1. ふねを おすと、なにが ついて くる?
1. 船を押すと、水もいっしょに動く
1. 加速する船は、水も加速している
おふろで、手のひらを 水の 中で さっと うごかして みて ください。空気の 中より、ずっと おもたく かんじませんか。
手が うごくと、まわりの 水も おしのけられて、いっしょに うごきます。ふねも おなじで、うごきだすとき、とまる ときに、まわりの 水を うごかして います[4]。
そのため ふねは、ほんとうの おもさより、おもい もののように ふるまいます。この ふえた ぶんを「ふかしつりょう」と いいます。「しつりょう」は、ものの うごきにくさに かかわる りょうの ことです。
2. どうして 水の 中だと めだつの?
2. 空気中では目立たないのに、水中では無視できない理由
2. 流体の密度と、付加質量の現れ方
同じ ように ものを うごかしても、空気の 中では、ふえた おもさは ほとんど めだちません。空気は とても かるいからです。
水は、空気より ずっと おもい ものです。北海道大学の ろんぶんの まとめには、ふかしつりょうは 水の 中では、空気の 中の やく800ばいの 大きさで あらわれると 書かれて います[1]。
ただし、800ばいに なるのは、水と 空気の ちがいから くる「あらわれ方」の くらべです。ふねの おもさが 800ばいに なる わけでは ありません。
空気中でも、物を動かせば空気は動きます。それでも付加質量が話題になることは、あまりありません。
北海道大学の学位論文の要旨には、密度の大きい水の中では、付加質量が空気中の約800倍の大きさで現れる、と書かれています。そのため、船の設計や運動を考えるときには十分に考えに入れる必要がある、とも述べられています[1]。
この800倍は、水と空気で付加質量の現れ方を比べた数字です。船の質量そのものが800倍になる、という意味ではありません。
北海道大学の学位論文要旨(2001年)は、密度の大きい水などの流体中では、付加質量が空気中の約800倍の大きさで現れ、船舶の設計や運動を考えるときには付加質量・付加慣性モーメントを十分考慮する必要があると述べる[1]。
この約800倍は、流体の違いによる現れ方の比較であり、船の質量が800倍になるという意味ではない。では、この「流体の慣性」という考え方は、いつ、だれが気づいたのだろうか。
3. はじまりは、ふねでは なく ふりこ だった
3. 見つけたきっかけは、船ではなく振り子だった
3. 1786年のデュ・ビュアと、1828年のベッセルの振り子
この ふしぎな おもさに 気づいた 人の ひとりが、ふりこを しらべた ベッセルです。ふねの 人では ありません。
ふりこは、おもりを ひもで つるして ゆらす しかけです。もし おもりが 空気や 水の 中で ゆれれば、まわりの ものも いっしょに うごくはずです。
1828ねん、ドイツの ベッセルは、ふりこの うごきを しらべて、まわりの ものの うごきにくさも かんがえる ひつようが あると のべました[3]。
4. ふりこを 水に つけたら、どう かわった?
4. 球を空気と水で振ると、数字はどう変わったか
4. 係数kの測定と、ストークスの理論値
ベッセルは、はばが 2インチ(やく5センチ)ほどの 球を、空気の 中と 水の 中で ふって、どれだけ うごきにくく なるかを はかりました[3]。
ここで ふしぎな ことが あります。ベッセルが はかった 数は、「おしのけた 水や 空気の おもさの 何ばいに なるか」を あらわす ものです。その 数は、水の 中では 空気の 中の やく3ぶんの 2しか ありませんでした[3]。
それでも ふえる おもさは 水の ほうが 大きく なります。空気は とても かるいので、数が 大きくても、ほんとうの おもさは すこしです。水は おもいので、数が 小さくても、ふえる おもさは 大きく なります。
のちに ストークスという 人が 計算して、まるい 球の ふえる おもさは、おしのけた 水の やくはんぶん くらいに なる ことを しめしたと、しょうかい されて います[4]。
5. ほんものの ふねでは、どれくらい おもく なる?
5. 実際の船では、どれくらい重くなるのか
5. 船の付加質量は、進む向きで変わる
ふねを はやく する ときの じっけんを あつかった ろんぶんは、ふえる おもさが、ふね じたいの おもさの さいだい 30パーセントに なる ことが あると 書いて います[2]。
たとえば 1まんトンの ふねで、30パーセントなら 3000トン ぶんです。これは あくまで、大きい ばあいの 目やすです。
ふねを まえに すすめる とき、よこに おす とき、まわす ときで、この 数は かわります。かたちも かんけい します。
6. みなとで ふねを とめる とき、どう つかう?
6. 港で船を岸壁に着ける計算に使われる
6. 接岸の仮想質量係数と、水深/喫水比の影響
ふねが がんぺきに ちかづく とき、ふねの おもさと ふえた おもさを たした 数を「かそうしつりょう」と よびます[5]。
この 数は、ふねが がんぺきに ぶつかる ときの ちからを けいさんする ために つかわれます。
むかしの じっけんでは、水の ふかさが ふねの 水に つかる ふかさ(きっすい)の 1.10ばいの とき、「かそうしつりょう」が ふねの おもさの なんばいに なるかを あらわす 数(かそうしつりょう けいすう)は、やく2.3 になりました。そのころの せっけいの きじゅんは 1.5から 1.6 で、それより 大きくなった のです[6]。
7. おふろで、水の 中の てごたえを くらべて みよう
7. お風呂で、水中の手応えを速さと向きで比べる
7. 出口 ── 水中の手応えを確かめる実験と、資料の読みどころ
おふろで、おたまか うすい いたを つかいます。おうちの 人と いっしょに、おふろの 水を つかって ください。
まず、おたまを 水の 中で、ゆっくり うごかします。つぎに、すばやく うごかします。てごたえは どう ちがうでしょう。おなじ ように、おたまの むきを かえても みましょう。
すべらないように 気を つけて、おふろの ふちに すわって やりましょう。ふねの「みえない おもさ」も、まわりの 水を うごかす ことで 生まれるのです。
お風呂で、お玉か薄い板を水の中で動かしてみましょう。ゆっくり動かしたときと、素早く動かしたときで、手応えはどう違うでしょうか。お玉や板の向きを変えて、水が逃げやすい向きと逃げにくい向きも比べてみてください。
床がぬれてすべりやすいので、浴槽のふちに座って行い、おうちの人と一緒に行ってください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:大学の論文要旨、arXivの論文、ストークスの論文、英語版Wikipedia、港湾の研究報告を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 秋元研一「箱形浮体構造物の付加質量・付加慣性モーメントの早見チャート作成に関する研究」北海道大学 学位論文要旨(2001年)。https://www.lib.hokudai.ac.jp/gakui/2001/6025_akimoto.pdf (水中の付加質量の大きさ、船の設計との関係について)
- On the Vessel Energy Requirement Prediction From the Acceleration Stage Towing Experiments on Models (arXiv 2308.04200)。https://arxiv.org/pdf/2308.04200 (船の運動方程式、船の質量に対する付加質量の割合、1786年の実験について)
- G. G. Stokes (1851) On the effect of the internal friction of fluids on the motion of pendulums(復刻版)。https://www.circuitousroot.com/oldstuff/library-of-antiquarian-technology/horology/stokes1850.pdf (ベッセルの1828年の観察と、球の測定値について)
- Added mass(英語版Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Added_mass (付加質量の定義、船の割合の目安、球の値について。二次資料)
- Ueda, S. (1987) The virtual mass coefficient of a berthing ship (TRID)。https://trid.trb.org/View/433571 (接岸する船の仮想質量の定義について)
- Horii, Ueda, Yanagisawa (1977) An Experimental Study of Ship's Berthing Impact(運輸省港湾技術研究所)。https://www.pari.go.jp/en/1977/06/197706026301.html (接岸の実験と仮想質量係数について)
なおした ところ
更新履歴
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