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クラリーノは、まぜた いとから かたほうを ぬいて うまれた?

クラリーノは、混ぜた繊維から片方を抜く発想で生まれた ── 人工皮革ができるまで

クラリーノの発想 ── 混合紡糸のあとで一方を除く着想と、ひび割れ・汗劣化を越えた開発

分野:技術

ランドセルや くつに つかわれて いる「クラリーノ」は、1964ねんに クラレと いう かいしゃが かいはつした、せかいはじめての じんこうひかくと されて います[2]。

その もとに なった ひらめきは、「まぜて いとに したあと、かたほうを ぬいたら どうなる?」でした。ぬいてしまって、どうして よい ざいりょうに なるのでしょう。この きじを よむと、かわに にせて つくる みちすじと、あせで しっぱいした はなしと、なまえに こめた ねがいが わかります。

ランドセルや靴に使われるクラリーノは、クラレが1964年に開発した、世界初の人工皮革とされています[2]。その出発点にあったのは、「2つの素材を混ぜて糸にしたあと、片方をわざと抜いたらどうなるだろう」という発想でした[1]。

せっかく混ぜたものを抜いて、なぜ良い素材になるのでしょうか。この記事を読むと、革に近づけるための作り方の考え方、ひび割れと汗による劣化という失敗、名前に込められた願いが分かります。

人工皮革クラリーノは、クラレが1964年に開発した世界初の人工皮革とされる[2]。開発の転機は、2種類のポリマーを混ぜて紡いだ繊維から、あとで一方を抜くという着想だったと同社は伝えている[1]。

なぜ、混ぜたものを抜くことが解決になったのか。さらに、靴の屈曲部のひび割れや汗による劣化はどう乗り越えられたのか。この記事を読むと、天然皮革に近づける発想、製造の原理、失敗の背景、命名に込めた意図が分かる。

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1. かわに にた ざいりょうって、ほんものの かわと なにが ちがうの?

1. 「人工皮革」は、本物の革とも「合成皮革」ともちがう

1. 人工皮革・合成皮革・天然皮革 ── 構造のちがいから整理する

ランドセルを かるく する ことが もとめられていた ころ、クラリーノが ランドセルに はいりました。1967ねんごろの ことだと いわれます[4]。

ところで、にた なまえに「ごうせいひかく」も あります。こちらは、ぬのの ひょうめんに うすい じゅしを ぬった、ふたつの そうの ざいりょうです。クラリーノの ような「じんこうひかく」は、ふしょくふと いう ぬのの なかに じゅしを しみこませた ものと されます[5]。

では、「ふしょくふ」って なんでしょう。つぎは、その もとに なった いとの はなしです。

ランドセルが教材の大型化で重くなり、軽くすることが課題になっていた1967年ごろ、クラリーノがランドセル業界に入ったと説明されています[4]。

似た名前に「合成皮革」がありますが、構造がちがうと説明されます。合成皮革は、布の表面に薄い樹脂(ポリウレタンや塩化ビニル)をコーティングした二層構造です。一方、クラリーノのような人工皮革は、不織布に樹脂を含ませた三次元的な構造で、天然皮革に近い風合いと通気性をもつとされます[5]。

では、不織布とは何で、その中身はどんな繊維なのでしょうか。

クラリーノは1967年ごろにランドセル業界へ導入されたとされ、当時は教材の大型化にともない、ランドセルの軽量化が課題だった[4]。

ここで区別が要るのは「合成皮革」との差である。合成皮革は布地の表面にポリウレタンまたはPVCの薄い層をコーティングした二層構造。これに対し人工皮革は、不織布に樹脂を含浸させた三次元的な構造で、風合いと通気性が天然皮革に近いとされる[5]。クラレ自身は、クラリーノを「天然皮革の構造と性能を化学の力で再現した」素材と説明している[2]。

では、その不織布は何でできているのか。出発点は、繊維を混ぜて紡ぐ実験にあった。

2. まぜたら ながしょも たんしょも うけついだ。そこで おもいついた ことは?

2. 混ぜて紡いだ繊維は失敗続き ── そこで「抜く」発想が出てきた

2. 混合紡糸の失敗と、「抜く」という着想(1961年ごろ〜)

クラレの けんきゅうの ひとたちは、1961ねんごろ、ちがう ふたつの じゅしを まぜて、いとに しようと しました。ナイロンと ポリプロピレンと いう ものです[1]。

ところが できた いとは、りょうほうの いいところと、りょうほうの わるいところを、ぜんぶ もって いました。しっぱいが つづきました[1]。

そこで でた ひらめきが、「まぜて つくった あとで、かたほうを ぬいたら?」でした。たとえば、こむぎこと さとうを まぜて やいた あとで、さとうだけ とかして ながしたら、すきまだらけの かたまりが のこります。いとでも にた ことが できないかと かんがえたのです。ただし ほんとうの こうていは、これほど かんたんでは ありません。

のこった ほそい いとは、どう かためたら かわのように なるのでしょう。

研究チームは1961年ごろから、性質のちがう2つのポリマーを混ぜて紡ぐ混合溶融紡糸に取り組みました。ナイロンとポリプロピレンを混ぜた繊維は、両方の長所を持つ一方で、両方の短所も併せ持ってしまい、失敗が続いたと伝えられています[1]。

転機になったのは、「混ぜて紡いだあとに、一方の成分を抜いたらどうなるだろう」という発想でした[1]。抜いた跡に残るのは、とても細い繊維です。たとえば、小麦粉と砂糖を混ぜて焼き、砂糖だけを水で溶かして流すと、すき間の多いかたまりが残る、というイメージに近いかもしれません。ただし実際の工程は、これほど単純ではありません。

一般的な人工皮革では、極細にできる複合繊維(海島型)をシート状にし、針で突いて絡ませたあと、極細の繊維に変える方法が知られています[3]。ただしクラリーノ自体の工程の細部は公開されていないため、これは一般的な説明です。

こうしてできる極細繊維の布に、さらに何を加えれば革らしくなるのでしょうか。

1961年ごろ、研究チームは性質の異なる2種類のポリマーを混ぜて紡ぐ混合溶融紡糸に着手した。ナイロンとポリプロピレンの組み合わせでは、できた繊維が両成分の長所とともに短所も併せ持ち、失敗が続いたという[1]。

では、混ぜたものを分けられないのなら、最初から混ぜた状態を前提にして使えないか。そこで「混合紡糸したあとに一方の成分を抜く」という逆転の発想が出てきた[1]。なお、現在の人工皮革一般の製法としては、極細化できる複合繊維(海島型)をウェブ化し、ニードルパンチ法などで繊維を絡合させてシートとし、極細繊維に変えたうえでポリウレタンなどの弾性重合体を付与する、と特許文献に整理されている[3]。クラリーノ自体の工程の細部は非公開であり、ここで書いたのはあくまで一般的な方法である。

この極細繊維の不織布が、天然皮革の何に対応するのか。さらに、実際の使用で何が起きたのか。

3. くつが まがる ところで われた。どう なおしたの?

3. 靴の曲がる部分がひび割れた ── ポリウレタンを水の中で固める工夫

3. 屈曲部のひび割れと、ポリウレタンの水中凝固(1960年代前半)

ほそい いとの ぬのが できても、まだ かわの ようには なりません。はじめの はきごこちの テストでは、くつの まがる ところが、すぐに ひびわれて しまいました[1]。

そこで かんがえられたのが、ふしょくふに ポリウレタンと いう やわらかい じゅしを しみこませ、みずの なかで かためて、スポンジのように する やりかたです[1]。これで つくりかたの もとが きまりました。

てんねんの かわは、こらーげんと いう たんぱくしつの、ほそい いとの たばが こまかく からみあって できて いると いわれます[6]。クラリーノも、ほそい いとが からみ、あいだに すきまが ある という、にた つくりを めざしたのです。

うまく いったと おもった あとに、おもいがけない ことが おきました。

初期の着用テストで、靴の曲がる部分(足の甲からやや先)がすぐにひび割れる問題が起きました[1]。

その解決策として、不織布にポリウレタンを含ませ、水中で固めてスポンジ状にする方法が開発されました。これで製造の原理が確立したと説明されています[1]。

天然皮革は、真皮層のコラーゲン(たんぱく質)の繊維の束が三次元に細かく絡み合った構造をもち、この立体構造が伸びやすさや形の保ちやすさにつながると説明されます[6]。人工皮革も、細い繊維が立体的に絡み、あいだに樹脂が入るという点で、似た考え方でつくられています[5]。

こうして試験生産が始まりましたが、使う人の足元で、思いがけない敵が待っていました。

靴は歩くたびに甲からやや先の部分が折れ曲がる。初期の着用テストでは、まさにその屈曲部がすぐにひび割れた[1]。繊維を極細化しただけでは、繰り返し曲げられる靴の素材には足りなかったことになる。

対策として、不織布にポリウレタンを含ませ、水中で凝固させてスポンジ状にする方法が開発され、製造の原理が確立した[1]。天然皮革は真皮層のコラーゲン繊維の束が三次元に絡み合った構造とされ、伸びやすさや形の保ちやすさがこの構造から生まれると説明される[6]。一方、人工皮革は不織布に樹脂を含ませた構造で[5]、立体的な繊維の絡みという発想の上で対応している。

1964年11月に試験生産が始まり、1966年に製造工場が完成する[7]。ところが、実際に靴として売り出すと、別の問題が待っていた。

4. アルカリせいの あせで、くつが かえって きた

4. 1日に数百足の返品 ── 原因はアルカリ性の汗だった

4. 操業後の返品と、アルカリ性の汗によるウレタンの劣化

1966ねんに こうじょうが うごきはじめた あと、くつが 1にちに すうひゃくそくの ペースで かえって きたと いいます[1]。

げんいんは、にほんの ひとが かく あせの うち、アルカリせいの ものでした。この あせで、ポリウレタンの じゅしが よわって いたのです[1]。

しっぱいは、ざいりょうを ほんとうに つかって みて はじめて わかる ことも ある、と おしえて くれます。それでも、クラレは かわに まけない ざいりょうを めざして いました。

1966年の工場の操業後、靴が1日に数百足のペースで返品されるようになりました。原因は、日本人のかく汗のうちアルカリ性のものによって、ウレタン樹脂が劣化することでした[1]。

工場での試験では見えなかった問題が、実際の暮らしの中で現れたのです。こうした失敗は、新しい素材が本当に使われてはじめて分かるものでもあります。

クラレは、構造そのものを天然皮革に近づけ、性能では天然皮革より上に立つ「上位代替品」を目ざしたと説明しています[1]。汗で劣化するようでは、その目標に届きません。

1966年の操業開始後、靴が1日に数百足のペースで返品された[1]。原因は、日本人がかく汗のうちアルカリ性のものにより、ウレタン樹脂が劣化したことだった[1]。着用テストで曲げには耐えても、人の汗という実環境の条件が、工場の試験では十分に再現されていなかったことになる。

この失敗は、クラレが掲げた目標と重ねると意味が見えてくる。同社は、構造自体を天然皮革に近づけたうえで、性能の面で天然皮革の優位に立つ「上位代替品」を追求したと説明している[1]。汗で劣化する素材は、その目標に届かない。

この資料の範囲では、返品の原因までは分かるが、最終的な解決の細部は読み取れない。そこは、原典を読んで確かめてほしい。

5. このなまえに、どんな ねがいが こめられて いるの?

5. 社長が反対を押し切って付けた「クラリーノ」という名前

5. 命名に込められた意図 ── 大原總一郎と「吹奏楽器の地位」

この ざいりょうの じぎょうを すすめたのは、かいしゃの しゃちょう、おおはらそういちろう さんでした。はんたいする ひとも いましたが、おしきって すすめたと つたえられて います[1]。

「クラリーノ」は、むかしの トランペットの なまえに ちなんで います。おーけすとらの なかで ふく がっきが ちいを しめるように、この ざいりょうにも ちいを しめて ほしい、と ねがって つけられたと いわれます[1]。

みなさんの もって いる ランドセルや くつには、どんな ざいりょうが つかわれて いるでしょう。

事業化を進めたのは、クラレの社長だった大原總一郎です。反対意見もあるなか、それを押し切って進めたと伝えられています[1]。

名前の「クラリーノ」は、古いトランペットの名前に由来します。オーケストラの中で、吹奏楽器の地位を占めることを期待してつけられたそうです[1]。

楽器の名前に、新しい素材への期待が重ねられていたと知ると、ふだん使っているランドセルや靴が、少し特別に見えてきます。

この事業を、反対意見を押し切って進めたのが、当時の社長・大原總一郎である[1]。

「クラリーノ」の名は、古いトランペットの名に由来し、「オーケストラの中の吹奏楽器の地位を占めることを期待」して名づけられたとクラレは説明している[1]。オーケストラの中で地位を占める楽器になぞらえた点は、前章の「上位代替品」という目標と重ねて読める。

この命名の裏づけは、クラレの公式資料に限られる。命名や開発の経緯を、別の研究や社史からも読み比べてみる価値がある。

6. じぶんでも しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

ランドセルや くつ、かばんに ついている ひょうじを さがして みましょう。「じんこうひかく」「ごうせいひかく」「てんねんひかく」など、かいてある ことが あります。

こうしきの じょうほう

クラレの ホームページに、クラリーノの せいひんの ページと、はじめて ものがたりが あります。おとなの ひとと いっしょに よんで みましょう。

今日できること

ランドセルや靴、かばんの内側に付いている品質表示を探してみましょう。「人工皮革」「合成皮革」「天然皮革」などと書いてあることがあります。同じ見た目でも、素材がちがうものが見つかるかもしれません。

公式情報

クラレの製品ページと「製品はじめて物語」に、開発の道すじが書かれています。この記事で触れなかった細部を、原典で読み比べてみてください。

身近な製品の表示を読む

ランドセルや靴、かばんの品質表示を確かめ、「人工皮革」「合成皮革」「天然皮革」の区別を調べてみるとよい。

資料を読むなら

  • クラレ「製品はじめて物語〈クラリーノ〉」(日本語・英語)
  • クラレ クラリーノ製品ページ
  • 人工皮革に関する特許文献(背景の製法)

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典は、クラレの公式ページを中心に、製法の一般的な説明と皮革の構造の説明を別の資料で補った。

  1. クラレ「製品はじめて物語〈クラリーノ〉」 https://www.kuraray.com/jp-ja/company/history/clarino/ (開発の経緯・失敗・命名)
  2. クラレ クラリーノ製品ページ https://www.kuraray.com/jp-ja/products/clarino/ (1964年開発・世界初)
  3. 特許 JP6065440B2 人工皮革 https://patents.google.com/patent/JP6065440B2/ja (一般的な製法)
  4. 現代ビジネス ランドセル解説 https://gendai.media/articles/-/68437 (ランドセルへの導入時期)
  5. TKG 人工皮革の解説 https://www.tkgje.jp/entries/23000/23381_jinkouhikaku.html (人工皮革と合成皮革のちがい)
  6. コトバンク「革細工」 https://kotobank.jp/word/%E9%9D%A9%E7%B4%B0%E5%B7%A5-1156530 (天然皮革の構造)
  7. クラレ 製品はじめて物語〈クラリーノ〉(英語版) https://www.kuraray.com/global-en/company/history/clarino/ (開発の年表)

なおした ところ

更新履歴

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