このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

じぶんの 声を 録音ろくおんして きくと、どうして へんに きこえるの?

録音した自分の声はなぜ違って聞こえるのか ── 2つの道を通る音と、それだけでは説明しきれない話

自分の声の聞こえ方 ── 気導音と骨導音、録音との差、「低く聞こえる」説の限界

分野:からだ

じぶんの 声を 録音ろくおんして きいたら、「えっ、これが わたし?」と おもった ことは ありませんか。

まわりの 人は、まいにち その 声を きいて います。じぶんだけが、ちがう 声を きいて いるのかも しれません。そのわけを たどります。

スマートフォンで自分の声を録ってみて、「こんな声だったのか」と驚いた人は多いと思います。友だちや家族は、毎日その声を聞いているはずなのに、本人だけが初めて聞いたような気分になります。

話している最中の自分には、どんな音が届いているのでしょうか。東京大学の解説[1]から、2つの研究まで、順に見ていきます。

録音した自分の声に違和感を覚えるのは、多くの人に共通する経験である。東京大学の解説[1]は、これを音の伝わる経路の違いで説明する。

その説明の骨組みを確認したうえで、骨導の効き方を測った2010年の実験[2]、骨伝導ヘッドセットを使った2023年の研究[3]、「低く聞こえる」説と合わない調査[4]を突き合わせる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 録音ろくおんの 声に、どうして「えっ」と なるの?

1. 「えっ、これが私の声?」から始まる疑問

1. 録音への違和感という、身近な現象

ふしぎな ことです。じぶんの 声は、話して いる あいだ ずっと きいて います。それなのに、録音ろくおんの 声は 知らない 人の 声のように きこえます。

友だちに 「その 声、いつもの 声だよ」と いわれても、なっとく しにくいのです。

ここでは、この「えっ」の わけを、しらべて わかって いる ことから 見て いきます。

録音を再生して、思っていたのと違う声が流れてきて戸惑う。多くの人に覚えのある経験でしょう。しかも、友だちに「いつもの声だよ」と言われると、かえって落ち着かなくなります。

気になった人は、東京大学が公開している解説[1]が読みやすいので、あとで開いてみてください。

録音した自分の声が別人のように聞こえる、という経験は広く知られている。同じ声を毎日聞いているはずの家族や友人には、「いつもの声」に聞こえているのだから、違和感には、自分が声を聞くときの経路の違いが関わっている。

以下、東京大学の解説[1]を骨組みに、実験系の論文[2][3][4]と突き合わせて整理する。

2. 音は、ふたつの 道を とおって くる

2. 耳に届く2つの道 ── 気導音と骨導音

2. 音の伝達経路 ── 気導音と骨導音

音が 耳に とどく 道は、ふたつ あります。ひとつは、空気の ふるえが 耳の おくの 鼓膜こまくに つたわる 道です。これを「気導きどう」の 音と いいます。

もうひとつは、骨ほねの ふるえが つたわる 道です。「骨導こつどう」の 音と いいます[1]。

じぶんの 声を 話して いる ときは、ふたつが まざった 音を きいて います。録音ろくおんには、おもに 空気を とおる 音が はいります[1]。

音が耳に届く道すじは、2つあります。1つは、空気の振動が鼓膜に伝わる「気導音」です。もう1つは、骨の振動が伝わる「骨導音」です[1]。

ふだん自分の声を聞くときは、この両方が混ざって聞こえています。ところが録音には、おもに空気を伝わった気導音が入ります[1]。

録音が「変」に聞こえる理由の骨組みは、この差だと説明されています。

東京大学の解説[1]によれば、音が聴覚に届く経路は2つある。空気の振動が鼓膜に伝わる経路を通る「気導音」と、骨の振動が伝わる経路を通る「骨導音」である。自分が発声しているときは両者が混ざって聞こえ、録音には主に気導音が入る。

経路の細部について、骨導成分は口の中から頭蓋骨を通って直接内耳の蝸牛に届き、気導成分は口から出て外耳道を通る、という整理が論文で紹介されている[3]。ただしこの経路の記述は概説的なもので、本稿では原論文までは確認していない。

3. ほかの 人が きく 声は、どっち?

3. ほかの人が聞いているのは、録音と同じ種類の音

3. 他者が聞く声と録音の関係

では、友だちや かぞくが きいて いる 声は、どちらの 音でしょうか。

それは、空気を つたわる 音です。録音ろくおんの 声と おなじ 気導きどうの 音だと、東京大学の せつめいでは のべて います[1]。

つまり、まわりの 人が いつも きいて いる 声に、録音ろくおんの 声は ちかいのです。じぶんだけが、骨ほねの ひびきの ついた 声を きいて います。

ただし、マイクや スピーカーの ちがいも あるので、まったく おなじとは いえません。

ここが、いちばん意外なところです。他人が聞いている私たちの声も、空気を伝わる気導音で、録音された音と同じ種類のものだと説明されています[1]。

つまり、自分だけが骨の響きが加わった声を聞いていて、周りの人は、録音の声に近い声をずっと聞いてきたことになります。「自分の声」は、本人にだけ、少し違う姿で聞こえているのです。

ただし、「同じ気導音」というのは、伝わる経路の話です。マイクや再生機器による違いは、また別の話になります。

同じ解説は、他人が聞いている私たちの声も気導音であり、録音された音と同じである、と述べている[1]。ここでの「同じ」は、気導音という経路の種類が同じという意味であって、マイクや再生機器を含めて波形まで一致するとまでは主張されていない。

結果として、自分の声に骨導成分が加わっているのは本人だけであり、他者と録音がいわば同じ側に立つ。これが「録音が変」という違和感の構造である。

4. ほねの 道を とおると、どう かわるの?

4. 骨を通ると、声はどう変わるのか

4. 骨導成分の周波数特性 ── 「低音だけ」ではない

ほねを つたわる 音は、声に どんな ちがいを つけるのでしょうか。

ある 研究では、「ひくい 音を とおしやすい」ような はたらきを すると かんがえられて います[3]。

でも、「ほねの 音は ひくい 音だけ」と きめるのは まだ 早いようです。スウェーデンの 研究では、10この 音の まとまり(音素おんそ)を しらべました。骨ほねの 音が 空気の 音より つよく はたらいたのは、多くの 音で 「1000〜2000ヘルツ」の あたりでした[2]。

ヘルツは、音の 高さを あらわす たんいです。数が 大きいほど 高い 音です。ほねの 音の ようすは、どの 音を だすかでも かわります。

骨導成分は、声をどう変えるのでしょうか。2023年の研究[3]は、骨伝導は音の低い成分を通しやすい、いわばローパスフィルターのように働くと想定されている、と紹介しています。

「骨を通る音は低い音」という説明を、そのまま覚えた人もいるかもしれません。しかしスウェーデンの研究[2]では、10個の音(音素)を調べ、自分の声のうち骨導成分が気導成分より大きく働いたのは、多くの音で1〜2キロヘルツ(1000〜2000Hz)の範囲でした。

骨導と気導の相対的な大きさは、周波数や、発音する音によって変わります。「骨導は低音だけ」と単純に言うのは、この実験からは難しそうです。

なお、人間に聞こえる周波数はおよそ20〜20,000Hzといわれ、人の耳は低音に対する感度がよくない、とも説明されています[1]。ただし、これを骨導の話と直接つなぐには材料が足りません。

骨導成分の性質について、Pörschmannらの論文[3]は、骨伝導が低域通過フィルターとして働くと想定されている、と述べる。これは一般に共有された理解を要約した記述である。

一方、Reinfeldtら(2010)[2]は、10個の音素について自分の声の骨導成分と気導成分の相対的な大きさを測り、骨導が優勢になるのは、多くの音素で1〜2kHzだったと報告した。骨導と気導の相対的な大きさは、周波数や発音する音素によって異なる。これは「骨導=低音のみ」という単純化と合わない結果であり、本稿では「低音寄りの傾向は想定されるが、優勢なのは1〜2kHz付近だった」と読んでおく。

可聴域は約20〜20,000Hzで、低音への感度は高くない[1]。ただしこの記述は東京大学のページの別の話題(低周波音)の導入部にあり、骨導の説明として使うのは避ける。

5. ほちょうきを つかう 人は、どうなの?

5. 補聴器で変わる、自分の声の聞こえ方

5. 補聴器と自己の声の知覚

耳の きこえを たすける「補聴器ほちょうき」を つかう 人が います。

補聴器ほちょうきは、空気を とおる 音と、ほねを とおる 音に、べつべつに はたらきます。そのため、つかう 人は じぶんの 声の きこえかたが かわると いわれます[2]。

ふたつの 道の 音の 大きさの かんけいは、これまで はっきり きまって いませんでした。だから この 研究は、補聴器ほちょうきを つかう 人にとっても 大切だと 書かれて います。

気導と骨導の二つの成分の強さの関係は、これまで十分に決まっていなかったと、2010年の論文[2]は述べています。この関係は、補聴器を使う人にとって大切だとされています。

補聴器は気導と骨導の両方に別々に影響するため、使う人は自分の声の聞こえ方が変わるからです。

この論文が測ろうとした、骨導と気導の大きさの関係は、こうした場面に役立てるための土台と位置づけられています。

Reinfeldtら[2]は、自分の声における骨導成分と気導成分の強さの関係がこれまで十分に決まっていなかったと述べ、この関係が難聴のある人にとって重要であるとする。補聴器は両成分に別々に影響し、それによって自己の声の知覚が変わるからである。

研究の動機が、実験室の好奇心だけでなく、補聴器を使う人の聞こえ方という実用面にもあった点が読み取れる。

6. 「ひくく きこえる」だけでは ないの?

6. 「録音は低く聞こえる」だけでは足りない?

6. 強い骨伝導仮説と合わない調査

「じぶんの 声は、ふだんは ひくく きこえて、録音ろくおんだと 高く きこえる」と いわれる ことが あります。

でも、ある しらべでは、録音ろくおんを きいて 「声が ひくく なって いる」と かんじた 人が 多かったと つたえられて います[4]。

ほねの 道だけでは、全部を せつめいできない かもしれません。人は じぶんの 声の とくちょうを、あまり 正しく きめられて いないとも 書かれて います。

だから 「録音ろくおんは 高く きこえる」とは、だれにでも あてはまる こととは いえません。

ここまでの話から、「録音を聞くと、自分の声は高く聞こえるはず」と考えたくなります。ところが、話はそう単純ではありません。

カナダ音響学会の学術誌に載った研究[4]は、自分の録音の声を「ピッチが下がった」と感じる人が多数だったと報告しています。これは、骨伝導の影響だけで説明する強い仮説とは合わないとされます。

この研究は、人は自分の声の特徴を正確には判断できておらず、気導と骨導の違いや性別以外の要因も関わりうる、と述べています。

骨伝導説を否定するのではなく、それだけでは足りないと補う研究です。「録音は高く聞こえる」を、全員に当てはまる事実として覚えないほうがよさそうです。

Canadian Acousticsに載った研究[4]は、自分の録音された声を「ピッチが下がった」と感じる参加者が多数だったと報告し、これは強い骨伝導仮説(気導と骨導の違いだけで録音の違和感を説明する立場)と反すると述べる。人は自分の声の特徴を正確に判断できておらず、気導・骨導の違いや性別以外の要因も関与しうるとされる。

この研究は骨導説の否定ではなく、補足として読むのが妥当である。「録音は高く聞こえる」という記述を、全員に当てはまる事実として扱わないことが要点になる。

7. ほねで きく ヘッドセットで、わかった ことは?

7. 骨伝導ヘッドセットで聞くと、何が変わったか

7. 骨伝導ヘッドセットによる自他の声の聞き分け(2023)

ほねを つたわる 音を つかった ヘッドセットで、ふるえも くわえて きいて もらう 研究が あります[3]。

すると、「これは じぶんの 声か、ほかの 人の 声か」を 聞き分ける ことが、じょうずに なりました。

でも、ほかの 人どうしの 声を 聞き分ける ときは、ちがいが 出ませんでした。

だから、だれの 声でも わかりやすく なる わけでは ありません。じぶんの 声の ときだけの けっかです。

2023年の研究[3]では、骨伝導ヘッドセットで振動の刺激を加えると、聞こえてきた声が自分の声か他人の声かの聞き分けが良くなりました。

ただし、他人同士の声の聞き分け(知っている声か、知らない声か)では差が出ませんでした。結果は、自分の声を扱う課題に限られています。

この研究は3つの実験からなり、それぞれ16人、16人、52人が協力しました(52人の実験では、うち9人が対照課題の成績を理由に、3つ目の実験の主要な回帰分析から除外されています)。骨伝導にともなう振動の刺激が、自分の声だと気づく手がかりのひとつになっているのかもしれません。

PMC9929504(2023)[3]は、骨伝導ヘッドセットで振動触覚刺激を加えると自己の声と他者の声の聞き分け(self-other voice discrimination)が改善したと報告した。一方、他者同士の声(既知・未知)の聞き分けには効果が現れず、改善は自己の声を含む課題に限られた。

実験は3つあり、協力者はそれぞれ16人、16人、52人で、52人の実験ではそのうち9人が、対照課題の成績を理由に主要な回帰分析から除外されている。骨伝導にともなう振動触覚刺激が自己の声の識別の手がかりになる可能性を示す結果だが、一般の人が誰の声でも聞き分けやすくなることまでは意味しない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

ここまでの まとめです。ふたつの 道の ちがいが 大きな せつめいですが、それだけでは ぜんぶは せつめいできません。

今日 できること

声を 録音ろくおんする まえに、「わたしの 声は、高いかな、ひくいかな」と、紙に よそうを 書いて おきます。そのあとで 録音ろくおんを きいて、よそうと くらべて みます。

もうひとつ。耳を おおわずに 「あいうえお」と 話して きいて から、手のひらで 耳を そっと おおって、もういちど 話して みます。声の きこえかたが かわるか、くらべます。つよく おさえる ひつようは ありません。

公式の ページ

東京大学の「素朴そぼくな疑問ぎもん vs 東大」に、この 話を くわしく せつめいした ページが あります。おうちの 人と いっしょに 見て みて ください。

ここまでの要点:2つの経路の違いが主な説明ですが、それだけではすべて説明できないこともわかってきています。

今日できること

自分の声を録音する前に、「高く聞こえそうか、低く聞こえそうか」を予想して、紙に書いておきます。聞いたあとで、予想と比べてみてください。人によって「低くなった」と感じる人が多かったという研究[4]もあるので、自分はどうだったのかを見るだけでも、材料になります。

耳をおおわずに声を出して聞いたあと、手のひらで耳を軽くおおって同じように声を出し、聞こえ方を比べてみるのもひとつの方法です。強く押さえる必要はありません。何が変わったのかは、この記事の出典だけでは決められないので、変わった、変わらなかった、という感想をそのまま書き留めておきます。

公式情報

東京大学「素朴な疑問vs東大」の解説[1]は、日本語で読める入口です。

今日できること

録音の前に、自分の声が高く聞こえるか低く聞こえるかを予想して記録し、聞いたあとに照らし合わせる。人によって感じ方が割れることが調査で報告されている[4]ので、自分の記録も1つのデータになる。耳をおおわずに話した後、手で耳を軽くおおって同じように話し、聞こえ方を比べて書き留める観察もできる。ただし出典で直接確かめたことではないため、原理は言い切れない。

資料を読む

  • まずは、東京大学「素朴な疑問vs東大」の解説[1](日本語)。
  • さらに深めたい人向けの英語の論文(任意):Reinfeldtら(2010)[2]、PMC9929504[3]、Canadian Acoustics[4]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下の出典の番号に対応しています。いくつかの資料を突き合わせて書きました。

  1. 東京大学「素朴な疑問vs東大」米村美紀の解説 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00200.html (気導音・骨導音、他人が聞く声、可聴域)
  2. Reinfeldt et al. (2010), Journal of the Acoustical Society of America 128(2) https://www.diva-portal.org/smash/get/diva2:345783/FULLTEXT01.pdf (骨導と気導の相対的な大きさ、補聴器)
  3. Bone conduction facilitates self-other voice discrimination (PMC9929504) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9929504/ (骨伝導の経路の紹介、骨伝導ヘッドセットの実験)
  4. Own-Voice Pitch Perception Isn't Just About Bone Conduction, Canadian Acoustics https://jcaa.caa-aca.ca/index.php/jcaa/article/view/4249 (録音の声のピッチの感じ方)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。