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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ながぐつは どうして 中に 水が はいって こないの?

長靴はなぜ水を通さないのか ── 素材と作り方

長靴はなぜ水を通さないのか ── ゴム・塩化ビニルの素材と、貼り合わせ・射出成形の製法

分野:技術

あめの 日、ながぐつで みずたまりに ざぶざぶ はいっても、足は ぬれません。でも、ふかい みずたまりで 水が 上の 口から はいると、中は いっぺんに びしょびしょ です。

かべからは はいらないのに、口からは はいる。ふしぎですね。ひみつは、ざいりょうと 作り方の 2つに ありました。

長靴で水たまりに入っても足はぬれないのに、水が履き口を越えたとたん、中は一気にびしょびしょになります。水を止めている壁は、すきまなくつながっていて、口だけが開いているわけです。

その壁は、何でできていて、どう作られているのでしょうか。ゴムの木の樹液から、19世紀の発明、北海道・小樽の工場の手作業まで、資料をたどって考えます。

長靴は、水たまりの中を歩いても壁からは水を通さず、履き口を越えた水だけが入る。止めているのは「水になじみにくい素材」と「壁がすきまなくつながる作り方」の組み合わせだと考えられる。

天然ゴムの成分[1]、加硫の発明[3]、貼り合わせて焼く製法[6]、射出成形[7]を出典つきで整理する。

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1. 水は どこから はいって くる?

1. 水が入るのは「壁」ではなく「口」から

1. 問いの整理 ── 壁は通さず、口は開いている

ながぐつの 中に 水が はいるのは、いつでしょう。水が 上の 口を こえた ときです。あしを ぬらす 水は、かべを とおって きたのでは ありません。

つまり ながぐつは、かべに 「あな」が ない ふくろのように なっています。この かべが 水を とおさない わけを、ざいりょうと 作り方に わけて 見て いきます。

長靴の中に水が入るのは、水位が履き口を越えたときです。足首のあたりの壁や底から、しみて入ってくるのではありません。壁がすきまなくつながった袋の、口だけが開いている形だからです。

そうだとすると、知りたいことは2つに分かれます。壁の素材はなぜ水を通しにくいのか。壁に穴が開かないよう、どう作っているのか。順に見ていきます。

長靴の水の入り方は、履き口の高さを水位が越えたときに限られる、と日常の経験から整理できる(この点を明記した公的資料は取得していないため、第7章の観察で確かめる形にした)。壁と底が連続した袋で、開口部が履き口だけという構造だ。

したがって問いは、(a)壁の素材がなぜ水を通しにくいか、(b)壁に穴ができないようにどう作られているか、の2つになる。以下、素材(第2・3章)、製法(第4・5章)、歴史(第6章)の順に見る。

2. ゴムの 木の しるは 水と なかよく ない

2. ゴムの木の樹液は、水になじみにくい

2. 天然ゴムの成分 ── 炭化水素という物質

ゴムの もとは、ゴムの 木から とれる しるです。その しるの 中の おもな ぶぶんは、水と なじみにくい なかまの ものだと せつめいされて います[1]。

水と あぶらを コップに 入れても、まざりませんね。ゴムの もとも、水とは まざりにくい ほうの なかまです。ただし ゴムは あぶらそのものでは ありません。

この しるで ふくや くつを 水から まもる くらしは、南アメリカに むかしから あったと つたえられます。1730ねんだいに、ヨーロッパへ しらされました[2]。

天然ゴムの主成分は、シス-1,4-ポリイソプレンという、炭素と水素だけでできた長い鎖状の分子(炭化水素)だと説明されています[1]。水と油がまざらないように、炭化水素は水になじみにくい仲間です。ゴムが水になじみにくいことは、長靴が水を通さない理由の一つと考えられます。ただし防水性は、素材だけでなく作り方や仕上げにもよります。

この樹液で服や靴を防水する習慣は、南米の先住民のあいだにあったといわれます。1730年代に、フランスのラ・コンダミーヌらがその様子をヨーロッパへ報告したと伝えられています(年は1735年とも1736年とも資料で揺れます)[2]。

天然ゴムの主成分は、分子量10万〜20万のシス-1,4-ポリイソプレンで、炭素と水素からなる炭化水素の鎖状高分子とされる[1]。水になじみにくい素材の一つであることが、水をはじく性質に関係すると考えられる。ただし長靴の防水性は、素材のほか構造や仕上げにも左右される。

ゴムの樹液で衣服や靴を防水する習慣は南米にあり、1730年代(資料により1735年または1736年)にラ・コンダミーヌらがヨーロッパへ報告した[2]。年が揺れるため本稿では「1730年代」にとどめる。

3. ゴムの くつは、あつい 日に べたべたに なった

3. 「暑いとべたつき、寒いと割れる」を直した発明

3. 加硫の発明 ── グッドイヤーと米国特許3633号

ゴムは、そのままだと こまった ことが ありました。あつい 日は べたべたに なり、さむい 日は かたく なって われます。ゴムの くつや ふくは、そんな ぐあいでした[3]。

1839ねんごろ、アメリカの グッドイヤーさんが、ゴムに いおうを まぜて 火で あつくすると、ちょうど いい ゴムに なると 見つけたと されます。1844ねんに、とっきょを とりました[3]。

ばらばらの ひもを ところどころ むすぶと、あみに なります。かたちが くずれにくく なるのと にています。ただし ほんとうは、目に 見えない ちいさな くさりの おはなしです[1]。

ゴムの靴や服は、夏に暑いとべたつき、冬に寒いと固まる、不安定なものでした。この問題に取り組んだのが、アメリカのチャールズ・グッドイヤーです。1839年ごろ、ゴムと硫黄を熱するとゴムが安定することを見いだしたとされ、1844年6月15日に米国特許3633号を得たと記録されています[3]。

加硫のしくみ

硫黄を加えて熱する処理を「加硫」といいます。鎖状の高分子どうしに橋がかかる「架橋」ができ、強く、しかも弾む性質(ゴム弾性)が出ると説明されています[1]。ばらばらのひもを結んで網にすると、形が崩れにくくなるのに少し似ています。

加硫前のゴム製の靴や服は、暑いと粘着し、寒いと硬化して割れるなど、性質が不安定だった。チャールズ・グッドイヤーは1839年ごろ、ゴムと硫黄を加熱するとゴムが安定することを見いだしたとされる。特許(米国特許3633号)の取得は別の出来事で、1844年6月15日である[3]。

硫黄で加硫すると鎖状高分子間に架橋ができ、強靱なゴム弾性を示すようになる[1]。ゴムが靴や服として実用に耐える条件が、この発明で整ったといえる。

4. ゴムの ながぐつは、はって やいて 作る

4. 貼り合わせて焼く長靴

4. ゴム長靴の製法 ── 型抜き・貼り合わせ・窯焼き

小樽おたるの 工場では、ゴムを のばして、かたを ぬき、はりあわせて、かまで やいて ながぐつを 作ります。1足ずつ、人の 手で 作る やり方です[6]。

ふつうの くつは、糸で ぬい合わせる ことが あります。糸を とおす ところには、小さな あなが あきます。ながぐつは、はって やいて つなぐ ものが あります。そういう ながぐつは、かべが すきまなく つながる ように 作られて いると 考えられます。ただし、ぬう ところが ある ながぐつも あり、せいひんに よって ちがいます。

この 工場では、1年に 10万足くらい 作ると しょうかいされて います[6]。

北海道・小樽の第一ゴムは、ゴムを伸ばし、型を抜き、貼り合わせ、窯で焼く工程で、一足ずつ手作業で長靴を作っています。この製法は80年以上変わっていないと紹介されています。年間の生産は約10万足です[6]。

布や革の靴は糸で縫うことが多く、針で開けた穴が水の通り道になりえます。貼り合わせて焼く長靴は、パーツを接着と加熱でつなぐ作り方です。縫い穴があるかどうかは製品によります(この資料には、貼り合わせと焼きのあとに縫製と防水検査の工程があるとも書かれています)。

この資料には、天然ゴムの比率が高いとしなやかで割れにくいとされる、という説明もあります[6]。

第一ゴム(小樽、1935年創業)は、ゴムを伸ばし、型を抜き、貼り合わせ、窯で焼く工程で、一足ずつ手作業で長靴を製造する。この製法は80年以上変わらないとされ、年間生産は約10万足という[6]。天然ゴムの比率が高いほどしなやかで割れにくいとも説明される。

糸で縫う靴では針穴が水の通り道になりうる。第一ゴムの例では、貼り合わせと加硫の後に縫製と防水検査の工程があるとされ、縫い穴の有無は製品ごとに異なる。縫い目を「なくす」と言い切れる製法ではなく、防水検査で確かめる工程が組み込まれている点が要点だ。

5. ビニールの ながぐつは、かたに 流しこむ

5. ビニール製の長靴は「一体成形」

5. 塩化ビニル製長靴と射出成形

ながぐつには、ゴムの ものの ほかに、ビニールの ものも あります。ビニールの ながぐつには、かなぐの かたに とかした ざいりょうを おしこんで 作る やり方が あります[7]。

かたの 中で ひとつづきの かたちに なるので、つぎめが すくなく なります。たとえば、ゼリーを かたに 入れて かためると、つなぎ目の ない かたちに なるのと にています。ただし 本当の ながぐつは、とても あつい ざいりょうを つかいます。

長靴の素材は、ゴム製とPVC(ポリ塩化ビニル)製が主流です。ビニール製には、金型に溶かした材料を流し込んで成形する「射出成形」で作る、インジェクション長靴と呼ばれるものがあります[7]。

金型の中で一つの形に固まるため、貼り合わせや縫い合わせの継ぎ目を減らせると考えられます。

長靴の素材はゴム製とPVC(ポリ塩化ビニル)製が主流で、PVC製には金型に材料を射出して成形するインジェクション長靴がある[7]。金型内で全体が一体に成形される製法であれば、縫製や貼り合わせの継ぎ目を減らせる、というのが本稿の解釈である(個々の製品の構造は製品による)。

6. ながぐつは、どう 日本まで きたの?

6. 革の長靴から、ゴム長、そして日本へ

6. ウェリントンブーツの系譜と日本のゴム靴

ながぐつの もとは、19せいきの はじめに、イギリスの ウェリントン公という 人が 考えた、かわの ながい くつだと いわれます。ゴムの ものが 作られたのは、1850ねんだいです[4]。

日本では、大正の ころ、小樽おたるで たびの そこに ゴムを はったのが、ゴムの しごとの はじまりと されます[5]。

ゴム長靴の由来は、19世紀初めにウェリントン公が考案した、膝下までの革の長靴にあるといわれます。ゴム製のウェリントンブーツが初めて作られたのは1850年代とされます[4]。公爵本人がゴム長を発明したわけではなく、先にあったのは革の靴です。

日本では、大正の初めごろ、小樽で足袋の底にゴムを貼り付けたのが北海道のゴム工業の始まりとされ、その後、ゴム靴の生産や修理を手がける会社ができました[5]。創業年などは資料でずれがあるため、ここでは「大正のころ」にとどめます。

ウェリントンブーツの原型は、19世紀初頭にウェリントン公が考案した膝下までの革の長靴で、ゴム製は1850年代に初めて作られた[4]。ゴム長を公爵本人が発明したという意味ではなく、革靴が先にあった点に注意したい。

日本では大正初期に小樽で足袋底にゴムを貼り付けたのが北海道のゴム工業の発祥とされ、のちにゴム靴の生産・修理を行う会社が生まれた[5]。創業年は資料により1916・1917・1919年と揺れるため、断定を避けた。

7. 水の どこから はいるか、たしかめよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

ながぐつが あったら、おうちの人と いっしょに、おふろの 水で ためして みましょう。

ながぐつの 口より ひくい ところまで、水の 中に しずめます。中は ぬれて いないでしょうか。口の 高さを こえたら、どうなるでしょうか。水が ふかい ところで こけないよう、ぬれても いい ばしょで、おうちの 人と いっしょに してください。

ながぐつの 中と そとを 見て、ぬい目が ないか さがして みるのも おもしろいです。うんどうぐつと くらべて みましょう。

今日できること

長靴があれば、浴室や庭の洗面器・バケツなど、ぬれてもよい場所で、履き口より低い深さまで水に沈めてみてください。中は乾いたままでしょうか。履き口を越えたらどうなるかも見てみましょう。履き口を越えると水が入ることが確かめられます。

長靴と運動靴を並べて、縫い目を探すのもよい観察です。糸の穴は見つかるでしょうか。

もっと調べるなら

小樽の第一ゴムなど、実際にゴム長靴を作る会社の紹介を読むと、貼り合わせて焼く工程の写真や説明が見られます[6]。

今日できること

長靴があれば、浴室などぬれてよい場所で、履き口より低い水位に沈めて内部が乾いているか確かめ、履き口を越えたときとの違いを観察する。運動靴と並べて縫い目や糸の穴の有無を比べるのもよい。

資料を読むなら

  • ゴムの成分と加硫:日本大百科全書「ゴム」[1]
  • 加硫の歴史:Charles Goodyear(Wikipedia英語版)[3]
  • 製法:小樽市の第一ゴム紹介資料[6]

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下の資料の番号と対応しています。Wikipediaは誰でも編集できるため、参考にとどめ、ほかの資料と合わせて読みました。

  1. 日本大百科全書「ゴム」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%82%B4%E3%83%A0-2815058 (天然ゴムの成分・加硫の説明)
  2. Wikipedia「ゴム」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%A0 (南米の防水の習慣と報告の年)
  3. Wikipedia: Charles Goodyear https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Goodyear (加硫の発明と特許)
  4. Bodmin Keep(博物館のページ) https://bodminkeep.org.uk/?p=8851 (ゴム製ウェリントンブーツの始まり)
  5. かいホッカイドウ「北の名人」 https://kai-hokkaido.com/kitanomeijin008/ (小樽のゴム工業の始まり)
  6. 小樽市 第一ゴム企業紹介 https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2021110400045/file_contents/print.pdf (貼り合わせて焼く製法・年間生産数)
  7. Wikipedia「長靴」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E9%9D%B4 (素材の種類と射出成形)

なおした ところ

更新履歴

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