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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きんにくつうは、どうして あとから くるの?

動いた直後は平気なのに、なぜ筋肉痛は遅れてやって来るのか

遅発性筋痛(DOMS)はなぜ遅れて起きるのか ── 乳酸説の後退と、残された謎

分野:からだ

山を おりた その日は、へっちゃらでした。ところが つぎの日、かいだんを おりるだけで「いたたた」。ふしぎです。

この いたみは、どうして あとから くるのでしょう。じつは、しらべている 人たちにも、まだ ぜんぶは わかって いません。わかって きた ところまで、いっしょに みて みましょう。

長い坂道を下った日の夜は、何ともなかったのに、翌朝から階段の上り下りがつらい。そんな経験はありませんか。運動のすぐ後ではなく、ひと晩以上あとに痛みが出てくるのが、筋肉痛の不思議なところです。

よく聞く「乳酸がたまるから」という説明は、乳酸では説明しにくいと考えられています。では、何が分かってきたのでしょう。分かってきたことと、専門家にもまだ分からないことを、論文や学会誌の要旨から見ていきます。

運動後の筋肉痛は、運動の直後ではなく1〜3日ほどたってから強くなることが多い[2]。しかも、長く語られてきた「乳酸説」は近年ほとんど言われなくなり、痛みの仕組みの全体像は今も解明されていない[1]。

このメモでは、遅発性筋痛(DOMS)の定義と引き金、乳酸との関係、同じ運動を繰り返すと軽くなる反復bout効果、神経側の研究の一端を、学会誌の要旨・論文・二次資料を突き合わせて整理する。二次資料にしかない数字は、そのことを明記する。

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1. いたみは、いつ ごろ でるの?

1. 「遅れて出る痛み」には名前がある

1. 遅発性筋痛(DOMS)── 定義と現れる時期

うんどうの あとに、じわじわ でて くる きんにくの いたみには、なまえが あります。「ちはつせいきんつう」と いいます。むずかしい ことばですが、「おくれて くる いたみ」と いう いみです[1]。

いたみが ひどく なるのは、うんどうの つぎの日から 二、三日 あとの ことが 多い ようです[2]。かならず つぎの日とは かぎりません。

いなずまが ひかって、あとから ごろごろと きこえる ときと、ちょっと にて います。ただし、おとの おくれは 空気の せい。きんにくつうが おくれる わけは、まだ はっきり しません。

遅発性筋痛(DOMS)とは

運動のあとに出る、いわゆる筋肉痛は、専門的には「遅発性筋痛(DOMS)」と呼ばれます[1]。運動中のつらさとは別に、あとから出てくる痛みを指す言葉です。

ピークは「翌日」とは限らない

痛みが強くなる時期は、資料によって少し幅があります。運動後48〜72時間とする論文がある一方[2]、階段の上り下りをした実験では、痛みの点数が2日目にいちばん高くなったと報告されています[3]。二次資料では、24〜72時間に出て約7日でおさまるとされています[4]。「翌日から数日」と、幅をもって考えるのがよさそうです。

いわゆる運動後の筋肉痛は、遅発性筋痛(delayed onset muscle soreness, DOMS)と呼ばれる。力学的な負荷(メカニカルストレス)が発症の引き金となり、発症後は痛みを誘発する刺激にもなることが整理されている[1]。

ピークの時期は資料で幅がある。Hotfielらの総説は運動後48〜72時間[2]、Connollyらの階段昇降を用いた実験では、痛みのスコアが両群とも2日目に最大だった[3]。二次資料の英語版Wikipediaは24〜72時間に出現し約7日で消えるとする[4]。「必ず翌日」ではなく、翌日〜数日後と幅をもたせて捉えるのが妥当だ。

2. 乳酸にゅうさんの せいでは ないの?

2. 「乳酸がたまるから」という説明の行方

2. 乳酸説の後退 ── 乳酸は約1時間で戻る

むかしは「乳酸にゅうさんが たまるから いたい」と、よく いわれて きました。でも いまは、この せつめいは あまり つかわれなく なって います[1]。

乳酸にゅうさんは、うんどうの あと 一じかん ぐらいで ふつうの りょうに もどると いう けんきゅうが あります。あとから くる いたみの りゆうには、なりにくい からです[4]。

これは 二じ しりょうに かいてある ことです。ほかの しりょうでも、たしかめて みたく なります。

かつては、筋肉痛の原因は「乳酸がたまること」だとよく説明されました。ところが学会誌の要旨には、この「乳酸説」は今は影をひそめている、と書かれています[1]。

1時間で戻る乳酸

理由の一つとして、乳酸は運動のあとおよそ1時間で通常の値に戻ることが、複数の研究で知られているとされます。痛みが出るのはずっとあとなので、乳酸では説明しにくい、という考え方です[4]。この「1時間」は目安で、二次資料の記述にもとづきます。

また、乳酸を作るのに筋肉痛にはなりにくい動きもあるとされています[4]。次の章で、その「動き」を見ます。

DOMSの原因を乳酸の蓄積に求める説は、学会誌の要旨で「影を潜めた」と表現されている[1]。根拠として、乳酸は運動後およそ1時間で通常の値に戻ることが複数の研究で知られ、はるか後に出る痛みの原因にはなりえない、という説明がなされる[4]。

ただしこの「1時間」は二次資料(Wikipedia)の要約による数字で、個々の一次論文とは照合していない。乳酸説の後退そのものは、日本語の学会誌要旨[1]で確かめられる。

3. どんな うんどうで いたく なるの?

3. 引き金は「慣れない動き」と「ブレーキをかける力」

3. 引き金 ── 慣れない運動と伸張性収縮

ふだん しない うごきを した ときに、いたく なりやすいと いわれます。とくに、うんどうの なかでも「のびながら ちからを だす」うごきが あやしいと されて います[2]。

たとえば、やまを おりる とき。あしの きんにくは、からだが すとんと おちないように、のびながら ふんばります。

ひっぱられながら ふんばる うごきを すると、きんにくの ちいさな ところに ふたんが かかると かんがえられて います。

DOMSは、慣れない運動や、伸張性(しんちょうせい)の運動のあとに起こるとされています[2]。伸張性の運動とは、筋肉が伸ばされながら力を出す動きのことです。

坂を下る足で起きていること

たとえば下り坂では、太ももの筋肉が体重を受け止めながら伸ばされ、体が落ちすぎないようブレーキをかけています。荷物を持ってゆっくり腰を下ろすときも同じです。このように筋肉に大きな力学的負荷がかかることが、痛みの引き金になると整理されています[1]。

逆に、筋肉が縮みながら力を出す動き(短縮性の運動)は、乳酸ができても筋肉痛になりにくいとされます[4]。

Hotfielらの総説は、DOMSを「伸張性運動または不慣れな運動に続いて起こる、軽度だがありふれた超微細構造レベルの筋損傷」と位置づける[2]。伸張性収縮(筋が伸ばされながら張力を発揮する収縮)は、下り坂での歩行や重い物をゆっくり下ろす動作に含まれる。

田口は、力学的負荷が発症の引き金になるだけでなく、発症後は痛みを誘発する刺激にもなる、と整理している[1]。短縮性収縮は乳酸を産生してもDOMSを起こしにくい、という記述が二次資料にある[4]。

4. きんにくが きずついて いるの?

4. 「筋肉が切れた」のとは違う、目に見えない傷

4. 損傷説の位置づけ ── 超微細構造の損傷と、未解明の仕組み

いたみの もとは、きんにくの 「とても ちいさな きず」だと かんがえる 人も います。けんびきょうで やっと みえる ぐらいの、さいぼうの なかの きずです[2]。

きんにくが ぶちっと きれる わけでは ありません。

ただ、この かんがえも ぜんぶ ただしい とは いえません。きずが なくても いたみが でる ことも あると、わかって きたからです[1]。

顕微鏡で見えるくらいの傷

DOMSは、軽い「超微細な」筋損傷とも考えられています。細胞レベルの小さな損傷がきっかけで、たんぱく質の分解や炎症の反応が起こる、という説明です[2]。ここでいう損傷は、筋肉が切れるようなものではなく、顕微鏡で調べるような小さな変化です。

でも、それだけでは説明しきれない

一方で、痛みが出るのに筋損傷や炎症が必ずしも必要ではないこともわかってきた、と学会誌の要旨は述べています。そのうえで、仕組みの全体はまだ解明されていないと書いています[1]。「傷ができるから痛い」という説明も、決定版ではないのです。

損傷説では、細胞レベルの損傷が引き金となってタンパク質の分解と炎症反応が起こると考えられているが、正確な機序は不明とされる[2]。「超微細構造」とは顕微鏡でとらえるレベルの構造を指し、筋線維が断裂するといった肉眼的な損傷とは異なる。

一方、田口は、DOMSの発症に筋損傷や炎症が必ずしも必要でないこともわかってきたが、機序の全容は解明されていない、と述べる[1]。つまり損傷説も確定ではなく、複数の要因が関わる可能性を含めて読む必要がある。

5. にどめは、かるく なるって ほんと?

5. 同じ運動の2回目は、痛みが軽くなる

5. 反復bout効果 ── 2回目以降に症状が軽くなる

いたく なった あと、おなじ うんどうを もう いちど すると、いたみが かるく なる ことが あります。「はんぷくbout こうか」と いいます。からだが 「なれた」のかも しれません。

この 「まもる ちから」は、はんとしぐらい つづく ことが あると ほうこく されて います[3]。

ただし、こじんで ちがいます。ずっと なにも しない 日が つづくと、うすれて いくとも いわれます[4]。

最初に痛くなる運動をしたあと、同じ運動をもう一度すると症状が軽くなることが知られています。これを「反復bout効果」と呼びます。boutは「一回の運動のまとまり」を意味する言葉です[3]。

どのくらい続くのか

この保護の効果は、運動の間が最大24週間(約半年)あいても続くことがあると報告されています。ただし、これは上限の目安で、個人差や運動の種類でも変わります[3]。二次資料では、約1年たつと検出できなくなり、最大筋力の40%というごく軽い運動でも、次の損傷に対して20〜60%の防御になるとされています[4]。ただしこれは二次資料の数字なので、「とされる」にとどめておきます。

最初に損傷を起こす運動(damage bout)のあと、同じ運動を繰り返すと症状が軽くなる。この保護効果は反復bout効果(repeated-bout effect, RBE)と呼ばれ、運動の間隔が最大24週間(約半年)あいても続くことがある、と報告されている[3]。24週は上限の目安で、個人差や運動の種類で変わる。

二次資料には、効果は約1年で検出できなくなること、最大筋力の40%というごく軽い最初の運動でも、次の損傷に対して20〜60%の防御になることが記されている。ただしこれは英語版Wikipediaが引用する総説(Nosaka 2008)の内容で、原文は有料のため確認していない[4]。数字は断定せず、「〜とされる」程度に扱う。

6. いたみの ひみつは、どこまで わかった?

6. 神経の研究が近づいている「なぜ痛いのか」

6. 神経側の研究 ── 痛覚受容器の感作とイオンチャネル

さいきんは、きんにくを うごかす「しんけい」の ほうから しらべる けんきゅうも すすんで います。いたみを かんじる しくみの、いちぶが みえて きました[1]。

ただし、これは どうぶつを つかった けんきゅうです。人でも おなじかは、まだ いえません。

「なぜ、あとから いたく なるの?」の こたえは、まだ ぜんぶ みつかって いません。

近年は、筋肉痛のモデルにした動物を使った研究から、痛みを感じ取るセンサー(痛覚受容器)の感度が神経の栄養になる物質の働きで上がることや、痛みに関わるイオンの通り道(イオンチャネル)の性質が変わることなど、神経の仕組みの一端が明らかになりつつあります[1]。

ただし、これは動物実験の知見です。人でも同じことが起きていると決まったわけではなく、「なぜ遅れて痛むのか」の決定的な答えも、まだありません[1]。

近年、DOMSモデル動物を用いた研究から、神経栄養因子による痛覚受容器の感作や、痛み関連イオンチャネルのモーダルシフトを介した神経化学的機構の一端が明らかになりつつある[1]。ただし動物実験の知見であり、ヒトで同じ機構が働くと断定はできない。

また、なぜ「遅れて」痛みが出るのかを決定的に説明する資料は、今回参照した範囲には見当たらない。損傷説・乳酸説の後退・神経機構と、説明は少しずつ更新されている段階と読める。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いま できること

ふだん しない うごきを した 日の あと、どこが いたく なるか、いつ いたく なるか、なんにち つづくかを、おうちの 人と はなして みましょう。むりに うんどうを する ひつようは ありません。

もし いたみが とても つよい、ながく つづく ときは、おうちの 人や おいしゃさんに はなして ください。

しりょうを よむなら

としょかんで「きんにくの ひみつ」や「うんどう」の ほんを さがして みましょう。

今日できること

山道や階段をたくさん使った日のあと、痛みが出た場所と、出始めた時間、いつ軽くなったかを、日記に一言書いてみましょう。「2日目のほうが痛い」など、この記事の話と合うか、合わないか、自分で見比べられます。痛みを試すための運動はしないでください。

強い痛みが続くときなど、気になることは家の人や医師に相談してください。

資料を読む

図書館では「運動生理学」「スポーツ科学」の棚に、筋肉の仕組みの本があります。この記事は入り口にすぎません。

読み比べる

日本語の学会誌要旨[1]と、ドイツの総説[2]、実験論文[3]を並べると、「損傷」「炎症」「神経」のどこに重点を置くかが少しずつ違う。二次資料[4]は入口として便利だが、数字は一次資料で確かめたい。

気になるときは

強い痛みが長く続く場合の判断は、この記事の範囲を超える。医師など専門家に相談すること。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

遅発性筋痛(DOMS)の説明は、学会誌の要旨、総説、実験論文、二次資料を突き合わせている。二次資料の数字は「〜とされる」にとどめた。

  1. 田口徹「遅発性筋痛(いわゆる運動後の筋肉痛)はどこまでわかったか」『医学のあゆみ』289(10), 2024 https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/ayu289100740 (DOMSの定義、乳酸説の後退、機序未解明、神経機構の研究)
  2. Hotfiel T et al. 2018, Sportverletz Sportschaden 32(4):243-250 https://cris.fau.de/publications/212295031 (伸張性・不慣れな運動、超微細な損傷、ピーク時期)
  3. Connolly DAJ et al. 2002, Journal of Sports Science and Medicine 1(3):80 https://jssm.org/jssm-01-80.xml (反復bout効果、階段昇降実験での痛みのピーク)
  4. Wikipedia「Delayed onset muscle soreness」 https://en.wikipedia.org/wiki/Delayed_onset_muscle_soreness (二次資料。乳酸の値が戻る時間、反復bout効果の持続、短縮性運動)

なおした ところ

更新履歴

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