1. みみの なかに、なにが 見える?
1. 光にかざすと、耳の中に血管の地図がある
1. 耳の構造:中央の動脈と毛細血管の網
うさぎの みみは、とても うすく できて います。あかるい ところで 見ると、なかの 血管が すけて 見えます[1]。
まんなかに、ふとい 血管が いっぽん。そこから、あみの めのように ほそい 血管が ひろがって います。
うすい みみに、こんなに たくさんの 血管。なにか わけが ありそうです。
耳の中の血管の形
獣医師が監修した解説によると、ウサギの耳は薄く、明るいところで見ると、中央に太い血管(動脈)が1本通っています。そこから網の目のように、毛細血管が広がっています[1]。
薄い耳の中を、血がこんなに広く流れる。この形が、あとの章で出てくる「熱を逃がす」働きの土台になっています。
2. うさぎは、あせを かけないの?
2. 汗で冷やせないウサギの、もうひとつの手段
2. 汗腺の乏しさと、耳への放熱の依存
人は あつい とき、汗を かいて からだを ひやします。うさぎは、汗を だす ところが あまり はったつ して いません[1]。
そこで、みみに かぜを あてて、からだの ねつを そとへ だします。汗の かわりに、みみが がんばって いる のです。
汗の代わりに、耳に風
ウサギは汗腺が発達していないため、暑いときに汗で体を冷やすことができません。代わりに、耳に風を当てて熱を逃がし、体温を調節していると説明されています[1]。
この解説は、飼育しているウサギの暑さ対策として書かれたものです。耳が「体を冷やす場所」として働くことを、家庭向けに伝えています。
3. みみは、くるまの ラジエーター?
3. 熱い血を耳に流し、空気で冷ます
3. 血管拡張による放熱:気温が体温をわずかに下回るとき
くるまの エンジンは、はたらくと あつく なります。そこで ラジエーターに みずを まわして、かぜで ひやします。
うさぎの みみも、すこし にて います。からだの あつい 血が みみに ながれ、まわりの くうきに ねつを わたして、ひえた 血が もどって いくと せつめいされます[2]。ただし ほんとうは、みみは きかいでは なく、いきものの からだの いちぶです。
広がる血管、逃げる熱
砂漠にすむジャックウサギの耳を調べた資料には、こうあります。空気の温度が体温よりわずかに低いとき、耳の外側の血管が広がり(血管拡張)、体の熱が空気へ流れ出す[3]。
血管が広がると、耳に流れる血の量がふえます。熱い血が薄い耳の中を通り、外の空気にふれて冷やされます。車のラジエーターに似た働きだと説明されるのは、このためです[2]。
AskNatureの解説は、ジャックウサギ(Lepus californicus)で、周囲の気温が体温よりわずかに低いとき、耳の外側部の血管が拡張し、熱が空気へ流れ出るとまとめている[3]。血管拡張とは、血管が広がって流れる血の量が増える反応である。
耳が薄く、皮膚の近くを多くの血管が走る構造は、血液と空気との間の熱のやりとりに向くと考えられる。ただしこの解説は二次的なまとめであり、測定そのものは次章の原典に当たる必要がある。
4. さばくでは、どのくらい ねつを にがせる?
4. 気温30℃の砂漠で、耳が受け持つ熱の量
4. 放熱量の見積もり:30℃で代謝熱の全量に相当しうる
ジャックウサギは、あつい さばくに すむ うさぎです。おおきな みみが めだちます。
しらべた ひとたちは、気温が 30ど くらいの とき、みみから にげる ねつの りょうを、たいへん おおきく みつもりました。からだが つくる ねつを ぜんぶ にがせる ほどだと いわれます[3][4]。
ただし、これは みつもりです。いつでも ぜんぶ にがして いる わけでは ありません。
5. さむい ときは、どう する?
5. 暑さ寒さで、血の流れを切りかえる
5. 血流の切りかえ:1976年のScience論文の要旨から
ずっと ねつを にがして いたら、さむい ひは こまります。うさぎは、みみへ ながれる 血の りょうを、かえて いる らしいのです。
あつい ひは たくさん ながし、さむい ひは すこしに する。そういう しくみが、しらべられて います[5]。
ジャックウサギで見えた血流の変化
1976年、ヒルとベグテは科学雑誌『サイエンス』に、ジャックウサギの耳についての研究を発表しました。要旨によると、気温がおよそ1.4〜24℃のとき、耳への血流は絞られ、熱が逃げすぎないようになっていました。気温が体温より1〜9℃低いときは、血管が広がって耳が温められ、放熱が進みます[5]。
さらに気温が体温を4〜5℃上回ると、耳には気温より冷たい血が流れていました。外の熱が体に入りやすくなる向きの反応だと、要旨は書いています[5]。ただしこれは、一部の個体で見られた反応で、すべての個体がいつもそうだとは書かれていません。
飼育ウサギでも
実験に使われたウサギの生理学論文の要旨には、体の内部の温度が約2℃上がると、耳の血流が増え、その増加は能動的な血管の拡張によると書かれています[6]。
HillとVeghte(Science, 194巻, 436–438頁, 1976)の要旨は、ジャックウサギで、気温約1.4〜24℃では耳への血流が絞られて放熱が抑えられ、気温が体温より1〜9℃低いときは血管拡張で耳が温まり放熱が進み、気温が体温を4〜5℃上回ると耳に気温より冷たい血が流れて熱の流入が促される反応(要旨では heat influx を促す)と報告する[5]。これらは一部の個体で見られた反応であり、全個体で常にではない点に注意する。
実験用ウサギでも、耳の血流は体温調節に働き、体内温度が約2℃上がったときの耳の血流増加は能動的な血管拡張によると、Am J Physiol(1992)が報告している[6]。なお、今回はこの2件とも原文の全体ではなく要旨(検索で得た抜粋)を確認した。詳細な条件は原典で確かめてほしい。
6. みみは、おとも きいて いる?
6. 音を集める耳と、熱を逃がす耳
6. 聴覚との両立:長い耳の役割は一つとは限らない
もちろん、みみは おとも きいて います。うさぎの みみは、おとを あつめやすい かたちを して います[1]。
ひだりと みぎを べつべつの ほうへ むけて、まわりの おとを さぐります。てきが ちかづいて いないか、しらべて いる のです。
左右を別々の向きに
ウサギの耳は音を集めやすい構造で、左右の耳を別々の方向に向けて、周囲の音を聞くと説明されています[1]。天敵の位置を、音を頼りに探るためです。
耳が大きく長いことは、音を集めるにも、熱を逃がすにも役に立ちそうです。どちらが主な理由でこの形になったのかは、今回の資料からは決められません。両方の働きがある、というところまでが言えることです。
ウサギの耳は音を集めやすい構造で、左右を別々の方向に向けて音を聞き、天敵の位置を探る[1]。
耳が長い理由は、集音と放熱のどちらが主因かを今回の資料から断定できない。両方の働きがあるとするのが、資料と矛盾しない範囲の整理である。
7. さむい くにの うさぎは、みみが みじかい?
7. 寒い国のウサギは耳が短い、という傾向
7. アレンの法則(1877年):気候と耳の長さ
ゆきの おおい さむい ところに すむ うさぎは、あたたかい ところの うさぎより、みみが みじかい ことが あります[7]。
みみが ながいと、ねつが よく にげます。さむい ところでは、にげすぎない ほうが つごうが よいのかも しれません。
アレンの法則
1877年、ジョエル・アサフ・アレンが、寒い地域の動物は暑い地域の動物より、手足など体から突き出た部分が短く太い傾向がある、と述べました。これをアレンの法則といいます[7]。
その例として、寒い地域のユキウサギの仲間は、暖かい地域のウサギより耳が短いことが挙げられています。ただし、例外もある傾向であり、決まりごとのように言い切れるものではありません。
アレンの法則は、1877年にJ. A. Allenが定式化した生態地理学上の経験則で、寒冷な気候に適応した動物は、暑い地域の動物より四肢や突出部が短く太い傾向がある、というものである[7]。寒い地域のユキウサギ類(arctic hare)が暖かい地域のウサギ類より耳が短い例が挙げられる。
ただし経験則であり、例外がある。またこの記述はWikipediaの解説に依拠するため、ウサギの耳の長さと気温の関係の定量的な比較(種ごとの耳の大きさ、放熱の割合の違い)は、今回の資料では確認できなかった。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できる こと
うさぎの ように、うすい ところに 血が ながれて いるのを、じぶんの ゆびで 見て みましょう。くらい へやで、けいたいでんとうの ひかりを、ゆびの はらに よこから そっと あてます。あかく すけて 見えたら、血が ながれて いる あかしです。ひかりを あてる のは、すこしの あいだに して、めを ねらって ひかりを むけない ように します。
でかけて できる こと
どうぶつえんや ふれあい ひろばで うさぎに あったら、さわらずに、とおくから みみの むきを 見て みましょう。ひだりと みぎで、むきが ちがう かも しれません。
今日できること
暗い部屋で、携帯電話や懐中電灯の光を、指の腹に横からそっと当ててみましょう。赤く透けて見えるのは、薄いところに血が通っているためです。光を当てるのは短い時間にして、目に向けないようにします。
出かけてできること
動物園やふれあい広場でウサギを見たら、さわらずに、遠くから耳の向きを観察してみましょう。左右の耳が別々の方向を向いているかを見ると、耳の働きの一つと結びつけて考えられます。
資料を読むなら
放熱の話は、HillとVeghte(1976)の要旨([5])が原点になる。原文は本記事では未確認なので、図書館などで論文本体の測定条件を見てほしい。
観察のヒント
動物園や飼育場でウサギを見る機会があれば、さわらず、距離をとって耳の向きや色を観察できる。暑い日と涼しい日で、耳の向きや立ち方に違いがあるかを見比べるのも一つの手がかりになる。ただし個体差や状況によるので、傾向を断定しないこと。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[ ]は、下の資料の番号です。飼育向け解説は一般向けの説明、論文は要旨のみ確認した箇所があります。
- アニコム損保 うさぎとの暮らし大百科(獣医師監修)「うさぎの耳」 https://www.anicom-sompo.co.jp/usagi/2204.html (耳の構造・汗腺・音を集める働き)
- GEX「うさぎの体から考える(調節機能のある耳)」 https://www.gex-fp.co.jp/animal/blog/rabbit-columns/r071/ (耳の面積・ラジエーターにたとえる説明)
- AskNature, How Blood Flow Keeps Jackrabbits Cool https://asknature.org/strategy/how-blood-flow-keeps-jackrabbits-cool/ (血管拡張・放熱量の見積もり)
- National Geographic Education Blog, Creature Feature: Who has an ear for cool technology? https://blog.education.nationalgeographic.org/2015/11/12/creature-feature-who-has-an-ear-for-cool-technology/ (30℃前後の放熱の説明の突き合わせ)
- Hill, R. W.; Veghte, J. H. (1976) Jackrabbit Ears. Science 194: 436–438. https://www.science.org/doi/10.1126/science.982027 (要旨。血流の切りかえ)
- Neurogenic vasodilator control of rabbit ear blood flow. Am J Physiol (1992) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1350426/ (要旨。耳の血流と体温調節)
- Wikipedia, Allen's rule https://en.wikipedia.org/wiki/Allen%27s_rule (アレンの法則の定義と例)
なおした ところ
更新履歴
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