1. あらうと、なかで なにが おきるの?
1. 洗濯機と乾燥機の中で、何が起きているのか
1. 洗濯と乾燥で何が起きうるか ── 熱・遠心力・接着剤
せんたくきの なかで、ぬいぐるみは ぐるぐる まわされます。かんそうきに いれると、もっと たいへんです。ちゅういして いる サイトでは、かんそうきの 中は 50〜70どくらいに なると 書いて います[1]。
それだけ あつくなると、ぬいぐるみの ぶひんが とけたり、まわる ちからで かたちが くずれたり するかも しれません。
目や はなを のりで つけた ぬいぐるみは、のりが とけて ぶひんが とれる ことも あると いわれます[1]。
洗濯機のドラムの中では、ぬいぐるみは水と一緒に回されます。特に乾燥機は要注意で、日本の洗濯機メーカー系のサイトは、コインランドリーなどの乾燥機の温度は約50〜70℃になるため、パーツが溶けるおそれがあると説明しています[1]。ドラムの回転による遠心力で、型崩れするかもしれないとも書かれています。
目や鼻などを接着剤でつけたぬいぐるみでは、洗うと接着剤が溶けてパーツが取れたり、形が変わったりするおそれがあるそうです[1]。溶けた接着剤が周りの素材について、ふわふわ感が失われるという説明もあります。
ただし、「洗うと毛がごわつく」直接の原因を、実験で確かめた資料は見つかりませんでした。熱や絡まり、接着剤の残りなどが一因になりうる、というところまでです。
洗濯後に毛がごわつく原因として、まず考えられるのが熱と機械的な力だ。日本の洗濯機メーカー系のサイトは、乾燥機の温度が約50〜70℃に達し、パーツが溶ける可能性があること、ドラムの遠心力で型崩れする可能性があることを理由に、乾燥機ではなく陰干しを勧めている[1]。二次資料であり、ぬいぐるみの素材ごとの実測ではない点に注意が要る。
では、洗濯機に入れなければ安全かというと、そうとも限らない。接着剤でパーツを貼ったぬいぐるみは、洗うと接着剤が溶けてパーツが外れたり形が変わったりしうるため、洗濯を控えるよう勧められている[1]。溶けた接着剤が周りの素材に付いてふわふわ感が失われる、という説明も同じ資料にある。
洗濯によるごわつきを、絡まり・熱によるちぢれ・洗剤や接着剤の残りなどのどれが起こすのか、実験で切り分けた一次資料は、今回は見つからなかった。ここは「一因として考えられる」と読むのが妥当だ。
2. だいて いると、けが ぺたんと ねるのは、なぜ?
2. 抱いて寝るとぺたんこになるのは、カーペットと同じ?
2. 毛が寝る現象は、カーペットの用語で説明できるか ── パイルの類比を借りる
あらって いなくても、けは かわります。まいにち ぎゅっと だいて いると、けが ぺたんと ねて しまいます。
ふかふかの じゅうたんも、人が あるく ところが へこみます。じゅうたんを つくる 人たちの あつまりは、この へこみを 「もとに もどる ことも、もどらない ことも ある」と せつめい して います[3]。
ぬいぐるみの けも、にた ところが あるのかも しれません。ただし、ぬいぐるみを しらべた 話では ありません。
洗っていなくても、毛は変わります。毎日の抱っこで、毛がぺたんと寝るのです。毛が寝る現象を考えるために、カーペットの毛足の用語と比べてみます。
アメリカのカーペット業界団体CRIの技術資料は、毛足(パイル)の変化を2つに分けています。1つは「クラッシング」で、踏みつけなどによってパイルの厚みが減ることです。元に戻る場合も、戻らない場合もあるとされています。もう1つは「マッティング」で、糸のよりが戻って先端がからみ合うことです[3]。
ぬいぐるみの毛が寝るのはクラッシング、洗ってごわつくのはマッティングに似ているかもしれません。ただし、これはカーペットの定義を借りた類比で、ぬいぐるみで確かめられた話ではありません。
洗っていなくても毛が変わるのは、なぜか。ここでは、カーペット業界団体CRIの技術資料の用語を類比として借りる。同資料は、パイルの厚みの減少(クラッシング)を、人の踏みつけなどによる、回復できる場合もできない場合もあるものと定義し、マッティングを、糸のよりが戻って先端がからみ合うことと区別している[3]。
この区別を当てはめると、抱き続けて毛が寝る現象はクラッシングに、洗濯後にごわつく現象はマッティングに似た状態を含む可能性がある。ただしこれは定義の借用であって、ぬいぐるみの繊維で同じことが起きる、原因が同じだと確かめたわけではない。カーペットは繊維の種類も密度も使い方もぬいぐるみと異なるので、結論は「そう考えると整理しやすい」までにとどめる。
そうだとすれば、次の問いは、寝てしまった毛は戻せるのか、だ。
3. ぺたんこに なった けは、もどせる?
3. つぶれた毛は戻せる? ── 戻らないものもある
3. つぶれた毛は戻せるか ── 回復できる場合と、戻らない場合
じゅうたんの へこみは、コインの ふちで、けを おこすと よいことが あるそうです[3]。でも、ずっと へこんだままの ばあいも あると 書いて あります。
ぬいぐるみでも、やさしく けを ととのえる ことは できるかも しれません。ただし、もとどおりに ならない ことも あると おもって おきましょう。
CRIの資料によると、家具の重みでできたくぼみは、パイルをコインの縁で起こし、掃除機と蒸気(または温水抽出)で回復を助けられることがあるそうです。ただし、永久的なへこみもあると明記されています[3]。
ここから分かるのは、寝た毛が戻るかどうかは、状態しだいだということです。すぐに手入れすれば助けになることもありますが、戻らないこともあります。これもカーペットの話で、ぬいぐるみに同じ方法を試してよいという意味ではありません。
では、ぬいぐるみを作った会社は、どんな手入れを勧めているのでしょうか。
CRIの資料は、家具の重みでできたくぼみについて、パイルをコインの縁で起こし、掃除機と蒸気または温水抽出を併用すると回復しうるとする一方、「永久的なくぼみもありうる」と明記している[3]。回復は保証されていないというのが、この資料の立場だ。
ここから、寝た毛への向き合い方が分かる。戻る可能性はあるが、圧縮が長く続いたり、繊維がからみ合ったりした場合は、元の見た目が戻らないことがある。したがって「戻す」より「つぶれすぎる前に、やさしく整える」ほうが、現実的な目標になる。
4. ぬいぐるみを つくる かいしゃは、どう いって いる?
4. ぬいぐるみ会社は、どう手入れしなさいと言っているか
4. メーカー公式の手入れ案内 ── 洗える型と洗えない型
ドイツの ぬいぐるみの かいしゃ、シュタイフの ホームページには、こう あります[2]。
おおくの ぬいぐるみは、30どの おゆで、ひとつだけ、ネットに いれて あらえる。かわかす ときは、ねつを さけて、へやの 中で ほす。とちゅうで ふるか、やさしく ブラシで ととのえる。
でも、モヘアという ふわふわの けで できた ものは、せんたくきに むきません[2]。
ドイツの老舗ぬいぐるみメーカー、シュタイフ社は、公式サイトで次のように案内しています[2]。多くのぬいぐるみは、洗濯機で30℃以下、単独で、洗濯ネットか枕カバーに入れて洗えます。乾燥は高温を避け、室温で干します。途中で振るか、丁寧にコームで整えるとよいそうです。ラジエーターや乾燥機は使わないようにと書かれています。
一方、モヘアやアルパカで作られたコレクター向けの品は、洗濯機に向きません。この場合は、中性洗剤の泡で表面だけをやさしくこすり、少量のきれいな水でていねいにすすぎます。乾かす間に、コームで毛を整えるとよいそうです[2]。
洗濯機の熱を避けるというメーカーの案内は、1章で見た「熱と遠心力に注意」という話と、方向がそろっています。
メーカーは、どこまで洗うことを勧めているのか。シュタイフ社(Steiff)の公式のお手入れ案内では、多くの製品は洗濯機で最高30℃・マイルドな洗剤・単独・洗濯ネットか枕カバーに入れて洗えるとされる一方、モヘア(アンゴラヤギの毛)やアルパカで作られたコレクター向けの品は、洗濯機に向かないとされている[2]。
乾燥については、高温を避けて室温で干し、途中で振るか丁寧にコームで整えるよう案内し、ラジエーターや乾燥機を使わないよう書いている[2]。洗えないモヘア製品には、マイルドな洗剤の泡で表面だけをこすり、少量のきれいな水で慎重にすすぎ、乾燥中にコームで整える方法が示されている。
つまり、メーカーは「洗える型」と「洗えない型」を分けたうえで、どちらにも高温を避けるよう求めている。1章の熱の指摘と、2章の「寝た毛をやさしく起こす」発想は、ここで実用的な手順として現れていると言える。ただし、これは1社の案内で、他社の製品に当てはまるとは限らない。製品ごとの洗濯表示に従うのが基本だ。
5. はくぶつかんは、なぜ「あらわない」の?
5. 博物館は、なぜ古い布を「洗わない」のか
5. 博物館の保存の指針 ── 洗わない・湿度と光を管理する
スコットランドの 博物館の きょうかいは、「博物館の ぬのの ものは あらわない」と 書いて います[5]。なおす ときは、しゅうふくの せんもんかに そうだんします。
ぬのの ものは、しめりけが おおいと カビが はえます。かわきすぎると、もろく なります[4]。ひかりも あてすぎない ほうが よく、けや ぬのを たべる むしの こどもも いるそうです[5]。
これは 博物館の ぬのの ものの はなしで、おうちの ぬいぐるみに、そのまま あてはめる ものでは ありません。
スコットランド博物館・美術館協会は、博物館の染織品は洗わず、処置が必要なときは保存修復士に相談するようにと述べています[5]。ウールや絹、毛皮、羽根などは虫の幼虫の栄養源になりうること、展示の光は50ルクス程度に抑えることも書かれています。
保管の環境について、アメリカのスミソニアン博物館保存研究所(MCI)は、染織品の目安を相対湿度45%±8%、温度約21℃(70°F±4°F)としています。乾燥しすぎると天然繊維がもろくなり、湿度が高いとカビや、糸くずにすむ虫が増えるという説明です[4]。
ただし、どちらも染織品全般の指針で、ぬいぐるみ専用ではありません。家庭に同じ数値を求めるものでもありません。「洗う」という手入れ自体が、古いものには傷みの引き金になりうる、という考え方をつかむための資料です。
保存の専門家は、なぜ洗わないのか。スコットランド博物館・美術館協会は、博物館の染織品は洗わず、処置が必要な場合は保存修復士に相談するよう述べる。さらに、ウール・絹・毛皮・毛・羽根は虫の幼虫の栄養源になること、展示の光は50ルクス程度に抑えることなどを挙げている[5]。
洗うことのほかに、保管環境も問われる。スミソニアン博物館保存研究所(MCI)は、染織品の保管の目安を、相対湿度45%±8%、温度約21℃(70°F±4°F)とし、乾燥しすぎると天然繊維がもろくなり、湿度が高いとカビや、糸くずに住むウール食の虫が増えると説明している[4]。
ただし、これらは博物館の染織品一般の指針であって、ぬいぐるみに特化したものではなく、家庭に同じ数値を求める趣旨でもない。読み取れるのは、「洗う」ことが繊維へ与える負担を、保存の側が重く見ているという方向性までだ。
6. こわれた ぬいぐるみを、どう なおしたの?
6. 『クマのプーさん』のぬいぐるみ ── 繕いあとを残すという選び方
6. 摩耗した玩具の修復 ── 「消す」のでなく「選んで残す」
『クマのプーさん』の もとに なった ぬいぐるみたちを、なおした 人たちが います。ながい ときを へて、きずんで いました[6]。
なおす 人は、ぬのを うらに いれて あなを おぎない、そめた アルパカの けで おおいました。ミルンけの 人が、あいじょうを こめて つくろった ところは、そのまま のこしたと つたえられて います[6]。
7. じぶんでも しらべてみたく なったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
いえで できること
おうちの ぬいぐるみの タグを、さがして みましょう。あらえるのか、かんそうきは つかえるのか、かいて あるか、みて みます。かいて なかったら、あらう まえに、おとなに そうだんして みましょう。
けの むきを、ゆびで やさしく ととのえて みると、ぺたんこの ところが、すこし ふくらむか どうか わかります。つよく こすらないでね。
今日できること
家のぬいぐるみのタグを探して、洗えるか、乾燥機は使えるかを見てみましょう。書いてなければ、洗わずに様子を見るのが安全です。
毛の向きを指でやさしく整えて、ぺたんこになっていた部分が少しふくらむか、観察してみます。強くこすらないでください。
もう一歩
お気に入りのぬいぐるみで、直した跡や、毛の向きが変わったところを見てみましょう。そこに使われてきた時間が残っているかもしれません。
確かめられること
手持ちのぬいぐるみのタグ(洗濯表示)を見て、水洗いや乾燥機の可否を読み取る。記載がなければ洗わず、表面の手入れにとどめる。抱く前後で、同じ場所を同じ向きから見て(写真に撮ると比べやすい)、毛の寝方の変化を観察する。毛の向きは指でやさしく整える程度にとどめる。
見比べてみるなら
手持ちのぬいぐるみのタグと、日本の洗濯機メーカー系サイトの手入れ案内[1]を見比べ、書かれている注意(乾燥機・接着剤など)が自分のぬいぐるみに当てはまるかを考えてみる。同じ場所を抱く前後で見比べれば、毛の変化を自分の目で確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:洗濯機メーカー系サイト、ぬいぐるみメーカー、カーペット業界団体、博物館・保存修復の団体の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- エレクトロラックス・プロフェッショナル「ぬいぐるみの洗濯」。https://www.electroluxprofessional.com/jp/blog/0009/ (乾燥機の温度・遠心力・接着剤について。洗濯機メーカー系の二次資料)
- Steiff「Care and washing instructions」。https://www.steiff.com/en/care-and-wash (洗い方・乾かし方・洗えないモヘア製品の手入れについて)
- CRI「Carpet Maintenance and Troubleshooting」(2017)。https://carpet-rug.org/downloads/carpet-maintenance-and-troubleshooting/ (クラッシングとマッティングの定義、パイルの回復について。カーペットの資料で、類比として使った)
- Smithsonian Museum Conservation Institute「Climate and Textiles Storage」。https://mci.si.edu/climate-and-textiles-storage (染織品の保管の温湿度の目安について)
- Museums Galleries Scotland「Protecting your textiles」。https://www.museumsgalleriesscotland.org.uk/advice-article/protecting-your-textiles/ (染織品を洗わないこと、虫と光について)
- AIC Conservators Converse「Oh Bother! The Conservation of Winnie the Pooh and Friends」(2017)。https://resources.culturalheritage.org/conservators-converse/2017/06/23/45th-annual-meeting-may-31st-textiles-oh-bother-the-conservation-of-winnie-the-pooh-and-friends-by-alison-castaneda/ (プーさんのぬいぐるみの修復について。学会の会合記録で、二次資料)
なおした ところ
更新履歴
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