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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

グラスを ゆびで こすると、どうして 音が 出るの?

グラスの縁をこすると鳴るのはなぜか ── 濡れた指がグラスの振動を大きくし、楽器にもなった

濡れた指でグラスが鳴る理由 ── スティックスリップ・固有振動・水量による音程低下と、フランクリンのアルモニカ

分野:技術

グラスの ふちを ぬれた ゆびで ぐるっと こするだけで、きれいな 音が 出ます。ふしぎな ことに、その 音は、グラスを たたいた ときと 同じ 高さです。

こすって いるのに、どうして たたいた ときの 音が 出るのでしょうか。水を 入れると 音は どう かわるのか、この 音を がっきに した 人の 話も 読むと 分かります。

濡れた指でグラスの縁をこすると、グラスを叩いたときと同じ高さの音が出ると報告されています[1]。力まかせにこすっているのではなく、指はグラスが持っている「いつもの音」を育てているだけのようです。

なぜ濡れた指でないと鳴らないのか、水を入れると音はどちらへ動くのか、この音を楽器にしたのは誰か。この記事を読むと、それらの答えが分かります。

濡れた指でワイングラスの縁をこすると、叩いたときと同じ周波数の、単一周波数に近い澄んだ音が出る[1]。外から与えているのは「こする」という連続的な動きだけで、音の高さを決めているのはグラスのほうだ。

この現象は、指とガラスの摩擦による自励振動として説明される[2]。水を入れると音が下がる理由と、フランクリンがこの音を楽器にした経緯も含めて、資料から分かることを整理する。

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1. こすって いるのに、なぜ たたいた ときの 音が 出るの?

1. こするだけなのに、叩いたときと同じ高さになる

1. こすっても叩いたときと同じ周波数で鳴る ── 固有振動と(2,0)モード

グラスを ゆびで はじくと、「ちーん」と 音が 出ます。グラスには、ふるえやすい 決まった 音の 高さが あるのです。

ふちを こすった ときも、グラスは 同じ 高さで ふるえて、すんだ 音に なります[1]。ゆびは 音の 高さを 決めて いません。グラスが ふるえやすい 音を、ゆびが そっと 大きく して います。

ブランコに たとえると 分かりやすいです。ブランコには、ゆれやすい はやさが あります。その リズムで せなかを おすと、どんどん 大きく ゆれます。ただし ほんとうは、グラスの ふるえは 目に 見えないほど 小さな ものです。

グラスは、鳴りやすい高さを持っている

グラスを叩くと「チーン」と鳴ります。物にはそれぞれ、ふるえやすい決まった振動数があり、これを固有振動数といいます。叩くのは、その振動を一度だけ起こす方法です。

濡れた指でこすった場合も、グラスは叩いたときと同じ周波数で振動し、澄んだ音になると報告されています[1]。音の高さを決めているのは指ではなく、グラスのほうです。

ブランコにたとえると、押す人はブランコの揺れのリズムに合わせて押しているだけです。同じように、指はグラスの振動のリズムに合わせて力を足し、振動を大きくしています。ただし、実際のグラスの振動は目に見えないほど小さなものです。

グラスの縁を叩くと、さまざまな固有振動が同時に励起される。ところが濡れた指でこすった場合は、主に(2,0)モードとその倍音が励起されるという[2]。(2,0)モードは、円形の縁が楕円にゆがむ振動だ。

この性質のため、こすった音は基本音と整数倍音から成る澄んだ音になる[3]。観測された周波数は叩いたときと同じで[1]、音程を決めているのは指ではなくグラス側の固有振動だと分かる。では、一定のスピードで動かしているだけの指が、なぜ振動を育てられるのか。

2. ぬれた ゆびだと 音が 出て、かわいた ゆびだと 出ないのは なぜ?

2. 指は「くっつく・すべる」をくり返している

2. 自励振動とスティックスリップ ── バイオリンの弓と同じ仕組み

ぬれた ゆびで こすると、ゆびは グラスに ちょっと くっついて いっしょに うごきます。すると グラスの ふちが ほんの すこし ゆがみます。

グラスは もとの 形に もどろうと して、ふちが すべって もどります。そのあと、また ゆびが くっつきます。この くっつく、すべるを、すごく はやく くりかえすと、グラスが ふるえつづけます。

バイオリンの ゆみが 糸を ならす ときも、同じ しくみだと いわれます[2]。

かわいた ゆびは、ひっかかりが 大きすぎて うまく すべらないので、音が 出にくいと いわれます[6]。

くっつく時間と、すべる時間が交互にくる

濡れた指でこすると、指はグラスの縁としばらく一緒に動き、縁がたわみます。次に、ガラスが元の形へ戻ろうとして、縁が指の下をすべって戻ります。この「くっつく、すべる」のくり返しは、スティックスリップと呼ばれます[2]。

この仕組みは、バイオリンの弓が弦を鳴らすのと同じです。外から一定の力でこすっているだけなのに、振動のリズムが自然に生まれて育っていく現象で、自励振動と呼ばれます[3]。

乾いた指では、なぜ鳴りにくいのか

教育向けの解説では、乾いた指は摩擦が大きすぎてうまくすべらず、濡れた指はすべりやすくなるので鳴る、と説明されます[6]。ただし、水の役目の詳しい仕組みまでは、この解説からは分かりません。

グラスの縁を濡れた指でこすると、指と縁が一緒に動く期間と、縁が元の位置へすべって戻る期間が交互にくり返される。これがスティックスリップで、バイオリンの弓が弦を鳴らす過程と同じ型の現象だ[2]。摩擦によってリムの一部が変形し、ガラスの弾性で元に戻ろうとする動きがくり返されることから、自励振動と呼ばれる[3]。

外から与える運動は一定速度の連続的な動きだけなのに、振動が持続する点が自励振動の特徴だ。乾いた指では摩擦が大きすぎて鳴らないと、教育向けの資料は説明する[6]。水が「クッション」になるという簡略な説明も見かけるが、断定はできない。すべりやすさの変化が関わる、という程度に読んでおくのが安全だ。

では、同じグラスに水を入れたら、鳴る音はどう変わるのか。

3. 水を 入れると、音は 高くなる? ひくくなる?

3. 水を入れると、音は低くなる

3. 水量と固有振動数 ── 液体を入れると音程が下がる理由

グラスに 水を 入れて、ふちを こすって みると、音は ひくく なります[4]。水が 多い ほど、音は ひくく なります。

水を 入れると、グラス ぜんたいが おもく なり、水の おしかえす 力も くわわって、グラスの ふるえが ゆっくりに なるからだと いわれます[1][4]。

水の かさを すこしずつ かえた グラスを ならべると、ドレミの ように 音を そろえられます。これを グラスハープと よびます[1]。

水が増えるほど、振動はゆっくりになる

グラスに液体を入れると、振動数が下がることが報告されています[4]。水が増えるほど音は低くなり、高くはなりません。

理由として、水を入れるとグラス全体の質量が増えるため、共振周波数が下がると説明されています[1]。また、液体の圧力がガラス壁の振動を遅らせるという説明もあります[4]。高校生が水・油・はちみつで調べたプレプリントでも、液体を入れると固有振動数が下がることは、これまでの研究でよく説明されている現象だと整理されています[5]。

水の量を変えて、音階を作る

グラスごとに水の量を少しずつ変えて並べれば、音階が作れます。これがグラスハープです[1]。濡れた指でワイングラスをこすると音階の音が出ることは、少なくとも17世紀には知られていたとされています[2]。

グラスに液体を入れると固有振動数が下がる現象は、ピッチ低下と呼ばれ、先行研究で説明されている[5]。水を入れるとグラス全体の質量が増え、共振周波数が下がる[1]。ワイツマン科学研究所のグループは、流体の圧力がガラス壁の振動を遅らせるため、液体を足すほど振動数が下がると述べている[4]。

この実験では、水を足すほど音が下がる。産総研の実験でもグラスごとに水量と周波数の関係が測られ、水量を少しずつ変えたグラスを並べると音階をつくれる[1]。

この音がすでに17世紀には知られていたとされる[2]。では、いつ、誰が、この音を本格的な楽器にしたのか。

4. ゆびを あてる だけで ひける 楽きは、だれが 作ったの?

4. 回るガラスの鉢に、濡れた指を当てる ── フランクリンのアルモニカ

4. 1761年、フランクリンのアルモニカ ── グラスを回転させる設計

グラスを 何こも ならべて 水を 入れかえるのは、たいへんです。1761ねん、アメリカの ベンジャミン・フランクリンは、ガラスの はちを 1ぽんの 鉄の じくに とおして、足で ふむ ペダルで くるくる まわす 楽きを 作りました[7]。

名前は アルモニカ。大きさの ちがう ガラスの はちが 何十こも ならび、ぬれた ゆびを ふちに あてて ひきます。回す 役めは 足が します。

フランクリンは、水の 入った グラスの えんそうを 聞いて、おもいついたと つたえられて います[8]。

濡れた指を、回るガラスの縁に当てる

ベンジャミン・フランクリンは1761年に、ガラスの楽器アルモニカを完成させました。大きさの違うガラスの鉢を1本の鉄の軸に通し、足踏みペダルで回します。演奏者は濡らした指を、回るガラスの縁に触れて音を出します[7]。

ロンドンのガラス職人チャールズ・ジェームズと作り、数十個の鉢を、大きさで音程に合わせたとされています[7]。回す役目を足に任せたので、手は指を当てることに使えます。

着想のきっかけ

フランクリンは、水を入れたワイングラスの演奏を聞いて着想したと伝えられています。それ以前にも、水を入れたゴブレットを演奏する人がいたとされます[8]。

ベートーヴェンやモーツァルトなどが、この楽器のための曲を書いたとも伝えられています[7]。

水量でグラスの音程を変える方式は、演奏の前に水を調整する必要がある。フランクリンは1761年にアルモニカを完成させ、この点を設計で解決した。大きさの違うガラスの鉢を1本の鉄の軸に通し、足踏みペダルで回転させる。濡らした指を回るガラスの縁に触れさせると音が出る[7]。数十個の鉢は、大きさで音程を合わせてあり、ロンドンのガラス職人チャールズ・ジェームズとの協力で作られたとされる[7]。

着想については、水を入れたワイングラスの演奏を聞いたことがきっかけとされ、それ以前にも水を入れたゴブレットを演奏する人がいたといわれる[8]。ただしこれは二次資料の記述である。モーツァルトやベートーヴェンなどが曲を書いたとも伝えられる[7]。

こすられるグラスの音という身近な現象が、固有振動・自励振動・水量による音程変化という物理で説明でき、楽器としても完成した。このうち、水量による音程の変化は手元のグラスで試せる。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

うすい ガラスの コップは われやすいので、手を きらないよう おとなの 人と いっしょに して ください。われにくい、あつめの コップが あれば、それを 使いましょう。

手と コップを せっけんで あらって、水で ぬらします。コップを つくえに おさえて、ふちを ゆびで ゆっくり 同じ はやさで 一しゅう こすります。音が 出ないときは、ゆびを もう一ど ぬらして みましょう。音が 出たら、水を 入れて もういちど。音は どう かわりますか。

もっと 知りたい 人へ

図書館で「グラスハープ」や「アルモニカ」の 本を さがして みましょう。

今日できること

薄いガラスのコップは割れやすいので、けがをしないよう、必ず大人と一緒に試してください。割れにくい厚めのコップがあれば、そちらを使いましょう。

手とコップを洗って濡らし、コップを机に押さえて、縁を同じ速さでなぞります。音が出たら水を少しずつ足して、音の高さを聞き比べます。

もっと知りたい人へ

出典の資料を読むと、グラスの振動の形や水量と音の関係のくわしい説明があります。

グラスの縁をこする実験は、家庭にあるコップで試せる。薄いガラスは割れやすいので、大人と一緒に、厚めのコップで行うこと。水量を段階的に変え、同じ速さでこすって音の高さを比べると、水を足すほど音が下がるという報告[4]と照らし合わせられる。

原典としては、産総研・電通大の解析論文[1]、アメリカ音響学会の解説[2]、フランクリン協会の資料[7]がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号と対応します。

  1. 小塚・畑中「COMSOL Multiphysicsを用いたグラスハープの振動解析」 https://www.comsol.com/paper/download/189001/KOZUKA_paper.pdf (こすった音の周波数・水量による共振周波数の変化)
  2. Rossing, Glass harmonicas(米国音響学会 第147回大会 解説) https://acoustics.org/pressroom/httpdocs/147th/Rossing_Harmonicas1.htm (スティックスリップ・(2,0)モード・17世紀の記録)
  3. 「ワイングラスは楽器だった!? グラスハープの美音のひみつ」 https://gendai.media/articles/-/55707 (自励振動・基本音と整数倍音)
  4. Arane, Musalem, Fridman, Coupling between two singing wineglasses (arXiv:0901.0656) https://arxiv.org/pdf/0901.0656 (液体を足すと振動数が下がること)
  5. Junghwan Lee, The effect of liquid on the vibrational intensity of a wineglass (arXiv:1801.07514) https://arxiv.org/pdf/1801.07514 (ピッチ低下の整理。プレプリント)
  6. Scientific American, Singing Glasses https://www.scientificamerican.com/article/singing-glasses1 (乾いた指と濡れた指の違いの教育向け説明)
  7. The Franklin Institute, Benjamin Franklin's Glass Armonica https://fi.edu/en/science-and-education/collection/benjamin-franklins-glass-armonica (アルモニカの構造と完成年)
  8. Wikipedia, Glass harmonica https://en.wikipedia.org/wiki/Glass_harmonica (着想の経緯。二次資料)

なおした ところ

更新履歴

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