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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

こまは どうして、まわって いる あいだ たおれないの?

回っているこまは、傾いているのになぜ倒れないのか

回転するこまの安定 ── 重力のトルクと歳差運動、回転が弱まるときの倒れ方

分野:技術

こまを ななめに して、まわらない まま たてて みると、すぐに たおれます。ところが まわして いる こまは、すこし かたむいても たおれません。

じつは、こまは「たおれようと する ちから」を、じくを ゆっくり 円に まわす うごきに かえて います。この 「くびふり」の ひみつと、まわって いる うちに じくが たちあがる ことも ある「ねむりごま」の ふしぎまで、よんで みましょう。

回っていないこまは、立たせてもすぐに倒れます。回っているこまは、軸が傾いていても倒れません。倒れるはずの力は、なくなったのではなく、別の動きに変わっているのです。

その別の動きが、軸が円を描く「首振り」です。この記事の「倒れない」は、傾きが大きくならず、軸が円を描きながら回り続ける、という意味です。回っているうちに軸が立ち上がることもあり、先と床の間の摩擦が関わる場合があります。首振りのしくみと、地球も同じ動きをしていることも分かります。

回転するこまが倒れないのは、回転が重力を打ち消すからではない。重力が生むトルクは消えず、軸を倒す向きではなく、軸のまわりを円運動させる向きに作用する(歳差運動)[1]。

この動きは、地球の約2万6000年周期の歳差とも同じ種類とされる[2]。ここでいう「倒れない」は、傾きが大きくならず軸が円を描いて回り続けることを指す。条件によっては軸が立ち上がる場合もあり、先端と床の間の摩擦が関わる。ここでは、倒れない理由、回転が遅くなったときの変化、「こまが眠る」と呼ばれる現象が分かるように、教科書と百科事典を比べて書く。

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1. まわらない こまは たおれ、まわる こまは たおれない

1. 回っていないこまは倒れ、回っているこまは倒れない

1. 回転していないこまは倒れ、回転しているこまは円を描く

まわって いない こまを、ななめに おいて みましょう。てを はなすと、そのまま ぱたんと たおれます。じゅうりょく(ものを 下に ひっぱる ちから)が、こまを たおすからです[1]。

では、まわって いる こまは どうでしょう。ななめに なって いても、すぐには たおれません。じくの さきが、ゆっくり 円を かいて まわります[1]。

この 円を かく うごきを「くびふり」と いいます。たおれる ちからは なくなって いません。たおれる むきでは なく、じくを 円に まわす うごきに なって いるのです。

ここまでが、この 記事の こたえの ようてんです。このあとは、どうして そうなるのかを、すこし ふかく みて いきます。

こまを傾けて、回さずに机の上に置いてみます。手を離せば、すぐに倒れます。重力が、こまの重心に、傾きを大きくする向きの回す力(トルク)をはたらかせるからです[1]。

同じこまを、傾けたまま勢いよく回すと、様子が変わります。倒れるどころか、軸の先が円を描くように、ゆっくり動きます[1]。この動きは「首振り」とも「歳差運動」とも呼ばれます[2]。

題名の問いへの答えを先に言うと、回っているこまが倒れないのは、重力のトルクがなくなったからではありません。そのトルクが、倒れる動きではなく、軸を円に回す動きに使われているからです[1]。「回っているから倒れない」とだけ言うと、この大事なところが抜けてしまいます。

回転していないこまでは、重心に働く重力が、水平な軸のまわりのトルクを生み、こまは予想どおり倒れる[1]。ところが、同じこまを軸まわりに回すと、同じトルクが働いているのに、こまは倒れず、鉛直線のまわりに軸を回す。これが歳差運動である[1]。

問いへの答えの要点は、「回転が重力を打ち消す」のではなく、「トルクの向きが、倒れる向きに直接つながらない」ことにある。教科書は、回転軸まわりの角運動量に対してトルクが垂直に働く点を、歳差の条件として示している[1]。

なお、歳差運動の典型例として回転するこまの首振りを挙げる百科事典もある[2]。では、なぜトルクは、倒れる向きではなく円運動を生むのか。次の章で、その理由を見る。

2. たおれる ちからは、どこへ いったの?

2. なぜ、倒れる向きに動かないのか

2. 角運動量とトルクが垂直なとき、軸の向きだけが変わる

じてんしゃで 走って いる とき、ハンドルを 横から おしたら、まっすぐ 進もうと する ちからが あって、すぐには 曲がりません。まわって いる ものは、いまの 向きを たもとうと します。

まわって いる こまの じくは、「このまま 回りつづけたい」という 向きを もって います。そこへ、じゅうりょくが 横から ちょっと おします。

すると、じくは おされた むきでは なく、おされた むきと 直角の ほうへ、すこしだけ 向きを かえます。それが つみ重なって、円を かく うごきに なります[1]。

ただし、これは たとえ話です。本当の しくみは、回る ものの 「かいてんの いきおい」と ちからの 向きが、直角に なる という ことです。

回っているものは、「回転の勢い」(角運動量)を持ち、その向きは軸の向きに重なります。重力のトルクは、この向きに対して垂直にはたらきます[1]。

垂直にはたらく力は、回転の勢いの大きさは変えず、向きだけを少しずつ変えます[1]。軸は、倒れる向きに進むのではなく、鉛直線のまわりを円に沿って動いていきます。

回転が速いほど、首振りはゆっくり

教科書によると、首振りの速さは回転の速さに反比例します。回転が速いほど、首振りはゆっくりです[1]。ただしこれは、首振りが回転よりずっと遅い場合の近似です[1]。勢いよく回したこまの軸が、ほとんど動かないように見えるのは、このためです。

逆に言えば、回転がおそくなると、軸の動きは速くなります。その先に何が起きるのかは、次の章で見ます。

回転するこまは、軸方向に角運動量をもつ。重力のトルクは、この角運動量ベクトルに垂直である[1]。トルクは角運動量の時間変化に等しいので、垂直なトルクは角運動量の大きさを変えず、向きだけを変える。軸の先は、鉛直線のまわりを円を描いて動く[1]。

教科書は、歳差の角速度がスピンの角速度に反比例することも示している。ただし、歳差がスピンよりずっと遅い範囲の近似である[1]。回転が十分速いこまほど、首振りが遅くなる。ところが、回転が落ちると、この近似が成り立たなくなる。では、そのとき実際にこまはどうなるのか。次章では、教科書の関係式から読み取れる範囲で見る。

3. まわり方が よわく なると、どうなる?

3. 回転が弱まると、首振りが速くなって倒れる

3. 回転が落ちると、近似が破れる

こまは、ゆかと ふれる ところで、すこしずつ ちからを うばわれます。まわる いきおいは、だんだん 弱く なります。

まわる いきおいが 十分 はやい あいだは、いきおいが 弱く なる ほど、くびふりは はやく なって いきます[1]。そして、さいごに こまは たおれます。

げんきよく まわって いる あいだは、くびふりが ゆっくりで ほとんど 止まって いるように 見えます。たおれる ちょっと 前に、ふらふらと 見えるのは、くびふりが 目に 見える ほど はやく なるからだと 考えられます。

こまの回転は、床や空気との摩擦で、少しずつ弱まります。回転が十分速いあいだは、先ほどの関係から、回転が弱まるほど首振りは速くなっていきます[1]。

元気よく回っているときは、首振りが遅くて目立ちません。回転が落ちてくると、首振りが目に見えるほど速くなり、ふらふらして、最後に倒れます。

倒れるのは、「首振りがなくなった」からではなく、「首振りでは重力に対応しきれなくなった」からだと読むと、前の章の答えとつながります。

摩擦などで回転が弱まると、歳差の角速度は大きくなる[1]。ただし、歳差が遅いという近似が成り立たなくなる領域では、単純な反比例の式は使えない。回転が落ちて首振りが目に見える速さになり、最終的に倒れる、という筋道は、この関係式と整合する[1]。

では、回転が弱まっていくのに、こまが逆に立ち上がる場合があるのはなぜか。次の章で、「眠りごま」と摩擦の働きを見る。

4. こまが「ねむる」って、どういう こと?

4. 倒れかけたこまが立ち上がる「眠りごま」

4. 滑り摩擦が傾いたこまを立ち上がらせる

よく まわる こまは、はじめ ななめに なって いても、まわって いる うちに、じくが すこしずつ まっすぐ 立ちあがって いく ことが あります[3]。

そう すると、こまは じっと 止まったように 見えます。これを「こまが ねむる」と いいます[3]。

ふだんの くらしでは、まさつは ものの うごきを 止めます。でも、先が 丸くて おもい こまでは、ゆかと 先が すべる まさつが、こまを 立ちあがらせる はたらきを する ことが あると、けんきゅうで 調べられて います[4]。

よく回るこまは、回転するうちに軸が鉛直に立ち上がり、静止したように見えることがあります。これを「こまが眠る」と表現します[3]。

先が半球状の重い対称なこまを、先端が床の上をただ滑るモデルで調べた研究では、先端と床の間の滑りの摩擦が、傾いたこまを立ち上がらせる役目をすることが示されています[4]。日常では摩擦は動きを止めるものですが、ここでは逆の働きをします。

この研究は19世紀の模型から続いているといわれますが、年代の細かい点は、ここでは触れません[4]。

どんなこまでも眠るわけではない

眠る様子は、こまの形や床の状態によっても変わるでしょう。この記事で見た研究は、先が半球状の重い対称なこまについてのものです[4]。

先端が半球状の重い対称こまでは、先端と床の間の純粋な滑り条件のもとで、こまが立ち上がる(起き上がり)様子が、理論と実験で一致することが報告されている[4]。摩擦は、通常は運動を止める力だが、この条件の系では、傾いた軸を立ち上げる向きに働く。すべてのこまが同じ振る舞いをするとは限らない。

回転が弱まる局面で首振りが目立つ一方、条件によっては軸が鉛直に近づき、見かけ上静止する。この状態を「こまが眠る」と表現する[3]。両者は、摩擦の働き方と回転の保たれ方で分かれる、同じこまの別の局面である。

この研究の年代的な位置づけ(19世紀の模型からの流れ)は、原論文の導入部に依拠しており、本稿では年号を示さない[4]。

5. ちきゅうも、くびふりを して いる

5. 地球も、こまと同じ首振りをしている

5. 約2万6000年周期の地球の歳差

じつは、ちきゅうも おなじ くびふりを して います。ちきゅうの じくは、とても ゆっくり 円を かいて います。

その 一まわりには、およそ 2万 6000年 かかると いわれます[2]。こまが くるくる 回る あいだに、ちきゅうの じくは ほとんど 動いて いないように 見えますが、じつは おなじ しゅるいの うごきです。

手の ひらの 上で まわる こまと、そらに うかぶ ちきゅうが、おなじ きまりで うごいて いる。そう 思うと、ふしぎな 気もちに なりませんか。

首振り運動は、回転するこまの典型例とされます。地球の自転軸の首振り(地球の歳差運動)も、同じ種類の運動です[2]。

地球の歳差の周期は、約2万6000年とされています。資料によって数字が少し違い、日本語版Wikipediaでは約2万5800年(2万5772年)と書かれています[2]。

こまの首振りは数秒で一周するのに、地球は2万年以上かけて一周します。時間の長さは大きく違っても、「回っているものに力がはたらくと、軸が円を描く」という見方は、同じように使えます。

回転するこまの首振りは、地球の歳差運動と同じ種類の運動とされる[2]。地球の歳差の周期は、約26,000年である。日本語版Wikipediaは約25,800年(25,772年)と記しており、出典によって数字がわずかに異なる[2]。

こまの数秒周期と、地球の約2万6000年周期を並べても、「トルクが角運動量に垂直に働くと軸の向きだけが動く」という理屈は共通である。小さなこまで確かめたことが、天体の動きを読む手がかりにもなる。

自分でも しらべて みたい ときは

回るこまを、横から見てみよう

資料案内と、確かめ方

こまが あれば、へやの ゆかや つくえの 上で まわして みましょう。まず、じくの 先が 円を かく ようすを、よこから 見て みます。

つぎに、まわり方が 弱く なって くる ときの こまの うごきを 見て みましょう。くびふりが はやく なる のが 見えるかも しれません。ゆかに ゆびを はさまないよう、きを つけて ください。

こまの しゅるいは たくさん あります。竹の つつに ぼうを とおした もの、貝に なまりや すなを 入れた もの、鉄の べいごまなど、形は ちがっても、おなじ しくみで 立って います[5]。

こまがあれば、机の上で回して、軸の先がどんな円を描くかを横から見てみましょう。回転が弱まるにつれて、首振りがどう変わるかも見られます。

こまの種類は、竹筒に心棒を通した唐ごま、貝殻に鉛や砂を入れた貝ごま、ろくろ細工の木ごま、鋳鉄のべいごま、竹製の鳴りごまなど、多くあります[5]。形が違うこまで、首振りの様子を見比べると、何か気づくことがあるかもしれません。

安全のため、床や机の上の落ちやすいものは片づけ、人や壁に向けて回さないようにしてください。

確かめるなら、こまを机の上で回し、軸の先の軌跡と、回転が弱まる過程での軸の動きを横から観察する。形や重さの異なるこまを見比べるのもよい。

資料としては、OpenStax『University Physics Vol.1』11.4節(歳差運動)が、トルクと角運動量の関係を詳しく扱う[1]。摩擦による起き上がりは、arXivの論文が手がかりになる[4]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:大学の教科書、百科事典、論文のプレプリント、日本大百科全書を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. OpenStax「University Physics Volume 1」11.4 Precession of a Gyroscope。https://openstax.org/books/university-physics-volume-1/pages/11-4-precession-of-a-gyroscope (トルクと歳差運動の関係)
  2. Wikipedia「歳差運動」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%B3%E5%B7%AE%E9%81%8B%E5%8B%95 (首振りと地球の歳差)
  3. Wikipedia「独楽」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%AC%E6%A5%BD (「眠る」という表現)
  4. Tanrıverdi, arXiv:2108.00861。https://arxiv.org/abs/2108.00861 (摩擦による起き上がり)
  5. 日本大百科全書「コマ」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%9E-66044 (こまの種類)

なおした ところ

更新履歴

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