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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きんちょうすると、しんぞうが ドキドキ するのは どうして?

緊張すると心臓がドキドキするのは、速くなる命令のせいだけなのか

緊張で心拍が上がるとき、迷走神経のブレーキはどう関わるのか

分野:からだ

しんぞうは、しんけいから「うて」と めいれいが こなくても、じぶんで リズムを つくって うてる ちからを もって います。その はやさは、1分に 百かい ぜんごと いわれます。

でも、ふだんの しんぞうは、もっと ゆっくり です。どうして ゆっくりなのでしょう。きんちょうして ドキドキする とき、しんぞうには なにが おきて いるのでしょう。この ページでは、かんがえられて いる こたえと、その もとに なった けんきゅうが わかります。

心臓は、神経から「打て」という指令が届かなくても、自分でリズムを刻む力をもっています。神経の支配を外したときの速さは、教材では毎分100回前後とされ、ふだんの安静時の心拍よりかなり速い値です。

では、ふだんの心臓はなぜもっとゆっくり打っているのでしょうか。緊張でドキドキするとき、心臓は速くなるよう「押された」だけなのか、それとも遅くしていた力が「ゆるんだ」のか。この記事を読むと、アクセルとブレーキの両方が関わると考えられていること、その根拠と限界が分かります。

心臓は、神経からの指令がなくても、自分でリズムを刻める。その速さは教材では毎分100回前後とされる。ところが安静時の心拍はそれより遅く保たれていて、そのブレーキ役が迷走神経だと説明される[1][2]。

では、緊張で心拍が上がるとき、心臓は交感神経に「押される」だけなのか、それとも遅くしていた力が「ゆるむ」のか。この記事を読むと、アクセルとブレーキの両方が関わると考えられていることと、その根拠がどこまで届いているかが分かる。

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1. しんぞうは、めいれいが なくても うごくの?

1. 心臓は、神経の指令がなくても自分でリズムを刻める

1. 神経を外しても心臓が打つのは、洞結節がリズムを決めるから

むねに 手を あてると、トクン、トクンと うって います。この しんぞうは、いつも しんけいから「うて」と めいれいされて、うごいて いるのでしょうか。

じつは、しんぞうには、じぶんで リズムを つくる ところが あります。「どうけつせつ」と いう ところで、しんぞうの ペースメーカーの やくめを して います[1]。

しんけいの はたらきを ぜんぶ はずした ときの はやさは、1分に 百かい ぜんごと、きょうざいなどで せつめい されます。ひとや じょうけんで はばが あるので、「百かい ぜんご」と おぼえて おいて ください。

ところが、ふだん じっと して いる とき、わたしたちの しんぞうは、そんなに はやく ありません。どうして でしょう。

拍動のリズムをつくる洞結節

心臓の中には、洞結節という、拍動のリズムをつくる部分があります。心臓移植では、心臓と神経のつながりが切れた状態になりますが、そのとき心拍を決めているのは、この洞結節の自分のペースです[1]。

神経の支配を外した状態で洞結節が刻む速さは、教材では毎分100回前後とされます。ただし、モデル計算で細胞1つの動きを調べた例では約74回という値もあり、数字は条件で幅があります[1]。薬で迷走神経をふさいだ実験でも、安静時の心拍は毎分100〜112回の範囲に入りました[2]。この記事では「100回前後」という幅のある言い方にそろえます。

ふだんの心拍は、それより遅い

安静にしているとき、私たちの心拍はこの値より遅く保たれています。同じ心臓が、なぜふだんは本来の速さで打っていないのでしょうか。

心臓は、神経からの指令がなくても拍動を続ける。心拍のリズムをつくるのは洞結節というペースメーカー役の部分で、心臓移植のように心臓と神経のつながりが切れた状態でも、この洞結節が心拍を決める[1]。

神経の支配を外した状態で洞結節が刻む速さは、教材では毎分100回前後とされる。ただし、洞結節の細胞1つを再現したモデル計算では約74回という値も出ており、条件によって数字に幅がある[1]。薬で迷走神経をふさいだ実験でも、安静時の心拍は毎分100〜112回の範囲に入った[2]。したがって、「100回」は教材上の概数であって、すべての人に当てはまる測定値ではない。

ここで引っかかるのは、安静時の私たちの心拍が、この値より遅いことだ。もし心臓が本来の速さのまま打っているなら、ふだんの心拍は毎分100回前後になるはずである。差を生んでいるのは何か。

2. ふだんの しんぞうは、ブレーキを ふんで いる

2. ふだんの心臓は、ブレーキを踏みながら打っている

2. 安静時の心拍が遅いのは、迷走神経のブレーキがかかっているから

こたえは、「ブレーキ」です。じっと して いる とき、「めいそうしんけい」と いう しんけいが、どうけつせつに ブレーキを かけて、しんぞうを ゆっくりに して います[2]。

モデルけいさんでは、けんこうな 人の あんせいじの しんぞうは、1分に 70かい ほどと よそくされました[1]。百かい ぜんごの ちからを もって いるのに、ふだんは それより ずっと ゆっくり うって いるのです。

ある けんきゅうでは、めいそうしんけいの はたらきを くすりで ふさぎました。すると、じっと して いる とき でも、しんぞうは 1分に 百〜112かいに なりました[2]。ブレーキを はずすと、ほんらいの はやさに ちかづく ようすです。

そこで、きんちょうして ドキドキする わけも、「アクセルを ふむ」だけでなく、「ブレーキが ゆるむ」ことも かかわって いると かんがえられて います。ほんとうに そうなのか、もう すこし たしかめて みましょう。

迷走神経という見えないブレーキ

安静時には、迷走神経(副交感神経のひとつ)が洞結節にブレーキをかけています。そのため心拍は、心臓が本来もつ速さより遅く保たれています[2]。

モデル計算では、健康な人の安静時の心拍は毎分70回ほどと予測されました[1]。本来は100回前後で打つとされる心臓が、ふだんはこの程度に抑えられていることになります。

ブレーキをふさぐと、速さが戻る

ある研究では、迷走神経のはたらきを薬(アトロピン)でふさぎました。すると、安静時の心拍は毎分100〜112回の範囲に入りました。この範囲は、心臓移植を受けた人たちの安静時の値と同じ範囲だと報告されています[2]。

緊張の答えの半分

ここから、緊張で心拍が上がる理由には、「アクセルを踏む」ことのほかに、「ふだんかかっているブレーキがゆるむ」ことも含まれると考えられます。この説明に、さらに別の角度から証拠はあるのでしょうか。

安静時の心拍を遅く保つのは、迷走神経(副交感神経)が洞結節にかけているブレーキである[2]。心臓が本来もつ速さと、実際の安静時の心拍の差は、この迷走神経のはたらきで説明される。

健康な人の安静時心拍は、洞結節のモデル計算で毎分約69.5回と予測された[1]。教材の概数で毎分100回前後とされる心臓が、ふだんは7割ほどの速さに抑えられている計算になる。

この説明を支える実験がある。迷走神経のはたらきを薬(アトロピン)でふさぐと、安静時の心拍は毎分100〜112回の範囲に入り、これは心臓移植を受けた人たちの安静時の値と同じ範囲だったという[2]。この研究は、安静時にすでに迷走神経のはたらきが心臓を抑えていて、神経をふさぐとその抑えが外れることを示す。

したがって、緊張で心拍が上がるしくみは、交感神経がアクセルを踏むことだけでなく、ふだんのブレーキがゆるむことも含むと考えられる。だが、それは安静時の話から導いた見方である。ブレーキがゆるむ場面を、別の角度からも確かめたい。

3. しんけいが つながって いない しんぞうは、どう うつの?

3. 神経がつながっていない心臓の安静時は、かなり速い

3. 神経が切れた移植心の安静時心拍が示す、ブレーキの大きさ

ほかの 人から しんぞうを もらう「しんぞう いしょく」を うけた 人の しんぞうは、しんけいが つながって いません。つまり、ブレーキの しんけいも つながって いない ことに なります。

この 人たちの あんせいじの しんぞうは、しんけいが つながって いる しんぞうより、みゃくが はやめに なります。1分に 90〜110かいほどと ほうこく されて います[1]。びょうきと いう ことでは なく、ブレーキが ない ぶん はやめに うつと、せつめい されます。

モデルけいさんでは、いしょくを うけた 人の しんぞうは 1分に 94かい ほど、けんこうな 人は 70かい ほどでした。さは、およそ 24かいです[1]。これは、モデルけいさんで ブレーキの はたらきを くらべた かずです。この さが、ブレーキの おおきさを あらわして いると かんがえられて います。

移植心の安静時心拍

心臓移植を受けた人の心臓は、神経がつながっていない状態になります。迷走神経のブレーキが届かないため、安静時の心拍は高めになると説明されます[2]。臨床では、毎分90〜110回ほどの値が報告されています[1]。

モデル計算が示した24回の差

洞結節のモデル計算では、移植を受けた人の安静時心拍は約93.8回、健康な人は約69.5回と予測されました。差はおよそ24回、比にすると約1.35倍です[1]。研究者らは、この差は迷走神経の支配がなくなったことによると結論しました。

これは実測の平均ではなくモデルの予測値で、ドナーの年齢など別の要因を指摘する研究もあります。それでも、ブレーキの有無で心拍がこれだけ変わりうるという、一つの目安になります。では、ブレーキがゆるむ瞬間は、実際の体で見られるのでしょうか。

心臓移植を受けた人の心臓は、神経がつながっていない状態になる。この心臓では迷走神経のブレーキが届かないため、安静時の心拍が高めになる。臨床では毎分90〜110回ほどの値が報告されている[1]。

洞結節のモデル計算では、移植を受けた人の安静時心拍は約93.8回、健康な人は約69.5回と予測され、差はおよそ24回、比にして約1.35倍だった。著者らは、この上昇は迷走神経の支配がなくなったことだけで説明できると結論している[1]。

数字の読み方には限りがある。93.8と69.5はモデルの予測値であって、実測の平均ではない。ドナーの年齢など、別の要因を指摘する研究もある。それでもこの比較は、先の薬の実験とは別の道から、同じ方向を示している。薬でブレーキをふさいだ健康な人の安静時心拍が100〜112回の範囲に入り、それが移植を受けた人の値と同じ範囲だったからである[2]。

ここまでは、安静時の「ブレーキがあるときと、ないとき」の比較だった。では、ブレーキがゆるむ瞬間、つまり「ある」から「ない」へ変わるときの心拍は、どう動くのか。

4. はしりだした しゅんかん、さいしょに おきる ことは?

4. 走りだした直後の最初の上昇は、ブレーキが外れて起きる

4. 運動開始の最初の上昇:薬でブレーキをふさぐと消えた

はしりだす とき、しんぞうは すぐに はやく なります。さいしょの ひと あがりは、めいそうしんけいの ブレーキが きゅうに ゆるむ ことで おきる と かんがえられて います[2]。

ある けんきゅうで、ブレーキの はたらきを くすりで ふさいで みました。すると、9人の うち 7人で、うんどうを はじめた ときの さいしょの ひと あがりが 0に なりました[2]。さいしょの ひと あがりには、ブレーキが はずれる ことが ふかく かかわって いる ようです。

ただし、これは「うんどうを はじめる とき」の けんきゅうです。きんちょうの ときに おなじ はかり かたを した けんきゅうでは ありません。きんちょうの ときも おなじ じゅんばんで おきるかは、まだ「かんがえられて いる」と いう ところまでです。

運動を始めた直後の心拍

運動を始めると、心拍はまず上がります。この最初の段階は、迷走神経のはたらきが急に下がる、つまりブレーキが外れることで起きると考えられています[2]。

薬でブレーキをふさぐと

ある実験では、迷走神経のはたらきをアトロピンでふさぎました。すると、運動開始直後の最初の心拍の上昇は、9人中7人で0になりました[2]。最初のひと上がりには、ブレーキが外れることが深く関わっているようです。

緊張の場面とは別の測定

この研究は運動の開始を調べたもので、緊張や不安の場面で同じ測定をしたものではありません。緊張でも同じ順番で起きるかは、「考えられる」にとどまります。アクセルのほうは、どんな速さで届くのでしょうか。

運動の開始直後、心拍はまず上がる。この最初の段階は、迷走神経の活動が急に下がる、すなわちブレーキが外れることで起きると考えられている[2]。

この見方を支えるのが、アトロピンで迷走神経をふさいだ実験だ。ふさぐと、運動開始直後の最初の心拍の上昇は、9人中7人で0になった。ところが、心臓が1分間に送り出す血液の量(心拍出量)の立ち上がりは、ふさいでも影響を受けなかった[2]。つまり、心拍数の最初の上昇だけが迷走神経に頼っていて、血液の送り出しの立ち上がりは別の仕組みで起きていると読める。

注意したいのは、これが運動開始の研究であることだ。緊張や不安の場面で、ブレーキが外れる順番を直接測った研究は、今回の資料には含まれていない。緊張でも同じ順番かどうかは、「考えられる」止まりにしておく。残るアクセルの側は、どのくらいの速さで届くのか。

5. アクセルは、どのくらい はやく とどくの?

5. アクセルには、速い道と遅い道がある

5. 交感神経の速い経路と、ホルモンの遅い経路

からだが きけんや ふあんを かんじると、のうの「へんとうたい」と いう ところが、「こうかんしんけい」と いう アクセルの しんけいを はたらかせます。こうかんしんけいが はたらくと、ふくじんと いう ところから アドレナリンが ちの なかに でます[3]。

この みちは、しんけいの はたらきなので、とても はやいのが とくちょうです。ミリびょうと いう、1びょうの 千ぶんの 1 の たんいで はたらくと せつめい されます。

もうひとつの みちは、ホルモンです。のうから ホルモンが でて ちに のり、からだの きかんに とどくまで、3〜4分 かかります[3]。

1915ねんには、キャノンと いう 人が、つよい こうふんの とき、こうかんしんけいと アドレナリンが どうぶつを「たたかうか にげるか」の じゅんびに させると まとめました[4]。

はやい みちと おそい みちが あるので、ドキドキは すぐに はじまり、すこし あとも つづく のだと かんがえる ことが できます。ただし、これは しんぞうの はやさを はかって たしかめた ものでは ありません。

速い神経の道

ストレスや不安を感じると、脳の扁桃体が交感神経を働かせます。すると、神経の反応によって、副腎髄質からアドレナリンが血液中に出ます。この神経の反応は、ミリ秒(1000分の1秒)単位の短い時間で起きるとされます[3]。

遅いホルモンの道

もう1本の道は、視床下部から下垂体、副腎皮質へ続くホルモンの連なりです。この道は、血液にのって体の器官に届き始めるまでに3〜4分かかります[3]。

「闘うか逃げるか」

1915年、ウォルター・キャノンは、強い興奮のとき、交感神経とアドレナリンが動物を「闘うか逃げるか」の緊急反応に備えさせると整理しました[4]。

ここから、ドキドキがすぐ始まることは、速い神経の道があることとつながって考えられます。遅いホルモンの道は、少しあとから届きます。ただし、ドキドキがどれだけ続くかを測った研究ではありません。また「ミリ秒」は神経が伝わる速さで、心拍が上がるまでの時間を測った値ではありません。

ブレーキがゆるむのと同時に、アクセル側はどう動くのか。ストレスを感じると、扁桃体が交感神経系を働かせ、副腎髄質からアドレナリンが血液中に出る。この神経を介した反応は、ミリ秒単位の短い時間で始まる。ホルモンのもう1本の道、視床下部から下垂体、副腎皮質へ続く経路は、血流にのって体の器官に届き始めるまでに3〜4分かかる[3]。

この速い道と遅い道を、1915年にウォルター・キャノンが「闘うか逃げるか」の緊急反応という枠で整理した。彼は、強い興奮のとき、交感神経とアドレナリンが動物に闘争か逃走かの備えをさせると述べた[4]。

この2つの時間差から、ドキドキがすぐ始まることと、遅い経路が少しあとから加わることを考えることはできる。ただし、この資料は心拍の持続を測ったものではない。また、「ミリ秒」は神経の反応が伝わる速さの話で、心拍が上がるまでの時間を測った値ではない。時間差と心拍の関係は、資料から読みとった見通しにとどめる。ここまでの話を、緊張の場面にあてはめると、どこまで言えるのか。

6. きんちょうの ときに、どこまで わかって いるの?

6. 緊張のドキドキについて、どこまで分かっているか

6. 緊張の場面に当てはめたとき、根拠はどこまで届くか

ここまでの はなしを、まとめて みます。わかって いる ことは、3つです。

ひとつめは、しんぞうは しんけいが なくても 百かい ぜんごで うてる こと。ふたつめは、ふだんは めいそうしんけいの ブレーキが かかって いる こと。みっつめは、はしりだす ときの さいしょの ひと あがりは、ブレーキが ゆるむ ことで おきると かんがえられて いる こと[2]です。

わかって いない ことも あります。きんちょうの とき、ブレーキが さきに ゆるんで、あとから アクセルが くわわるのか、どうか。それを ちょくせつ はかった けんきゅうは、ここでは つかって いません。

だから、「きんちょうの ドキドキは、アクセルと ブレーキの りょうほうが かかわって いるかも しれない」と いう ところまでが、いまの いいかたです。

分かっていること

心臓は神経がなくても自分でリズムを刻み、その速さは毎分100回前後とされること、安静時には迷走神経のブレーキがかかっていること、運動の開始直後の最初の上昇はブレーキが外れることで起きると考えられていること。ここまでは、研究で支えられています[1][2]。

まだ言い切れないこと

緊張や不安の場面で、迷走神経のブレーキが先に外れ、交感神経が後から加わる順番を直接測った研究は、今回の資料にはありません。運動の研究から「緊張でも同じ順番かもしれない」と考える段階です。

そのため、題名の問いへの答えは、「速くなる命令だけでなく、ふだんかかっているブレーキがゆるむことも関わると考えられる」までです。ドキドキを強く感じるしくみそのものは、この記事では扱っていません。

ここまでの根拠を、緊張の場面にあてはめて整理する。確かなのは3点ある。心臓は神経がなくても自分でリズムを刻み、その速さは毎分100回前後とされること、安静時には迷走神経のブレーキがかかっていること、運動開始直後の最初の心拍上昇は迷走神経の活動低下で起きると考えられていること[1][2]。

だが、3点とも安静時や運動開始の研究であり、緊張や不安の場面で、迷走神経の活動低下が先に起き、交感神経の活動が後から加わる順番を直接測った研究は、今回の資料に含まれていない。運動開始の実験を緊張にあてはめるのは、1つの研究を別の場面に延ばす推論にあたる。

したがって、題名の問いへの答えは、「交感神経のアクセルに加えて、迷走神経のブレーキがゆるむことも関わると考えられる」までである。ドキドキを強く感じる感覚そのものの仕組みは、この記事の資料の範囲を超える。

7. 手首の みゃくで、ためして みよう

7. 足踏みの前後で、脈拍を数えて比べる

7. 足踏みの前後で脈拍を比べ、原典への入口を見る

いすに すわって、1分 じっと します。右の 手首の 親指がわに、左手の 人さしゆびと なかゆびを そっと あてると、みゃくが わかります。15びょう かぞえて、4ばいに します。これが、じっと している ときの 1分の みゃくの かずです。

つぎに、その 場で 30びょう、あしぶみを します。おわったら すぐ すわって、また 15びょう かぞえて、4ばいに します。

みゃくの かずは、どれくらい ふえたでしょう。ノートに 書いて おきましょう。ぐあいが わるく なったら、すぐに やめて ください。からだの ぐあいが わるい 日は、おうちの 人に そうだん してから にして ください。

ブレーキが ゆるむ さいしょの ひと あがりは、ほんの すうびょうで おきるので、おうちでは わけて はかれません。それでも、あしぶみの あとの かずには、ブレーキと アクセルの りょうほうの はたらきが はいって います。ただし、この かずからは、ブレーキと アクセルの どちらが どれだけ ふえたかは、わけられません。

脈拍を数えて比べる

椅子に座って1分ほど静かにします。右手首の親指側に、左手の人さし指と中指をそっと当てると脈が分かります。15秒数えて4倍します。これが安静時の脈拍のめやすです。

次に、その場で30秒足踏みをして、終わったらすぐ座り、また15秒数えて4倍します。ノートに2つの数字を書いて比べてみましょう。体調が悪いときは行わず、気分が悪くなったらすぐやめてください。

家では、迷走神経のブレーキが外れる最初の数秒間までは分けられません。それでも、足踏みのあとの数字には、ブレーキとアクセルの両方の結果が入っています。

原典を読むなら

安静時の心拍とブレーキの関係は Frontiers in Physiology(2020年)の洞結節モデルの論文、運動開始と迷走神経の実験は European Journal of Applied Physiology(2021年)の論文に書かれています。どちらも英語の論文なので、出典欄から探して、図のタイトルだけでも見てみると、数字の出どころが見えてきます。

家でできる確かめ方として、足踏みの前後の脈拍を比べられる。椅子に座って1分静かにしたあと、手首の脈を15秒数えて4倍し、安静時の目安とする。次に、その場で30秒足踏みをして、終わってすぐ座り、また15秒数えて4倍する。体調がすぐれない日は行わず、気分が悪くなったらすぐやめる。

この方法には限界がある。ブレーキが外れる最初の数秒間は、15秒の計測では分けられない。足踏みのあとの数字は、迷走神経の活動低下と、交感神経などのアクセルの両方の結果を含んでいる。ただし、安静時の数字と比べることで、「ふだんの心拍は、心臓が出せる速さの手前に抑えられている」という説明を、自分の体で眺めることはできる。

原典への入口

洞結節のモデル計算と移植を受けた人の安静時心拍は Frontiers in Physiology(2020年)、運動開始直後の心拍と迷走神経の遮断実験は European Journal of Applied Physiology(2021年)に載っている。どちらも英語の論文であり、出典欄から入手できる。数字の条件(モデルの前提、実験の人数)は原文の方法の節に書かれているので、本稿の数字をうのみにせず、確かめる材料にしてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数値はモデル計算や概数を含み、条件によって幅があります。

  1. Frontiers in Physiology (2020), 心臓移植と洞結節のモデル計算に関する論文 https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2020.579449/full (洞結節の自発リズム、移植心とモデル計算の安静時心拍)
  2. European Journal of Applied Physiology (2021), 運動開始直後の心拍と迷走神経の遮断に関する論文(PMC8505324) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8505324/ (迷走神経のブレーキ、アトロピンによる実験)
  3. OpenStax Behavioral Neuroscience 12.03 (LibreTexts), Neural Mechanisms and Circuitry of the Stress Response https://socialsci.libretexts.org/…/12.03%3A_Neural_Mechanisms_and_Circuitry_of_the_Stress_Response (ストレス反応の速い神経の道と遅いホルモンの道。二次資料)
  4. PMC, ウォルター・キャノンの伝記的解説(PMC1447286) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1447286/ (1915年の「闘うか逃げるか」の整理。二次資料)

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