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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

雨粒つぶは、えほんの ような しずくの 形を して いるの?

落ちてくる雨粒は、絵に描かれるしずく形をしているのか

雨粒の形はしずく形なのか ── 大きさで変わる形と、大きさの上限

分野:自然

てんきの マークや えほんの 雨は、しずくの 形に かかれます。けれど、ほんとうに 空から おちて くる 雨粒つぶは、あの 形では ありません。小さい 粒つぶは ほぼ 丸く、大きい 粒つぶは、ハンバーガーの パンのように 下が 平らに なります[1]。

もっと 大きい 粒つぶは、袋ふくろの ように ふくらんで、われて しまう と いわれます。では、だれが 雨粒つぶの 形を 決めて いて、なぜ 大きさに かぎりが あるのでしょう。雨粒つぶの 形を 決める 力と、大きさの かぎりが 分かります。

大きすぎる雨粒は、落ちるうちに袋のように膨らみ、やがて破れて小さな粒に分かれると報告されています[1]。天気予報のマークや絵本の雨は上がとがったしずく形ですが、本物の雨粒はあの形ではありません。小さい粒はほぼ球で、大きくなると下が平らな、ハンバーガーのバンズのような形になります。

では、粒の形は何と何の力で決まり、なぜ雨粒には大きさの上限があるのでしょうか。形を決める力のはたらきと、大きさの上限、その形を初めて写真で確かめた日本の研究が分かります。

大きすぎる雨粒は、落ちるうちに袋状に膨らみ、やがて破れて小さな粒に分かれるという[1]。絵やマークの雨粒は、上がとがった涙形で描かれる。しかしUSGS(アメリカ地質調査所)は、この形を大衆文化がつくった空想に近いものとし、本物の雨粒はほとんど似ていないと説明する。小さい粒はほぼ球、大きい粒は底が平らなバンズ形になる。

では、粒の形は何と何の力で決まり、なぜ雨粒には大きさの上限があるのか。表面張力と空気の押し上げの関係、資料ごとに数字が食いちがう理由、落ちている粒の形を初めて撮影で確かめた日本の研究が分かる。

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1. 雨粒つぶは、ほんとうに しずくの 形なの?

1. 絵のしずく形と、落ちてくる雨粒はちがう

1. 涙形という見慣れた形 ── 落下中の雨粒の実際の形

雨の 日の 絵を かく とき、上が とがった しずくの 形に する 人が 多いと 思います。でも、アメリカの 地面や 水を しらべる 役所(USGS)は、あの 形は 世の中で できた イメージで、ほんものの 雨粒つぶは ほとんど にて いない、と 言って います[1]。

では、どんな 形でしょう。小さい 雨粒つぶは、ほぼ 丸い 形です。大きく なると、下が 平らな ハンバーガーの パンのような 形に なります[1]。日本の てんきの かいせつでも、「おまんじゅうの 形」と 言われて います[2]。

どの くらいの 大きさから 平らに なるかは、資料しりょうに よって すこし ちがいます。直径ちょっけいが 2ミリ より 小さい うちは ほぼ 丸い、と する 資料しりょうが あります[1]。数字は、めやす です。

さて、丸い はずの 水の 粒つぶを、平らに して いるのは、なんでしょう。

雨の日の絵を描くとき、多くの人は、上がとがって下が丸い「しずく形」を描きます。アメリカ地質調査所(USGS)の解説は、この涙形を大衆文化がつくった空想のイメージとし、本物の雨粒はそれにほとんど似ていないと述べています[1]。

では実際の形はどうなのでしょうか。日本の気象予報士による解説では、降ってくる雨粒は「ティアドロップ型」ではなく「おまんじゅう型」で、落ちるときに空気の抵抗を受けてそうなるとされています[2]。

ただし、おまんじゅう型はすべての雨粒の形ではありません。小さな粒は表面張力のために、ほぼ球形です。USGSは半径1mm未満(直径2mm未満)を球形、それより大きいものをバンズに近い形としており、日本語版Wikipediaも直径2mmを境にしています[1][4]。一方、気象予報士の解説は、丸く見えるのは直径0.5mmくらい、おまんじゅう型になるのは直径5mm程度という別の目安を示しています[2]。数字は目安で、一つには決まっていません。

丸い水の粒が、落ちるうちに平らになる。そこでは何と何が引き合っているのでしょうか。

「雨粒はしずく形ではない」という主張は、どこまで確かなのか。USGSの解説は、涙形を大衆文化の空想とし、実際の雨粒はほとんど似ていないとする[1]。日本語の解説でも、降ってくる雨粒は「ティアドロップ型」ではなく「おまんじゅう型」で、落下中に空気の抵抗を受けてそうなるとされる[2]。英語圏と日本語圏の資料が、同じ方向を向いている。

ただし、「おまんじゅう型」はすべての雨粒の形ではない。粒の大きさで形が変わるからである。USGSは半径1mm未満(直径2mm未満)を球形、それより大きいものをハンバーガーのバンズに近い形とし[1]、日本語版Wikipediaも直径2mmを境にする[4]。ところが気象予報士の解説は、丸く見えるのは直径0.5mmくらい、おまんじゅう型になるのは直径5mm程度という別の目安を挙げる[2]。

同じ「丸い」でも、どこまでを丸いとみなすかで数字は動く。USGSが半径で書くことも、直径との取り違えを招きやすい。資料を読み比べるときは、半径か直径か、何を球形の上限としたのかを先に確かめたい。そのうえで、問いはこう変わる。丸い水の粒を、落ちるあいだに平らにするのは何なのか。

2. 丸い 粒つぶを 平らに するのは、なんの 力?

2. 表面張力と空気の押し上げが、綱引きをしている

2. 表面張力と空気圧の綱引き ── 速く落ちるほど底が平らになる

水には、できるだけ 小さく まとまって 丸く なろうと する 力が あります。これを 表面張力ひょうめんちょうりょくと いいます[3]。

雨粒つぶが 落ちて いる とき、下からは 空気が 押おし上げて います。小さい 粒つぶは ゆっくり 落ちるので、押おし上げも 弱く、表面張力ひょうめんちょうりょくが かって 丸い まま。大きい 粒つぶは 速く 落ちるので、下から つよく 押おされて 平らに なり、まん中が へこむ こともあります[1]。

水ふうせんを 手のひらに のせて、下から ぐっと 押おし上げた ところを 思いうかべて みて ください。まるい ふうせんが、平らに なります。ただし 雨粒つぶには ゴムの かわが ありません。水だけで できた 粒つぶを、表面張力ひょうめんちょうりょくが まとめて いるのです。

つまり 雨粒つぶの 形は、表面張力ひょうめんちょうりょくと 空気の 押おし上げの、つなひきで 決まります[1]。

USGSは、雨粒の形を決めているのは、水の表面張力と、落ちる粒の底を押し上げる空気の圧力との「綱引き」だと説明します[1]。

表面張力は、水が表面をできるだけ小さくしようとする性質です。球は、同じ体積のなかで表面積がいちばん小さい形なので、表面張力だけがはたらけば粒は球になります[3]。ScienceABCも、直径1mmほどより小さい粒は表面張力に支えられたほぼ完全な球だと述べています。

ところが、落ちている粒は下から空気に押されます。粒が小さければ落ちる速さも遅く、押し上げは弱いので、表面張力が勝って丸いままです。粒が大きくなるほど落ちる速さが増し、底にかかる圧力が大きくなって、底が平らになります。くぼみができることもあります[1]。

手のひらにのせた水風船を、下から押し上げるところを想像してみてください。丸かった風船は、押された面が平らになります。ただし雨粒にはゴムの皮がなく、水だけでできた粒を表面張力がまとめています。たとえはそこまでの話です。では、粒が大きいほど落ちる速さが増す、というのはどれくらいの速さなのでしょうか。

形を決めているのは、水の表面張力と、落ちる粒の底を押し上げる空気の圧力との綱引きだ、とUSGSは説明する[1]。表面張力は、水が表面積をできるだけ小さくしようとする性質で、同じ体積なら表面積が最小になるのは球である。ScienceABCは、直径1mmほどより小さい粒が、表面張力に支えられたほぼ完全な球になると述べる[3]。

落下する粒は下から空気に押される。小さい粒は落ちる速さが遅く、押し上げが弱いので、表面張力が形を保つ。粒が大きいほど落ちる速さは増し、底にかかる圧力が大きくなる。そのため底が平らになり、くぼみができることもある[1]。日本語の解説が「空気の抵抗を受けておまんじゅう型になる」と言うのも、同じことを別の言葉で言っている[2]。

このしくみを一言でいえば、粒が大きいほど落ちるのが速く、底の圧力が増して平らになる、という因果の連なりである。注意したいのは、「大きいから平ら」ではなく、「大きいと速い。速いと押し上げが強い」と間に速さが入っている点だ。では、粒が大きいほど速い、とは実際にどれほどの速さなのか。次の章で数字にしてみる。

3. 雨粒つぶは、どれくらいの 大きさで、どれくらい 速く 落ちるの?

3. 雲の中の水滴から雨粒へ ── 大きさと落ちる速さ

3. 雲粒の50〜1000倍 ── 雨粒の大きさと落下の速さ

雲の 中で できたばかりの 水の 粒つぶ(雲粒くもつぶ)は、とても 小さく、直径ちょっけいが 0.002〜0.04ミリ ほどです。雨粒つぶを ならすと、直径ちょっけいで 2ミリ ほど。雲粒くもつぶの 50ばい から 1000ばいです[4]。これは、資料しりょうの 数字を 使って わたしたちが 計算した 数字です。

0.5ミリ より 小さい 粒つぶが ふる 雨を、きりさめと よびます[4]。

落ちる 速さは、直径ちょっけいが 0.2ミリ なら 1びょうに 70センチ ほど。1ミリで 4メートル、2ミリで 6.5メートル、4ミリで 9メートルほどに なると いわれます[4]。6.5メートルは、50メートルを 8びょうくらいで 走る 速さです。大きい ほど 速く、4ミリ より 大きくなっても あまり かわりません。

速く 落ちる ほど、下から 強く 押おされます。それなら、もっと もっと 大きく なったら、どうなるのでしょう。

雨粒は、はじめから大きいわけではありません。雲ができたての水滴(雲粒)は半径1〜20µm(0.001〜0.02mm)、雨粒の平均は半径1mmほどとされます[4]。半径で比べると、雨粒は雲粒の50倍から1000倍にもなります。この倍率は、資料の数字から計算したものです。同じ資料には雨粒を直径1mm前後と書く別の表記もあり、平均は幅をもたせて読む必要があります。0.5mmに満たない粒が降る雨は、霧雨と呼ばれます。

落ちる速さは、粒が大きいほど増えます。日本語版Wikipediaに載る値を直径に直すと、直径0.2mmで秒速0.7m、1mmで4m、2mmで6.5m、4mmで9mほどとされます[4]。時速にすると、およそ2.5km、14km、23km、32kmになります。6.5mは、50mを8秒ほどで走る速さです。4mmを超えると、速さはほとんど変わらなくなります。

前の章の綱引きと重ねると、大きい粒ほど速く落ちて底を強く押され、平らになる理由が数字で見えてきます。では、粒がもっと大きくなると、綱引きはどうなるのでしょうか。

そもそも雨粒は、雲の中の水滴に比べてどれほど大きいのか。雲ができたての水滴(雲粒)は半径1〜20µm、雨粒の平均は半径1mm(1000µm)ほどとされる[4]。半径で比べれば50〜1000倍、体積にすれば約12万5千倍〜10億倍になる。これは資料の数字からの計算である。同じ資料には雨粒を直径1mm前後と書く別の表記もあるため、平均値は幅をもたせて読む。0.5mm未満の粒が降る雨は霧雨と呼ばれる。

粒が大きくなるほど落ちる速さが増し、その速さが形にも関係する。日本語版Wikipediaの終端速度は、半径0.1mm(直径0.2mm)で70cm/s、直径1mmで4m/s、直径2mmで6.5m/s、直径4mmで9m/s程度で、それ以上はほとんど変わらないとされる[4](資料は半径表記なので直径に直した)。時速に換算すると約2.5km、14km、23km、32kmである。

注目したいのは、速さの伸びが頭打ちになる点だ。直径2mmから4mmへ粒の大きさが2倍になっても、速さは6.5m/sから9m/sへ約1.4倍にしかならない。粒は大きくなるほど押し上げを強く受けるが、速さが増えにくくなるため、その増え方は鈍る。これを見て、「では、どこまで大きくなれるのか」という問いが出てくる。

4. 大きく なりすぎた 雨粒つぶは、どう なるの?

4. 大きすぎる雨粒は、袋のように膨らんで破れる

4. 袋状の分裂 ── 雨粒に大きさの上限がある理由

大きい 雨粒つぶは、下が 平らに なって、まん中が へこみます。もっと 大きく なると、その へこみが ふくろの ように 広がり、小さな 水の 粒つぶに わかれて しまいます[1]。

この ようすは、とても 速い カメラで うつされました。大きな 雨粒つぶは、はじめ パンケーキのように 平らに なります。つぎに 前がわに 空気を とりこんで、うら返した かばんのように ふくらみ、あるところで やぶれて、小さな 水の 粒つぶが たくさん できます[5]。

だから、とても 大きな 雨粒つぶは ふれません。袋ふくろに なって やぶれる 大きさが あるからです。こまかい 数字は 資料しりょうで ちがい、直径ちょっけいが 4〜9ミリの あいだの どこかです[1][3]。ふつうの 雨粒つぶは 0.2〜6ミリ ほど、いちばん 大きくても 8ミリ ほどと されます[4]。「われ はじめる 大きさ」と 「ふつうに 見られる いちばん 大きな 粒つぶ」は、べつの 場面の 数字です。

この 研究では、雨粒つぶの 大きさが ばらばらに なる わけも、こうして 大きな 粒つぶが 分かれる ことで 分かる と いわれます[5]。

大きな雨粒は、落ちるうちに底がへこみます。USGSによると、くぼみがほとんど爆発的に袋状に広がり、小さな水滴に分裂します。この分裂が起こる目安は半径約4〜4.5mm(直径8〜9mm)です[1]。

この過程は高速度撮影で記録されています。フランスの研究チームのヴィレルモーとボッサは2009年、大きな雨粒が落下とともにパンケーキ状に平たくなり、前面に空気を取り込んで「裏返したかばん」のような袋状に膨らみ、一定の大きさで破れて多数の小さな水滴になる様子を報告しました[5]。雨粒の大きさのばらつきは、この単独の雨粒の分裂で説明できるともいいます。

分裂が始まる大きさの数字は、資料によってちがいます。ScienceABCは直径4〜5mmほどで不安定になるとし[3]、日本語版Wikipediaは、雨粒の大きさは直径0.2〜6mmほどが普通で、最大でも直径8mm程度までとしています[4]。分裂が始まる目安と、ふつう見られる最大の大きさは、別の場面の数字です。直径4〜9mmの範囲のどこかと読むのが、いまの資料からいえる範囲でしょう。

ここまでの形の話は、どれも落ちている粒のものです。では、あの速さで落ちる粒の形を、人はどうやって見たのでしょうか。

雨粒には、大きさの上限があるのか。USGSによれば、大きな粒はまずへこみができ、そのくぼみがほとんど爆発的に袋状へ広がって、小さな水滴に分裂する。その目安は半径約4〜4.5mm(直径8〜9mm)だ[1]。粒が大きいほど速く落ちて底を押されるので、押し上げが表面張力の支えを上回る大きさが、どこかにあるということになる。

分裂の様子は高速度撮影で記録されている。ヴィレルモーとボッサ(Nature Physics, 2009)の報告によれば、大きな雨粒は落下とともにパンケーキ状に平たくなり、前面に空気を取り込んで「裏返したかばん」のような袋状に膨らみ、一定の大きさで破れて多数の小さな水滴に砕ける。雨粒の大きさのばらつきは、この単独の雨粒の分裂で説明できるという[5]。雨粒どうしがぶつかって割れるのではなく、一つの粒が自分で壊れる点が要である。

数字は資料で揃わない。ScienceABCは直径4〜5mmで粒が不安定になるとし[3]、日本語版Wikipediaは雨粒の大きさは直径0.2〜6mmほどが普通で、最大でも直径8mm程度とする[4]。USGSの8〜9mmと並べると、不安定になり始める大きさと、袋になって実際に破れる大きさが、資料ごとに別の場面を指している可能性がある。ここは資料の書き方からの読みで、原論文の数字で確かめる余地が残る。

いずれにしても、雨粒は「大きくなりたいだけなれる」ものではなく、大きくなりすぎれば自分で壊れる。では、こうした落下中の形を、人はどうやって見たのか。

5. 落ちて くる 雨粒つぶの 形は、どうやって しらべたの?

5. 落ちている粒の形を、初めて写真で確かめた研究

5. 孫野長治の撮影と、高速度撮影への道

雨粒つぶは 速く 落ちて、目では 形を たしかめにくい ものです。北海道大学の 研究者は、1951年に、落ちて いる 雨粒つぶを しゃしんに とり、まんじゅうの 形を 世界で はじめて たしかめた と されて います[4]。

その 研究の 論文ろんぶんは、1954年に 日本の きしょうの 学会の 本に のりました[4]。

それから 50年 あまり あと、2009年には もっと 速い カメラで、袋ふくろに なって やぶれる ところまで うつされました[5]。

見えない ものでも、カメラを くふうすれば 形が 分かります。そう やって、絵の しずくの 形と ほんものの 雨粒つぶの ちがいが はっきり しました。

落ちている雨粒は速く、目で追っても形ははっきり見えません。日本語版Wikipediaなどによると、北海道大学の孫野長治まごのちょうじが1951年に落下中の雨粒を撮影し、おまんじゅう形を世界で初めて確認したとされます[4]。

その成果をまとめた論文「On the Shape of Water Drops Falling in Stagnant Air」(静止した空気中を落ちる水滴の形)は、1954年に日本気象学会の英文誌に掲載されました。撮影は1951年、論文は1954年と、時期を取りちがえないようにしたい点です。

それから半世紀以上あとの2009年、前の章で紹介したヴィレルモーとボッサは、高速度撮影で、袋状に膨らんで破れるところまでを記録しました[5]。見えない速さの出来事も、撮り方を工夫すれば形が分かる、という流れです。

絵の中のしずく形は、何十年も前から見慣れた形です。それと本物の雨粒の形がちがうと分かったのは、こうした撮影の積み重ねがあったからです。

落下中の雨粒の形は、どのように確かめられたのか。日本語版Wikipediaによれば、北海道大学の孫野長治まごのちょうじが1951年に落下中の雨粒を撮影し、まんじゅう形を世界で初めて確認したとされる[4]。これは二次資料の記述であり、「世界で初めて」の根拠は原論文などで確かめる余地がある。

成果は論文「On the Shape of Water Drops Falling in Stagnant Air」(静止した空気中を落ちる水滴の形)として、1954年に気象学会誌(J. Meteor. Soc. Japan, Ser. II, 32(3), 59–68)に掲載された。撮影が1951年、論文が1954年という時間差を、混同しないようにしたい。同じ論文の誌名は資料によって表記が揺れるため、書誌は原典で確かめるのがよい。

それから半世紀以上を経て、ヴィレルモーとボッサは高速度撮影で、平たいパンケーキ状から袋状に膨らみ、破れて多数の小さな水滴になる一連の過程を記録した(2009年)[5]。1951年の撮影では、落下中の雨粒が平たい形になることが示された。2009年の高速度撮影では、袋状に膨らんで分裂する過程も記録された。

こう振り返ると、涙形という見慣れた絵と、実際の雨粒とのずれが、観察の積み重ねで修正されてきたことが分かる。ただし、どこで涙形のイメージが広まったのかは、この記事の資料からは示せない。そこを調べる道も、まだ開かれている。

6. 雨の 日に、水玉を さがして みよう

6. 雨の日に、窓や葉の水玉を見くらべる

6. 身近な水滴を手がかりに、資料の読みどころを知る

雨の 日は、外に 出ずに、まどの 中から 見て みましょう。まどガラスや、にわの 葉っぱに ついた 水玉を さがします。丸い 水玉は ありますか。しずくの 形に 見える ものは ありますか。大きい 水玉と 小さい 水玉で、形に ちがいは あるでしょうか。

ただし、これは ガラスや 葉に のって いる 水玉で、落ちて いる 雨粒つぶとは ちがう ものです。落ちて くる 雨粒つぶの 形は、目では 見えません。

もう 一つ。雨が ふって いる とき、きりさめと ふつうの 雨の ふり かたを 見くらべて みましょう。粒つぶの 大きさと 落ちる 速さが つながって いる はずです。外に 出る ときは かさを さして、ぬれた 道で ころばない ように 気を つけて ください。

雨の日には、窓の内側から、ガラスを伝う水滴や、庭の葉の上の水玉を探してみましょう。丸い水玉はありますか。しずくの形に見えるものはありますか。大きい水玉と小さい水玉で、形にちがいはあるでしょうか。

ただし、ガラスや葉の上の水滴は、重力やガラスとの触れ方で形が決まり、落ちている雨粒とは別物です。落ちている雨粒の形は、目では見えません。それでも、小さい水ほど丸くまとまろうとする様子は、水玉を通して想像する手がかりになります。

霧雨と普通の雨を見くらべるのも、手軽な観察です。粒の大きさと落ちる速さの関係を、降り方から感じてみてください。外に出るときは傘をさし、濡れた道で滑らないよう気をつけましょう。

もう少し調べたい人には、日本語の資料として、日本語の気象予報士の解説[2]や、日本語の研究ハイライト記事[5]があります。

身近な水滴を観察するとき、窓ガラスの水滴や葉の上の水玉は、落下中の雨粒とは条件がちがう。ガラスや葉に接している水は、重力と面との触れ方で形が決まる。観察は、条件の異なる現象を並べて比べる練習にはなるが、雨粒の形そのものの確認にはならない。

資料の読みどころは三つある。①USGS[1]は英語だが、雨粒の大きさごとの形と分裂の目安がまとまっている。半径表記である点に注意する。②日本語版Wikipedia[4]は、粒の大きさと終端速度の値が表になっている。これも半径表記で、読むときは直径との取り違えを避けたい。③ヴィレルモーとボッサの報告[5]は、日本語の研究ハイライト記事で、分裂の様子と研究の要点が読める。

確かめる価値のある問いも残っている。資料ごとに異なる「球形の上限」や「分裂の大きさ」は、何を測り、どう定義した数字なのか。また、涙形の絵がいつ、どこで定着したのかは、本稿の資料では示せない。観察の延長に、資料の数字の定義を読みくらべる道がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:公的機関の解説、百科事典の記述、論文のハイライト記事、解説サイトを使った。何に使ったかは、それぞれの項目に書いている。数字は目安として扱い、資料でちがうところは並べて示した。

  1. USGS Water Science School「Raindrops are Different Shapes」。https://www.usgs.gov/water-science-school/science/are-raindrops-shaped-teardrops (涙形が空想であること、大きさごとの形、表面張力と空気の綱引き、分裂について。半径表記)
  2. tenki.jp 解説(気象予報士)。https://tenki.jp/suppl/tenkijp_labo/2019/07/12/29258.html (おまんじゅう型と、大きさの目安について)
  3. ScienceABC「What Is The Shape Of A Raindrop?」。https://www.scienceabc.com/pure-sciences/shape-falling-raindrop-pressure-sphere-surface-tension-hydrostatics-aerodynamics-gravity-myth.html (表面張力と球形、大きさの目安について。解説サイト)
  4. Wikipedia日本語版「雨」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A8 (雲粒・雨粒の大きさ、終端速度、孫野長治の撮影(論文の書誌はJ-STAGEの書誌情報による)について。百科事典の記述)
  5. Nature Asia 研究ハイライト(Villermaux & Bossa, Nature Physics 5, 697, 2009)。https://www.natureasia.com/ja-jp/phys-sci/research/445 (大きな雨粒の袋状の分裂について。ハイライト記事の要約を読んだ)

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