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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

しんぶんしは、どうして きいろく なるの?

新聞紙はなぜ黄色くなるのか ── 木の中の「接着剤」が光で色づくまで

新聞紙の黄変 ── 機械パルプのリグニンと光酸化、キノン型生成物、酸性紙劣化との区別

分野:技術

おしいれの おくから、むかしの しんぶんしが でて きました。ひらいて みると、まっしろだった はずの かみが、きいろく なって います。

おなじ ばしょに おいて いても、ちがう かみは しろい ままの ことが あります。ちがいは、かみの もとの ざいりょうに ありそうです。いっしょに みて いきましょう。

押し入れの奥から出てきた古い新聞紙は、たいてい黄色っぽくなっています。同じ家にあった白い紙は、それほど変わっていないことも多いのではないでしょうか。

この違いは、紙の原料に残った「木の中の接着剤」で説明されています。それが光や空気と出会って色をつくるまでの道すじを、複数の資料でたどります。

新聞紙が黄変するのは、機械パルプに多く残るリグニンが、光や酸素、熱の影響で変化するためと説明される[1][3]。総説では、主因は紫外線によってリグニン由来の部分が酸化され、キノン型の光生成物ができることとされる[4]。

このメモでは、新聞紙と上質紙の差、光による変色の仕組みと「紫外線は黄変、可視光は漂白」という二面性、酸性紙のもろさとの区別を、業界解説・保存資料・総説論文を突き合わせて整理する。

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1. きいろく なる しんぶんしと、ならない かみ

1. 同じ場所に置いても、黄色くなるのは新聞紙だけ

1. 新聞紙と上質紙の差 ── 原料パルプの違い

ある しりょうには、こんな はなしが のって います。しんぶんしと、デパートの つつみがみを おなじ ばしょに おいて おいたのに、いつのまにか しんぶんしの ほうだけ きいろく なって いた、と[2]。

ふたつの かみは、どこが ちがうのでしょう。かぎは、かみを つくる もとに なる 「パルプ」に ありそうです。

ある資料に紹介された場面

紙の保存性を解説した資料には、新聞紙とデパートの包装紙(上質紙)を同じ場所に置いていたのに、新聞紙だけが黄色くなっていた、という例が紹介されています[2]。

違いは原料にある

同じ場所にあっても差が出るなら、置き場所より紙そのものに理由がありそうです。資料では、その手がかりを紙の原料であるパルプの種類に求めています[2][1]。

保存性の解説には、新聞紙とデパートの包装紙(上質紙)を同じ場所に置いていたところ、新聞紙だけが黄変していたという例が挙げられている[2]。一例の紹介であり、あらゆる条件で同じ結果になるという意味ではない。

保存資料の分野でも、新聞用紙には機械パルプ紙が多用されてきたと説明され、リグニンを多く含む紙は黄変・茶褐色化の原因になるとされる[3]。次章でパルプの種類の差を見る。

2. きの なかの 「のり」が のこって いる

2. 木の中の「のり」が、新聞紙には多く残っている

2. リグニンと機械パルプ・化学パルプ

かみの ざいりょうは、きです。きの なかには、せんいと せんいを くっつける のりの ような ものが あります。これを 「りぐにん」と いいます[1]。

「きかいパルプ」は、きを そのまま すりつぶして つくります。だから りぐにんが たくさん のこります。「かがくパルプ」は、くすりを つかって りぐにんを ほとんど とります[2]。

しんぶんしには、きかいパルプが おおく つかわれて います[3]。ただし、ぜんぶが きかいパルプだと いう わけでは なく、かがくパルプも まぜて いると せつめいする しりょうも あります[2]。

リグニンは木の接着剤

木の中で、繊維と繊維をくっつけているのがリグニンです。光や空気中の酸素、熱の影響を受けると、このリグニンが変化して、紙が黄ばむと説明されています[1]。

すりつぶすか、薬品で溶かすか

機械パルプは、木材をそのまますりつぶして作るので、リグニンが多く残ります。化学パルプは薬品でリグニンをほとんど取り除くため、上質紙のように化学パルプを原料にした紙は色あせしにくいとされています[2]。

新聞用紙には機械パルプが多く使われてきたと説明されています[3]。ただ、別の資料は新聞を「化学パルプと機械パルプの混合」としていて[1]、その割合は、今回見た資料には出ていません。

リグニンは木の中で繊維同士を接着する役割を持つ[1]。機械パルプは木材を機械的に砕いて作るためリグニンを多く含み、化学パルプは薬品処理でリグニンをほとんど除くため変色しにくい[2]。

新聞用紙には機械パルプ紙が多用されてきたとする資料がある[3]一方、新聞は化学パルプと機械パルプの混合とする資料もある[1]。新聞が100%機械パルプだとは言えない。

3. ひかりと くうきが、いろを つくる

3. 光と酸素が、リグニンを色のつく物質に変える

3. 光酸化の機構 ── 3段階とキノン型生成物

りぐにんは、ひかりに あたると かわって いきます。とくに、たいようの ひかりに ふくまれる 「しがいせん」に よわい ようです[5]。

ひかりや くうきなどの えいきょうで、りぐにんを ふくむ かみの せいぶんが かわって、いろの ついた ものが できると せつめいされて います[4]。きいろは、かみが よごれたのでは なく、かみの なかで できた いろです。

色のもとになる部分が光を受ける

総説論文では、黄ばみは大まかに三つの段階で進むと整理されています。まず、色のもとになりうる部分が光のエネルギーを吸収します。次に「フェノキシラジカル」という不安定な中間の物質ができます。そこから、目に見える光を吸収する、つまり色のついた物質ができます[4]。

主役はキノンの仲間

リグニンの中のフェノール性の部分などが酸化され、主にキノンという種類の色のついた物質になることが、機械パルプが黄ばむ主な理由とされています。屋内の紙では、紫外線のうち波長がおよそ330〜385ナノメートルの光で、黄ばみが最も大きくなると予想されているそうです[4]。

ただし、この仕組みは複数の経路が同時に働く複雑なものとされ、キノンだけで黄色の全部を説明できるとは限りません[4]。

Paulsson & Parkås の総説は、機械パルプ等に含まれる主な発色団がリグニン由来の部分であり、遊離のフェノール性基やヒドロキノン・カテコールが酸化されて、主にキノン型の光生成物になることが黄変の主因だとする。最も有害なのは波長330〜385 nmの紫外線とされる[4]。

機構は、①発色団によるエネルギー吸収、②中間体としてのフェノキシラジカルの生成、③可視光を吸収する発色団の生成、という3段階で記述される[4]。ただし経路は複数が併存し、この図式は単純化である。別の解説でも、機械パルプ中のリグニンは340 nm付近の光に敏感で、紫外線で容易に変色するとされる[5]。

4. ひかりは、きいろくも しろくも する

4. 紫外線は黄ばませ、目に見える光は白くする

4. 紫外線による黄変と可視光による漂白

ふしぎな ことに、ひかりの しゅるいに よって、はたらきが ちがうと いわれます。しがいせんの あたりは、かみを きいろく しやすく、めに みえる ひかりでは、いろが うすく なる ことも あると、けんきゅうを まとめた ろんぶんに かかれて います[4]。

かみの いろは、この ふたつの せめぎあいの けっかで きまるのかも しれません。ただ、これは しりょうの せつめいで、おうちで ためす ものでは ありません。

同じ光でも波長で逆になる

同じ総説は、紫外線の領域は黄変を起こしやすく、目に見える光の領域では漂白、つまり色が薄くなる場合もあると述べています[4]。ただし、その境目や結果は紙の種類などで変わります。黄色くしやすい光と、白くする場合がある光が、太陽の光の中に同居していることになります。

実際の紙では

保存資料の分野の試験では、自然光にさらした紙で、一部を除いて全体として明度が下がり、黄変が確認されたと報告されています[3]。この試験の紙はリグニンを含む紙で、新聞紙そのものの結果ではありません。漂白は家庭で試すものではなく、研究の話として読んでください。

同レビューは、紫外線域は黄変を起こしやすく、可視光域では漂白が起きる場合もあると述べる。境目や結果は紙の種類・処理で変わる[4]。リグニン含有紙を自然暴露させた保存資料側の試験では、一部を除き全体として明度低下と黄変が確認された[3]。この試験の対象は「リグニン含有紙」であり、新聞用紙そのものの結果ではない。

実際の紙の色は、黄変と漂白の差し引きを含む複雑な結果であり得るが、その配分は今回の資料からは読み取れない。家庭での漂白は安全性・再現性が確かめられておらず、本メモでは扱わない。

5. くらい ところに おいても、かわりつづける?

5. 暗い所へ移しても、防ぎきれない

5. 暗所での進行と、恒久的な防止法の不在

ひかりで はじまった かがくの へんかは、ひかりを とめても、くらい ところに うつしても、つづくと せつめいする しりょうが あります[5]。

また、りぐにんを ふくむ かみの ひかりによる へんしょくを、ずっと ふせぐ、やすい ほうほうは ないと されて います[4]。きかいパルプの かみは しんぶんの ような みじかい あいだ つかう ものに むいて いると かんがえられて います[4]。

光をやめても止まらない

保存の解説では、光による化学変化は、照らすのをやめても、暗い場所に移しても続くとされています[5]。日なたから引き出しへ移せば、すぐ止まるとは限らないようです。

安い対策はない

総説は、リグニンを含む紙の光による変色を恒久的に防ぐ、費用に見合った処理はないと述べます[4]。そのため機械パルプ系の紙は、新聞のように短い期間使う用途に向くと考えられます。

光による化学変化は、照射をやめても、暗所に移しても進行するとされる[5]。また総説は、リグニンを含む紙の光復色(photoreversion)を恒久的に阻止できる費用対効果の高い処理は存在しないと述べる[4]。

この二点から、機械パルプ系の紙は新聞のような短期利用に向くと整理できる。これは総説の趣旨を筆者がまとめた解釈であり、新聞社の設計方針を示す資料は今回参照していない。

6. かみが もろく なるのは、べつの はなし

6. 紙がもろくなるのは、黄ばみとは別の劣化

6. 酸性紙劣化との区別

ふるい かみは、きいろく なるだけで なく、ぼろぼろに なる ことも あります。でも、これは べつの げんいんの はなしです。

さんが つよい かみでは、せんいの もとに なる ぶぶんの つながりが、さんに きられて、もろく なると されます[5]。きいろく なる りゆうと、まぜないで おきましょう。

酸で繊維が切れる

酸性の紙では、セルロースの分子同士のつながりが酸によって切られ、紙がもろくなります[5]。この記事で主に扱う黄ばみはリグニンが光で変わる現象で、酸によるセルロースの劣化は別の現象です。

ですから、新聞紙の黄ばみを酸性紙の劣化だけで説明すると、不正確になります。なお、今の日本の新聞用紙が酸性か中性かは、今回の資料では分かりませんでした。

酸性紙では、酸の攻撃でセルロース分子間の結合が切断され、紙が脆くなる[5]。本メモで主に扱う黄変(リグニンの光による変化)とは別の劣化機構で、新聞紙の黄変の主因を酸性紙劣化とするのは不正確である。

現在の日本の新聞用紙のpHや酸性紙の割合は、参照した資料からは確認できず、断定しない。

7. じぶんでも しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

おうちで、ひかりの あとを みてみよう

ふるい しんぶんしを、おうちの 人に きいて、つかって いい ものを えらびましょう。かみの はんぶんを あつがみで おおい、ひあたりの いい ところに クリップで とめて おきます。ひなたに おいて いる あいだ、ものが おちたり、ひが あたりすぎたり しない ばしょを えらびます。

しばらく おいたら、あつがみを はずして、おおって いた ところと くらべて みます。かわるまでの じかんは、ばしょや てんきで ちがいます。かわるか どうかは、やって みないと わかりません。かわらなくても、ふしぎな けっかです。

今日できること:紙の半分にふたをする

使ってよい古新聞を1枚選び、半分を厚紙で覆って、日の当たる場所にクリップで留めておきます。数週間たったら厚紙を外し、覆っていた部分と比べます。窓辺の日光の当たり方は家によって違うので、変化が出るまでの時間は決まりません。変わらなくても、それが今回の結果です。

もう一つ:折り目の内側と外側

長く置かれた新聞の折り目の内側と外側の色を見比べてみましょう。色が違ったなら、光の当たり方と関係があるのかを、自分の言葉で予想してみてください。

今日できること

使ってよい古新聞の半分を厚紙で覆い、日の当たる場所に数週間置いて、覆った部分との色の差を観察する。条件(置き場所、日照の量)を記録すれば、結果を比べやすい。差が出るとは限らず、出なくても結果の一つである。

資料を読むなら

日本語の出典[1][2][5]の解説が読みやすい。なお、光による黄変の機構は複雑で、ここで紹介した3段階は要約にすぎない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。[1][2][5]は解説記事、[3]は保存資料の試験報告、[4]は総説論文です。

  1. 紙への道 コラム(92) 紙はなぜ黄ばむのですか? https://dtp-bbs.com/road-to-the-paper/column/column-092.html (リグニンの役割、新聞の配合)
  2. ちょきぱたん 紙の保存性 黄ばみやすさ http://chokipatan.com/HTML/YP030200800.html (機械パルプと化学パルプ、新聞紙と上質紙の例)
  3. 資料保存器材 リグニン含有紙に対する漂白効果試験(Ⅰ) https://www.hozon.co.jp/report/post_8589 (新聞用紙と機械パルプ、自然暴露の試験)
  4. Paulsson & Parkås, Review: Light-induced yellowing of lignocellulosic pulps, BioResources 7(4) https://bioresources.cnr.ncsu.edu/ (黄変の3段階、紫外線と可視光、防止法)
  5. Conservation for Identity 紙の劣化・損傷要因 https://www.cfid.co.jp/conservation/degradation/ (紫外線への敏感さ、暗所での進行、酸性紙の劣化)

なおした ところ

更新履歴

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