1. ベンチは、ぶらんこと おなじ なかま?
1. ぶらんこは「遊戯施設」、ベンチは「休養施設」
1. ベンチは、施行令で「休養施設」に分類される
こうえんの ものは、ほうりつで しゅるいが わけて あります。ぶらんこ、すべりだい、シーソー、すなばは 「あそぶ ための もの」です[1]。
ベンチは、その なかまでは ありません。「やすむ ための もの」の なかまで、きゅうけいじょや 野外の テーブルと おなじ ぐるーぷ に 入って います[1]。
ほかにも、はなだん や ふんすい は 「けしきを きれいに する もの」と いう、また べつの なかまです[1]。
いろいろな ことに つかう おおきな こうえんでは、やすむ、ながめる、さんぽする、あそぶ、うんどうする、などの つかいかたが あります[2]。そのなかで ベンチは 「やすむ」を ささえる ものと して かんがえられて いるのです。では、やすむ ために、ただ すわれれば いいのでしょうか。
公園の施設は、都市公園法施行令で種類が分けられています。ぶらんこ、滑り台、シーソー、ジャングルジム、砂場などは「遊戯施設」です。植栽や芝生、花壇、日陰たな、噴水などは「修景施設」と呼ばれます[1]。
ベンチは、そのどちらでもなく「休養施設」に入っています。同じ仲間として並ぶのは、休憩所、野外卓、ピクニック場、キャンプ場などです[1]。
公園は、休息、観賞、散歩、遊戯、運動などの利用に供するものと決められています[2]。遊ぶ、景色を整える、休む、というそれぞれの利用に、ふさわしい施設が用意されているわけです。
なお、法令はベンチの目的を一文で書いているわけではありません。分かるのは、公園の中で「休養」を受け持つ施設として数えられている、というところまでです。では、その「休養」を支えるために、ベンチの形にはどんな工夫があるのでしょうか。
都市公園法施行令第5条は、公園に置く施設を用途ごとに列挙する。ぶらんこ・滑り台・シーソー・ジャングルジム・ラダー・砂場は遊戯施設、植栽・芝生・花壇・いけがき・日陰たな・噴水は修景施設である。ベンチが入るのは第2項の休養施設で、休憩所、野外卓、ピクニック場、キャンプ場その他これらに類するものと並べられている[1]。
この分け方は、公園の目的とつながる。都市公園法は、都市公園の健全な発達を図り公共の福祉の増進に寄与することを目的とし[2]、施行令は、総合的な公園を休息・観賞・散歩・遊戯・運動などの利用に供するものと位置づけている[2]。遊ぶ場所だけでなく、休む場所も公園の仕事に含まれるから、そのための施設が一つの種類として立てられている、と読める。
ただし、読み取れるのはそこまでである。法令には「ベンチは何のために置く」という一文はなく、目的を直接述べた条文は見当たらない。分類から言えるのは、ベンチが遊具でも景観の飾りでもなく、休むための設備として数えられている、という点だ。では、「休む」ための設備の中身は、座れさえすればよいのか。設計の基準を見ると、そうではないことが分かる。
2. ひじかけは、なんの ために ある?
2. ひじ掛けは、立ち上がるときの手すりにもなる
2. 座面の高さとひじ掛け ── 山口県・石川県の基準が求める形
ベンチの りょうはしに、ひじかけが ついて いる ことが あります。うでを のせる ため だけでは ありません。
いしかわ けんの きまりでは、ひじかけに 「たったり すわったり する とき の てすり」の はたらきを もたせる ように する、と あります[5]。やまぐち けんの たてものの なかの きゅうけいせつびに ついての しりょうにも、てすりを かねた おおきな ひじかけを つける、と あります[4]。
たかさにも、めやすが あります。すわる ところの たかさは、おとなむけで 40から45センチ ぐらい。ようじ むけは 35センチです[5][4]。ようじ むけの ベンチは、すわる ところが ひくく なって います。
くるまいすの 人が ならんで やすめる ように、たいらな ばしょを あけて おく、と いう きまりも あります[4]。ベンチの よこに あいている ところは、ざんねんな あきでは なく、わざと あけて ある ところ なのです。
ひじかけに つかまって、ゆっくり たちあがる。ひじかけは、ゆっくり たちあがる 人の てすりにも なります。ベンチの かたちには、いろいろな 人の ことが かんがえられて います。
ベンチの両端にあるひじ掛けは、腕をのせるだけの飾りではありません。石川県の整備の手引きは、ひじ掛けに「立ったり座ったりするときの手すり」の働きを持たせるよう配慮する、としています[5]。山口県の建物内の休憩設備に関する資料も、両端に手すり兼用の大きなひじ掛けを設けるとしています[4]。
座面の高さにも目安があります。石川県は、幼児用を35cm、一般用を40〜45cmとし[5]、山口県も40〜45cm程度としています[4]。幼児用と一般用では、5〜10cmの差があります。低いと幼児が自分で座りやすく、立ち座りの力が弱い人にとっては、高さと手すりが助けになります。
さらに、車いすを使う人が並んで休憩できる水平の場所を確保する、という基準もあります[4]。ベンチのそばに、車いすを置ける空きがあるかどうかも、設計の対象なのです。
これらは、都道府県が福祉のまちづくりのために示した指針で、全国の公園すべてに同じ高さが法律で義務づけられているわけではありません。それでも、休むための設備が、立ち上がる人や車いすの人のことまで考えて形づくられていることが読み取れます。ベンチには、もう一つ別の役目もあります。
休養施設を「座れる場所」としてだけ設計すると、座るより前、立ち上がる動作が抜け落ちる。石川県のバリアフリー整備の手引きは、ひじ掛けに立ち座りの際の手すり機能を持たせるよう配慮するとし、腰掛け板の高さの標準を幼児用35cm、一般用40〜45cmとしている。あわせて、車いす使用者が近づけるよう、下部に高さ68cm程度・奥行き45cm以上の空間を確保するとも述べる[5]。
山口県の建物内の休憩設備に関する資料も同じ方向を向いている。座面の高さは40〜45cm程度、ベンチの両端には手すり兼用となる大きなひじ掛け、さらに車いす使用者が並んで休憩できる水平部分を確保する、という内容だ[4]。2県の資料では、座面40〜45cmという目安が共通している。
一方、限界もはっきりしている。これらは県の福祉のまちづくりに関する指針で、「すべてのベンチをこの形にせよ」と国の法律が定めたものではない。調べた2県以外の基準は、ここでは取り上げていない。それでも、ひじ掛けが腕置きではなく立ち座りの手すりとして求められていることは、2県の資料から言える。ベンチは、座る人だけでなく、立ち上がる人、車いすの人まで含めて「休む」を支えるように考えられている。では、休むための道具に、人はほかにどんな意味を託しているのだろうか。
3. なまえの プレートは、なんの ために?
3. 思い出を託す「思い出ベンチ」
3. 寄付で置かれる記念ベンチ ── 東京都の思い出ベンチと日比谷公園
ベンチの せなかに、なまえや ことばが かいて ある プレートが ついて いる ことが あります。
とうきょうとには 「おもいでベンチ」と いう しくみが あります。こうえんに あいちゃくを もって もらい、こうえんの せつびを ふやす ために、きふ を つのって います[3]。2003ねんどから はじまり、いままでに 1275きの きふが ありました[3]。
だれかの おもいでが、こうえんの ベンチに なって います。ベンチは 「やすむ ところ」で あり、ひとの きもちを のせる ところ でも あるのです。
東京都には「思い出ベンチ」という事業があります。公園をより身近に感じて愛着を持ってもらい、公園施設の充実を図ることを目的に、寄付でベンチを募っているものです[3]。2003年度(平成15年度)から、都立公園・霊園・動物園で行われ、これまでに1,275基の寄付がありました[3]。
東京の日比谷公園は、1903年(明治36年)に開園した、日本における近代的な洋風公園の先駆けとされています。園内には、寄付した人の名前や思い出のメッセージを刻んだプレートが付いたベンチも多いと紹介されています[6]。
ベンチは、疲れた人が休むための施設であると同時に、人が大切な思い出を預ける場所にもなっている、と言えそうです。ただ、これは東京都の事業の話です。全国の公園すべてが同じ仕組みを持つわけではありません。
休養施設としてのベンチには、制度の外から別の意味が重なる例がある。東京都の「思い出ベンチ」事業は、公園に愛着を持ってもらい、公園施設の充実を図ることを目的に、2003年度から都立公園・霊園・動物園で寄付ベンチを募ってきた。都の発表によれば、これまでに1,275基の寄付がある[3]。
その一つの舞台が日比谷公園である。1903年に開園した日本における近代的洋風公園の先駆けとされ、園内には寄付者の名前や思い出のメッセージのプレートを付けたベンチが多い、と都の資料は紹介している[6]。ここでは「何のために置くか」が二重になっている。行政にとっては公園施設の充実であり、寄付する人にとっては、思い出を公共の場所に残す手段だ。
言えるのは、法令の上では休むための施設として数えられ、設計の基準では立ち座りと車いすの人にも配慮され、実際の公園では思い出を託す場所にもなっている、というところまでである。公園で手近なベンチを見れば、この3つの顔が一つの形の中に重なっていることが分かる。
これらの資料は、いずれも行政が公開している文書である。数値や制度は改正されることがあるため、実際に調べるときは、各自治体の最新の公開資料に当たってほしい。
4. こんど こうえんに いったら
4. 近所のベンチで、3つの顔を探してみる
4. 手近なベンチで確かめられること
こんど こうえんに いったら、ベンチを じっくり みて みましょう。おうちの 人と いっしょに いきましょう。
- りょうはしに ひじかけが ありますか。
- すわる ところは、あなたの ひざの たかさと くらべて どう ですか。
- プレートが ついて いますか。なんと かいて ありますか。
おうちの 人と いっしょに、ひじかけに てを おいて たつと、どんな かんじが するか たしかめて みましょう。ベンチは、みる たびに ちがう はなしを して くれます。
公園やバス停のベンチを、ここまでの話の目で見てみましょう。道路や車に気をつけて、大人と一緒に行ってください。
- ひじ掛けはありますか。手をついて立ち上がると、どう感じるでしょうか。
- 座面の高さは、定規やメジャーで測ると何cmでしょうか。本文で紹介した県の目安(40〜45cm)と比べてみます。
- プレートは付いていますか。付いていたら、何が書いてあるか読んでみます。
同じ公園のベンチでも、形や高さ、置かれ方は少しずつちがいます。どんな人を思って置かれたベンチなのか、想像してみるのも楽しい観察です。さらに知りたくなったら、住んでいる市や県の「福祉のまちづくり」の資料や、都市公園法施行令の条文を開くと、ほかの施設の分類も載っています。
手近なベンチは、次の点で資料と照らし合わせられる。ひじ掛けの有無と形(立ち座りの手すりになるか)、座面の高さ(40〜45cmの目安と比べてどうか)、車いすが並んで止まれる水平の場所があるか、プレートがあるか、あれば何が書かれているか。道路や車に注意し、大人と一緒に行うこと。
調べを広げるなら、都市公園法施行令第5条の施設の分類、自分の県の福祉のまちづくりの基準、東京都の思い出ベンチの募集ページを読み比べるとよい。県によって数値や言い回しが異なるかどうかは、この記事の資料の範囲では2県しか見ていないので、ほかの県を読めば新しい発見がある。ベンチは、法令の分類、設計の基準、人の思いが一つの形に重なった、身近な資料でもある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
法令・自治体の公開資料を、記事の説明の根拠として使いました。
- 都市公園法施行令(船橋市掲載の条文PDF) https://www.city.funabashi.lg.jp/shisei/kouchou/004/05/p022196_d/fil/kouenhousekourei.pdf (休養施設・遊戯施設・修景施設の分類)
- 都市公園法(衆議院 法令データベース) https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/02419560420079.htm (公園の目的と利用のしかた)
- 東京都 報道発表 思い出ベンチ募集(2026年5月) https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/05/2026052702 (思い出ベンチの目的・開始年度・寄付数)
- 山口県 福祉のまちづくり関連の基準 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/112527.pdf (ベンチの座面の高さとひじ掛け)
- 石川県 バリアフリー整備手引き https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenju/bf-tebiki/documents/0503.pdf (ひじ掛けの手すり機能と高さの標準)
- 東京都建設局 公園の紹介 https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kensetsu/000070556 (日比谷公園の開園年と記念プレート)
なおした ところ
更新履歴
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