1. はっぱを まいて いるのは だれ?
1. 球は、誰かが巻いているわけではない
1. 結球の始まり:外葉が内側を暗くする
はくさいを よこから 見ると、はっぱが ぎゅっと まるく つつまれて います。だれかが てで まいて いるように 見えますね。
でも、はたけには まく ひとは いません。はくさいは、ある かずの はっぱが ひらいた あとで、たまを つくりはじめます[1]。
そとがわの はっぱが ひかりを さえぎると、うちがわの はっぱは くらく なります。すると、うちがわの はっぱが たちあがって、おたがいに だきあう ように あつまる、と けんきゅうで せつめい されて います。
たとえば、ひとが りょうてを あわせて ぎゅっと にぎる ような すがたです。ただし ほんとうは、てが ある わけでは なく、はっぱ じしんが まがって います。
外から巻くのではない
畑のハクサイを見ても、葉を巻いている手は見つかりません。高知大学の研究報告は、ハクサイは一定の枚数の葉が開いたあとに球をつくる、と説明しています[1]。
その理由として挙げられているのが、遮光です。外側の葉が内側の葉に当たる光をさえぎり、その結果、内側の葉が立ち上がって結球の姿勢をとる、という説明です。立ち上がった葉どうしが抱き合うように寄り合う動きも、ここに含まれます。
巻かれる葉の側が主役
ここで大事なのは、動いているのが内側の葉のほうだという点です。両手で包むように見えても、実際には葉それぞれが内向きに曲がっています。ただし、これは1960年代の研究報告にもとづく説明で、ほかの野菜まで同じとは限りません。
では、暗くなると、葉の中では何が起きているのでしょうか。
結球はハクサイの外見上の特徴だが、高知大学の報告では、一定枚数の葉が展開したあとに起こる現象として整理されている。外部の葉が内部を遮光し、その結果、内部の葉が立ち上がって結球の姿勢をとる。立ち上がった葉が互いに抱き合うように寄る抱合も、この過程に含まれる[1]。
この説明では、原因は外部からの力ではなく、光の条件の変化に対する葉自身の反応に置かれている。だから「巻く」というより、「巻く向きに自分で動く」と読むほうが、報告の言い方に近い。
ただし、この結論は1960年代の研究に基づいており、遺伝子レベルの近年の研究まで含めて確認したものではない。研究が進んでいる分野だとだけ述べておく。では、遮光はどのような反応を介して葉の屈曲に結びつくのか。次章でホルモンの説明と、葉の形の変化を見る。
2. くらく なると、はっぱは どう なるの?
2. 暗くなった葉は、内側へ曲がり、形も変わる
2. 遮光への反応としての葉の屈曲:ホルモン説と葉の形
くらく された はっぱは、ないがわへ むかって まがります。この うごきには、「オーキシン」と いう、しょくぶつの なかの ものが かかわる、と かんがえられて います[2]。
べつの けんきゅうでは、はっぱに その なかまの くすりを ぬると、まがる うごきが つよく なった と ほうこく されて います[3]。まがる ときには、かなり つよい ちからが はたらく だろう、とも かかれて います。
もう ひとつ、おもしろい ことが あります。たまが できはじめる ころ、あたらしく でてくる はっぱの かたちは、ほそくて ちいさい だえんから、おおきくて ひろい まるい かたちへ、すこしずつ かわります[1]。
ほんとうに たまを つくるのは、ひろい はっぱの ほうです。まるい はっぱが かさなるから、まるい たまに なるのですね。
ホルモンの説明
高知大学の別の報告では、結球は遮光に感応して起こる葉の屈曲現象で、オーキシンと、炭水化物や窒素の量の変化に従って現れるとされています[2]。オーキシンは植物ホルモンの一つです。この説明は研究報告上のもので、強く言い切ることはできません。
北海道学芸大学の佐々木勝治は1963年の報告で、結球葉が内側に曲がるときにはかなりの機械的な力が働くと考えられる、と述べています。そしてオーキシンやジベレリンの増減が関係し、これらを葉に塗ると曲がる動きが強まったと報告しています[3]。
球の材料は、幅の広い丸い葉
結球が始まるころ、新しく出る葉の形は、小さく細い楕円から、大きく幅広い丸い形へ次第に変わっていきます。実際の球をつくるのは、この幅広い葉です[1]。この報告では、上から見て株が丸くない苗を間引くのが理にかなう、とまとめられています。
では、結球を始めるのに必要な外側の葉は、何枚くらいなのでしょうか。
遮光に対する葉の応答として、結球をどう説明するか。高知大学の報告は、結球を遮光に感応する葉の屈曲現象とし、オーキシンと炭水化物・窒素含量の推移に従って現れるとする[2]。佐々木は、この屈曲にはかなりの機械的な力が働くと予想し、オーキシンとジベレリンの消長が結球に直接関係するという立場をとった。さらに、これらのホルモンを葉に塗ると屈曲が強まったと報告している[3]。
ただし、2つの報告は別の研究者による1960年代の成果であり、ホルモン名は説明の枠組みとして読むのが妥当である。この説明を、現在の遺伝子研究の知見まで含めて再検討したわけではない。
もう一つの観察が、葉の形だ。結球開始のころ、順に出る葉の形は、小さく細い楕円から大きく幅広い円形へ次第に変わり、実際の球は幅広い葉でつくられることが示されている[1]。このため同報告は、上から見て株が丸くない苗を間引くのが合理的だと整理している。形の変化が結球の準備と対応するなら、葉の枚数や順序が結球の成否を左右する可能性がある。では、品種によって、必要な枚数はどう違うのか。
3. そとの はっぱは、なんまい いるの?
3. 外側の葉は、何枚そろえば巻き始めるのか
3. 早生と晩生:結球開始に必要な外葉の数と株間
はくさいには、はやく そだつ しゅるいと、ゆっくり そだつ しゅるいが あります。はやく そだつ ほうは、そとの はっぱが すくなくても、まきはじめます[2]。
ゆっくり そだつ ほうは、そとの はっぱが もっと たくさん ひつようです。そとの はっぱが、うちがわを くらく する ためですね。くらさが たりないと、まがる うごきが はじまらない からだと かんがえられます。
だから はたけでは、はくさいを ひろめに うえます。おおきな そとの はっぱを そだてたいからです[6]。よくある しっぱいは、はっぱが まかずに ひらいた ままに なる ことです。
なんまい いるのか、かずは ここでは かきません。しゅるいごとに ちがうので、しらべる ときは、うえた たねの ふくろを 見て ください。
早生は少なく、晩生は多く
高知大学の報告によると、早生の品種は外葉が少なくても結球を始めますが、中生・晩生と生育の遅い品種になるほど、結球の開始までに多くの外葉が必要になります[2]。品種によって、結球を始めるのに必要な暗さが違う、と読めます。
具体的な枚数は、今回読んだ資料からは示せません。品種ごとに違い、種の袋や栽培の案内に書かれているので、育てる人はそちらを見るのが確実です。
家庭菜園のコツも、同じ理由
家庭菜園の案内では、ハクサイは大きな外葉を育てたいので、株間を広めにとるのがポイントとされています。よくある失敗は、葉が巻かずに開きっぱなしになることです[6]。
外葉を大きく育てるのは、内側を十分に暗くするため、と考えると、遮光で巻くという説明とつながります。ただし農機メーカーの案内なので、栽培の目安として読みます。では、この野菜は、いつ植えると育てやすいのでしょうか。
結球に外葉の数が必要だとすると、品種によってその数は違うのか。高知大学の報告では、早生の品種は外葉数が少なくても結球を始めるのに対し、中生、晩生となるにつれて、開始までにより多くの外葉数を要した[2]。品種ごとに、遮光の効き方か、葉の側の感度か、どちらかが違うと解釈できる。ただし報告は、どちらが原因かまでは断定していない。
具体的な外葉の枚数は、今回扱った資料で品種別に確認できる形では取れていないため、数字は挙げない。栽培上は、種の袋や産地の資料で確認する。
この関係は、家庭菜園の注意とも一致する。ホンダの野菜づくりの案内は、大きな外葉を育てたいので株間を広めにとることを要点に挙げ、よくある失敗として、葉が巻かず開きっぱなしになることを挙げている[6]。外葉を大きく育てるのは、結球に必要な暗さを内側につくるためだと考えれば、研究報告の説明と案内の助言は同じ方向を向く。ただし、案内は農機メーカーの一般向け資料なので、因果の証明としては扱わない。では、栽培期間はどれくらいで、いつ植えるのか。
4. いつ うえて、いつ たべられるの?
4. 秋に植えると、約3〜4か月で収穫が始まる
4. 秋冬どりの作型:定植から収穫までの日数と適温
はくさいは、すずしい きこうを このみます。おうちの はたけでは、あきから ふゆに むかう じきが、そだてやすい と いわれます[6]。
いばらきけんの しらべでは、8がつの おわりから 9がつに なえを はたけに うえます。そして、10がつの おわりから 1がつまでに しゅうかくします[7]。
なえを うえてから たべごろまで、はやく そだつ しゅるいで 72〜90にち、ゆっくり そだつ しゅるいで 108〜124にち でした。おおよそ 3か月から 4か月です。
ながさきけんの しりょうでも、9がつに うえて、12がつから 2がつに しゅうかくする と かかれて います[8]。たねを まく ひからでは なく、なえを うえた ひから かぞえた にっすうです。
8月下旬から9月に植える
ハクサイは冷涼な気候を好み、家庭菜園では秋から冬に向かう時期が育てやすいとされています[6]。茨城県農業総合センター園芸研究所の資料では、秋冬どりの作型は8月下旬〜9月に植え、10月下旬〜1月に収穫します[7]。
この資料の実測では、植えてから収穫まで、中早生品種で約72〜90日、晩生品種で約108〜124日でした。月に直すと、中早生で2.4〜3か月、晩生で3.6〜4.1か月ほどです。日数は定植(苗を畑に植えること)から数えたもので、種まきからではありません。
長崎県の資料も、秋冬ハクサイは9月に定植し、12月から2月の低温期に収穫を迎える作型だと説明しています[8]。県が違っても、秋に植えて冬に食べる流れは同じです。
気温の目安
茨城県の研究所は、収穫時期を予測するモデルで、生育に適した範囲として5〜30℃の気温を取り出して使っています[7]。ただし、品種や年によって幅があるので、日数は目安です。
では、小さい苗が寒さにあうと、どうなるのでしょうか。
ハクサイは冷涼な気候を好むが、秋冬どりの作型では苗を植える時期は残暑の残る8月下旬から9月である。このとき、なぜ「涼しい季節の野菜」を暑い時期に植えるのか。次章で述べる幼植物期の低温と花芽の関係と、結球期に涼しくなる気温の下降を重ねると、時期の選び方に理由があるように読める。ただし、これは資料の記述を並べた推論であり、各県の資料が明言している因果ではない。
茨城県農業総合センター園芸研究所の令和7年度成果によると、秋冬どり作型は8月下〜9月定植、10月下〜1月収穫である。収穫までの日数は、定植から収穫まで、中早生品種で約72〜90日、晩生品種で約108〜124日の実測があった。予測モデルでは、生育に適した範囲として5〜30℃の気温を抽出して使っている[7]。日数は定植起点で、播種起点ではない点に注意する。
この日数を月に直せば、中早生が約2.4〜3か月、晩生が約3.6〜4.1か月になる。長崎県の秋冬ハクサイも、9月定植、12月〜2月の低温期収穫という作型であり[8]、地域が違っても、植えてから数か月で冬に収穫するという骨組みは共通している。では、苗が寒さにあうと、何が起きるのか。
5. ちいさな なえが さむい めに あうと?
5. 小さい苗が寒さにあうと、巻く前に花の準備を始める
5. 低温感応と抽苔:結球を妨げる条件
はくさいの なえは、ちいさい うちに さむい ひに あうと、はなの もとを つくる ことが あります。すると、くきが のびる「とうだち」が おきて、たまが うまく できない ことが あります[9]。
だから、そだてる ひとは、ちいさい うちに さむく しない ように、きを つけて います。
2014ねんの じてんでは、のうけんきこうと いう けんきゅうじょが、とうだち しやすい じょうけんでも まく しゅるいを、そだてて いる ところでした。
はなが さくと かならず まかない、と いう ことでは ありません。さむさが、そだてる ことを むずかしく する、と かんがえて ください。
幼いうちの寒さが問題になる
ハクサイなどのアブラナ科の野菜は、幼い時期に低温にあうと花芽をつくり、花茎がのびます。これを「とう立ち」といい、結球に支障が出るため、幼い苗を低温にさらさない管理が欠かせないとされています[9]。
ここで注意したいのは、出典が「花が咲くと必ず巻かない」と書いているわけではない点です。説明されているのは、とう立ちが栽培を難しくするということです。
寒さに強い品種を育てる研究
農研機構の東北農業研究センターは、2014年のたよりで、既存のハクサイ品種がとう立ちしてしまう条件でも結球する品種の候補が、できつつあると紹介しています[9]。2014年時点の途中経過なので、その後の結果は別に確認が要ります。
こうして見ると、秋に植える時期の選び方は、幼いうちは寒さを避け、巻く時期には涼しい、という両方に合わせた工夫のようにも読めます。では、寒い冬を畑で過ごすハクサイは、どんな工夫を受けているのでしょうか。
ハクサイなどでは、幼植物期に低温にあうと花芽が分化し、とう立ち(抽苔)して結球に支障が出るため、幼い苗を低温にさらさない栽培管理が欠かせない、と農研機構東北農業研究センターは述べる[9]。同じ資料は、既存のハクサイ品種がとう立ちしてしまう条件でも結球する品種の候補が育成中であることを、2014年時点で紹介している。
ここで注意すべきは、出典が「花が咲けば巻かない」と直接書いているわけではない点である。書かれているのは、とう立ちが結球に支障をもたらし、栽培を難しくすることまでであり、その仕組みを詳しく示した資料ではない。だから、巻かない理由を花だけに結びつけて断定することはしない。
この条件を前章の作型と合わせると、秋冬どりが8月下旬から9月に定植されるのは、苗が小さい期間を低温から離し、結球が進む時期に気温が下がるように組んだ、と読める。ただし資料が時期の選び方をそう説明しているわけではなく、本稿の推論である。2014年の紹介が途中経過だった点も含め、品種開発の現状は新しい資料で確かめる必要がある。では、結球したあと、冬の畑では何が起きるのか。
6. ふゆの はたけでは、なぜ ひもで しばるの?
6. 冬の畑で、外葉を持ち上げて結ぶ理由
6. 越冬ハクサイの頭部結束とデンプンの糖化
ふゆの はたけで、はくさいの そとがわの はっぱを もちあげて、ひもで しばって いる ところが あります[10]。きたかんとうの さんちの ほうほうです。
しもや さむさから、まんなかの しんを まもる ためです。この ほうほうで、はたけに おいた まま、3か月ほど ほぞん できる と いわれます。
もっと ふしぎな ことが あります。さむく なると、はくさいは、こおらない ように、なかの でんぷんを あまい ものに かえる と かかれて います。
だから さむい ふゆを こえた はくさいは、あじの めんでも よい ところが ある と されて います。
しばって、芯を守る
埼玉県産業技術総合センターの2022年の研究報告によると、冬のハクサイは霜害や冷害から芯を守るため、外葉を持ち上げて頭部を紐で結ぶ産地があります(北関東)。この方法で、畑のまま約3か月保存できるとされています[10]。
外葉は、巻く前は内側を暗くする役目でした。冬には、こんどは芯を寒さから包む役目へ変わる、と読めるでしょう。
デンプンが糖に変わる
同じ報告は、ハクサイが自分で凍らないように、内部のデンプンを糖に変えることも述べ、味の面でも利点があるとしています[10]。
この資料は、ハクサイが糖を増やす仕組みを調べた研究ではなく、結ぶ機械の開発を述べた報告書の一部です。そのため、糖の増え方の詳しい数字は、ここでは示せません。
ところで、寒い畑で育つこの野菜は、いつ、どこから日本へ来たのでしょうか。
冬のハクサイは霜害・冷害を受ける。そこで北関東には、外葉を持ち上げ、頭部を紐で結束して芯を守る産地がある。埼玉県産業技術総合センターの研究報告20(2022)は、この方法で畑のまま約3か月保存できること、ハクサイ自らが凍らないように内部のデンプンを糖に変えるため、味の面でも利点があることを述べる[10]。
外葉の役目に注目すると、生育期には内側を暗くして結球を促し、冬には芯を寒さから包む。同じ外葉が、季節で別の役目を持つように読める。ただし、前者は高知大学の報告、後者は埼玉県の報告に基づく別々の説明であり、同一の資料が両方を論じたわけではない。
この資料は結束機の開発報告であり、デンプンの糖化は背景として触れられている。糖の増加量や、結ばない場合との味の差は、この資料では取れていない。数値で比べたいなら、別の食味試験の報告を探す必要がある。では、この寒い畑の野菜は、日本でいつから育てられてきたのか。
7. はくさいは、どこから きたの?
7. 白い葉柄と、中国から来た野菜の歴史
7. 原産と日本への導入:自然交雑説と1866年・1875年
はくさいの なまえは、おおきく なると しろい ようへい(はっぱの じく)が のびる ことから、きた と いわれます[5]。「しろい さい(やさい)」と いう いみですね。
ふるさとは ちゅうごくです。7せいきごろ、きた ちゅうごくの かぶの なかまと、みなみの つけなの なかまが、しぜんに まざって うまれた と かんがえられて います[4]。
にほんに きた のは、いがいと あたらしい ことです。1866ねんに はじめて きたと いう せつめいが あります。そして、1875ねんの とうきょうの はくらんかいに、ちゅうごくから 3かぶ だされました[4]。
わたしたちが ふだん たべて いる はくさいは、にほんに きてから、まだ 160ねんほどの やさいです。
名前は白い葉柄から
「白菜」の名は、成長すると白い葉柄(葉の軸)が伸びることに由来します。アブラナ科の野菜です[5]。
2つの野菜のかけあわせ
中国原産で、7世紀ごろ、華北で栽培されていたカブの仲間と、華南で栽培されていたツケナの仲間が自然に交雑して、原型が成立したと考えられています[4]。
日本では意外に新しい
日本での歴史は意外に浅いとされます。結球するハクサイは、1866年(慶応2)に初めて来たという説明があり、1875年(明治8)の東京の勧業博覧会に、中国から3株が出されました[4][5]。資料によって書き方が違うので、年は「説明がある」として読みます。
巻くしくみから、日本の食卓への来かたまで、ハクサイは中国と日本の長い付き合いの上に立っています。では、台所の白菜は、いま何を見せてくれるのでしょうか。
ハクサイは中国原産で、7世紀ごろ、華北(かほく)で栽培されていたカブの仲間と、華南(かなん)で栽培されていたツケナ(漬菜)の仲間が自然交雑して、原始型が成立したと考えられている[4]。つまり、1つの野菜が、離れた地域の2つの野菜の交雑から生まれたという説明である。ただし「考えられている」という書き方であり、確定した事実としては扱えない。
名の由来は、成長すると白い葉柄が伸びることにある[5]。結球ハクサイが日本へ来たのは、1866年(慶応2)が最初とされ、1875年(明治8)の東京の勧業博覧会に中国から3株が出された、という記述がある。日本での歴史は意外に浅い[4][5]。
注意すべき点が1つある。1875年は博覧会への出品の年であり、畑での栽培が広がった年ではない。出品と栽培の定着を同じ年に置くと、読む人に誤解を与える。年号は、何があった年かを分けて読む必要がある。では、家にある1個のハクサイから、ここまでの説明を、どう確かめられるのか。
8. はくさいを、そとから なかまで 見くらべよう
8. 買ってきた白菜で、外と内の葉をくらべる
8. 白菜1個で確かめる:葉の形と、原典の読みどころ
おうちに はくさいが あったら、おとなと いっしょに、たてに きって もらいましょう。ほうちょうは、かならず おとなに おねがいします。
そとがわの はっぱと、まんなかの はっぱを、1まいずつ はがして ならべます。いろと かたちを くらべます。
まんなかの ほうは、ひろくて まるい はっぱに なって いるでしょうか。そとがわの はっぱは、どうでしょう。はっぱが かさなる ようすも、よく 見て ください。
1まいずつ はがす とき、「くらい ところ」で そだった はっぱの すがたを、おもいだして みましょう。
はがして、形をくらべる
白菜は、包丁が必要になるので、大人に縦に切ってもらいます。外側から内側へ、葉を1枚ずつはがして、順にならべます。
形や色、葉の厚みを見くらべます。結球の始まりごろ、新しい葉は細い楕円から幅広い丸い形へ変わっていく、という研究の説明[1]が、手元の白菜のどこに当てはまるかは、自分の目で見て判断できます。
内側が白っぽいのは、光があたらないためと考えたくなりますが、今回読んだ資料にはその説明がありません。「暗いので緑色になりにくいのかな」と、推測として置いておくのがよいでしょう。
原典を読むなら
出典欄の高知大学の報告([1][2])と北海道学芸大学の報告([3])は、無料でPDFが読めます。ホルモンの名前が出てくる箇所と、「遮光」の言葉が出てくる箇所を探すと、ここで読んだ話のもとが見つかります。
家庭で確かめるなら、1個の白菜を大人に縦に切ってもらい、外側から内側へ葉を1枚ずつはがして並べる。形と大きさを比べ、結球開始期に葉の形が細い楕円から幅広い円形へ変わるという報告[1]と照らし合わせる。ただし、販売される白菜は外葉が取り除かれていることが多く、報告の対象とは条件が違う。比較は参考にとどめる。
内側が黄白色である理由は、遮光で葉緑素が育ちにくいためと推測できる。ただし、今回扱った資料に直接の記述はなく、推測として扱う。
原典を読むなら、高知大学の加藤([1][2])と北海道学芸大学の佐々木([3])の報告を勧める。結球を遮光に対する葉の屈曲現象として説明する箇所、オーキシンとジベレリンの扱い、品種ごとの外葉数の違いを書いた箇所が、本稿の骨組みにあたる。1960年代の研究であり、現在の知見とは必ずしも一致しないので、後年の研究と合わせて読むと、説明がどう更新されてきたかが分かる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料。いずれも公的機関・大学・研究機関・企業の公式資料などで、用途を示しています。
- 加藤徹「ハクサイの結球現象に関する研究(IV)」高知大学学術研究報告13(6) https://kochi.repo.nii.ac.jp/record/3579/files/N013-2-06.pdf (外葉による遮光と結球・葉の形の変化)
- 加藤徹「ハクサイの結球現象に関する研究(III)」高知大学学術研究報告13(7) https://kochi.repo.nii.ac.jp/record/3578/files/N013-2-07.pdf (葉の屈曲・ホルモン・早生と晩生の外葉数)
- 佐々木勝治「蔬菜の結球に関する生理,形態学的研究 第12報」北海道学芸大学紀要13(2) https://hokkyodai.repo.nii.ac.jp/record/957/files/13-2-2B-08.pdf (葉の屈曲に働く力とホルモン)
- 日本大百科全書「ハクサイ」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%83%8F%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%82%A4-3163279 (原産と日本への導入)
- 明治「まるごと野菜事典 ハクサイ」 https://www.meiji.co.jp/foods/soup/marugotoyasai/dictionary/hakusai.html (名前の由来・日本での歴史)
- ホンダ 野菜づくり「ハクサイ」 https://www.honda.co.jp/tiller/yasai/improve/napa-cabbage/ (家庭菜園での育て方)
- 茨城県農業総合センター園芸研究所 令和7年度成果「秋冬どりハクサイの簡易な出荷期予測シート」 https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/enken/seika/yasai/yosai/documents/r7yasai1.pdf (植える時期と収穫までの日数)
- 長崎県 環境保全型農業技術体系「秋冬ハクサイ」 https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/section/03reclaimed_land/tebiki2011/144.pdf (別の県での作型)
- 農研機構 東北農業研究センターたより44(2014) https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/files/tohoku_news44p3.pdf (低温ととう立ち)
- 埼玉県産業技術総合センター研究報告20(2022)「越冬ハクサイ頭部結束機の開発」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/228803/r03-15-hakusaikessoku.pdf (冬の畑での結束と糖)
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