1. せなかの でこぼこは、なんの ため?
1. 背中に当たる面が、平らではないわけ
1. 背あての凹凸 ── 目的は一つに決められない
ランドセルの せなかがわを 見ると、たいらでは なく、でこぼこ して います。なにも ない ほうが、かんたんに つくれそうです。
ある メーカーは、1ねんせいから 6ねんせいまで、いつでも よい しせいを たもちやすい ように、この かたちを かんがえたと せつめいします[1]。ほかにも、かぜが とおる ように、せなかに ぴったり あう ように、など いくつかの せつめいが あるようです。
では、せなかに あてる ぶぶんの つぎは、なにが だいじなのでしょう。
ランドセルの背中側を触ると、たいらな板ではなく、山や谷のような凹凸があります。平らなほうが簡単に作れそうなのに、なぜでしょうか。
あるメーカーは、1年生から6年生まで、どの時期でも良い姿勢を保ちやすくするために開発した形、と説明しています[1]。このほかに、通気や、背中への密着を理由に挙げる説明も見かけます。目的は一つに決まっているわけではなさそうです。
背中に触れる面のつぎに気になるのは、肩にかかる部分です。
背あての凹凸について、メーカーは「1年生から6年生のあらゆる時期に良い姿勢を保ちやすくするために開発した」と説明している[1]。ただしこれは一社の説明で、通気・密着・姿勢など、複数の目的を挙げる説明も存在する。目的は一つに決められない。
いずれの説明でも、背中側の形は「体に当たる面をどう作るか」の問題である。では、荷重を最も直接に受ける肩ベルトは、どう工夫されているのか。
2. かたひもの ねもとは、なぜ たつの?
2. 肩ベルトの根元を立ち上げた理由
2. 立ち上がる肩ベルト ── 「体感重量」を下げる設計
かたひもが ぺたんと ねて いると、かたと せなかの あいだに すきまが できやすく なりそうです。すきまが あると、ランドセルが うしろへ ひっぱられる ように かんじそうです。
セイバンと いう メーカーは、ひもの ねもとを たたせて、かたと せなかに ぴたっと つけると、おもさが たかい ばしょで ささえられ、かるく かんじると せつめいします[2]。
ニュースイッチと いう しんぶんの きじでは、この しくみの ランドセルが 2003ねんに うられ、だいひっとに なったと つたえて います[3]。ただし、ほんとうに かるく なるのでは なく、かんじかたの はなしです。
では、どうして ぴたっと つくと、かるく かんじるのでしょう。
肩ベルトが根元でぺたんと寝ていると、肩と背中の間にすき間ができやすくなります。すき間があると、ランドセルは体から離れて、後ろに引っ張られるように感じそうです。
これに対して、セイバンは肩ベルトを根元から立ち上げて、肩と背中の密着度を高める形をとっています。メーカーの資料では、高い位置で重心が安定して体感重量が軽くなる、と説明されています[2]。ニュースイッチは、この形の「天使のはね」が2003年に発売され、大ヒットしたと報じています[3]。
ここで大事なのは「体感」という言葉です。実際の重さが減るのではなく、感じ方を変える工夫です。なお、この形を最初に考えたのがこのメーカーかどうかは、今回の資料では分かりません。
では、ぴたっと合うと、なぜ軽く感じるのでしょうか。
3. おなじ おもさなのに、ちがって かんじるのは?
3. 「体に合う」と重さ感が変わるという説明
3. 荷重の分散 ── 特許公報が述べる長さと重さ感の関係
かばんの ひもが かたの いちぶだけに くいこむと、そこだけ いたく なります。ひもが からだ ぜんたいに あたって いれば、ちからが ちらばります。
とくきょの しょるいに、ひもの ながさが ちょうど よく、ひもの ほとんどが からだに ぴったり つけば、おもさが からだ ぜんたいに かかり、おもく かんじにくい、という せつめいが あります[4]。
あるメーカーの ひもは、かたから わきばらに そって まるく そって いて、からだに あたる ひろさを ふやす ように つくられて います[2]。
ただし、とくきょの せつめいで、じっけんで たしかめた けっかでは ありません。
細いひもが肩の一部にだけ食い込むと、そこだけ痛くなります。同じ重さでも、広い面で支えれば、一か所あたりの負担は小さくなります。
2016年に公開された特許公報には、肩ベルトの長さが合っていて、ベルトのほぼ全体が体にフィットしていれば、荷重が体全体に加わって、児童が受ける重さ感は少なくなる、という趣旨の記述があります[4]。
形の面では、あるメーカーのベルトは内側を長く外側を短くした湾曲形状にして、肩からわき腹に沿って密着させ、体との接地面積を広げて負荷を分散させる、と説明しています[2]。
これらは特許やカタログの説明で、実験で効果を測った結果ではありません。「広く支えると楽に感じやすい」という考え方の一例として読むのが安全です。
では、肩ベルトが体に合っているかどうかは、何で決まるのでしょうか。
特許公報(2016年公開、JP3205606U)は、肩ベルトの長さが最適で、ほぼ全体が児童の体にフィットしていれば、ランドセルの重量による負荷は体全体に加わり、児童が受ける重さ感は少なくなる、という趣旨を述べる[4]。荷重を受ける面積が広がれば、単位面積あたりの圧力は下がる、という素朴な力学に沿った説明である。
形状の面では、メーカーは肩ベルトの内径を長く外径を短くしたわん曲形状にして肩からわき腹に沿わせ、接地面積を広げて負荷を分散させると説明する[2]。
ただし、どちらも公報やカタログの記述であり、効果を測定した結果ではない。「合っていれば楽になる」は仮説として妥当だ。では、「合わせる」とは、成長する体に対してどういうことか。
4. 1ねんせいと 6ねんせい、にもつの おもさは?
4. 6年間で体が変わる ── 長さ調節の意味
4. 学年による携行重量の体重比と、調節・交換できる肩ベルト
1ねんせいの からだは ちいさく、6ねんせいの からだは ずっと おおきいです。おなじ ランドセルを 6ねん つかいます。
むかしの ちょうさでは、かばんと べんきょうの どうぐを あわせた おもさが、たいじゅうの なんパーセントに なるか しらべられました。1ねんせいは 14.8%、4ねんせいは 11.2%、6ねんせいは 9.0%でした[5]。ちいさい 1ねんせいほど、じぶんの からだの おもさに くらべた にもつは おおきかったのです。
だから かたひもの ながさを かえられる ことは、だいじです。かたひもを とりかえられる ランドセルを うる メーカーも あります[6]。
1年生と6年生では、体の大きさがまるで違います。それでも、同じ形のランドセルを6年間背負います。
日本家政学会誌に載った調査では、通学かばんと学習用具を合わせた携行重量が体重に占める割合は、1年生で平均14.8%、4年生で11.2%、6年生で9.0%でした[5]。この平均の割合を当てはめると、1年生で体重20kgなら約3kg、6年生で40kgなら約3.6kgという計算になります。荷物の重さは6年生のほうが重くても、体に対する割合は1年生のほうが大きいことになります。
この調査は1990年代の論文に載ったもので、今の数字とは限りません。同じ研究では、荷重の圧力が肩の中央部と腰の背骨のあたりに大きくかかり、学習用具が重いほど大きくなる、とも報告されています。
だからこそ、成長に合わせて肩ベルトの長さを調節できることが大切になります。2018年には、肩ベルトそのものを取り替えられるランドセルも売り出されました[6]。
ところで、荷物を「支える」だけでなく、動いたときはどうなるのでしょうか。
森らの調査(日本家政学会誌50巻9号)によると、通学かばんと学習用具を合わせた携行総重量の体重比は、1年生が平均14.8%、4年生が11.2%、6年生が9.0%であった[5]。この平均比を当てはめると、体重20kgの1年生なら約3.0kg(20×0.148)、40kgの6年生なら約3.6kg(40×0.09)になり、絶対量は上級生のほうが大きいが、体に対する割合は低学年のほうが高い。荷重圧は肩の中央部と腰椎部に大きくかかり、学習用具が重いほど大きいとも報告される。
ただし、この研究は巻号から1990年代のもので、現在の携行重量の実態とは限らない。
体格の差が大きい6年間、同じ肩ベルトを使うのだから、長さ調節が前提になる。さらに、2018年には肩ベルトを交換できる製品も発売され、成長に合わせて取り換えられるとうたわれた[6]。長さを合わせても、動くとベルトと体の関係は変わる。それを扱った研究がある。
5. はしると、ランドセルは どうなるの?
5. 走ると、ランドセルは遅れて肩を引っ張る
5. 動的な荷重 ── ジョギング時の遅れとダンパー式ストラップ
ランドセルを せおって はしると、ランドセルは からだと すこし ずれて ゆれます。からだが あがった とき、ランドセルは まだ さがって いて、かたを ひっぱる ことが あります。
ランドセルの メーカーの ひとも ふくむ、にほんの けんきゅうで、しょうがくせい 6にんが きょうりょくして、ジョギングを した ときの ようすを しらべました。ふつうの かたひもは、うごきが おくれましたが、ばねの ような しくみを つけた ひもは、おくれが ぐんと みじかく なりました[7]。
ただし、6にんの ちいさな じっけんです。ぜんぶの ランドセルに あてはまるとは いえません。
ランドセルを背負って走ると、体は上下に動きますが、ランドセルは少し遅れて動きます。体が上がったときにランドセルは下がったまま、というずれが生まれると、肩が引っ張られます。
ランドセルメーカーの関係者を含む日本の研究者たちの報告では、小学生6人が協力したジョギングの実験で、従来型の肩ベルトはランドセルの動きが体の動きに遅れましたが、新しく発明されたダンパー(衝撃をやわらげる部品)付きのストラップでは、その遅れが大幅に短くなりました[7]。
ただし6人という小さな実験なので、一般化はできません。それでも、「長さを合わせる」だけでなく、動きの中でランドセルを体になじませる工夫も、研究されていることが分かります。
石原らの報告(著者にランドセルメーカー榮伸の関係者を含む)は、従来型ランドセルの肩ベルトでは、ジョギング時に体の上下動に対してランドセルの動きが遅れ、肩を引っ張る、と述べる。児童6人による測定では、ダンパー式ショルダーストラップにすると、この遅延時間が大幅に短縮された[7]。
これは静止時の密着とは別の問題である。立ち上げや湾曲で体になじませても、走る・歩くときには荷物と体が別々に動くため、その差を吸収する仕組みが要る。ただし被験児6人の小規模な実験で、ここから一般的な効果は読み取れない。
ここまでの工夫は、荷物を「どう背負うか」の話だった。では、荷物そのものはどうなのか。
6. にもつが ふえたら、どうする?
6. 荷物が増えた今、背負い方の工夫にできること
6. 携行品の増加と2018年の文部科学省事務連絡
ランドセルの くふうは、せおいやすく する ことでした。でも、なかみが ふえれば、その くふうにも かぎりが あります。
ランドセルを つくる ある メーカーは、べんきょうの どうぐが ふえて、10ねんくらいで ランドセルが やく 35%も おもく なったと はっぴょうしました[6]。ただ、なにと くらべた かずかは わかりません。
2018ねん、くにの きょういくを あつかう やくしょは、がっこうに、もちかえる ものと、がっこうに おいて おく ものを かんがえて ほしいと つたえました[8]。せおいやすい ランドセルと、へらした にもつ。りょうほうで からだを まもる かんがえ方が あります。
肩ベルトをどれだけ工夫しても、中身が増えれば重くなります。ランドセルを作るあるメーカーは、学用品が増えたため、約10年でランドセルが約35%重くなったと発表しました[6]。ただし、これは企業発表の数字で、何と何を比べたのかは資料から分かりません。
文部科学省は2018年9月6日付の事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」で、教科書などが過重になると身体の健やかな発達に影響しかねないという懸念があるとして、各学校に持ち帰るものと置いていくものを検討するよう求めました[8]。
ランドセルの工夫は、背負ったときの負担を減らす方向。荷物を見直すのは、そもそもの負担を減らす方向。この二つがそろって、体を守る考え方になるようです。
肩ベルトの形状や長さを最適にしても、荷重そのものが増えれば負担は増す。羅羅屋は、学用品の増加によりランドセルが約10年で約35%重くなったと述べるが[6]、比較の基準は資料から不明であり、企業発表の数字として扱う。
文部科学省は、2018年9月6日付の事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」で、教科書等の過重が身体の健やかな発達に影響しかねないとの懸念や保護者等の声を挙げ、各学校に、持ち帰るものと学校に置くものを検討するよう求めた[8]。
背あて・肩ベルト・長さ調節は「同じ荷物をどう体に載せるか」の工夫、携行品の見直しは「荷物そのものを減らす」対応である。二つは別の層の対策で、片方だけで足りるとは限らない。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちで できること
ランドセルや リュックが あれば、おうちの ひとと いっしょに ためして みましょう。ほんを すこしだけ いれて、かたひもを ながめに した ときと、ちょうど よい ながさに した ときを せおいくらべます。むりに おもく しません。かんじかたは ひとに よって ちがい、せいかいは ありません。
おでかけで できること
おみせや がっこうで、ランドセルの せなかがわを 見くらべて みましょう。でこぼこの かたちは、どれも おなじでしょうか。
こうしきの じょうほう
ランドセルこうぎょうかいの サイトに、えらびかたの あんないが あるそうです。
おうちでできること
ランドセルやリュックがあれば、大人と一緒に試してみます。本を少しだけ入れて、肩ベルトをゆるめにしたときと、体に合わせたときを、背負い比べます。無理に重くはしません。感じ方は人によって違うので、正解はありません。
おでかけでできること
お店や学校で、ランドセルの背中側の凹凸を見比べてみます。形は、どれも同じでしょうか。
公式情報
ランドセル工業会のサイトには、選び方や背負い方の案内があります。文部科学省の通知は、トップページから探せます。
おうちでできること
ランドセルやリュックに、本を少量入れて、肩ベルトの長さを変えながら背負い比べる。重さ感がどう変わるかを、自分の言葉で書き留めてみるとよい。感じ方には個人差があり、無理な重さにはしない。
おでかけでできること
店頭や学校で、背あての凹凸や肩ベルトの根元の形を複数見比べ、資料の説明(姿勢・通気・密着)と照らして、どの目的に近いかを考える。
公式情報
ランドセル工業会、メーカーの公式資料、文部科学省の通知、特許公報(J-PlatPat、Google Patents)を読み、体感を示す実験データがあるかを探してみるのもよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
メーカーの説明(カタログ)と特許公報は、効果を測った実験結果とは限らない。体格別の携行重量の調査は古いため、今の数字とは限らない。背あての目的の一次資料の突き合わせはできていない。
- All About「天使のはねランドセルの背負い機能」 https://allabout.co.jp/gm/gc/407883/ (背あての凹凸に関するメーカーの説明)
- セイバン 2026年版カタログ https://www.seiban.co.jp/cdn/shop/files/20250624__2026.pdf (肩ベルトの立ち上げ・湾曲形状の説明)
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)セイバンの記事 https://newswitch.jp/p/23855 (2003年発売と大ヒット)
- JP3205606U ランドセルの肩ベルト上端取付環(Google Patents) https://patents.google.com/patent/JP3205606U/ja (肩ベルトの長さと重さ感の記述)
- 森ほか「小学生の学習用具の携行方法と負荷について」日本家政学会誌50(9) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/50/9/50_9_949/_article/-char/ja/ (学年別の携行重量の体重比)
- 羅羅屋 プレスリリース(リセマム) https://resemom.jp/release/prtimes/20180419/42393.html (肩ベルト交換型・約35%重くなったという企業発表)
- 石原ほか 子供用通学バッグ ダンパーショルダーストラップ(日本人間工学会) https://www.ergonomics.jp/official/wp-content/themes/kougaku/images/gpdb/gp-157-paper.pdf (ジョギング時の動きの遅れ)
- 文部科学省 事務連絡「児童生徒の携行品に係る配慮について」(2018年9月6日) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/keikohin/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/1408967_001_1.pdf (携行品への配慮の要請)
なおした ところ
更新履歴
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