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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くるっと まわる あたまを、3ぼんの くだで どう かんじるの?

頭はどの向きにも回るのに、回転センサーはなぜ3本で足りるのか

半規管の3本の向き ── ほぼ直交する3つの面、左右のペア、直角からのずれ

分野:からだ

あたまは、うなずいたり、くびを ふったり、かたの ほうへ かたむけたり、いろいろな むきに まわります。それなのに、みみの おくの まわる ことを かんじる くだは、ぜんぶで 3ぼんです。

たった 3ぼんで、どうして たりるのでしょう。くだの ならびかたを、いっしょに のぞいて みましょう。

頭は、うなずく、左右に振る、肩のほうへ傾ける、そしてそれらが混ざった斜めの動きと、実にさまざまな向きに回ります。ところが、一つの耳の奥で回転を感じ取る管は3本しかありません。

3本をどう並べれば足りるのか。左右の耳の管がどう組になっているのか。教科書の「直角」は実際にはどのくらい守られているのか。並び方に注目して見ていきます。

内耳の半規管は一側に3本あり、それぞれの面はほぼ互いに直角になっている[1]。3次元のどんな回転も、3つの軸の回転に分けて表せるためと考えられてきた[3]。

このメモでは、頭の中での面の向き、左右の耳での組み合わせ[2]、実測される直角からのずれ[3]、顎のない魚の管の本数[5]を、複数の資料を突き合わせてたどる。

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1. 3ぼんは、どんな ならびかたを して いるの?

1. 一つの耳に3本、ほぼ直角に並ぶ

1. 3本の半規管と、面の直交

内耳ないじには、半規管はんきかんという わっかの かたちの くだが あります。ひとつの みみに 3ぼんずつ あります[1]。

この 3ぼんは、ばらばらの むきでは ありません。おたがいに、ほぼ 直角に なるように ならんで います[1]。

へやの すみっこを 思いうかべて ください。ゆかと、かべが 2まいで、たがいに 直角です。あの 3つの めんの ような ならびかたです。ただし 本当は、ぴったり 直角では ありません。

外側・前・後ろの3本

一つの内耳には、外側(水平)半規管、前(上)半規管、後半規管の3本があります。それぞれの管が含まれる平面は、互いにほぼ直角の関係にあります[1]。

部屋のすみの3つの面

部屋の隅では、床と2枚の壁が互いに直角に出会います。3本の半規管の並びも、これによく似たものと思うと分かりやすくなります。ただし後で見るように、実際の並びは完全な直角ではありません。

半規管は、一側の内耳に外側(水平)半規管・前(上)半規管・後半規管の3本があり、それらが存在する平面は互いにほぼ直角の角度を成す[1]。

直交した3つの面に並ぶ理由は、3次元空間の3つの方向それぞれの回転を、なるべく重ならずに検出するためと考えられてきた[3]。ただし、これは進化の結果についての説明であり、証明された因果ではない。

2. どうして 3ぼんで たりるの?

2. 3つの軸で、どんな回転も表せる

2. 3方向の回転と各管の担当

くるっと まわる むきは、ほんとうは 何ばんも あります。でも、どんな むきの まわりかたも、「よこ」「たて」「もう ひとつの たて」の 3つの ほうこうの まわりかたに わけて かんがえられます。

3ぼんの くだは、それぞれの めんに そった まわりかたに はんのうします。ななめに まわる ときは、のうが ひだりと みぎの みみの しらせを あわせて よみとると いわれます。

そとがわの くだは、くびを よこに ふる うごきに かかわります。ほかの 2ほんは、うなずく うごきや、かたの ほうへ かたむける うごきに かかわります[4]。

斜めの回転も3つに分ける

斜めに首を回す動きも、水平の回転と2種類の縦の回転、合わせて3つの成分に分けて考えられます。3本の管がそれぞれの成分に応じて反応し、その組み合わせで脳は頭の動きをつかむと説明されています[3]。

どの管が何を受け持つか

外側半規管は首を左右に振る水平の回転に、前半規管と後半規管は、うなずくような縦の回転や肩のほうへ傾ける回転に関わります[4]。

回転を3つの直交する軸に分ければ、どの向きの頭の回転も3つの成分の和で表せる。3本の半規管はそれぞれの面に沿った回転に反応し、脳は左右の耳の信号を合わせて3成分を読み取ると考えられる[3]。

外側半規管は首を横に振る回転、前半規管はうなずく回転、後半規管は肩のほうへ傾ける回転に対応するという説明がある[4]。ただし、この対応は目安であり、前後の管の面は次章のとおり斜めを向く。

4. ひだりの みみと みぎの みみは、ペアなの?

4. 左右の耳で、同じ面の管が押し引きする

4. 対側の管との共面性と、相反的な活動

くだは、ひだりの みみと みぎの みみに 3ぼんずつ、ぜんぶで 6ぽんです。じつは、ひだりの みみの 前の くだと、みぎの みみの うしろの くだは、ほぼ おなじ めんに ならんで います[2]。

おなじ めんの 2ほんは、シーソーのように はたらきます。かたほうが つよく はんのうすると、もう かたほうは よわく なります[2]。

そとがわの くだも、ひだりと みぎで おなじ めんに ちかい ところに あります。

左の前と右の後ろが同じ面に

一側の前半規管の面は、反対側の後半規管の面とほぼ平行になっています[2]。外側半規管も、左右で同じ面に近いところにあります。完全に同一の面というわけではないため、「ほぼ」と書いておきます。

押し引きで働く

同じ面に並ぶ管のペアは、一方が興奮すると相手が抑制される関係で働きます。シーソーのように、片方が上がれば片方が下がるわけです[2]。左右の対応する管は、このように押し引きするペアとして説明されます。ただし面は完全には一致せず、平均のずれは前・後半規管で9.5度、外側半規管で11.2度です[3]。脳は6本すべての信号を使います。

一側の前半規管の面は、対側の後半規管の面とほぼ平行であり、外側半規管も左右でほぼ同じ面に近い。同じ面の管どうしは、一方が興奮すると他方が抑制される相反的な活動を示す[2]。

左右の対応する管は、相反的に活動するペアとして説明される。ただし、面は完全には一致せず、平均のずれは前・後半規管で9.5度、外側半規管で11.2度と報告されている。脳は6本すべての信号を使うと考えられる[3]。

5. ほんとうに ぴったり 直角なの?

5. 教科書の「直角」と、測ってみた結果のずれ

5. 非直交性の実測(哺乳類の比較研究、2013)

「直角」と いいましたが、はかって みると、ぴったり ではありません。たくさんの どうぶつを くらべた けんきゅうが あります[3]。

この けんきゅうでは、おなじ がわの 2ほんの くだの あいだの かくどは、やく 59どから やく 121どまで、ひろく ばらついて いました。

ひとでも、おおきい ときで 22ど、直角から ずれた ほうこくが あります[3]。それでも 人は くるっと まわって、ちゃんと かんじます。のうが 6ぽん ぜんぶの しらせを あわせて、あたまの うごきを しらべて いると いわれます[3]。

測ってみると

哺乳類の比較研究では、同じ側の2本の管のあいだの角度は58.8〜121.2度と大きな幅がありました。90度からのずれは、種ごとの平均で6.0度と報告されています[3]。幅の数字は最大値・最小値で、6.0度は平均の値です。

ヒトでも、直角から最大22度ずれるという報告があります[3]。

それでも感じ取れる理由

この研究の考察では、直角からずれていても、脳は左右6本すべての信号を合わせて頭の動きを推定できると述べられています[3]。「直角に並ぶ」は、あくまで「ほぼ」の話です。

哺乳類を比較した研究では、同じ側の2本の管のなす角は58.8〜121.2度の範囲にわたり、90度からのずれ(種ごとの値)の平均は6.0度と報告された。ヒトでも最大22度ずれる例がある[3]。58.8〜121.2度は個々の角度の範囲で、6.0度は種ごとのずれの平均であり、別の量である。

著者らは、脳が6本すべての信号を統合して頭の動きを推定するため、直交からのずれがあっても機能を保てると論じている[3]。「最適だから直角」は定説的な説明にとどまり、実測は完全な直角ではない。

6. さかなの くだは、なんぼん?

6. 魚の仲間には、管が1〜2本のものもいる

6. 顎のない魚の半規管数(理研 2018)

すべての どうぶつが 3ぼんでは ありません。あごの ない さかなの なかまの ヤツメウナギは 2ほんと かんがえられて いて、ヌタウナギは 1ぽんだけです[5]。

そとがわの くだは、あごの ある せぼねの どうぶつだけに あると いわれます。

ヌタウナギの 1ぽんは、ふるい かたちが のこったのでは なく、2ほんが くっついた けっかと かんがえられて います。「1ぽん、2ほん、3ぼんと ふえた」と いう かんたんな はなしでは ないようです[5]。

2本の魚と1本の魚

顎のない魚の仲間では、ヤツメウナギの半規管は2本と考えられ、ヌタウナギは1本です。外側半規管は、顎のある脊椎動物にだけあるとされています[5]。

「1本は原始的」とは限らない

ヌタウナギの1本は、古い形が残ったものではなく、2本が合わさった結果だと考えられています[5]。管の数を「1本→2本→3本」と単純な階段のように並べることはできません。

理化学研究所による2018年の発表の紹介によれば、顎のない脊椎動物では、ヤツメウナギの半規管は2本と考えられ、ヌタウナギは1本であり、外側半規管は顎のある脊椎動物にだけ存在する。ヌタウナギの1本は原始的な状態ではなく、進化の過程で生じた形質(2本が合わさった結果)と解釈されている[5]。

このため、「1→2→3本へ増えた」という単純な進化の階段は成り立たない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

いすに すわって、ゆっくり、くびを よこに ふって みましょう。つぎに うなずいて、かたの ほうへ かたむけて みます。どの うごきの ときに、どの くだが はたらくのか、かんがえて みてください。はやく まわったり、たったまま くるくる まわったり しては いけません。きぶんが わるくなったら すぐ やめます。

もっと しりたい とき

「はんきかん」「ないじ」を、としょかんの 人体の ずかんで しらべて みましょう。

今日できること

椅子に座って、頭をゆっくり「左右に振る」「うなずく」「肩へ傾ける」と動かし、それぞれ、どの管が主に働くかを考えてみます。斜めに動かしたら、3本がどう分担するかも想像してみてください。速く回したり、立ったままくるくる回ったりはしません。気分が悪くなったらやめます。

もう少し知りたいとき

脳科学辞典の「半規管と耳石器」「前庭動眼反射」の項目は、日本語で読めます。図書館の人体の図鑑でも、内耳の絵を探してみてください。

今日できること

椅子に座り、頭をゆっくり水平・うなずき・肩への傾けの3方向に動かして、どの管が主に働くかを、面の向き(45度・20〜30度前後)を思い出しながら考えてみる。立ったままの高速回転は避け、気分が悪くなったらやめる。

資料をあたる

脳科学辞典の「半規管と耳石器」「前庭動眼反射」[1][2]は日本語で読める。左右の管の共面性(第4章)は後者に詳しい。直角の90度と、本文にある角度の範囲(58.8〜121.2度)を並べて、どちら向きにどれだけずれるかを数字で比べてみるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の事実は、次の資料を突き合わせて書きました。

  1. 脳科学辞典「半規管と耳石器」 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/半規管と耳石器 (3本の面がほぼ直角であること)
  2. 脳科学辞典「前庭動眼反射」 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前庭動眼反射 (面の向きと左右のペア)
  3. Functional Implications of Ubiquitous Semicircular Canal Non-Orthogonality in Mammals, PLOS ONE, 2013 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0079585 (直角からのずれの実測、最適検出の説明)
  4. Wikipedia「Semicircular canals」 https://en.wikipedia.org/wiki/Semicircular_canals (各管が受け持つ動き)
  5. 理化学研究所 プレスリリース(2018) https://www.riken.jp/en/news_pubs/research_news/pr/2018/20181206_2/ (魚の仲間の管の数)

なおした ところ

更新履歴

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