは釉薬の上に置かれます。

陶芸家の解説では、釉薬の上にあるものは電波を直接吸収するため、金銀彩は効率よく熱を帯びてしまい、ひどい場合はバチバチと音を立てて焼け焦げると書かれています[4]。

白山陶器など窯元も、金銀彩の入った器は、電子レンジやオーブンを控えるよう案内しています。こちらの理由は火花ではなく、急な温度の変化で、ガラス質の表面にひびが入ることがあるため、というものです[5]。出典によって理由の書き方が違う点には、気をつけて読んでください。

陶楽窯の解説は、上絵は釉薬の上に描くためマイクロ波を直接吸収し、金銀彩も同様に、釉薬の上にあるものは効率よく熱を帯びると述べる。最悪の場合、バチバチと音を立てて焼け焦げる[4]。

一方、白山陶器は、陶磁器は急激な温度変化で割れることがあり、調理器具ではないので温め程度にとどめるよう案内している[5]。金銀彩の器の使用を控える理由として、同社の案内が挙げるのはガラス質表面へのひびで、火花の説明は陶楽窯側のものである。両者の理由は別であり、混ぜて読まない。

金属が電子レンジの中で火花を出す仕組みそのものは、別の記事で扱っている。

6. うつわが あつく なる 3つの わけ

6. 器が熱くなる3つの理由

6. 整理 ── 使えるかどうかは製品の表示が先

ここまでを まとめると、うつわが あつく なる わけは、3つ ありそうです。

ひとつめは、土に しみこんだ 水。ふたつめは、うわぐすりの 上の 金や 銀の もよう。みっつめは、中に はいって いる スープなどの ねつが、うつわに つたわる こと。これは どんな うつわにも あることです。

ただし、使えるか どうかは、うつわの うらや 箱に 書いて ある 表じが いちばん たいせつです。

ここまでの話を、3つに整理します。

1つ目は、素地にしみこんだ水です。陶器のように吸水性のある器で起こりやすいとされます。2つ目は、釉薬の上の金銀彩です。3つ目は、温まった中身の熱が、器へ伝わることです。これは磁器でも起こるので、電波を通す器でも、中身が熱ければ器の縁は熱くなります。

実際に使えるかどうかは、製品の表示が最優先です。案内をする資料でも、磁器は電子レンジで使えるものが多い一方、陶器は吸水があるので短時間にとどめるよう勧めるものがあり、装飾つきは使えないのが一般的とされています[6]。ただし、一律には言えません。

加熱される要因は3つに分けられる。素地に含まれた水、釉薬の上の金属装飾、そして温まった中身からの熱伝導である。前2者は電波の吸収による加熱で、3つ目は電波を通す磁器でも起こる。

和食器の販売店の案内は、磁器は高温焼成で素地が緻密なため水分をほとんど吸わず、陶器は短時間の加熱にとどめることを勧め、装飾つきは使用不可が一般的だと述べる[6]。ただし、使用可否は製品の表示が優先で、一律に言い切れるものではない。

なお、本稿が参照した出典は窯元・個人・メーカー・販売店の資料が中心で、公的機関の資料は陶磁器の違いを説明した砥部町のものだけである。加熱の数値や吸水率の閾値は、家庭の器に当てはめず、目安として読む。

「やってみよう」と、もっと しりたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちで できること

うつわの うらを 見て みましょう。「でんしレンジ ○」や「×」の しるしが ある ことが あります。火は つかいません。

うらの ざらざらして うわぐすりの ない ところに、水を 1てき たらします。すぐに すいこまれるか、まるく のこるか、見て くらべて みましょう。ふかない ときは、あとで ふいて ください。

その うつわが、しみこむ 土なのか、しみこまない 土なのかの ヒントに なります。でも、これだけで レンジで つかえるかは きまりません。

本で しりたく なったら

うつわを つくる 人たちの ホームページには、あつかい方が のって いることが あります。「取りあつかいについて」という ページを さがして みましょう。

家でできること

器の裏の表示を見て、電子レンジのマークがあるかどうかを確かめます。火は使いません。

次に、釉薬のかかっていないざらざらした部分(裏の底など)に、水を1滴たらします。すぐに吸い込まれるか、丸く残るかを見比べます。終わったらふき取ってください。しみこみ方は、素地に吸水性があるかどうかのヒントになります。ただし、これだけで電子レンジで使えるかは決まりません。

もっと知りたくなったら

焼き物の産地や窯元の公式サイトには、取り扱いの案内があります。「陶器」「磁器」「上絵」がそれぞれどう扱われているかを比べると、ちがいが見えてきます。

自宅でできる確認

器の裏の表示を確かめる。無釉の部分(高台の内側など)に水を1滴垂らし、吸い込むまでの様子を比べる。加熱は伴わない。終わったらふき取る。吸水の有無の目安にはなるが、電子レンジでの使用可否はこれでは決まらない。

資料を読むなら

陶磁器の焼成温度と吸水性の違いは、産地の自治体・窯元の解説で確かめられる。誘電損失率の比較は、マイクロ波装置メーカーの技術資料(出典[2])に載っている(英語)。上絵付け・金銀彩の扱いは、窯元ごとの取扱案内を比べるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

リンク先は、それぞれの記事の用途だけを示します。記事の内容は、各サイトの公開時点のものです。

  1. 特許 JP7576010B2「高周波誘電加熱装置」 https://patents.google.com/patent/JP7576010B2/ja (誘電加熱の説明)
  2. Püschner Microwave Power Systems, "Basic Calculations" https://www.pueschner.com/en/microwave-technology/basic-calculations (水と磁器の誘電損失率の目安値)
  3. 砥部町「陶器と磁器の違い」 https://www.town.tobe.ehime.jp/soshikikarasagasu/shoukoukannkouka/kankou/9/3/884.html (陶器と磁器の原料・焼成温度・吸水性)
  4. 陶楽窯「陶磁器に電子レンジは使わないで下さい」 https://touroji.com/use/denshirenji_ng.html (しみこんだ水と上絵・金銀彩の加熱)
  5. 白山陶器「製品の特性・お取り扱いについて」 https://www.hakusan-shop-online.com/pages/instruction (窯元の取り扱い案内)
  6. 金採「和食器物語② 電子レンジ・食洗機は使える?」 https://www.kin-sai.co.jp/view/news/20260217083552 (磁器・陶器の使い方の案内)
  7. GC Porcelain, "Microwave-Safe Ceramic Tableware: Why Dielectric Loss Tangent Matters" https://gcporcelain.com/blog/microwave-safe-ceramic-tableware-why-dielectric-loss-tangent-matters-in-custom-dinnerware/ (吸水と電波の吸収の関係。メーカー解説)
  8. 「陶器はどうして熱くならない 電子レンジの不思議」(個人サイト) https://www.asahi-net.or.jp/~ut5k-hnhr/cooking/cooking_technology/magenetron/magenetoron.htm (陶磁器の誘電損失についての一つの説明)

なおした ところ

更新履歴

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