1. たつまきは、どのくらいの 大きさなの?
1. 竜巻より大きな回転が、雲の中にある
1. 竜巻の大きさと、親の雲の中の回転
たつまきは、積乱雲の 中の つよい 上昇気流が つくる、はげしい うずまきです。じょうごの 形や はしらの 形の 雲を ともなう ことが 多い、と 気象庁は せつめいします[1]。
ひがいの 出る はんいは、はばが 数十〜数百メートル、長さが 数キロメートルに あつまる ことが 多いとされます[1]。
じつは、たつまきの 親の 雲の 中には、もっと 大きな うずが あります。よこはばが 数キロメートルあり、「メソサイクロン」と よばれます[3]。レーダーでは、ちかづく 風と とおざかる 風が 左右に ならぶ もようから、さがします[3]。
では、この 大きな うずは、どこから 来るのでしょうか。
竜巻は、積乱雲に伴う強い上昇気流が生む激しい渦巻きで、多くは漏斗状か柱状の雲を伴います[1]。被害が出る範囲は、幅が数十〜数百メートル、長さが数キロメートルに集中することが多いとされます[1]。アメリカの気象機関SPCの説明では、続く時間は数秒から1時間超まで幅があり、ほとんどは10分に届きません[4]。
こうして見ると小さなものですが、親になる雲の中には、もっと大きな回転が隠れています。強い竜巻は、雲の中に低気圧性の回転(メソサイクロン)を持つ特殊な積乱雲から生まれます[2]。その直径は数キロメートルで、竜巻そのものより大きく、気象ドップラーレーダーで見つかります[3]。近づく風と遠ざかる風が左右に並ぶ模様から、回転の存在を推定します[3]。
では、この大きな回転は、どこから来るのでしょうか。
竜巻は、積乱雲に伴う強い上昇気流が生む激しい渦巻きで、多くは漏斗状または柱状の雲を伴う。被害の出る範囲は幅数十〜数百メートル、長さ数キロメートルに集中しやすい[1]。米国SPCは、持続時間が数秒から1時間超まで幅があり、ほとんどは10分未満だと説明する。ただしこれは米国の統計で、日本の竜巻にそのまま当てはめない[4]。
この小ささに対して、強い竜巻を生む積乱雲の内部には、低気圧性の回転メソサイクロンがある[2]。直径は数キロメートルで、竜巻より大きいため、気象ドップラーレーダーで検出できる。近づく風と遠ざかる風が左右に隣り合う模様が、存在の手がかりになる[3]。
では、竜巻よりずっと大きいこの回転は、何から生まれるのか。
2. うずの たねは、高さで ちがう 風
2. 回転のたねは、高さで変わる風
2. 鉛直シアが水平の回転を生み、上昇気流が立ち上げる
うずの たねは、空の 高さで かわる 風です。
たとえば、じめんの 近くでは ゆっくり、空の 上の ほうでは はやい 風が ふく、のように、高さで 風の 向きや 強さが ちがう ことが あります。気象庁は、空気が 上へ のぼりやすい ときに、この ちがいが 大きいと、たつまきが できやすいと しめします[2]。
風が 高さで ちがうと、よこ向きの 回転が 生まれます。そこへ つよい 上昇気流が 入ると、よこ向きの 回転が 持ち上げられて、立った 回転に なります。こうして 雲の 中ほどに できる 大きな うずが、メソサイクロンです[5]。
でも、雲の 中ほどの うずは、地面から 少し はなれています。たつまきに なるには、まだ もう1だんかい ひつようです。
3. 地面の 近くで、うずが 強く なる
3. 地面近くで、回転は約100倍に強まる
3. 下降流と角運動量保存 ── 地面近くの回転が増幅される
かみなりぐもの 中からは、つめたい 空気が 下へ むかって 流れ出ます。この 下向きの 風の まわりでは、空気の あたたかさに ちがいが できて、それが じめんの 近くに よこ向きの 回転を うむと いわれます。まわりの 風が、それを 立ち上げます[5]。
そして、空気が まん中へ あつまり、上へ すいあげられる とき、回転が およそ 100ばいに 強まると いわれます[5]。
ただし、これは 「回転の 強さ」の めやすです。風の はやさが 100ばいに なる わけでは ありません。
糸の 先に おもりを つけて 回し、糸を 指に まきつけると、おもりは どんどん はやく 回ります。まん中に あつまるほど 回転が 強まる、という 考え方は にています。ただし 本当の 空気は、糸では つながって いません。あとで、ためして みましょう。
下降流のまわりの温度差が、地面近くに回転を生む
竜巻づくりは、三段階で説明されます。第一段階が、前の章の、中層のメソサイクロンです。第二段階では、雨の降る側にできる冷たい下降流のまわりで、空気の温度差が地面近くに水平の回転を生みます。周りの風がそれを立ち上げ、地面のすぐ上に縦向きの回転ができます[5]。
中心へ集まると、回転が約100倍になる
第三段階は、引き伸ばしです。空気が中心へ集まり、上へ吸い上げられるとき、角運動量が保存される結果として、回転が約100倍に強まるとされます[5]。この「100倍」は回転の強さ(渦度)の増え方の目安で、風速が100倍になるという意味ではありません。
糸の先におもりをつけて回し、糸を指に巻きつけると、おもりが速くなるのと似ています。ただし、本物の空気は糸でつながっていないので、たとえはあくまで考え方の助けです。
第1段階は、前章で述べたメソサイクロンの形成である。第2段階は、冷たい下降流が担う。物理学の解説によると、地面近くで縦向きの渦度が育つには下降流が必要で、下降流のまわりの空気の温度差が地面近くに水平の渦度を生み、周囲の風がそれを立ち上げる[5]。第1段階の回転が上昇気流側でできるのに対し、第2段階の回転は下降流側で別に生まれる。
第3段階は、引き伸ばしである。空気が中心へ集まり、上へ吸い上げられると、角運動量保存により回転が約100倍に増幅される[5]。ここで注意したいのは、この約100倍が渦度(回転の強さを表す量)の増幅の目安であり、風速が100倍になる意味ではないことだ。たとえば糸の先のおもりを回し、糸を指に巻きつけて半径を縮めると回転が速くなる、という力学と同じ考え方で理解できるが、糸のように空気がつながっているわけではない。
こうして、数キロメートル規模の中層の回転と、地面近くで強まる回転が重なる。ただし、この三段階が全部そろっても、竜巻になるとは限らない。
4. かみなりぐもが あっても、たつまきに ならない ことの ほうが 多い
4. 回転する雷雲でも、竜巻になるのは多くて2割ほど
4. スーパーセルの大半は竜巻を生まない ── 未解明の引き金
回る かみなりぐもは、スーパーセルと よばれます。ここまでの 話を 聞くと、スーパーセルは かならず たつまきを 生む ように 思えます。でも、そうでは ありません。
アメリカの てんきの きかん SPCは、いちばん はげしい たつまきの 多くは スーパーセルから 生まれるが、スーパーセルの 多くは たつまきを 生まない、と せつめいします[4]。そして、たつまきの でき方を 「ぜんぶは わかって いない」と 書いて います[4]。
ある 見つもりでは、地面の 近くの 回転が たつまきの 強さまで 育たない スーパーセルが、8わり いじょう。なる のは、多くても 2わりほどです[5]。数は おおまかな めやすです。
なぜ 一部だけが なるのか。その 引き金は、まだ 分かって いません[5]。雨つぶや ひょうの 大きさが 下向きの 風に どう えいきょうするかも、研究の まっただ中です[5]。
米国のSPCは、最も破壊的な竜巻の多くは、レーダーでメソサイクロンが見える回転性の雷雲、スーパーセルから生まれると説明します。一方で、スーパーセルの多くは竜巻を生みません。SPCは、竜巻がどうできるかについて「完全には理解していない」とも述べています[4]。
物理学の解説では、地面近くの回転が竜巻の強さまで育たないスーパーセルは「おそらく80%以上」とされます。つまり、竜巻になるのは多くても2割程度という見積もりです[5]。数字は概算です。
引き金は、まだ分かっていない
この解説は、分かっていないこととして、竜巻が生まれる引き金となる過程、できた竜巻が続く仕組み、雨粒やひょうの大きさが下降流に与える影響などを挙げます[5]。下降流が強すぎても弱すぎても竜巻は生まれにくく、ほどよい強さが必要だと説明されています。予報でも、竜巻になりやすい環境は分かっても、個々の嵐が竜巻を出すかを当てるのは難しいとされます[5]。
米国SPCは、最も破壊的な竜巻の多くが、レーダーでメソサイクロンという明確な回転が見えるスーパーセルから生じる一方、スーパーセルの多くは竜巻を生まないと説明し、竜巻のでき方を「完全には理解していない」と述べる[4]。
数字としては、地面近くの回転が竜巻の強さまで強まらないスーパーセルが「おそらく80%以上」とされ、竜巻になるのは多くても2割程度と見積もられる[5]。ただし80%は概算で、観測条件や定義で変わりうる。ここから、メソサイクロンの存在は竜巻の必要条件に近いが、十分条件ではない、と読める。
では何が分かれ目になるのか。この解説は、竜巻発生の引き金となる過程、できた竜巻が持続する過程、雨粒やひょうの大きさが下降流に与える影響を、未解明の問題に挙げる。下降流は強すぎても弱すぎてもよくない、いわば「ちょうどよい」ぐあいが要る問題だとも表現される[5]。この結果、予報では竜巻になりやすい環境までは示せても、個々の嵐が竜巻を出すかの予測には限りがある。
5. 日本には、どれくらい たつまきが 来るの?
5. 日本では年に約25個。佐呂間町の雲をモデルで再現
5. 日本の発生数と、佐呂間町の積乱雲の再現
日本で たしかめられた たつまきは、1年に へいきんで 25こほどです。2007〜2015年の 数で、うみの 上は のぞきます[6]。アメリカは 1300こほど(2004〜2006年)。土地の 広さを そろえて くらべると、日本は アメリカの 半分ほどです[6]。
ただし、数え方で 数は かわります。うみの 上で おきて 上がらなかった ものは、気象庁の 年べつの 数に ふくまれて いません。2007年から スマホや SNSが ふえて、うみの 上の たつまきも 見つかる ように なりました。だから、年ごとの 多い・少ないは、そのまま くらべられません[7]。
日本の スーパーセルも しらべられて います。2006年11月に さろまちょうで おきた たつまきの 雲を、きしょうけんきゅうじょが コンピューターで もういちど つくって みました。すると、強い 上向きの 流れと 下向きの 流れが ペアに なった、スーパーセルの とくちょうが ありました[8]。
年に何個、確認されているか
気象庁の解説では、日本の竜巻の発生確認数は年平均約25個です(2007〜2015年、海上竜巻を除く)。米国は約1,300個(2004〜2006年)で、単位面積あたりに直すと、日本は米国の約半分です[6]。
ただし、数え方には注意が要ります。気象庁の年別集計は、水上で発生して上陸しなかった事例を除いています。2007年以降は携帯端末やSNSの普及で水上の事例の確認数が増えたため、年ごとの多い・少ないを単純には比べられません[7]。
日本のスーパーセルを再現する
気象研究所は、2006年11月の佐呂間町の竜巻をもたらした積乱雲を、数値モデルで再現しました。その結果、対になった強い上昇流域と下降流域を伴う、スーパーセルの特徴を持っていたと報告しています[8]。前の章の第一段階と第二段階が、日本の雲でも調べられている例です。
気象庁の解説によれば、日本の竜巻の発生確認数は年平均約25個(2007〜2015年、海上竜巻を除く)、米国は約1,300個(2004〜2006年)で、単位面積あたりでは日本は米国の約半分だ[6]。また、強さを示すFスケールが2段階上がると、確認数は米国で約10分の1、日本で約10分の1〜100分の1に減る[6]。
この数字には条件がつく。気象庁の年別集計は、水上で発生し上陸しなかった事例を除いている。2007年以降は携帯端末やSNSの普及で水上の事例の確認数が格段に増えたため、そのままでは年ごとの比較に向かない[7]。数は、定義と確認のしやすさで変わる量だと考えたほうがよい。
日本の事例でも、仕組みの研究は進む。気象研究所は、2006年11月の佐呂間町の竜巻をもたらした積乱雲をモデルで再現し、対となった強い上昇流域と下降流域を伴う、スーパーセルの特徴を持つことを報告した[8]。なお、竜巻の強さは、日本では建築物などの被害から評定する日本版改良藤田スケール(JEF)が2016年度から使われ、風速は被害から推定する[9]。つまり強さの数字は、風を直接はかったものではない。
6. 糸と おもりで、回る はやさが かわるのを 見てみよう
6. 糸とおもりで、回転が速くなるのを見てみる
6. 糸の実験と、気象庁の竜巻データを見るときの読みどころ
広い 場所で、まわりに 人や ものが ない ことを たしかめます。30センチほどの 糸の 先に、5円玉を 1まい むすびます。
糸の もう一方の はしを 指に 1まわり かけて、5円玉を ゆっくり 円を かく ように 回します。回して いる うちに 糸が 指に まきつくと、5円玉の はやさが どう かわるかを 見ます。
回す ときは、人の 顔の 近くで 回さない こと。おもりを ふりまわさない こと。糸が 指に きつく まきつく まえに、回すのを やめます。まきついた 糸は ひっぱらずに、そっと ほどきます。
気象庁の ホームページには、たつまきが おきやすい ばしょを しめす 「たつまきはっせいかくどナウキャスト」や、これまでの とっぷうの データも あります。自分の 町の ちかくで、どんな きろくが あるか、さがして みるのも おもしろいかも しれません。
広い場所で、周りに人や物がないことを確かめます。30センチほどの糸の先に、5円玉を1枚結びます。糸のもう一方の端を指に1回かけて、5円玉をゆっくり円を描くように回します。
回しているうちに糸が指に巻きつくと、5円玉の速さがどう変わるかを見てみましょう。人の顔の近くでは回さないこと、おもりを振り回さないことを守ってください。糸が指にきつく巻きつく前に回すのをやめ、巻きついた糸は引っぱらずにそっとほどきます。竜巻の空気は糸でつながっていないので、これは回転が縮むと速くなる、という考え方を試すものです。
竜巻のデータを見るなら、気象庁の竜巻発生確度ナウキャストや、突風のデータベースがあります。年別の数字は、水上の事例を除く、2007年から確認が増えた、といった条件つきです[7]。自分の住む地域の記録を探して、いつ、どんな突風が確認されたかを、条件ごと読むと、数字の見え方が変わります。
糸の先に5円玉を結び、糸の反対側を指にかけて円を描くように回すと、糸が指に巻きつくにつれて回転が速くなる。半径が縮むと速さが上がる、という角運動量保存の考え方の確認だ。安全のため、広い場所で人や物から離れ、おもりを振り回さず、顔の近くで回さない。糸が指にきつく巻きつく前に回すのをやめ、巻きついた糸は引っぱらずにほどく。本物の竜巻の空気は糸でつながっていないので、これは類推にとどまる[5]。
気象庁の日本語ページを開くなら、メソサイクロンの観測と発生条件は竜巻の基礎知識のページ[2][3]、日本の数字の条件は年別集計[7]が手がかりになる。まずメソサイクロンの図と説明を見比べ、レーダーで見える回転がこの記事の第1段階に当たることを確かめてみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:気象庁の解説、気象研究所の発表、米国の気象機関SPCのFAQ、物理学の解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 気象庁「竜巻とは(竜巻等突風の基礎知識)」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-1.html (竜巻の定義と大きさについて)
- 気象庁「竜巻発生確度ナウキャスト等の解説」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado2-1.html (メソサイクロンと発生しやすい条件について)
- 気象庁「メソサイクロンの解説」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado2-2.html (メソサイクロンの大きさとレーダーでの見え方について)
- NOAA Storm Prediction Center, Tornado FAQ。https://www.spc.noaa.gov/faq/tornado/ (スーパーセル、持続時間、理解の限界について。英語)
- Physics Today, What we know and don't know about tornado formation。https://physicstoday.aip.org/features/what-we-know-and-dont-know-about-tornado-formation (三段階の説明、約100倍、未解明の点について。英語、二次資料)
- 気象庁「藤田スケール(F)の解説」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-3.html (日本と米国の発生数、Fスケールごとの数について)
- 気象庁「竜巻等の突風データベース 年別発生確認数」。https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/tornado/stats/annually.html (年別の集計の条件について)
- 気象庁 気象研究所 報道発表「佐呂間町竜巻の再現実験」(2006年11月)。https://www.jma.go.jp/jma/press/0611/17a/mri20061117.html (佐呂間町の積乱雲の再現について)
- 気象庁 報道発表「日本版改良藤田スケールの策定」(2015年12月)。https://www.jma.go.jp/jma/press/1512/21a/jef_sakutei_H271221.html (強さの評定方法について)
なおした ところ
更新履歴
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