1. きいろく なる しんぶんしと、ならない かみ
1. 同じ場所に置いても、黄色くなるのは新聞紙だけ
1. 新聞紙と上質紙の差 ── 原料パルプの違い
ある しりょうには、こんな はなしが のって います。しんぶんしと、デパートの つつみがみを おなじ ばしょに おいて おいたのに、いつのまにか しんぶんしの ほうだけ きいろく なって いた、と[2]。
ふたつの かみは、どこが ちがうのでしょう。かぎは、かみを つくる もとに なる 「パルプ」に ありそうです。
2. きの なかの 「のり」が のこって いる
2. 木の中の「のり」が、新聞紙には多く残っている
2. リグニンと機械パルプ・化学パルプ
かみの ざいりょうは、きです。きの なかには、せんいと せんいを くっつける のりの ような ものが あります。これを 「りぐにん」と いいます[1]。
「きかいパルプ」は、きを そのまま すりつぶして つくります。だから りぐにんが たくさん のこります。「かがくパルプ」は、くすりを つかって りぐにんを ほとんど とります[2]。
しんぶんしには、きかいパルプが おおく つかわれて います[3]。ただし、ぜんぶが きかいパルプだと いう わけでは なく、かがくパルプも まぜて いると せつめいする しりょうも あります[2]。
3. ひかりと くうきが、いろを つくる
3. 光と酸素が、リグニンを色のつく物質に変える
3. 光酸化の機構 ── 3段階とキノン型生成物
りぐにんは、ひかりに あたると かわって いきます。とくに、たいようの ひかりに ふくまれる 「しがいせん」に よわい ようです[5]。
ひかりや くうきなどの えいきょうで、りぐにんを ふくむ かみの せいぶんが かわって、いろの ついた ものが できると せつめいされて います[4]。きいろは、かみが よごれたのでは なく、かみの なかで できた いろです。
色のもとになる部分が光を受ける
総説論文では、黄ばみは大まかに三つの段階で進むと整理されています。まず、色のもとになりうる部分が光のエネルギーを吸収します。次に「フェノキシラジカル」という不安定な中間の物質ができます。そこから、目に見える光を吸収する、つまり色のついた物質ができます[4]。
主役はキノンの仲間
リグニンの中のフェノール性の部分などが酸化され、主にキノンという種類の色のついた物質になることが、機械パルプが黄ばむ主な理由とされています。屋内の紙では、紫外線のうち波長がおよそ330〜385ナノメートルの光で、黄ばみが最も大きくなると予想されているそうです[4]。
ただし、この仕組みは複数の経路が同時に働く複雑なものとされ、キノンだけで黄色の全部を説明できるとは限りません[4]。
4. ひかりは、きいろくも しろくも する
4. 紫外線は黄ばませ、目に見える光は白くする
4. 紫外線による黄変と可視光による漂白
ふしぎな ことに、ひかりの しゅるいに よって、はたらきが ちがうと いわれます。しがいせんの あたりは、かみを きいろく しやすく、めに みえる ひかりでは、いろが うすく なる ことも あると、けんきゅうを まとめた ろんぶんに かかれて います[4]。
かみの いろは、この ふたつの せめぎあいの けっかで きまるのかも しれません。ただ、これは しりょうの せつめいで、おうちで ためす ものでは ありません。
5. くらい ところに おいても、かわりつづける?
5. 暗い所へ移しても、防ぎきれない
5. 暗所での進行と、恒久的な防止法の不在
ひかりで はじまった かがくの へんかは、ひかりを とめても、くらい ところに うつしても、つづくと せつめいする しりょうが あります[5]。
また、りぐにんを ふくむ かみの ひかりによる へんしょくを、ずっと ふせぐ、やすい ほうほうは ないと されて います[4]。きかいパルプの かみは しんぶんの ような みじかい あいだ つかう ものに むいて いると かんがえられて います[4]。
6. かみが もろく なるのは、べつの はなし
6. 紙がもろくなるのは、黄ばみとは別の劣化
6. 酸性紙劣化との区別
ふるい かみは、きいろく なるだけで なく、ぼろぼろに なる ことも あります。でも、これは べつの げんいんの はなしです。
さんが つよい かみでは、せんいの もとに なる ぶぶんの つながりが、さんに きられて、もろく なると されます[5]。きいろく なる りゆうと、まぜないで おきましょう。
酸で繊維が切れる
酸性の紙では、セルロースの分子同士のつながりが酸によって切られ、紙がもろくなります[5]。この記事で主に扱う黄ばみはリグニンが光で変わる現象で、酸によるセルロースの劣化は別の現象です。
ですから、新聞紙の黄ばみを酸性紙の劣化だけで説明すると、不正確になります。なお、今の日本の新聞用紙が酸性か中性かは、今回の資料では分かりませんでした。
酸性紙では、酸の攻撃でセルロース分子間の結合が切断され、紙が脆くなる[5]。本メモで主に扱う黄変(リグニンの光による変化)とは別の劣化機構で、新聞紙の黄変の主因を酸性紙劣化とするのは不正確である。
現在の日本の新聞用紙のpHや酸性紙の割合は、参照した資料からは確認できず、断定しない。
7. じぶんでも しらべて みたく なったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
おうちで、ひかりの あとを みてみよう
ふるい しんぶんしを、おうちの 人に きいて、つかって いい ものを えらびましょう。かみの はんぶんを あつがみで おおい、ひあたりの いい ところに クリップで とめて おきます。ひなたに おいて いる あいだ、ものが おちたり、ひが あたりすぎたり しない ばしょを えらびます。
しばらく おいたら、あつがみを はずして、おおって いた ところと くらべて みます。かわるまでの じかんは、ばしょや てんきで ちがいます。かわるか どうかは、やって みないと わかりません。かわらなくても、ふしぎな けっかです。
今日できること:紙の半分にふたをする
使ってよい古新聞を1枚選び、半分を厚紙で覆って、日の当たる場所にクリップで留めておきます。数週間たったら厚紙を外し、覆っていた部分と比べます。窓辺の日光の当たり方は家によって違うので、変化が出るまでの時間は決まりません。変わらなくても、それが今回の結果です。
もう一つ:折り目の内側と外側
長く置かれた新聞の折り目の内側と外側の色を見比べてみましょう。色が違ったなら、光の当たり方と関係があるのかを、自分の言葉で予想してみてください。
今日できること
使ってよい古新聞の半分を厚紙で覆い、日の当たる場所に数週間置いて、覆った部分との色の差を観察する。条件(置き場所、日照の量)を記録すれば、結果を比べやすい。差が出るとは限らず、出なくても結果の一つである。
資料を読むなら
日本語の出典[1][2][5]の解説が読みやすい。なお、光による黄変の機構は複雑で、ここで紹介した3段階は要約にすぎない。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。[1][2][5]は解説記事、[3]は保存資料の試験報告、[4]は総説論文です。
- 紙への道 コラム(92) 紙はなぜ黄ばむのですか? https://dtp-bbs.com/road-to-the-paper/column/column-092.html (リグニンの役割、新聞の配合)
- ちょきぱたん 紙の保存性 黄ばみやすさ http://chokipatan.com/HTML/YP030200800.html (機械パルプと化学パルプ、新聞紙と上質紙の例)
- 資料保存器材 リグニン含有紙に対する漂白効果試験(Ⅰ) https://www.hozon.co.jp/report/post_8589 (新聞用紙と機械パルプ、自然暴露の試験)
- Paulsson & Parkås, Review: Light-induced yellowing of lignocellulosic pulps, BioResources 7(4) https://bioresources.cnr.ncsu.edu/ (黄変の3段階、紫外線と可視光、防止法)
- Conservation for Identity 紙の劣化・損傷要因 https://www.cfid.co.jp/conservation/degradation/ (紫外線への敏感さ、暗所での進行、酸性紙の劣化)
なおした ところ
更新履歴
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