1. しょうひぜいは「2ポイント」? 「25パーセント」?
1. 消費税率8%→10%は「2ポイント」か「25%」か
1. 消費税率8%→10%── 差と比
2019ねん10がつ、消費税は 8パーセントから 10パーセントに なりました[1]。
まず、ひきざんを します。10 ひく 8 は 2 です。これが「2ポイント ふえた」です。
つぎに、「もとの 8に くらべて どれだけ ふえたか」を みます。2を 8で わると 4ぶんの 1、つまり 25パーセントです。これが「25パーセント ふえた」です。
税ぬきで 1000円の ものなら、税は 80円から 100円に なりました。税だけ みると 25パーセントの ふえです。でも、はらう おかね ぜんぶは 1080円から 1100円で、ふえたのは 2パーセントより すこし すくない ぐらい(約1.9パーセント)です。
おなじ できごとでも、なにを もとに するかで、「2」「25」「1.9」と かわります。ですから、「パーセント ふえた」と きいたら、「なにに くらべて ふえたのか」を たしかめる ことが だいじです。
2019年10月、消費税率は8%から10%になりました[1]。この変化は、見かたによって3通りに言えます。
- 差は、10 − 8 = 2 で、「2ポイント(2パーセントポイント)上がった」と言えます。
- 税率の比は、2 ÷ 8 = 0.25 で、「税率が25%上がった」と言えます。
- 支払う総額の比:税抜1000円の買い物は、税額が80円から100円、税込価格が1080円から1100円になり、約1.9%の上昇になります。
すべて正しい計算ですが、「何を元にするか」が違います。パーセント同士の差は「ポイント」、元の値に対して何%増えたかは「%」と、言葉を分けるのは、この元の値をはっきりさせるためです。
「30%が33%になった」なら、差は3ポイント、割合の増え方は10%です。
なお、飲食料品(酒類・外食を除く)などの軽減税率は8%のままで、このときは上がっていません[2]。
2019年10月1日、消費税及び地方消費税の税率は8%から10%に引き上げられた[1][2]。この変化は、基準にするものによって3通りに表現できる。
- 差(パーセントポイント):10 − 8 = 2 より、2ポイントの上昇
- 税率の比(相対変化):2 ÷ 8 = 0.25 より、税率が25%上昇
- 支払総額の比:税抜1000円の商品は、税額が80円から100円(25%増)、税込価格が1080円から1100円(約1.85%増)
いずれも計算は正しい。違うのは、何を元の値にしているかである。パーセント同士の差は「ポイント」、元の値に対する増減は「%」と言葉を分けるのは、元の値を明示するためである。「30%が33%になった」なら、差は3ポイント、相対的な増加は10%になる。
なお、酒類・外食を除く飲食料品などの軽減税率は8%のまま据え置かれ、この引き上げでは変わっていない[2]。
2. きんりが 0.25から 0.5に なると
2. 日銀の政策金利 0.25%→0.5% ── 「2倍」と「0.25ポイント」
2. 政策金利0.25%→0.5%── 相対変化が大きく見える例
にほんぎんこうは、金利の めやすを きめて います。2024ねん7がつ31にちに、この めやすは 0.25パーセントに なりました[3]。2025ねん1がつ24にちには、0.5パーセントに あげる ことが きまりました[4]。
ひきざんでは 0.5 ひく 0.25 で、0.25ポイントです。0.25ポイントは、すごく ちいさく きこえます。でも、めやすの かずで もとの 0.25に くらべると、2ばいです(どちらも「ていど」と いう めやすです)。
ですから、「金利が 2ばいに なった」と いう ニュースと、「0.25ポイント あがった」と いう ニュースは、おなじ できごとの はなしなのに、うける いんしょうが ぜんぜん ちがいます。
もとの かずが ちいさいと、すこし ふえただけで 「なん ばい」にも なります。1パーセントが 2パーセントに なれば、1ポイントの ふえなのに 2ばいです。
日本銀行は、短期の金利の目安として、無担保コールレート(オーバーナイト物)の目標を決めています。2024年7月31日には、この目標が「0.25%程度」と決まりました[3]。2025年1月24日には「0.5%程度」へ引き上げることが決まりました。賛成は8人、反対は1人でした[4]。
差は 0.5 − 0.25 = 0.25 で、0.25ポイントです。一方、元の0.25%に対しては、目標の数字の上では2倍(100%の上昇)です(どちらも「程度」とされた目安です)。
「金利が2倍になった」と「0.25ポイント上がった」は、同じ変化の別の言い方です。ただ、前者は大きな出来事に、後者はごく小さな出来事に聞こえます。
元の値が小さいほど、少しの差でも相対的な増え方は大きくなります。1%が2%になれば、差は1ポイントなのに、2倍です。「何倍になった」という表現だけで判断せず、元の値とポイントの差を並べて見ることが大切です。
日本銀行は、政策金利として無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を定める。2024年7月31日の決定で「0.25%程度で推移するよう促す」とされ[3]、2025年1月24日の決定(賛成8、反対1)で「0.5%程度で推移するよう促す」に改められた[4]。後者は翌営業日の1月27日から適用された。
差は 0.5 − 0.25 = 0.25ポイント。元の0.25%に対しては、目標の数字の上では2倍(相対的に100%の上昇)である(どちらも「程度」とされた目安である)。同じ変化が「0.25ポイント」では小さく、「2倍」では大きく聞こえる。
相対変化は、元の値が小さいほど大きくなりやすい。1%が2%になれば、1ポイントの差でも2倍である。差と比を片方だけ示された場合は、元の値を確かめてから大きさを判断するべきである。
3. なぜ まちがえやすいの?
3. 同じ「%」が2つの意味を持つから
3. 読み違いの原因 ── 同じ記号が差と比の両方に使われる
いちばんの りゆうは、どちらも「パーセント」と いう ことばや「%」の しるしで あらわせて しまう ことです。
たとえば、「金利が 0.25パーセント あがった」と きいたら、どちらに なるでしょうか。0.25から 0.5に なった(0.25ポイント)という いみかも しれません。0.25の 0.25パーセントぶん、つまり ほんの すこし ふえた いみかも しれません。ことばだけでは、きまりません。
パーセントの ひきざんには「ポイント」を つかおう、と いう ルールは、この まちがいを ふせぐ ために あります。ヨーロッパの とうけい きかん ユーロスタットも、「パーセントの ひきざんには ポイントを つかう」と せつめいして います[5]。
どちらも「%」で書けるのが、読み違いの主な原因です。たとえば「金利が0.25%上がった」という文は、「0.25ポイント上がった(0.25%→0.5%)」の意味にも、「元の値の0.25%分だけ上がった」の意味にも読めます。
これを防ぐために、統計では、パーセント同士の差を「パーセントポイント」と呼び分けます。ヨーロッパ連合の統計局ユーロスタットの用語集は、「パーセントポイントは、2つの異なるパーセントを比べるときに使う。略称はpp」と定め、例として「10%から12%に上がったら、2パーセントポイント上がった」と挙げています[5]。
日本語の研究でも、同じ指摘があります。計量国語学会の論文「パーセンテージと比率」は、「パーセント表示された値の差はパーセントポイントという単位を使って示さなければならない」と述べています[6]。
実際の文章では「ポイント」だけに略す場合が多く、前後の「AからBへ」が書かれているかどうかで、読み違いが起きるかどうかが決まります。
読み違いの根本は、差も比も「%」で書けてしまうことにある。たとえば「政策金利が0.25%上昇した」という文は、「0.25ポイント上昇(0.25%→0.5%)」とも「元の値の0.25%分の上昇」とも解釈できる。
この曖昧さを避けるため、統計では差をパーセントポイントと呼ぶ。Eurostatの用語集は「The term percentage point is used when comparing two different percentages. The abbreviation is pp.」と定義し、「10%から12%への上昇は2パーセントポイントの上昇」を例に挙げる[5]。日本語でも、計量国語学会誌の論文(中俣尚己、2021年)が「パーセント表示された値の差はパーセントポイントという単位を使って示さなければならない」と述べている[6]。ただし、これは論文の主張であり、新聞や公的文書で「ポイント」が常に使い分けられるとは限らない。
実際の文章では「ポイント」だけに略されることが多く、前後に「AからBへ」が書かれているかどうかが、誤読を防ぐ決め手になる。
4. パーセントを よむ とき、3つ きいて みよう
4. 数字を読むときの3つの質問
4. 読むときの3つの確認事項
「なんパーセント ふえた」と きいたら、つぎの 3つを たしかめましょう。
- なにから なにに かわりましたか。(はじめと おわりの かずです)
- ひきざん(ポイント)の はなしでしょうか。それとも、もとの かずに くらべた わりあいの はなしでしょうか。
- もとの かずは、おおきいでしょうか。ちいさいでしょうか。
かく ほうも おなじです。「8パーセントから 10パーセントに なって、2ポイント ふえた」のように、はじめと おわりの かずを いっしょに かくと、まちがいが へります。
- 何から何へ変わったかを見ます。始めと終わりの数字が書かれていれば、自分で計算し直せます。
- 差か、比かを見ます。「ポイント」なら引き算の差、「%増」「倍」なら元の値に対する比です。
- 元の値の大きさを見ます。元の値が小さいと、小さな差でも「何倍」という大きな数字になります。
書く側も同じです。「8%から10%に上がり、2ポイントの上昇」のように、元と先の数字を一緒に書くと誤解が減ります。
もう1つ、気をつけたいことがあります。「ポイント」には、買い物のポイントなど別の意味もあります。文脈から、パーセントの差の話かどうかを判断しましょう。
- 始点と終点が示されているか。示されていれば、差と比を自分で計算できる。
- 差か比か。「ポイント」は差、「%増」「倍」は元の値に対する比である。
- 元の値の大きさ。元の値が小さいと、小さな差でも相対変化は大きくなる。
書く場合は、「8%から10%への上昇(2ポイント、税率としては25%の上昇)」のように、元と先の数字と、差・比のどちらかを明記する。「ポイント」という語には他の意味もあるため、パーセントの差の話かどうかは文脈で判断する。
5. じぶんで ためして みよう
5. 自分で確かめてみよう
5. 自分で確かめる ── 身近な「%」の差と比
スマートフォンや タブレットの でんちの のこりが 80パーセントから 60パーセントに へったと します。
まず ひきざんで、80 ひく 60 は 20 です。「20ポイント へった」と いえます。つぎに、20を もとの 80で わると 4ぶんの 1 です。「もとの 4ぶんの 1(25パーセント)へった」です。
かみに、じぶんの すきな 2つの パーセントを かいて、ポイントの さと、もとに くらべた わりあいを けいさんして みましょう。ニュースや おみせの チラシで「パーセント」を みつけたら、どちらの はなしか かんがえて みるのも おもしろいです。
ニュースや広告で「%」を見つけたら、「何から何へ」「差か比か」の2つを自分で確かめてみましょう。
たとえば、スマートフォンの電池残量が80%から60%に減ったとします。差は20ポイントの減少、元の80%に対しては25%の減少です。
好きな2つのパーセントを選んで、ポイントの差と、元の値に対する割合の両方を計算してみてください。同じ変化なのに、数字の大きさがちがって見えるはずです。
本記事の数字を確かめるには、日本銀行の決定文と財務省の説明(出典欄)を読むのが近道です。
新聞記事や広告に「%」が出てきたら、始点と終点を探し、差と比を自分で計算してみるとよい。
例として、スマートフォンの電池残量が80%から60%に減ったとする。差は20ポイントの減少、元の80%に対しては25%の減少である。好きな2つのパーセントで、同じ計算を試してみてほしい。
本記事の数値の確認には、日本銀行の公表文(2024年7月31日、2025年1月24日)と財務省・国税庁の説明が役に立つ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の数字は、出典の値にもとづく。税込価格の変化(1080円→1100円など)は、税抜1000円を仮に置いて筆者が計算した例である。
- 財務省「令和元年10月の消費税率10%への引上げは、なぜ行われたのですか」 https://www.mof.go.jp/faq/tax_policy/02eb.htm (令和元年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられた)
- 国税庁「軽減税率制度の概要」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/01.htm (令和元年10月1日に8%から10%、軽減税率8%の対象)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について」(2024年7月31日) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2024/k240731a.htm (無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2025年1月24日) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2025/k250124a.htm (0.5%程度、賛成8・反対1)
- Eurostat「Glossary:Percentage point」 https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=Glossary:Percentage_point (定義と、10%から12%の例)
- 中俣尚己「言語統計学入門(3)パーセンテージと比率」『計量国語学』33巻3号(2021年)pp. 205–213 https://doi.org/10.24701/mathling.33.3_205 (要旨の「パーセント表示された値の差はパーセントポイントという単位を使って示さなければならない」)
なおした ところ
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