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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ホッキョクグマの 毛は、白く ない って ほんとう?

白く見えるホッキョクグマの毛は、なぜ「透明」だといわれるのか

ホッキョクグマの毛はなぜ白く見えるのか ── 透明な中空の繊維と、1998年に否定された光ファイバー説

分野:生きもの

ホッキョクグマは、まっ白に 見えます。ところが、毛を 1本だけ とりだして 見ると、白では なく、透明とうめいだと いわれて います。

すきとおった 毛が、どうして 白く 見えるのでしょうか。むかし 広く しんじられた 考えが、こわれた はなしも いっしょに 見て いきます。

雪の上を歩くホッキョクグマは真っ白です。ところが、毛を1本取り出して光にかざすと、白い色はついていない、といわれます。

透明な毛が、どうして白く見えるのでしょうか。「毛が光ファイバーのように太陽の光を皮膚へ運ぶ」という有名な説が、ある物理学者の測定で否定された話も含めて、資料をたどります。

ホッキョクグマの毛は、色素による白ではなく、可視光に対してほぼ透明な繊維だと説明される[1][2]。白く見えるのは、透明な繊維が大量に集まり、光が内部で散乱されるためと考えられている[2]。

このメモでは、毛の構造と白く見える仕組み、1970〜80年代に広まった「毛は紫外線を皮膚へ運ぶ光ファイバー」という説[3]が1998年のKoonの測定で否定された経緯[4]、そして今も確定していない点を、日本語と英語の資料を突き合わせて整理する。

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1. 白い 毛が、じつは すきとおって いる?

1. 白いはずの毛は、透明で中が空洞

1. 毛の色 ── 白ではなく、透明で中空

ホッキョクグマの 毛を 1本 ぬきとって 見ると、色は ついて いません。透明とうめいなのだと いわれます[1]。

しかも、毛の 中は ストローの ように、空っぽに なって いると いわれます[1]。ふつうの けものの 毛とは、ちょっと ちがう つくりです。

それなのに、ぜんたいでは 白く 見えます。ふしぎですね。

1本ずつ見ると、色がない

日本科学未来館の科学コミュニケーターのブログでは、ホッキョクグマの毛は白のように見えて、実は透明だと紹介されています[1]。毛の中はストローのように空洞になっているとも書かれています[1]。

英語圏の物理学者のブログも、毛は可視光に対してほぼ透明で、部分的に空洞の芯をもち、その表面はざらついていると説明しています[2]。日本語と英語、二つの資料が同じ方向を向いています。

日本科学未来館の科学コミュニケーターのブログは、ホッキョクグマの毛を「白に見えるが透明」で、ストローのように中空だと述べる[1]。物理学者による解説でも、毛は可視光に対してほぼ透明で、部分的に空洞の芯をもち、表面は粗いとされる[2]。

2. すきとおって いるのに、どうして 白い?

2. 透明なものが集まると、なぜ白くなるのか

2. 散乱 ── 透明な繊維の集合が白く見える

かき氷を 思いだして ください。ひとつぶ ずつの 氷は すきとおって いても、けずって つみあげると、まっ白に 見えます。

雪や 雲が 白いのも、にた 考えかたで いわれます[2]。すきとおった ものが たくさん あつまると、光が あちこちに とびはねて、外へ 出て くるからです。

ホッキョクグマの 毛も、これと にて いる、と 考えられて います[2]。ただし、毛は 氷では ありません。中が 空っぽで、ざらざらした ところも あります。

かき氷と同じ考え方

透明な氷を砕くと白く見えるのは、たくさんの小さな面で光がはね返り、あちこちへ散らばるからです。雪や雲が白いのも、同じ考え方で説明されます[2]。

物理学者のブログは、ほぼ透明な繊維が大量に集まれば、光は毛皮の内部で散らばり、その多くが外へ出ていくので、毛皮は白く見えると述べています[2]。色素で白い、のではありません。

空洞だけが理由とは限らない

空洞のある構造が白さを強めていることは考えられます。ただ、表面のざらつきや毛の密度も関わりそうで、どれがどれだけ効いているのかは、確かめた資料では分かりませんでした。

物理学者の解説によれば、ほぼ透明な繊維が大量に集まると、光が散乱され、その多くが再び外へ出ていくため、毛皮は白く見える[2]。雪や雲が白い理由と同じ考え方である[2]。氷を砕くと白くなるのも、同じ枠組みで理解できる。

ただし、空洞・ざらつく表面・毛の密度が白さにそれぞれどれだけ寄与するかの内訳は、今回確かめた資料では確定していない。「空洞だけが白さの原因」と読める書き方は避ける。

3. 毛の 下の 皮ふは、なに色?

3. 毛の下の皮膚は、黒い

3. 皮膚の色 ── 毛の下は黒い

毛を かきわけて 皮ふを 見ると、こんどは 黒いと いわれます[1]。白い 毛の 下に、黒い 皮ふが あるのです。

「黒いと、太陽の ねつを すいやすい のでは?」と 思う 人も いるでしょう。この 考えから、ある 有名な 話が 生まれました。つぎの 章で 見て みましょう。

科学未来館のブログには、ホッキョクグマの肌は黒だと書かれています[1]。透明で白く見える毛の下に、黒い皮膚がある、という二重の構造です。

「黒いから太陽の熱を吸いやすいのでは」と考えたくなります。この考えが、次の章で出てくる有名な説につながっていきます。

毛は透明で白く見える一方、皮膚は黒い[1]。この二重構造は、「黒い皮膚は太陽の熱を吸うのに役立つのではないか」という連想を呼びやすく、次章の光ファイバー説はこうした発想の延長にあると考えられる。

なお、子グマの皮膚が生まれたときはピンク色で、のちに黒くなるとする資料もあるが、今回は原典まで確かめられなかったため、本文では扱わない。

4. むかし しんじられた 「ひかりの くだ」の はなし

4. 「毛は光ファイバー」という説

4. 光ファイバー説 ── 1970〜80年代に広まった仮説

むかし、こんな 考えが ありました。ホッキョクグマの 毛は、光を はこぶ 細い くだの ように はたらく、という 考えです[3]。

毛の 中を 通って、光が 黒い 皮ふまで とどく。そう すれば、ふゆの 寒い 北の 大地でも、あたたかく なれそうです。

この 考えは、ひろく 知られました[3]。わかりやすくて、ほんとうらしく 聞こえたからでしょう。

もっともらしい説明

1970〜80年代には、毛の空洞の芯が光ファイバーのように紫外線を皮膚へ運び、黒い皮膚で熱に変える、という説が広まりました[3]。1980年のGrojeanらの研究が、その代表として挙げられます[3]。

ホッキョクグマが紫外線の下では黒っぽく見えることが、その根拠のように語られました[3]。寒い北極で暮らす動物が、白い毛で太陽の光を集めているのなら、話としてはとても魅力的です。

North American Bear Centerの解説によれば、1970〜80年代には、ホッキョクグマの毛が光ファイバーのように光を皮膚へ導くという説が広まっていた。紫外線の下でホッキョクグマが黒く見えることも、その根拠の一つとして語られたという[3]。

代表的な研究としてGrojeanらの1980年の論文が引かれる[3]。空洞の芯が紫外線を導波して黒い皮膚へ運び、集熱に役立てるという説である。

5. 1998年に、ある 人が ほんとうに はかった

5. 1998年、Koonが毛の中の光を直接測った

5. Koon(1998)── 光の減衰を直接測定し、導波説を否定

1998年、Koon(クーン)という 物理の 学者が、毛の 中を 光が どれだけ すすむかを、ちょくせつ はかりました[4]。

けっかは、光が すぐに よわく なって しまう、と いうものでした[4]。赤い 光は、毛の 中を 2.5センチメートルほど すすむと、もとの 10万分の 1より 少なく なったと つたえられて います[3]。

これでは 光の くだとして、ほとんど やくに たちません。「ひかりの くだ」として はたらく、という 考えは、この けっかでは ささえられませんでした。

つまり、「もっともらしい 話」でも、じっさいに はかって みると ちがう ことが あります。

予想ではなく、測ってみる

物理学者のDaniel Koonは、ホッキョクグマの毛で光がどれだけ弱まるかを直接測り、1998年に論文で報告しました[4]。可視光での減衰は、1ミリメートルあたり2〜8デシベルと大きく、紫外線を導くというGrojeanらの説は成り立たないとされました[4]。

数字にすると

North American Bear Centerは、赤い光が毛の中を約1インチ(約2.5センチメートル)進むと、0.001%未満しか届かなかったと紹介しています[3]。0.001%は10万分の1です。これは赤い光の話で、紫外線の値ではありません。

物理学者のブログも、光は短い距離で毛に吸収されてしまい、皮膚まで効率よく運ばれないと述べています[2]。毛は光を運ぶ管というより、光を散らす部品のようなものです。

Koon(1998)は、ホッキョクグマの毛の光学的減衰を直接測定した。可視光での減衰率は2〜8 dB/mmと大きく、Grojeanら(1980)が提案した紫外線の導波は成り立たないと結論した(Applied Optics 37巻、3198–3200頁)[4]。

数値の意味を計算で確かめる。2 dB/mmなら、光は1 mm進むごとに約63%、8 dB/mmなら約16%に減る。25 mm(約1インチ)では、2 dB/mmでも50 dB、つまり約10万分の1(0.001%)まで下がる計算になる。North American Bear Centerが紹介する「赤い光が約1インチで0.001%未満」という値[3]とおおむね一致する。ただしこれは赤色光の値であり、紫外線の測定値ではない。

物理学者の解説も、光は短い距離で毛に吸収され、効率よく皮膚まで導かれないとまとめている[2]。毛は導波路というより、光を散乱する要素として働くと理解される。なお、Koon論文の原文には当たれていない。数値は要旨の紹介と二次資料の一致に基づく。

6. まだ わからない ことは?

6. 説が消えたあとに残る問い

6. 残る問い ── 白い毛と黒い皮膚は何に役立つのか

ホッキョクグマは、紫外線しがいせんの 写真では 黒く 見え、ねつを にがしにくい ため せきがいせんでは 見えにくい、と しょうかい されて います[2]。おもしろい ことですが、これが 「光の くだ」の しょうこでは ありません。

黒い 皮ふが 太陽の ねつを 集めて いるのかも、どのくらい 役に たって いるのかも、はっきりとは わかっていません[2]。

物理学者のブログは、ホッキョクグマの毛皮は紫外線をよく吸収して紫外線写真では黒く見え、断熱性が高いため赤外線では見えにくい、と紹介しています[2]。ただし、これは光ファイバー説の証拠にはなりません。

数十年の研究のあとも、毛の構造が特別な光学的目的をもつのか、ありふれた構造的性質にすぎないのかは、科学者にも確信がない、とブログは結んでいます[2]。「白いのは太陽熱を集めるため」とも、「集めていない」とも、今は言い切れません。

説明が一つ消えたことは、終わりではなく、次の問いの始まりでもあります。

紫外線写真での黒さ、断熱性の高さゆえに赤外線で見えにくいこと[2]は、いずれも毛皮の吸収・散乱の性質の表れであって、導波の証拠にはならない。

物理学者のブログは、数十年の研究後も、毛の構造が特別な光学的目的をもつのか、ありふれた構造的性質なのかについて確信がもてないと述べる[2]。黒い皮膚が太陽熱の吸収にどの程度役立っているかも、確定していない。「白は保温のための適応」といった断定は、資料からは支持できない。

一つの説が直接の測定で退けられたことで、白い毛と黒い皮膚の役割は、あらためて問い直す余地のあるものになった。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちの さとうを、白い 紙の 上に すこし のせて 見て みましょう。ひとつぶ ずつは 白く 見えにくいのに、あつまると 白く 見えませんか。ルーペが あれば、よく 見て みましょう。

出かけてできること

どうぶつえんで ホッキョクグマが いたら、毛の 色を 見て みましょう。まっ白か、少し ちがう 色が まじって いるか、よく 見て みると おもしろいです。

くわしく 知りたい とき

日本科学未来館みらいかんの ブログに、ホッキョクグマの 毛の おはなしが あります。おうちの 人と 見て みましょう。

今日できること

台所のグラニュー糖や塩を、白い紙の上に少し広げてみましょう。一粒ずつは白く見えにくいのに、集めると白く見えます。ルーペがあれば、粒の面で光がはね返るようすが見えるかもしれません。

出かけてできること

動物園でホッキョクグマを見られたら、毛の色を近くでよく見てみましょう。まっ白か、少し黄色っぽい色が混じるか。見え方が季節や光のあたり方でどう変わるかも、面白いところです。

公式情報

日本科学未来館の科学コミュニケーターブログに、ホッキョクグマの肌と毛の話があります(出典[1])。まず日本語で読み、気になったら英語の資料へ進むと読みやすくなります。

今日できること

グラニュー糖や塩の結晶を白い紙に広げ、一粒では白く見えにくい粒が集まると白く見える様子を観察する。ルーペがあれば、粒の表面や内部で光が曲がる様子を確認できる。氷を砕いて白くなる現象と比べるのもよい。

出かけてできること

動物園でホッキョクグマの毛の色を観察する。飼育環境によって見え方が違うという二次資料の指摘もあるが、今回は原典まで確認していないため、断定はしない。

公式情報・原典

Koon (1998) Is polar bear hair fiber optic? Applied Optics 37(15): 3198–3200。要旨は出典[4]のURLで読める。日本語の入口としては、日本科学未来館のブログ(出典[1])がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

日本語の資料と、英語の資料・要旨を突き合わせている。英語の論文原文は確認できていないため、数値は要旨の紹介と二次資料の一致に基づく。

  1. 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ「ホッキョクグマの肌は真っ黒で、毛は透明なストロー。」 https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20131219post-231.html (毛は透明で中空、皮膚は黒い)
  2. Skulls in the Stars「Why is the polar bear white? The optics of polar bear pelts」(2023年) https://skullsinthestars.com/2023/05/14/why-is-the-polar-bear-white-the-optics-of-polar-bear-pelts/ (毛の構造、散乱で白く見える仕組み、残る問い)
  3. North American Bear Center「Myth: Polar Bears Are Solar」 https://bear.org/bear-facts/myth-polar-bears-are-solar/ (光ファイバー説の紹介、Koonの測定値の紹介)
  4. Koon, D. W. (1998) Is polar bear hair fiber optic? Applied Optics 37(15), 3198–3200. https://www.osapublishing.org/abstract.cfm?uri=ao-37-15-3198 (導波説を否定した測定の要旨)

なおした ところ

更新履歴

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