1. 海の そこの 岩は、どうして わかいの?
1. 大陸の岩は40億年、海底の岩は2億年より若い
1. 約40億年と約2億年 ── 大陸の最古の岩と海洋底の年齢差
地球の 大陸の 一部には、40おく年ぐらい まえに できた 岩が のこって います[8]。
ところが、海の そこの 岩は、ふつう 2おく年より わかいのです[8]。海そのものは 大陸の 岩より あとに できたわけでは ありません。それなのに、海の そこの 岩だけ わかいのは ふしぎです。
ただし、「2おく年」は、ふるい ほうの 海の そこの おおよその めやすです。もっと ふるい 海の そこも、すこしだけ あります。
2. 海の まん中には、ながい 山が ならんで いる
2. 海の真ん中を走る、長さ約65,000kmの山脈
2. 中央海嶺 ── 玄武岩の噴火で新しい海底が生まれる場所
海の 中には、りく地より ずっと ながい 山の つらなりが あります。海嶺と いいます。ぜんぶで 6まん5000キロメートルほど あり、山の ほとんどは 水の 中です[1]。
ここでは、海の そこが 左と 右に はなれて いきます。あいた すきまから、とけた 岩が あがって きて、かたまり、あたらしい 海の そこに なります[1]。
はなれる はやさは、1年に 2〜5センチメートルほど。大西洋の まん中では、そのくらいです[1]。すこしずつでも、1おく年 つづけば、2000〜5000キロメートルぶんに なります。
海の真ん中には、中央海嶺と呼ばれる山脈が、全長約65,000kmにわたって続いています。山の90%以上は水面下にあり、地球でもっとも長い山脈とされます[1]。
ここは、プレートが左右に離れていく境目です。プレートが離れると、すき間へ溶けた岩石が上がってきて、玄武岩の噴火が起こり、新しい海底ができます[1]。
離れる速さは場所によって違います。大西洋中央海嶺は年に2〜5cm、東太平洋海膨は年に6〜16cmです[1]。年2〜5cmなら、1億年で2,000〜5,000km分になる計算です。ゆっくりな海嶺は地形が急で凸凹になり、速い海嶺はなだらかで幅広くなります[1]。
では、海底が生まれて広がっているという考えは、どうやって確かめられたのでしょうか。
3. 海の そこが うごくと、どうして わかったの?
3. 岩の年齢と磁気の縞が、海底の動きを教えた
3. 年代の勾配と磁気の縞 ── ヘスの仮説を支えた2つの観測
海の そこの 岩の 年れいを しらべると、海嶺に ちかい 岩ほど わかく、とおい 岩ほど ふるいと わかりました[2]。
もうひとつの てがかりは、磁石の ちからです。海の そこの 岩は、ほんの すこし 磁石の せいしつを もって います。その むきが、海嶺と ならんで、しましまに かわって いたのです[2]。
これは、海の そこが 海嶺で うまれ、左右に ひろがる とすれば、うまく せつめいが つきます。ただし 本当は、1つの しらべで すぐ きまったわけでは ありません。いくつもの しらべが あわさって、かんがえが 力を もちました。
岩は、海嶺から離れるほど古い
海底の岩石を調べると、海嶺の頂上付近では非常に若く、離れるにつれて古くなっていました[2]。もし海底が海嶺で生まれて左右へ動くなら、こうなると考えられます。
磁気の縞模様
岩石には、できたときの地球の磁気の向きが記録されます。調べてみると、海嶺のてっぺんの最新の岩は、今と同じ向きでした。そこから海嶺と平行に、向きが入れ替わる縞がいくつも並んでいました[2]。1950年代、航空用の磁力計を転用して調べたときに、この不思議な磁気の変化が気づかれたといいます[2]。
ヴァインとマシューズが、この縞模様を海底の広がりで説明しました。それが約1年前に発表されていたヘスのモデルを裏づける、大事な論拠になりました[2]。
ヘスの船旅
ヘスは1962年、海嶺でマグマが上がって新しい海洋地殻ができ、運ばれていくという考えを論文で発表しました。船の乗組員の協力を得て、太平洋を航行しながら音で水深を測り、海底を調べていた人です[3]。
海洋底の岩石の年代は、海嶺の頂上付近で若く、離れるほど古くなる[2]。これは、海嶺で生まれた海洋地殻が両側へ運ばれるという予測と合う。
もう一つの決め手が磁気異常の縞である。海嶺頂上の最新の岩は現在と同じ極性(正帯磁)で、海嶺と平行に極性が反転する縞が交互に並ぶ[2]。1950年代に航空用磁力計を転用した調査で、奇妙な磁気変化が気づかれた。ヴァイン(Fred Vine)とマシューズ(Drummond Matthews)による説明は、ヘス(Harry Hess)のモデルの有力な論拠になった[2]。
ヘスは1962年の論文「History of Ocean Basins」で、海嶺でマグマが上がって新しい海洋地殻ができ、運ばれていくという考えを示した。船の乗組員の協力を得て、太平洋を航行しながら音響測深で海底を調べていた[3]。この考えは、1960年代初めにヘスとディーツらが整えた海洋底拡大説として知られる[4]。年代と磁気の縞は別々の観測だが、両方が同じ説明で整合したことが、説を強くした。
生まれた海底が広がり続けるなら、地球が膨らむのでなければ、どこかで消えているはずだ。
4. 海の そこは、さいごに どこへ いくの?
4. 生まれた海底は、深い谷「海溝」へ沈んでいく
4. 海溝 ── 海洋地殻が沈み込む場所と、その深さ
海の そこは、ひろがって いった さきで、海溝と いう ふかい たにへ しずみます[2]。海溝は、ほそ長く、ふかさが 6000メートルより ふかい ところが おおい 地形です[5]。
いちばん ふかい 場所は、マリアナ海溝の チャレンジャー海えんで、およそ 1万935メートル。ここでは 太平洋の そこが、となりの 板の したへ もぐって います[6]。
日本の ちかくにも、日本海溝や いず・おがさわら海溝が あります。どちらも 太平洋の そこが しずみこむ ところです[7]。
海嶺から離れた海洋地殻は、やがて太平洋のふちにある深く細い谷、海溝へ降りていきます[2]。海溝は、急な斜面に囲まれた細長い海底のくぼみで、多くが深さ6,000m以上、長さは数百〜数千kmです[5]。
いちばん深いのは、マリアナ海溝の南端にあるチャレンジャー海淵で、NOAAによると約10,935mです。太平洋プレートが、向こう側のプレートの下へ沈み込む場所にあたります[6]。最深部の数値は測り直されることがあり、資料によって少し違います。
日本の近くにも、日本海溝や伊豆・小笠原海溝があります。どちらも太平洋プレートが沈み込む境目です[7]。
こうして、海底は生まれて、広がって、沈みます。では、この流れは海底の年齢に何をもたらすのでしょうか。
5. だから 海の そこは わかい。いちばん ふるい 海の そこは?
5. 海底が若い理由と、いま分かっている最古の海底
5. 海洋底が若い理由 ── 更新と沈み込み、最古の海洋地殻の候補
海の そこは、海嶺で うまれ、海溝で しずみます。海の そこの ふるい ぶぶんは しずみこんで なくなるので、いま のこって いる 海の そこの 岩は、わかい ものが おおく なります[10]。
ただ、ふるい 海の そこも あります。2おく年ぐらい まえの ものが、大西洋の ふちや 西がわの 太平洋に あり、海嶺から とおい ところです。地中海の ひがしには、2おく8000万年ぐらい まえの ところも あります[8]。
さらに、地中海の ひがしの 海の そこは、3おく4000万年ぐらい まえの ものかも しれない という けんきゅうが あります[9]。あくまで「かもしれない」です。海の そこの 年れいは、これからも かきかえられる かもしれません。
海嶺で生まれ、海溝でマントルに沈む。これを繰り返すので、海底は常に更新され、海底の古い部分が沈み込んで失われるので、今残る海底の岩は若いものが多くなります[4][10]。海底が大陸より若いのは、この更新のためです。大陸の岩は、沈みこまずに残りやすいからです。
とはいえ、古い海底がまったく残らないわけではありません。約2億年前のものが北大西洋の縁と北西太平洋にあり、海嶺から遠く離れています。地中海東部には、約2億8千万年前の海底の報告もあります[8]。
地中海東部のヘロドトス海盆では、磁気の縞模様の解析から、海洋地殻が約3億4千万年前のものである可能性が示されました。研究によって年代の幅があり、古代のテチス海の名残かもしれないといわれます[9][10]。「可能性がある」段階の話ですが、海底の最古の記録は、これからも書きかえられるかもしれません。
海洋地殻は海嶺で生まれ、海溝で沈み込んでマントルへ戻る。この更新のため、ふつうの海洋地殻はほとんどが約2億年より若く、海洋底の古い部分は沈み込んで失われる[4][10]。大陸地殻の岩が約40億年前まで残るのと対照的だ。
例外的に古い海底もある。約2億年前の海洋地殻が北大西洋縁辺と北西太平洋に残り、海嶺から遠い。地中海東部には約2億8千万年前の海洋地殻の報告もある[8]。「約2億年」はふつうの海洋底の年齢の目安であって、最古の値ではない。
さらに古い候補が、同じ地中海東部のヘロドトス海盆だ。磁気縞が斜めのパターンを示すことから、この海洋地殻は約3億4千万年前(研究により315〜365百万年の幅)の可能性がある、とNature Geoscienceの論文は報告した。古代テチス海の名残かもしれない[9][10]。断定ではなく、推定年代である点に注意したい。
6. 地図帳で、海の そこの 山と たにを さがそう
6. 地図帳で、海嶺と海溝を探してみよう
6. 出口 ── 海底地形図で確かめる、資料の読みどころ
おうちに ある 地図帳の、世界の 地図を ひらいて みましょう。海の ところに、そこの かたちが いろで かいて ある ページが あれば、さがせます。
まず、大西洋の まん中を たてに はしる、ほそ長い 山の すじを さがします。それが 海嶺です。つぎに、太平洋の ふちで、とくに ふかい 色の ところを さがします。海溝です。
見つけたら、生まれる 場所と しずむ 場所が、どのくらい はなれて いるか、ゆびで なぞって みましょう。
家にある地図帳の世界地図で、海の部分に海底の地形が色分けされているページを開いてみてください。
大西洋の真ん中を縦に走る細長い山の筋が海嶺、太平洋の縁にある特に濃い色の筋が海溝です。見つけたら、生まれる場所と沈む場所を指でなぞり、その間の距離を地図の縮尺から見積もってみましょう。
ほかの海の海嶺や海溝も、地図帳で探してみましょう。見つけた場所の名前が、本や図鑑で調べるきっかけになります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:NOAA、USGS、環境省などの公的機関の資料と、辞典、学術研究の紹介記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- NOAA Ocean Exploration「What is the mid-ocean ridge?」。https://oceanexplorer.noaa.gov/facts/mid-ocean-ridge.html (中央海嶺の長さ、海底が生まれる仕組み、拡大速度について)
- USGS「This Dynamic Earth: Developing the theory」。https://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/developing.html (岩の年代、磁気の縞模様、海溝への沈み込みについて)
- USGS「This Dynamic Earth: Harry Hammond Hess」。https://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/HHH.html (ヘスの論文と海底調査について)
- コトバンク「海洋底拡大説」(世界大百科事典ほか)。https://kotobank.jp/word/海洋底拡大説 (海洋底拡大説の内容と提唱者について。辞典)
- コトバンク「海溝」(デジタル大辞泉・世界大百科事典)。https://kotobank.jp/word/海溝 (海溝の定義と大きさについて。辞典)
- NOAA National Ocean Service「How deep is the ocean?」。https://oceanservice.noaa.gov/facts/oceandepth.html (チャレンジャー海淵の深さについて)
- 環境省 生物多様性センター 海域生物多様性(海底地形)。https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/kaiiki/kaitei/303.html (日本近海の海溝について)
- Earth Observatory of Singapore「Where do we find oldest continental rocks and oldest seafloor」。https://www.earthobservatory.sg/faq-on-earth-sciences/where-do-we-find-oldest-continental-rocks-and-oldest-seafloor (大陸と海底の年齢の比較について)
- Nature Asia「地中海東部ヘロドトス海盆の海洋地殻」(Nature Geoscience掲載研究の紹介)。https://www.natureasia.com/ja-jp/earth-env/research/10906 (最古の海洋地殻の候補について)
- Yale Environment 360「Oldest ocean crust Herodotus Basin 340 million years」。https://e360.yale.edu/digest/oldest_ocean_crust_herodotus_basin_340_million_years (海洋地殻が若い理由と最古の例について)
なおした ところ
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