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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

写真の じぶんの 顔が へんに 見えるのは どうして?

写真の自分の顔がなんだか違って見えるのはなぜか ── 鏡の顔と、友だちが見ている顔

鏡像と写真で自分の顔の印象が変わる理由 ── 顔の左右差・単純接触効果・自撮りの撮影距離

分野:からだ

じぶんの 写真を 見て、「あれ、わたしって こんな 顔だっけ?」と おもった ことは ありませんか。ある 研究では、本人と ともだちが、べつべつの 写真を えらびました。

おなじ 顔なのに、なぜ えらぶ 写真が ちがうのでしょう。その てがかりを、いっしょに 見て いきます。

自分の顔写真を見て、「実物より変な顔だ」と感じたことはないでしょうか。1977年の実験では、同じ人の顔写真を2種類見せたところ、本人と友人で、好む写真が分かれました。

同じ人の顔写真でも、本人は鏡の向きを、友人は元の向きを好むことが報告されました。なぜ、見る人で好みが分かれたのでしょう。

1977年のMita・Dermer・Knightの実験では、同じ顔写真の「そのまま」と「左右反転」を見せると、本人は反転した写真を、友人や恋人は反転していない写真を好んだ[1]。顔は同じなのに、見る人で評価が逆転するのはなぜか。

この記事では、顔の左右差と見慣れの効果、さらに自撮りの撮影距離が顔の印象に与える影響が、別々の要因として報告されていることが分かる。

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1. ほんにんと ともだちで、すきな 写真が わかれた

1. 同じ顔の2枚の写真で、本人と友人の好みが分かれた実験

1. 反転写真の選好実験 ── 本人は鏡像を、友人は元の写真を好んだ

むかし、ある 研究者たちが、女の 学生の 顔写真を 2まい つくりました。1まいは そのまま、もう 1まいは 左と 右を ひっくりかえした 写真です[1]。

どちらが すきか きくと、本人は ひっくりかえした ほうを えらびました。ともだちや こいびとは、そのままの ほうを えらびました[1]。

のちの じっけんでも、おとなが 自分の 顔の 写真を えらぶと、71%は ひっくりかえした 写真を えらびました。ともだちの 顔の 写真では、76%が そのままの 写真を えらびました[2]。ただし これは その じっけんでの わりあいで、だれでも そうだと いう 意味では ありません。

どうして、見る人で えらぶ 写真が かわるのでしょう。

1977年の実験

1977年、Mita・Dermer・Knightらは、女子学生の顔写真を「そのまま」と「左右を反転させた鏡像」の2枚にして見せました。本人は鏡像の写真を好み、友人や恋人は反転していない写真を好んだと報告されています[1]。

子どもでも起きるのか

のちにAmestoyらが行った実験では、大人が自分の顔で鏡像を選んだ割合は71%、友人の顔で反転していない画像を選んだ割合は76%でした。子どもも5〜7歳ごろから、自分の顔で鏡像を好む傾向が出たそうです[2]。

これらはその実験での割合で、誰でも同じ選び方をするという意味ではありません。それでも、同じ顔なのに「誰が見るか」で好みが逆になるのは不思議です。この差の手がかりは、顔そのものの形にあります。

Mita・Dermer・Knight(1977)は、女子学生の顔写真を元の向きと左右反転の2枚にして提示した。本人は鏡像を有意に好み、友人や恋人は反転していない写真を好んだ[1]。見る側が「どの向きの顔に慣れているか」で好みが決まるという仮説に合う結果だ。

Amestoyら(2010)の実験でも、大人は自分の顔で鏡像を選ぶ割合が71%、友人(なじみのある顔)で反転なしの画像を選ぶ割合が76%だった。子どもでも5〜7歳ごろから、自分の顔で同様の鏡像選好が現れた[2]。この数字は当該実験の選択割合であり、すべての人に当てはまるとは限らない。では、向きが変わるだけで印象が変わるのは、顔の何が原因なのか。

2. 顔は、ほんの すこし 左右が ちがう

2. 見慣れた向きが「自分の顔」になる ── 顔の左右差と鏡

2. 顔の左右差と単純接触効果 ── 見慣れた向きが「自分らしさ」を決める

多くの 人の 顔には、左と 右の ほんの すこしの ちがいが あります。たとえば、かたほうの 目が すこし 高かったり、口の はしの カーブが ちがったり します[3]。

かがみは、左右が ぎゃくに なった 顔を 見せます。しゃしんは、ほかの 人が 見ている ままの 向きの 顔を 見せます[3]。

自分の 顔は、かがみで 見る ことが いちばん 多いので、かがみの 向きが 「見なれた 顔」に なります。何度も 見た ものを すきに なりやすい「たんじゅん せっしょく こうか」が、手がかりの 1つと かんがえられて います[3]。

自分の 名前を かがみに うつすと、いつもの 向きと ちがって 見えますね。顔も、見なれた 向きと ちがうと ちがって 見えるのかも しれません。ただし、字と 顔は 同じ しくみで 見えるわけでは ありません。

2024年の 研究では、自分の 顔だと そのままの 写真の ほうが「自分らしくない」と かんじられ、したしい ともだちの 顔だと ぎゃくに なりました[4]。

鏡が見せる顔、写真が見せる顔

多くの顔には、わずかな左右差があるといわれます。片方の目が少し高い、口の端のカーブが少し違う、といった具合です[3]。

鏡は左右が反転した顔を見せ、写真は反転していない顔を見せます。自分の顔は鏡で見る機会が最も多いので、鏡の向きの顔が「見慣れた顔」になります。何度も接した物を好ましく感じやすくなる心理を単純接触効果といい、見慣れの影響が手がかりの一つと考えられます[3]。

自分の名前の字が鏡文字になって見えるとき、少し落ち着かない感じがするのに似ています。ただし本当は、字と顔とでは見る仕組みが同じとは限りません。

2024年の研究

Suchowらは2024年に、鏡像の見え方を調べた研究を発表しました。自分の顔では、反転していない写真のほうが「自分らしくない」「あまり好ましくない」と評価され、親しい友人の顔では逆の結果になりました[4]。

研究者は、写真や画面を通して見る機会の違いによる見慣れの差と、見慣れない向きでは顔の左右差が目立つことが原因だと考えています[4]。写真の顔が違って見える理由の一つは、向きの見慣れの差です。

多くの顔には、わずかな左右差があり、片方の目の高さや口角のカーブがやや異なる[3]。鏡は左右反転した像を、写真は反転していない像を示す。自分の顔を最も多く見るのは鏡なので、鏡像が「見慣れた顔」になる。単純接触効果(繰り返し接した対象への好意が高まる現象)が、鏡像を好む手がかりの一つと考えられる[3]。

Suchowら(Perception 53, 2024)は、自分の顔では反転していない写真のほうが「自分らしくない」「好ましくない」と評価され、親しい友人の顔では逆転することを示した。原因として、技術(写真・画面)を通じた見慣れの違いと、見慣れない向きでは顔の左右差が目立つことが考えられている[4]。

つまり、写真で感じる違和感の理由の一つは、「どちらの向きを見慣れているか」の差である。ただし、この説明で扱われたのは向きの問題であり、写真には別の要因も加わりうる。次の章で、その1つである距離を見る。

3. じどりの 鼻が 大きく 見えるのは、ちかすぎるから

3. 自撮りで鼻が大きく見えるのは、近すぎるせい?

3. 自撮りの撮影距離と鼻幅の見かけ ── 歪みか、見る距離のずれか

写真には、むきの ほかに もう ひとつ、ちがいを うむ ものが あります。カメラと 顔の きょりです。

ある 研究では、じどりを 30センチで とると、鼻の はばが、とても とおくから とった ときより、男の 人で 30%、女の 人で 29%ほど 広く 見えたと(顔の はばを 同じに して くらべた ときの 見かけです) ほうこくされました[5]。1.5メートル はなれた ふつうの 人物写真では、この ちがいは 出ませんでした[5]。

これは 見かけの わりあいで、本当の 鼻が 大きく なる わけでは ありません。

べつの 研究者は、写真が ゆがんで いるのでは なく、見る きょりが ずれて いるから だと せつめいしました。ちかくで とった じどりを きれいに 見る には、写真の はばの 2ばいほどまで ちかづく ひつようが あります。ふつうは もっと はなれて 見るので、顔が まるく 見えます[6]。

30センチで撮ると鼻の幅が約3割広く見える

Wardらの研究(2018)は、自撮りを約30センチで撮ると、鼻の幅が、距離が十分に遠いときの写り方より、男性で約30%、女性で約29%広く見えると報告しました。1.5メートルの距離で撮った普通の人物写真では、差は出ませんでした[5]。この数字は、顔の幅を一定にして、距離が無限大のときの写り方と比べた見かけの比で、実際の鼻が大きいわけではありません。

歪みではなく「見る距離」のずれ

同じ年にCooperとBanksは、鼻が広がって見えるのは写真自体の歪みではなく、見る距離のずれが原因だと説明しました。近くで撮った自撮りを正しく見る距離は、写真の幅の約2倍と近く、人はふつうそれより遠くから見るため、顔が実際より丸く見えるといいます[6]。

ここでの2倍は自撮りの例です。写真の向きの見慣れと撮影距離は、別々の資料が別々に報告したことなので、足し算して何割違って見える、とは言えません。

Wardら(JAMA Facial Plast Surg, 2018)は、約30cmで撮った自撮りでは、鼻の幅が(距離無限大を基準にした)見かけの比で男性約30%、女性約29%広くなると報告した。1.5mでは差が出なかった[5]。この30%は顔の幅を一定にしたときの見かけの比で、実際の鼻の大きさではない。

これに対しCooperとBanks(同誌、2018)は、写真の歪みではなく見る習慣の問題とした。近距離で撮った自撮りが正しい遠近感で見えるのは、写真の幅のおよそ2倍の距離から見たときで、人はふつうそれより遠くから見るため、鼻が広がり顔が丸く見える[6]。この「2倍」は自撮りの例であり、一般の写真に当てはまる数字ではない。

鏡像と写真の違い(左右の向き)と、撮影距離による見え方の違いは、別々の資料が別々に報告した要因である。両者がどのくらい重なって「違和感」になるかは、ここで使った資料からは数値で言えない。

4. かがみの なかでは、どうして 左右が ぎゃくに 見えるの?

4. そもそも、鏡はなぜ左右を入れかえて見えるのか

4. 鏡はなぜ左右が逆に見えるのか ── 古代から続く難問と「多重プロセス理論」

ところで、かがみの 中では なぜ 左右が ぎゃくに 見えるのでしょう。じつは、むかしの ギリシャの プラトンの ころから かんがえられて きた、むずかしい なぞです[7]。

東京大学の 高野さんは、「自分が かがみに うつる とき、かがみの 中の 自分の 目で 左右を はんだんする から ぎゃくに 見える」という せつめいを ていあんしました[7]。じっけんでは、どの じっけんでも 2〜4わりの 人が、自分の 左右が ぎゃくに なって いることに 気づきませんでした[7]。

これは 1つの 研究の せつめいです。「これで ぜんぶ きまった」とは まだ いえません。

鏡の中の像で左右が逆に見える理由は、古代のプラトンから論じられてきた難問です[7]。

東京大学の高野陽太郎教授は、自分自身が鏡に映るときの反転は、鏡像の視点から左右を判断することで生じるとする「多重プロセス理論」を提案しました。実験では、どの実験でも2〜4割の人が、自分自身の鏡映反転に気づきませんでした[7]。

これは提案された理論と、その実験の結果です。決着した説明として扱うことはできません。鏡の顔と写真の顔の違いは、この難問の答えがどうあれ、「向きが反対」という事実のうえで考えられます。

鏡で左右が逆に見える理由は、昔から考えられてきた難問である[7]。東京大学の高野陽太郎教授は、自分自身が鏡に映る場合の反転は、鏡像の視点から左右を判断することで生じるとする「多重プロセス理論」を提案した。実験では、どの実験でも2〜4割の参加者が、自分自身の鏡映反転(視点反転)を認知しなかった[7]。

ここで使った資料は、この理論を1つの資料(大学の発表)で示したものであり、定説として扱わない。本記事の主張(顔の向きの見慣れによる違和感)は、鏡が左右反転した像を示すという事実に立っており、反転の説明がどの理論になっても変わらない。

5. じぶんで ためして みよう

5. 自分で確かめてみよう

5. 自分で確かめるには

今日できること

おうちの 人に たのんで、じぶんの 顔写真を 1まい 紙に いんさつして もらいます。紙の 写真を 見たあと、かがみに むけて、かがみの 中の 写真を 見ます。かがみの 中の 写真は、左右が ぎゃくの 顔に なります。

どちらが 自分らしく 見えるか、くらべて みましょう。かがみは われやすいので、ていねいに あつかいます。

今日できること

自分の顔写真を紙に印刷してもらい、鏡に向けてみましょう。鏡の中の写真は、左右が反転した顔になります。紙の写真と鏡の中の写真を見比べて、どちらが自分らしく見えるか、じっくり確かめてみます。

鏡は割れやすいので、取り扱いに気をつけてください。

資料を読むなら

Amestoyら(2010)の論文は、写真の選好の実験と子どもの結果を知るのに向いています。東京大学のプレスリリースは、日本語で鏡映反転の難問を読めます。

今日できること

自分の顔写真を印刷して鏡に映し、元の向きと鏡像の向きで、どちらが自分らしく感じるかを観察できる。続けて、同じ2通りの写真を友人にも見てもらい、友人の感じ方と自分の感じ方が異なるかを、一人の例として考える材料にできる。ただし、これは1人の感じ方であり、研究と同じ結果になるとは限らない。

資料を読むなら

Amestoyら(2010)の論文は、選好実験の方法と子どもの結果を詳しく扱う。Suchowら(2024)は、反転なしの写真が「自分らしくない」と評価される理由を考察しており、英語の資料だが、概要は大学のリポジトリで読める。東京大学のプレスリリース(日本語)は、鏡映反転の問題を一般向けに説明している。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号と対応しています。研究の数字は、報告された範囲のものです。

  1. Amestoy, Bouvard, Cazalets (2010). Frontiers in Psychology(Mita et al. 1977を引用)。https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2010.00039/full (1977年の実験の紹介)
  2. Amestoy, Bouvard, Cazalets (2010). Frontiers in Psychology。https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2010.00039/full (大人の選択割合、子どもの結果)
  3. Popular Science「The reason your face looks wrong in photos」。https://www.popsci.com/science/why-look-different-in-mirror-photos/ (顔の左右差と単純接触効果の紹介。報道)
  4. A reflection on faces seen under mirror reversal. Perception 53 (2024). https://researchwith.stevens.edu/en/publications/a-reflection-on-faces-seen-under-mirror-reversal/ (自分の顔と友人の顔の評価。要旨)
  5. Ward et al. (2018). JAMA Facial Plast Surg(報道記事での紹介)。https://zmescience.com/science/news-science/selfies-make-hate-nose-02032018 (自撮りの鼻幅の数字。二次資料)
  6. Cooper & Banks (2018). Perceived Facial Distortions in Selfies Are Explained by Viewing Habits. JAMA Facial Plast Surg。https://par.nsf.gov/servlets/purl/10081075 (見る距離のずれの説明)
  7. 東京大学 プレスリリース「鏡映反転 ― 紀元前からの難問を解く」。https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400038457.pdf (多重プロセス理論の紹介)

なおした ところ

更新履歴

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