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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ノーベルしょうの こうほは だれが どうやって えらぶの?

ノーベル賞には立候補できない ── 招待制の推薦と、50年後に読める推薦の記録

ノーベル賞(物理学・化学)の推薦と選考 ── 招待制、委員会、アカデミーの投票、50年の秘密保持

分野:歴史・文化

ノーベルしょうは、自分で「えらんで ください」と 手を あげる ことが できません。しかも、だれが すいせん されたのかは、50年の あいだ ひみつです[1]。

では、だれが すいせんして、どうやって えらぶのでしょう。この メモでは、9月に 出す 手紙から 10月の 発表までの 1年と、50年の ひみつの わけが 分かります。

ノーベル賞は、自分から名乗り出ることも、推薦状を出すこともできない賞です。招待された人だけが推薦でき、しかも「だれが推薦されたか」は50年間公にされません[1]。

では、候補はだれの目に留まり、どんな順で絞られていくのでしょうか。物理学賞と化学賞の流れをもとに、9月の招待から翌年10月の発表まで、そして50年たつと何が見えるようになるのかが分かります。

ノーベル賞の物理学賞・化学賞は、自薦も、招待されていない人からの推薦も禁じられている。推薦・議論・評価の情報は50年間秘密にされ、野口英世が候補になっていたことも、その期間が過ぎてから明らかになった[1][3]。

推薦はだれに頼まれ、いつ締め切られ、だれが最後に決めるのか。50年の秘密は、あとから何を見えるようにするのか。スウェーデン王立科学アカデミーの説明と、公開データベース、受賞の傾向を分析した記事から、その答えが分かる。

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1. じぶんで 名前を 出せるの?

1. 立候補できない賞で、推薦するのはだれか

1. 推薦は招待制 ── 自薦と、招待されていない人の推薦は禁じられている

運動会の 代表なら、「わたしが やりたい」と 手を あげる ことが できます。ノーベルしょうは、ちがいます。

スウェーデンの 王立科学アカデミーは、毎年、世界中の 大学の 先生など、何千人もの 学者に 手紙を 送ります。「しょうに ふさわしい 人を 教えてください」と たのむ ための 手紙です[1]。

手紙が とどくのは、えらばれた 人だけ です。自分を すいせんする ことは、きんし されて います。手紙を もらって いない 人が すいせんする ことも、できません[1]。

だから 始まりは、「この 人の 研究は すごい」と 気づいた 学者が 名前を 書く ことです。ここで はなすのは、物理と 化学の しょうの ばあいです。

ノーベル賞の候補になるには、本人が申し出る道はありません。物理学賞と化学賞の場合、推薦の依頼状はスウェーデン王立科学アカデミーから、世界中の大学教授などの学者、数千人に送られます。招待制です[1]。

自分で自分を推薦することも、招待されていない人が推薦を送ることも禁じられています[1]。「だれでも推薦できる」わけではありません。

推薦できる人の例は、アカデミーの会員、物理学賞の委員会の委員、過去の物理学賞の受賞者、物理系の大学教授、アカデミーが依頼した学者などです[2]。すでに研究の世界で力を認められた人が、次の世代の仕事を見つけて名前を挙げる形になっています。

ここで話すのは物理学賞と化学賞の流れで、平和賞や文学賞は推薦できる人の範囲がちがいます。では、依頼状はいつ届き、発表までどれくらいかかるのでしょうか。

物理学賞・化学賞の推薦依頼は、アカデミーが選んだ世界各地の大学教授らおよそ数千人に送られる招待制だ[1]。自薦と、招待のない推薦は禁じられているので、候補になるかどうかは、研究を知る他の学者が名前を挙げるかにかかっている。

推薦できる人の範囲は、物理学賞の場合、アカデミー会員、物理学賞委員会の委員、過去の物理学賞受賞者、物理学系の終身教授、アカデミーが依頼した学者などと示されている[2]。財団の案内にある例で、年によって細部が変わることもある。

では、依頼を受けた学者が推薦する側に回ったあと、手続きはどんな順で進むのか。なお平和賞・文学賞は推薦者の範囲が異なるので、この記事は物理学賞・化学賞に絞る。

2. 9月の 手紙から 発表まで どれくらい?

2. 9月に出した依頼状は、翌年10月の発表につながる

2. 9月の依頼から翌年10月初めの発表まで、1年あまりの時間割

手紙が 出されるのは、毎年 9月です。ただし この 手紙は、来年の しょうの ための もの です[1]。

手紙を 受け取った 学者は、すいせんの 文を 書いて 送ります。しめきりは、れいねん 1月の おわりごろ だそうです[2]。

そこから 委員会が 調べて、決まるのは 次の 年の 10月の はじめ。えらばれた 人に れんらくした すぐあとに、記者会見で 発表されます[1]。

つまり、手紙が 出てから 発表まで、1年と すこし かかります。ニュースで 見る 発表は、1年より 前に 始まった 長い 道の 終わりです。

10月のニュースで見る発表は、ほぼ1年前の9月に動き出した手続きの終点です。委員会は9月に、翌年の賞のための推薦依頼を送ります[1]。同じ年の発表の依頼ではないので、注意が要ります。

依頼を受けた学者は推薦書を書き、物理学賞・化学賞では例年、翌年1月31日までに委員会へ届ける決まりです[2]。そこから10月の発表まで、審査の時間が続きます。

決定は翌年10月の初めです。受賞者に連絡した直後に、記者会見で発表されます[1]。9月の依頼から数えると1年と1か月ほど、推薦の締め切りからでも9か月ほどの時間が、審査にあてられている計算です。

では、その9か月に、委員会は何をしているのでしょうか。

手続きは、9月に委員会が翌年の賞のための推薦依頼を送ることで始まる[1]。したがって、ある年の10月の発表は、前年9月の依頼から数えて約1年1か月の流れの終点にあたる。

推薦書の締め切りは、物理学賞・化学賞では例年1月31日と案内される[2]。締め切りから10月の発表までは9か月ほどあり、この期間が審査にあてられている。

決定は翌年10月の初めで、受賞者への連絡の直後に記者会見で発表される[1]。発表の瞬間だけが報じられるので、背後にある1年がかりの準備は見えにくい。では、その9か月に、委員会は具体的に何を積み重ねているのか。

3. 5人ぐらいの 委員会は 1年で 何を するの?

3. 少人数の委員会が、1年かけて候補を絞る

3. 委員会の仕事と、アカデミーの会員による最終投票

とどいた すいせんを 読むのは、物理と 化学、それぞれの 委員会です。ふつう 5人ぐらいで、アカデミーの 会員が 中心に なります[1]。足りない ところは、外の せんもんかが 力を かす ことも あります。

委員会は 1年に 10回ほど、1日 かけて かいぎを 開きます。委員の にんきは 3年、委員会には 9年までという きまりが あります[1]。

委員会が 考えた あんは、アカデミーの 部会で 話しあわれます。さいごは、かいぎに 出た スウェーデンに すむ 会員が とうひょうして 決めます[1]。

ひとつの しょうを 分けあえるのは、多くても 3人 までです[1]。

推薦書が集まると、物理学賞と化学賞はそれぞれ別の委員会が審査します。委員会はアカデミー会員を中心に、通常5人ほどで、必要に応じて外部の専門家が加わります[1]。「通常」というとおり、人数は固定ではありません。

この委員会は年に10回ほど、丸1日の会議を開くと説明されています。委員の任期は3年で、委員会には最長9年という上限もあります[1]。少人数が何度も集まって、1年分の推薦書を読み込むことになります。

委員会がまとめた提案は、アカデミーの該当する部会で議論されます。そのうえで、会議に出席したスウェーデン在住の会員が投票し、受賞者が決まります[1]。1つの賞を受け取れるのは最大3人までです[1]。

決まった瞬間に名前が公になるのは受賞者だけです。では、選ばれなかった推薦は、このあとどうなるのでしょうか。

推薦書は、物理学賞・化学賞それぞれのノーベル委員会が審査する。委員会はアカデミー会員を中心とした通常5人と、必要に応じて加わる外部専門家で構成され、委員の任期は3年、委員会の任期には最長9年の上限がある[1]。人数は「通常」の目安であり、固定ではない。

年に約10回、丸1日の会議を開くので、推薦書を読む作業は1年の中に何度も分散される[1]。

委員会の提案は、アカデミーの該当部会で議論され、会議に出席したスウェーデン在住の会員(外国人会員を含む)が投票して決める[1]。少人数の委員会が絞り込み、より大きな集団が最終判断を下す二段構えになっている。1つの賞を分け合えるのは最大3人だ[1]。

では、この過程で上がった名前は、受賞者以外どうなるのか。それが次の問いだ。

4. なぜ 名前を 50年も かくすの?

4. 候補の名前は50年たつまで明かされない

4. 50年の秘密保持と、公開されたあとに見える推薦

すいせんの 中身や、委員会の 話しあいの きろくは、50年の あいだ ひみつです[1]。50年 たつと、アカデミーの かがくしの センターで、しらべる 人が しりょうを 見られます[1]。

日本の のぐち ひでよ さんが こうほに なって いた ことも、50年 あとに 分かりました。名前が あがった 回数は、しりょうに よって ちがいます[3]。

ノーベルざいだんの サイトには、50年 すぎた すいせんを、だれが だれを 何年に すいせんしたか さがせる データベースも あります[5]。

むかしの 学者たちが 手紙に 何を 書いたのか、ずっと あとの 人が 読める。それは、長い 時間を かけて とどく 手紙のようです。

推薦、議論、評価、その他の資料は、50年間秘密にされます[1]。ということは、その年に推薦された人の名前は、受賞のニュースが出ても、50年間だれも公式には確かめられません。

50年たつと、アカデミーの科学史センターで、研究者が資料を見られるようになります[1]。野口英世が候補になっていたことも、この秘密の期間が過ぎてから明らかになった例として知られています。日本の記事は、大正時代に候補になっていたことが今は明らかになっていると書いています[3]。

一方、財団の公開データベースでは、50年を過ぎた推薦について、だれがだれを何年にどの分野で推薦したかを検索できます。野口英世の推薦の回数や年は、資料によって記載が異なります[5]。くわしい年と回数は、財団の原データで見てみる価値があります。

学者たちが50年前に何を書いたかが、あとから読めること。それは、時間をかけて評価をたしかめる道を開いています。では、当時の委員会はどんな研究を好んだのでしょうか。

推薦・議論・評価に関する情報は50年間機密とされ、50年後にアカデミー科学史センターで研究者が閲覧できる[1]。したがって、現役の候補者の名前は、受賞発表の時点でも公式には確かめられない。

この制度が、のちに事実を見せた例が野口英世だ。日本語の記事は、大正時代に候補になったことが「現在は明らかになっている」と述べる[3]。財団のデータベースにも野口の推薦記録があり[5]、年や回数は資料によって記載が異なる。正確な年と回数は、財団の原データで確かめるべき数字だ。

財団の公開データベースは、50年を過ぎた推薦について、だれが誰をどの分野で何年に推薦したかを検索できる[5]。秘密は永久ではなく、時間が過ぎれば検証できる資料に変わる設計になっている。

では、こうして見えるようになった記録から、委員会の傾向は読み取れるのか。

5. 委員会に すきな 研究は あったの?

5. 選ばれやすい研究に、かたよりはあったのか

5. 受賞の傾向 ── 基礎・実験が選ばれやすかったという分析

ひみつだった きろくを 読むと、むかしの しょうの かたよりを しらべる ことが できます。

物理学の しょうの れきしを 調べた 記事では、すぐに 役に 立つ 研究より ものごとの もとを 調べる 研究が、りろんより じっけんが、えらばれやすかったと ぶんせきされて います[4]。

アインシュタインは、何度も すいせん された と つたえられて います。1921年に もらったのは、もっと 有名な 仕事では なく、「こうでんこうか」と いう 研究でした[4]。

ただし、これは むかしの 話です。今も 同じとは かぎりません。

推薦書と議論が50年後に読めるようになると、委員会の考え方の癖が見えてきます。物理学賞の歴史を調べた記事は、基礎研究は応用研究に、実験は理論に、原子・原子核は天文学や地球物理学に、それぞれ選ばれやすかったと分析しています[4]。

よく知られる例が、アインシュタインです。何度も推薦されたと伝えられ、受賞は1921年でした。理由は光電効果で、より有名な別の仕事ではありませんでした[4]。

推薦の回数が多いことと、すぐ受賞できることは同じではありません。推薦の多さだけでは決まらない、という見方ができます。

ただし、この傾向は過去の分析であり、今の委員会が同じ基準かどうかは別の問題です。では、この仕組みを知った私たちは、毎年の発表をどう見ればよいのでしょうか。

50年後に公開された記録を材料に、物理学賞の歴史を分析した記事がある。それによれば、基礎研究が応用研究に、実験が理論に、原子・原子核が天文学や地球物理学に、それぞれ勝つ傾向が続いていた[4]。

アインシュタインは1921年に光電効果で受賞した。同じ記事は、これが彼のより有名な業績ではなかったと述べる[4]。推薦の回数は、ここでは数字を挙げない。

注意すべきは、これが歴史的傾向の分析であり、今も同じとは限らない点だ。委員の任期が3年、委員会に最長9年の上限があるという仕組み[1]は、時代とともに委員が入れかわり、考え方も動いてきたことと矛盾しない。ただし、そう読めるというだけで、資料が因果を述べているわけではない。

以上を、実際に確かめられるのはどこまでか。それが最後の問いだ。

6. 50年あとを 計算して みよう

6. 発表のニュースを、50年後の目で見る

6. 原典にあたる ── 公式ページで確かめられること、確かめにくいこと

自分の 年れいに 50を たして みましょう。10さいなら 60さい です。

2026年の 発表の すいせんの 中身が 見られるように なるのは、50年の ひみつが 終わる 2076年 いこうです。今の 10さいが 60さいに なる ころです。

ニュースで しょうを もらう 人の 名前を 聞いたら、その 人を すいせんした 学者たちの 手紙は、まだ だれにも 読まれて いない、と 思って 聞いて みて ください。

今年の10月に発表される人への推薦は、前年9月に始まった手続きの中で、例年1月末までに届いていたことになります。ニュースを見ながら、時間をさかのぼって考えられます。

もう1つ、自分の年齢に50を足してみてください。たとえば12歳なら62歳です。2026年に発表された年の推薦の記録は、50年の秘密期間が終わる2076年以降に見られるようになります。そのとき、今の自分が何歳になっているかを数えてみましょう。

それまで名前が見えないのは、少し不思議な気もします。発表のニュースのうしろには、9月の依頼状から始まる長い道があり、その記録は50年後に読める日を待っています。

このメモの数字のうち、50年の秘密、毎年9月の依頼、翌年10月初めの決定、委員会の構成、アカデミー会員による投票は、スウェーデン王立科学アカデミーの説明ページで確かめられる[1]。1月31日の締め切りと、推薦できる人の範囲は、ノーベル財団の推薦案内ページにある[2]。

50年過ぎた推薦の記録は、財団の公開データベースで検索できる[5]。野口英世の回数のように、日本語の記事とデータベースで数が合わない例は、原データにあたると差の理由が分かる。家にある紙に、依頼(9月)・推薦書の締め切り(1月)・審査・発表(10月)を並べ、2026年の発表からさかのぼって何年何月かを書き込むと、1年あまりの流れと、記録が見られる年(2076年以降)が一目で分かる。

残る問いが2つある。1つ目は、ここで扱わなかった平和賞・文学賞では、推薦者の範囲や手続きがどう違うのか。2つ目は、秘密保持が評価の公平さにどう働くのか。後者は、資料がそう述べているわけではないので、読み手が自分で考える問題として残しておく。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモで使った資料です。

  1. スウェーデン王立科学アカデミー「The nomination and decision process」 https://www.kva.se/en/Prizes/nobel-Prizes/the-nomination-and-decision-process-nobel (招待制、秘密50年、委員会、投票)
  2. ノーベル財団「Nobel Prize Nomination and selection of physics laureates」 https://www.nobelprize.org/nomination/physics/ (締め切り、推薦できる人の範囲)
  3. 現代ビジネス記事(野口英世と候補の公表) https://gendai.media/articles/-/139193 (候補になった年)
  4. Physics World「How the Nobel Prize was won」 https://physicsworld.com/a/how-the-nobel-prize-was-won/ (受賞の傾向、アインシュタイン)
  5. ノーベル財団「Nobel Prize Nomination Archive」 https://www.nobelprize.org/nomination/archive/show.php?id=13378 (50年を過ぎた推薦の検索)

なおした ところ

更新履歴

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