1. 爪は、さきが のびるのでは ないの?
1. 爪は先ではなく、根元から押し出されて伸びる
1. 爪は根元で作られ、先へ押し出されて進む
爪を きった あと、のびて くるのは、さきの ほうだと 思いませんか。じつは、さきが のびるのでは ありません。
爪の 根元には、爪の もとを つくる ばしょが あります。そこで できた ものが、さきの ほうへ ぐいぐい おし出されて、爪に なります。
おし出される はやさは、大人で 1日に 0.1ミリ ほどです。1か月で 3ミリくらい。1ミリの 長さを 10日かけて すすむ、ゆっくりした 歩みです。
この はやさは、人に よって ちがうと いわれます。どれくらい ちがうのか、つぎから 見ていきましょう。
爪を切ったあとに伸びてくるのは、先の方だと思いがちです。けれども、爪は先が伸びるのではありません。指の根元側にある爪母(そうぼ)という場所で細胞が作られ、先の方へ押し出されて硬い爪の板(爪板)になります[6]。爪板をつくる細胞の81%は、爪母のうち根元側の部分で作られるといいます[7]。
押し出される速さは、インドの18〜40歳の健康な成人では平均で1日0.103mmでした[1]。30日かけると約3.1mmで、中国の大学生の左手の親指で測られた月3.14mmとも近い値です[3]。1日では見えないほどの歩みでも、月にすると定規で読めます。
では、この「1日0.1mm」は誰でも同じなのでしょうか。いちばん目立つ違いは、年齢にあるといわれます。
爪を切ったあとに伸びてくるのは先端だと感じやすいが、爪は先端で伸びるのではない。指の根元側にある爪母で作られた細胞が、先端方向へ押し出されて爪板になる[6]。爪板の細胞の81%は、爪母のうち近位(根元側)の部分で作られるとされる[7]。したがって「爪の伸びる速さ」とは、根元で作られる細胞が先へ進む速さである。
測定の基準になる数値は、研究ごとに集団が異なる。インドの18〜40歳の健康な成人では平均で1日0.103mm[1]、中国の大学生の左手親指では月3.14±0.63mm[3]と報告された。0.103mmに30日をかけると約3.1mmで、両者は近い。成人の推定値としては1日0.1〜0.15mm程度も示される[2]。
平均が近いからといって、全員が同じ速さというわけではない。中国の研究の±0.63mmが示すとおり、同じ集団の中にも幅がある。では、その幅は年齢や性別とどう関わるのか。
2. いちばん はやく のびるのは、いつごろ?
2. 爪の伸びが最も速いのは何歳ごろか
2. 年齢と性別:ピークは10〜14歳、性差は研究で割れる
人の 一生の なかで、爪が いちばん はやく のびるのは、10さいから 14さいごろだと 書いた 医学の 本が あります。そのあと、だんだん 大人と おなじくらいの はやさに おちついて いくそうです。
この 年ごろの 人は、せも ぐんぐん のびる 人が 多い ころです。爪も いそがしい 時期なのかもしれませんが、なぜ この 年ごろに はやいのかは、まだ わかって いません。
男の 人と 女の 人では、どうでしょう。中国の 大学生を しらべた けんきゅうでは、男の 人や せの 高い 人の ほうが はやい かたむきが ありました。ところが インドの けんきゅうでは、男女の ちがいは 見つかりませんでした。
けんきゅうに よって けっかが ちがう ことが あるのです。どちらが 正しいとは、いまは いえません。
10歳から14歳。ここが、爪の伸びる速さのピークだと報告されています。そのあとは、だんだん成人並みの速さに落ち着いていきます[2]。ちょうど体が大きくなる時期と重なります。
性別や体格はどうでしょうか。中国の大学生を調べた研究では、男性と背の高い人のほうが、爪が速く伸びる傾向がはっきり出ました[3]。ところがインドの研究は、男女の間にも利き手と反対の手の間にも、はっきりした差は見られなかったと報告しています[1]。
2つの研究は、集団も測り方も違います。そのため、片方だけを「正しい」とは決められません。インドと中国で平均に差があることについても、人種の違いなのか、測り方や環境の違いなのかは分けられません。言えるのは、「性別で差がある」と一言で言い切れる段階ではない、ということです。
では、同じ一人の中ではどうでしょう。指の10本は、同じ速さで伸びているのでしょうか。
年齢との関係では、小児の爪疾患の総説が、成長速度のピークを10〜14歳としている。その後は成人並みの速さに落ち着く[2]。体の成長が活発な時期と重なるが、この総説の要約は、その時期に速くなる理由までは示していないため、「成長期だから」という説明を因果として書くことはできない。
性別・体格では、報告が割れる。中国の大学生を対象にした研究は、男性と身長の高い参加者で有意に速い伸びを報告した[3]。一方、インドの成人の研究は、性別とも利き手とも爪の伸びに相関はないと述べている[1]。集団・年齢構成・測定法が違うため、単純に比べて優劣はつけられない。さらに、インドと中国の平均値の差が人種によるのか、方法や環境によるのかも分けられない。
集団間の比較は、このように結論が割れやすい。そこで、同じ人の体の中での比較に目を向けると、条件がそろう分、はっきりした差が見える。
3. おなじ 人でも、ゆびに よって ちがうの?
3. 同じ人でも、足の爪は手の半分ほどしか伸びない
3. 同一人物内の差:足の爪は手の約半分、小指も遅い
アメリカで、22人の わかい 大人が きょうりょく した けんきゅうが あります。手の 爪は 1か月で 3.47ミリ、足の 爪は 1.62ミリ のびました。足の ほうは、手の はんぶんより すこし すくない くらいです。
手の ゆびの なかでも、小ゆびの 爪は、ほかの ゆびより ゆっくりでした。
右手と 左手、右足と 左足の あいだには、はっきりした ちがいは ありませんでした。
足の 爪は ゆっくりなので、きる 回数は 手より すくなくて よいと、皮ふの 医者の あつまりも 書いています。
アメリカで22人の健康な若い成人が協力した研究があります。爪は月に平均で、手が3.47mm、足が1.62mmでした。足の爪は、手の爪の約0.47倍。半分より少し遅い計算です[8]。
手の指の中でも差がありました。小指の爪は、ほかの指の爪より遅かったと報告されています[8]。いっぽう、右と左のあいだには、手でも足でも有意な差はありませんでした[8]。
アメリカ皮膚科学会も、足の爪は手の爪より遅く伸びるので、切る回数を減らせると説明しています[4]。毎日の手入れのリズムが手と足で違うのは、この差のためです。
ただし、これは22人の平均で、全員が同じ割合で遅いとは限りません。また、なぜ小指が遅いのかは分かっていません。
集団の平均でも、一人の体の中でも、速さには幅があります。では、その幅を作っているのは何でしょうか。
同一人物の中では、条件がそろうため差が見えやすい。アメリカの健康な若い成人22人を対象にした研究では、爪の伸びは手が平均月3.47mm、足が月1.62mmで、手のほうが有意に速かった[8]。比にすると足は手の約0.47倍で、半分に少し届かない。
手の指の間でも違い、小指の爪はほかの指より有意に遅かった。他方、右と左の間には、手でも足でも有意差はなかった[8]。この研究では、爪の根元の皮膚のふち(近位爪郭)の近くにやすりで印をつけ、1〜3か月後に印までの距離を測り直す方法が使われた[8]。爪が根元から押し出されて進むからこそ、動かない印を目印にして、動いた距離を測ることができる。
足が遅いことについては、米国皮膚科学会の一般向け資料も、足の爪は手より遅く伸びるので切る回数が少なくてよいと述べる[4]。ただし、これは22人の平均で、個人差を含む。なぜ小指が遅いのかは分かっていない。
年齢・性別・指・手足の差を見てきたが、いずれも速さに差があることまでで、原因の話ではない。では、速さを左右する要因として何が挙げられているのか。
4. はやさを かえる ものは、なに?
4. 速さを変えるもの:体質、栄養、体調、そして分からないこと
4. 速さを左右する要因:何が確かで、何が因果不明か
のびる はやさは、いろいろな ことで かわると いわれます。
ひとつは、生まれつきの たいしつです。ある 研究の 本は、のびる はやさが 生まれつきの せいしつで 決まる ぶぶんが あると 書いて います。
ふたつめは、ごはんです。さきほどの 研究の 本には、てつぶんが たりないと、爪が もろく なって、のびるのも ゆっくりに なる ことが あると 書いて あります。
みっつめは、からだの ぐあいです。ねつが 出たり、けがを したり、とても つよい ストレスが かかったりすると、爪が いっとき ゆっくりに なる ことが あります。
ほかにも、水に ぬれたり かわいたり する ことや、つよい くすりが 爪に あたる ことも、のびを よわめると いわれます。
ただ、どれが どのくらい ちから あるのかは、まだ よく わかって いません。
爪の速さを左右する要因として、資料で挙げられているものを見てみましょう。
体質です。インドの研究は、爪の伸びる速さは人それぞれの遺伝的な体質で決まる部分があると述べています[1]。栄養については、同じ研究が冒頭の説明で、鉄分が足りない状態は爪をもろくして伸びを遅くすることがあると述べています[1]。
体調も関わります。発熱、けが、薬による治療、強いストレスがあると、爪が一時的にゆっくり伸びたり、止まったりすることがあります[5]。環境では、湿気、強い薬品、けがが、爪を弱らせ、伸びを妨げうるとされます[1]。
中国の大学生の研究では、爪に含まれるカルシウムやナトリウムなどのミネラルの量が多いほど、爪が速く伸びる傾向がありました[3]。ただし、これは「一緒に動く」関係で、ミネラルが多いから速いのか、速いからミネラルが多いのか、どのミネラルが効くのかは、分かっていません。
もう一つ、速さと混同しやすいものがあります。爪の先が層になってはがれる「二枚爪」です。これは爪の細胞どうしをつなぐ力が弱って先の側で起きる問題で[9]、水にぬれたり乾いたりのくり返し、薬品、衝撃、爪の切り方や長すぎる爪などが外からの原因として挙げられています[9]。根元から押し出される速さとは別の話です。
こうして見ると、速さは1つの理由では決まりません。では、自分の爪は、どれくらいの速さなのでしょうか。
要因として資料に挙がるものを、確かさの順に整理する。まず体質面では、インドの研究が、爪の成長速度は個人の遺伝的素因に規定される部分があると述べる[1]。栄養面では、同研究が序論で、鉄欠乏などが脆く遅い爪につながりうると述べる[1]。
体調では、発熱・外傷・化学療法・強いストレスにより爪の伸びが遅くなる、または止まりうる[5]。環境では、湿気・強い化学薬品・外傷が爪を弱め、伸びを妨げうる[1]。これらは、いずれも二次的な資料による記述であり、効果の大きさは数値で示されていない。
数値で示された関連としては、中国の大学生の研究に、爪中の元素濃度と成長速度の正の関連がある[3]。ただしこれは相関であり、元素濃度が速さを決めるのか、速く伸びる爪が結果として濃度が高いのか、どの元素が寄与するのかは分かっていない。インドと中国で平均が異なる点も、人種か、測定法か、環境かを分けられない。
速さの話と区別すべき現象に、二枚爪(爪甲層状分裂症)がある。爪板の遊離縁と遠位部が層状に裂ける状態で、爪板の細胞間をつなぐ接着の働きが落ちた結果として生じる[9]。外因としては、水への浸漬と乾燥のくり返し、薬品、外傷、爪の切り方や長すぎる爪が挙げられる[9]。これは先端側の問題であり、根元で作られて押し出される速さとは別の事象である。
以上から言えるのは、速さには複数の要因が関わりうるが、効果の大きさや因果の向きは、現在の資料では分けられないということである。では、確かめられるものは何か。それは自分の爪の速さである。
5. じぶんの 爪の はやさを、はかって みよう
5. 自分の爪の速さを、1か月かけて測ってみる
5. 自分の爪で測る:切った爪の長さの増え方を記録する
けんきゅうでは、爪の 根元の ちかくに しるしを つけて、あとで しるしが どれだけ 先へ すすんだかを はかりました。
おうちの 人と いっしょに、やってみましょう。爪を いつもどおり きって、その 日に、根元の かわの ふちから 爪の さきまでの 長さを、じょうぎで はかって メモします。爪や 皮ふは けずりません。
1か月 あとに、もう一度 おなじ ところを はかります。ふえた 長さが、のびた 分です。1日 0.1ミリなら、1か月で 3ミリくらいの はずです。
じぶんの 数字は、人の 数字と ちがって いても、ふつうです。ゆびを かえて はかると、小ゆびだけ ゆっくりか どうかも、たしかめられます。
研究者が使った方法は、単純です。爪の根元の皮膚のふちの近くに印をつけ、1〜3か月後に、そこから印までの距離を測り直しました[8]。爪は根元から押し出されるので、印がふちから離れていった距離が、そのまま伸びた長さになります。
家では、皮膚や爪を削らずに、同じ考え方で測れます。おうちの人と一緒に、いつもどおり爪を切り、その日のうちに、根元の皮膚のふちから爪の先までの長さを定規で測って記録します。深爪はしないでください。
1か月後に、同じ指の同じ場所をもう一度測ります。増えた分が、伸びた長さです。1日0.1mmなら、1か月で3mmほどのはずです。2週間だと1.4mmほどで、1mm目盛りの定規では読み取りにくいので、1か月のほうが向いています。自分の数字が、論文の平均より大きくても小さくても、それが自分の速さです。
慣れたら、小指と親指で比べてみてください。小指だけ遅いかどうか、手と足でどれくらい違うのかも、自分の体で確かめられます。
先行研究の測定法は、爪の近位爪郭の近くにやすりで印をつけ、1〜3か月後に印までの距離を再測定するものだった[8]。爪板は根元から先へ押し出されて動くため、動かない基準点(近位爪郭)から印までの距離の増加が、そのまま爪板の移動距離になる。
皮膚や爪を削る方法は家庭では勧められないため、代わりに切った爪の長さの増え方で測る。保護者の立ち会いのもとで、いつもどおり爪を切り(深爪は避ける)、その日のうちに基準点(近位爪郭)から爪の先までの長さを定規で測って記録する。1か月後に同じ指を同じ方法で測り、差を伸びとみなす。成人の平均0.103mm/日[1]に当てはめると14日で約1.4mm、30日で約3.1mmとなる。1mm目盛りの定規では、2週間では誤差が大きく、1か月のほうが読み取りやすい。
測定は1回の個人の記録に過ぎず、10〜14歳のピーク[2]にいる人なら大人の平均より大きく、足や小指なら小さく出るかもしれない。結果が平均と違っても、個人差の範囲で説明できる。同じ手の別の指、手と足で比べれば、小指が遅い、足が約0.47倍という報告[8]が自分の体でも成り立つかどうかを、自分のデータで確かめられる。
原典に当たる場合は、出典欄の一次資料(インド・中国の成人、アメリカの若い成人を対象にした研究)が入口になる。集団・測定法・年齢の違いを並べ、どこまで比較できるかを考えると、個人差という言葉が、実はいくつもの違いの束だと見えてくるはずだ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数値はすべて報告された平均や推定値で、個人の爪の速さを決めるものではありません。リンクは英語の資料が中心です。
- The Normal Growth Rate of Human Fingernails in Indian Population. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11436330/ (インドの成人の平均の速さ、性別・利き手との関係、体質・栄養・環境)
- Pediatric Nail Disorders. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11460841/ (10〜14歳のピーク、成人の推定値)
- Fingernail Growth Rate and Macroelement Levels Determined by ICP-OES in Healthy Chinese College Students. https://www.pjoes.com/ (親指の速さ、性別・身長、ミネラルとの関連)
- American Academy of Dermatology, How to trim your nails. https://www.aad.org/ (足の爪は手より遅い)
- American Academy of Dermatology, 12 nail changes a dermatologist should examine. https://www.aad.org/ (発熱・けが・ストレスと爪の伸び)
- Anatomy, Shoulder and Upper Limb, Nails - StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/books/NBK534769/ (爪母から押し出されて爪板になる)
- Histology, Nail - StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/books/NBK539733/ (爪板の細胞の81%が近位の爪母で作られる)
- Yaemsiri S, et al. (2010) Growth rate of human fingernails and toenails in healthy American young adults. https://hero.epa.gov/hero/index.cfm/reference/details/reference_id/7330295 (手と足、小指、左右、印をつける測り方)
- Onychoschizia - GPnotebook. https://gpnotebook.com/pages/dermatology/onychoschizia (二枚爪は先の側の問題で、速さとは別)
なおした ところ
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