1. しめきりは だれが きめるの?
1. 締め切りは、書く人ではなく読む人の時間から決まる
1. 締め切りの逆算 ── 届ける時刻から、編集を始める時刻までさかのぼる
新聞の しめきりは、きしゃの つごうでは きまりません。よむ 人の ところへ とどける 時間から、さかのぼって きめて います[1]。
ある 新聞社の れいでは、朝の 新聞の へんしゅうは 14時ごろから はじまります。いんさつを はじめる しめきりは 夜中です[2]。ゆうがたの 新聞なら、おひるごろです。時こくは 会社や こうじょうで ちがいます。
とどける 時間から うしろへ、うしろへと かぞえて いく。それが 新聞の しめきりです。
ところが、しめきりの まぎわに 大きな ニュースが はいる ことも あります。そのときは、記事を さしかえます[1]。では、さしかえが できるのは、いつまでなのでしょう。
新聞の締め切りは、書く側の都合では決まりません。読者に届ける時間から逆算して決められています[1]。
ある新聞社の例では、朝刊の編集は14時ごろに始まり、印刷を始める締め切りは深夜です。夕刊は、正午ごろが締め切りになります[2]。時刻は会社や工場によって違うので、あくまで一例です。
朝刊が深夜まで紙面をいじれるのは、そこから刷って運んでも、販売店への配達時間に間に合うように組まれているからです。家に届ける時刻を先に決めると、輸送、印刷、紙面の確定へとさかのぼって、それぞれの持ち時間が決まっていきます。これが、題名の問いへの答えの骨組みです。
では、締め切りの間際に大きなニュースが入ったらどうなるのでしょうか。その場合は、記事を差し替えます[1]。ただし、差し替えが利くのは、紙面が確定するまでです。
新聞の締め切りは、記者が書き終える時刻ではなく、読者に届ける時刻から逆算して決められている[1]。ある新聞社の例では、印刷開始の締め切りは販売店への配達時間から逆算され、夕刊は正午ごろ、朝刊は深夜になる。朝刊の編集作業自体は14時ごろに始まる[2]。これらの時刻は会社や工場の事情で異なるため、ここでは一例として扱う。
この逆算は、配達の時刻を終点に置き、そこから販売店への輸送、印刷、紙面の確定という順にさかのぼる考え方である。朝刊の締め切りが深夜にあるのは、遅くまで粘る習慣だからではなく、最後まで新しいニュースを入れながらも、配達時間に間に合う限界の位置に線が引かれているからだと読める。
ただし、この線の手前では、紙面は固定されていない。大きなニュースが入れば、記事は差し替えられる[1]。だとすれば、差し替えが利く最後の瞬間はどこか。そこには「降版」という名前がついている。
2. 「こうはん」って なに?
2. 「降版」の合図で、紙面は工場へ送られる
2. 降版 ── 3つのOKで紙面が確定する瞬間
へんしゅうの 人、まちがいを しらべる 人(こうえつ)、まとめ役の 人(デスク)。この 3人の OKが そろうと、ページが きまります。これを 「こうはん」と よびます[2]。
こうはんした ページは、なおせません。わけが あって なおす ときは、おそい 時間に 「はん」を つくりなおすことも あります。きまった ページは、せんようの 回線で、いんさつ こうじょうへ おくられます[2]。
だから、こうはんの まえが、まちがいを なおせる さいごの 時間です。そして こうじょうでは、おくられて きた ページから、すぐに 「はん」が つくられて いきます。
紙面が確定する場面には、名前がついています。「降版」です。ある新聞社の例では、編集記者、校閲記者、出稿デスクのOKがそろうと紙面のデータが確定します。これを降版と呼びます。読みは「こうはん」です[2]。
降版した紙面は、修正できません。必要な場合は、遅い時間に版を作り直すこともあります。確定した紙面は、専用回線で印刷工場に送られます[2]。
つまり新聞には、締め切りの線が重なっています。記事を書いて出す線と、3者のOKがそろって紙面を閉じる線です。後の線を越えたら、その紙面には手が入りません。
では、工場に届いた紙面は、どうやって紙の上に現れるのでしょうか。
紙面の確定は「降版」(読みは「こうはん」)と呼ばれる。ある新聞社の例では、編集記者、校閲記者、出稿デスクのOKがそろうと紙面データが確定し、降版した紙面は修正できない。必要な場合は、遅い時間に版を作り直すこともある。確定した紙面は専用回線で印刷工場へ送信される[2]。
ここで注意したいのは、役割の名前や承認の手順が社によって異なりうることだ。この記事で確かなのは、「複数の担当のOKがそろった時点で紙面が閉じる」「その後は修正できない」「データは回線で工場へ送られる」という3点であり、校閲が何をどこまで確認するかなどの細部は、ここでは立ち入らない。
降版を境に、紙面は編集の仕事から製造の仕事へ渡される。しかも、渡された先の工場では、受信とほぼ同時に版づくりが始まる。降版のあとの待ち時間は、いったいどれほど短いのか。
3. 3ぷんで できる、うすい いたって なに?
3. 紙面を刷る「版」は、約3分でできる
3. 刷版 ── 受信から約3分、鉛の18kgからアルミの330gへ
こうじょうに ページが とどくと、やく 3ぷんで 「はん」が できます。はんは、ページの かたちを うつした、うすい アルミの いたです。レーザーの 光で えがきます[2]。ある こうじょうの れいです。
カラーの ページは、4しょくに わけるので、1ページに つき 4まい。しろくろの ページは 1まいです[2]。
この はん 1まいの おもさは 330グラム。むかし 1985ねんごろまで つかって いた なまりの はんは、18キロ ありました[2]。およそ 55ばいも おもかったのです。
工場に降版した紙面が届くと、刷るための「版」が作られます。ある工場の例では、受信から約3分で、アルミの板にレーザー光で紙面を描いて仕上げます[2]。
カラーの紙面は、墨・藍・紅・黄の4色を重ねて刷るので、1ページにつき版は4枚です。モノクロなら1枚です[2]。
この版は1枚330gです。1985年ごろまで使われていた鉛の版は18kgあり、計算すると約55倍の重さでした[2]。同じ紙面の版でも、持ち上げる重さがまるで違います。
こうして並んだ版が、いよいよ輪転機に取りつけられます。
降版した紙面を受信してから版を出力するまで、ある工場の例では約3分である。紙面はアルミ板にレーザー光で描かれる。カラーは墨・藍・紅・黄の4色で1ページ4枚、モノクロは1枚の版になる[2]。この数字は「ある工場の例」であり、全社共通の値ではない。
版の重さは1枚330gで、1985年ごろまでの鉛版は18kgだった。18000÷330を計算すると約54.5で、およそ55倍になる[2]。つまり、鉛の版を鋳造して運んでいた時代と、レーザーでアルミの板に描く時代では、版を運ぶ重さは大きく変わった。ただし、鉛版の時代の所要時間は今回の資料からは示せないので、時間の差としては比べない。
カラーの紙面が1ページ4枚の版を要するのは、墨・藍・紅・黄の4色を別々の版で重ねるためである。1ページが4枚なら、カラー面が多い日は、版の枚数もそれだけ増える。こうして並んだ版を載せた輪転機は、どれほどの速さで紙を送り出すのか。
4. 1じかんに なんぶ、できるの?
4. 1時間に十数万部を刷る輪転機と、16kmの紙
4. 輪転機 ── 毎時13万〜14万部という実際の速度と、最大16万部という上限
はんが できたら、「りんてんき」という 大きな きかいの 出番です。りんてんきは、1じかんに 13万ぶから 14万ぶの 新聞を いんさつ します[1]。1びょうに すると、36ぶから 39ぶぐらいです。
べつの きかいの しりょうでは、1じかんに さいだい 16万ぶと かかれています[3]。これは きかいの 力の 上の ほうで、毎日 それだけ いんさつ する、という いみでは ありません。
つかう 紙は、大きな ロールです。ある こうじょうでは、いちばん よく つかう ロールが、はば 1.6メートルぐらい、おもさ 1.2トン、ほどくと やく 16キロに なります[2]。小さな くるま 1だいぶんに ちかい おもさです。ただし、くるまに よって ちがいます。
この ロールを、1日に 120ぽんぐらい つかいます。紙が なくなりそうに なると、いんさつを とめずに、じどうで つぎの ロールに つなぎます[2]。
輪転機は、巻き取られた紙のロールから紙を送り出し、広告と合わせて紙面を刷っていきます。印刷速度は、毎時13万〜14万部とされています[1]。1秒に直すと、36〜39部です。
もうひとつ数字があります。三菱重工の新聞用オフセット輪転機は、1時間に最大16万部を刷れるとされ、このときの構成は最大40頁(うちカラー24頁)です[3]。こちらは機械の最大の能力で、先の毎時13万〜14万部とは別の条件の数字です。
これだけの速さで刷るには、紙も大量に要ります。ある工場の例では、最もよく使うロールは幅約1.6m、重さ1.2トン、ほどくと約16kmになり、1日に約120本を使います[2]。紙の厚さは0.06mmです。仮に120本すべてがこのロールなら、つなげた長さは約1900kmです。
ロールの紙がなくなる前の紙継ぎは、印刷を止めずに自動で行われます[2]。止めずにつなぐ仕組みも、速さを保つ工夫のひとつです。
刷り上がった新聞は、どうやって家まで届くのでしょうか。
輪転機の印刷速度は、NIEの説明では毎時13万〜14万部である[1]。1秒あたりに直すと、13万÷3600で約36部、14万÷3600で約39部になる。一方、三菱重工が公表した新聞用オフセット輪転機は、1時間に最大16万部(約44部/秒)を印刷でき、このときの構成は最大40頁(うちカラー24頁)とされている[3]。
この2つは出典も条件も違う数字なので、「13〜14万部が16万部に増える」という話ではない。16万部は機種の最大能力、13〜14万部は新聞製作の説明に出てくる印刷速度であり、実際の紙面の頁数や色数、機械の種類によって変わる。読み方としては、上限と実際の速度を区別して覚えておきたい。
輪転機が止まらずに刷るには、紙を切らさない仕組みも要る。ある工場の例では、最もよく使う巻取紙は、4ページ分の幅約1.6m、重さ1.2トン、ほどくと約16km、厚さ0.06mmで、1日に約120本を使う[2]。120本すべてがこの巻だと仮定すると、16km×120で約1900kmである。ただし、使う巻の幅は一種類ではない。幅の違う巻や、世界大百科事典に長さ6830m弱とある巻とは、数字を同じ条件で並べられないため、ここでは使わない。
紙が尽きるたびに機械を止めれば、毎時十数万部という速度は保てない。そこで、紙継ぎは印刷を止めずに自動で行われる[2]。刷り上がった紙は、次の段階、トラックと販売店へ渡される。
5. できた 新聞は、どうやって 家まで くるの?
5. 夜明け前、トラックと販売店がリレーをつなぐ
5. 梱包から配達まで ── 逆算の終点は、夜明け前の販売店
いんさつが おわった 新聞は、たばに して、いきさきを きめて、トラックに のせます。トラックは、新聞の はんばいてんまで はこびます[1]。
夜が あける まえから、はんばいてんでは、くばる じゅんびが はじまります。雨の 日は、ぬれない ように くふうして とどけます[1]。
夜中に きまった ページが、いんさつ こうじょう、トラック、はんばいてん、くばる 人を へて、朝、家に つく。ぜんぶ、「とどける 時間」から うしろむきに かぞえて、つないで あるのです。
刷り上がった新聞は、梱包され、行き先を指定して、トラックで新聞販売店に運ばれます[1]。
夜明け前から、販売店では配達の準備が始まります。雨の日は、濡れないように工夫して届けられます[1]。
最初の問いに戻ると、深夜に決めた紙面が朝に間に合うのは、締め切りが「届ける時刻」から逆算されているからでした。降版のあと、版づくりに約3分、輪転機は毎時十数万部、トラックと販売店がそれを受け取る。1本ずつが、次の持ち時間に合わせて組まれています。
刷り上がった新聞は梱包され、行き先を指定してトラックで新聞販売店へ運ばれる。販売店は夜明け前から配達の準備を始め、雨の日は濡れないよう工夫して届ける[1]。ここが、逆算の終点である。
資料で言えるのは、輸送先が販売店であり、配達の準備が夜明け前から始まる、という範囲である。
題名の問いに、ここで答えを置く。深夜の降版でも朝に間に合うのは、締め切りが配達の時刻から逆算して決められ、版づくり約3分、毎時十数万部の印刷、トラックでの輸送と、各工程がその持ち時間に合わせて組まれているからである。降版した紙面を修正できないのも、この連続した流れを止めないためだと読める。
6. 家の 新聞を、2つ くらべて みよう
6. 同じ日の新聞を、2つ見比べてみると
6. 部数の変化と、同じ日付で異なる紙面 ── 確かめ方
日本新聞きょうかいの しりょうでは、2025年10月の 日本の 新聞の はっこう 部数は、やく 2487万ぶ です。いちばん おおかった 1997年の、やく 46パーセントです[4]。あさと ゆうがたの セットは、1ぶと かぞえて います。
新聞には、その ちいきの 人に むけた 「ちほうばん」の ページも あります。おなじ 日づけでも、ちいきに よって、さしかわる ページが あります[5]。
やって みよう。家に 新聞が あれば、日づけと、ちほうの ことが のっている ページを さがして みよう。としょかんの 人に たずねると、ほかの ちいきの、おなじ 日の 新聞を 見せて もらえる ことが あります。2つを くらべると、どこが ちがうか 見つかります。
日本新聞協会の資料では、2025年10月の日本の新聞の総発行部数は24,868,122部です。最も多かった1997年の53,765,074部の約46%にあたります[4]。朝夕刊セットは1部として数えます。セット紙を朝刊・夕刊別に数えた場合は28,244,091部です。
新聞には、特定の地方の読者向けにその地域の記事を特集した「地方版」もあります。同じ日付でも、地域ごとに差し替わる面があります[5]。
家に新聞があれば、日付と地方版の面を見つけて、図書館で別の地域の同じ日付の新聞と見比べてみると、どの面が共通で、どの面が差し替わっているかが見えます。図書館では、司書に所蔵している新聞をたずねるのが近道です。
日本新聞協会の資料では、2025年10月の総発行部数は24,868,122部、ピークの1997年は53,765,074部で、24,868,122÷53,765,074を計算すると約0.46、つまりピークの約46%である。朝夕刊セットは1部として数える。セット紙を朝刊・夕刊別に数えた場合は28,244,091部になり、セット数より約14%多い[4]。
部数はピークの半分近くまで減った。それでも、輪転機や夜明け前のトラックは、今も新聞を届けるために動いている。
もう一つの確かめ方は、紙面そのものを見ることだ。国立国会図書館のリサーチ・ナビは、「地方版」を、特定の地方の読者を対象にその地域に関する記事を特集した面と説明している[5]。同じ日付の新聞でも、地域によって差し替わる面があるということで、版の数字(早版・最終版など)の意味は社ごとに違い、この記事では扱わない。
自分で確かめるなら、家の新聞の地方版の面と、図書館で見られる別の地域の同じ日付の新聞を見比べるとよい。どの面が共通で、どの面が差し替わっているか。その違いは、1日の紙面づくりの流れと、地域ごとの届け方を考える手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った数字や説明の出どころです。時刻や重さなどは、特に断りがない限り、ある新聞社・ある工場の例です。
- NIE(教育に新聞を)「新聞ができるまで」 https://nie.jp/newspaper/howto/ (締め切りの逆算、輪転機の印刷速度、輸送と配達)
- 高速オフセット「新聞ができるまで【編集~用紙搬入編】」 https://www.kousoku-offset.co.jp/magazine/column-newspapermade1/ (締め切りの時刻の例、降版、刷版、巻取紙)
- 三菱重工 プレスインフォメーション http://www.mhi.com/jp/news/1403255513.html (輪転機の最大能力)
- 日本新聞協会「新聞の発行部数と世帯数の推移」 https://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php (発行部数)
- 国立国会図書館 リサーチ・ナビ「新聞」 https://ndlsearch.ndl.go.jp/en/rnavi/newspapers/post_627 (地方版の説明)
なおした ところ
更新履歴
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