1. かたほうの 目を とじると、はりに いとを とおしにくいのは どうして?
1. 片目をつぶると、針に糸を通しにくいのはなぜか
1. 片眼を閉じると距離感が鈍るのは、左右の像の差が失われるからか
まず、かんたんな ためしかたを しょうかいします。うでを まっすぐ のばして、りょうほうの 手の 人さしゆびを、すこし まえと うしろに ずらして ならべます。りょうほうの 目で みると、どちらが 手前か、すぐ わかります。
つぎに、かたほうの 目を とじて みます。すると、どちらが 手前か わかりにくく なります。はりに いとを とおす ときも、これと おなじことが おきます。ただし、まったく わからなく なる わけでは ありません。
わけは、目が ふたつ あって、はなれて ついて いるからです。ふたつの 目の あいだは、約6センチくらい。すこし はなれて いるので、右の 目と 左の 目では、ものが ちがって みえます。この ちがいを、脳が くらべて、奥ゆきに かえて います。
ちかい ものは、右と 左で みえかたの ちがいが 大きく、とおい ものは ちがいが 小さく なります。この ちがいを 視差と いいます。
でも、いちばん さいしょに この ことを たしかめたのは、だれなのでしょう。
うでを伸ばして、両手の人さし指を、少し前後にずらして並べてみてください。両目で見ると、どちらが手前かすぐ分かります。次に片目をつぶると、前後の差が分かりにくくなります。針に糸を通すときに苦労するのも、同じ理由です。ただし、片目でまったく奥行きが分からなくなるわけではありません。
理由は、左右の目が離れてついていることにあります。目の間隔は約6cmが目安で、個人差があります。離れているので、右目と左目には、同じ物が少し違う位置に映ります。この左右の像の違いを両眼視差といいます。脳が左右の違いを統合して、立体として感じ取る働きが立体視です[1]。
ずれの大きさは距離で変わります。近い物ほど左右の像の違いは大きく、遠い物ほど小さくなります[1]。脳は、この大きさを手がかりに「どれくらい手前か」を見積もっていることになります。
では、この仕組みに最初に気づいたのは誰だったのでしょうか。
うでを伸ばして、両手の人さし指を前後に少しずらして並べてみる。両眼で見れば前後関係は即座に分かるが、片眼を閉じると判断が難しくなる。針に糸を通す作業が片眼だと難しいのも同じ理由による。ただし、片眼でも奥行きの判断は完全には失われない。この点は第5章で触れる。
この差の原因は、左右の眼の位置が約6cm離れていることにある。数値は平均的な目安で、個人差がある。離れているため、同じ物体が左右の網膜上の少し異なる位置に結像する。この左右の像の違いが両眼視差で、脳がそれを統合して立体として知覚することを立体視という[1]。
視差は、物体が近いほど大きく、遠いほど小さくなる[1]。そのため脳は、視差の大小から物体までのおおよその距離を見積もれる。逆に言えば、遠方では視差が小さくなり、この手がかりは弱まる。
では、この「左右の像の差」という考え方は、いつ、どのように実験で確かめられたのか。
2. 写真が ない じだいに、立体を つくった 人が いるって ほんと?
2. 写真の発明前に、手描きの2枚の絵で立体を見せた人
2. 手描きの図と鏡で、視差だけから立体を作る:ホイートストンの実験
1838年、イギリスの ホイートストンと いう 人が、ふしぎな そうちを つくりました。かがみを つかって、右の 目には 右用の 絵、左の 目には 左用の 絵を みせる しくみです。
ふたつの 絵は、すこしだけ ちがって かかれて います。この 2まいを りょうほうの 目で みると、絵が 1まいの 立体に みえました。この そうちには「ステレオスコープ」と いう 名前が つけられました。
この ころは、まだ 写真が ありませんでした。だから、絵は ぜんぶ 手で かいた ものです。つまり、ちがう 絵を 2まい みせるだけで、脳は 立体と かんじる、と わかったのです。
では、脳は、絵に かいて ある ものの かたちを みわけてから、奥ゆきを きめて いるのでしょうか。
1838年、イギリスのチャールズ・ホイートストンは、左右の目に少し違う絵を見せると、ひとつの立体に見えることを示しました。鏡を使って、右目には右用の絵、左目には左用の絵だけが届くようにした装置です。彼はこれを「ステレオスコープ」と名づけました[2]。
この論文は、1838年6月21日に王立協会で報告されました[2]。当時はまだ写真が発明されておらず、使われた図は手で描いたものでした。つまり、実物がなくても、視差のついた2枚の絵があれば、脳は立体を感じるわけです。奥行きは、物体そのものにあるというより、左右の違いから脳が作り出している部分が大きいのです。
ここで、ひとつの疑問が生まれます。脳は、絵の中の物の形や輪郭を先に見分けてから、左右の対応を決めているのでしょうか。それとも、形を知る前から奥行きを計算しているのでしょうか。
この問いに最初に実験で答えたのが、チャールズ・ホイートストンである。彼は1838年6月21日に王立協会で論文を報告し(Philosophical Transactions 128巻に掲載)、左右の眼に少し異なる2枚の絵を見せると、単一の三次元の物体として知覚されることを示した。鏡を使って左右の眼に別々の図を届ける装置を、彼は「ステレオスコープ」と名づけている[2]。
当時は写真の発明以前で、図は手描きだった。したがって、実物が存在しなくても、視差を含む2枚の図があれば立体は成立する。このことから、奥行きの知覚が物体の側にあらかじめ備わっているのではなく、左右の像の差から脳が組み立てている側面が強いと分かる。
ただし、この実験の図には、線で描かれた物の形がはっきり含まれていた。そこで次の疑問が残る。脳は物の形を認識してから左右を対応づけるのか、それとも形が不明なうちに対応づけ、奥行きを求めうるのか。
3. かたちの ない 点だけの 絵から、四角が うかぶのは なぜ?
3. 形のない点の絵から、四角が浮かぶ実験
3. 物体の形を含まない左右の図:ユレシュのランダムドット(1960年)
1960年、ベラ・ユレシュと いう 人が、おもしろい 絵を つくりました。ぜんぶ ばらばらの 点だけで できて いて、かたちも せんも ありません。
この 絵を 左右の 目に 1まいずつ みせます。2まいは ほとんど おなじですが、まんなかの 四角い ところだけ、点が すこし よこに ずらして あります。
かたほうの 目で みても、四角は まったく わかりません。ところが、りょうほうの 目で みると、四角が うかんで みえます。かたちが わからなくても、脳が 左と 右の 点を くらべて、奥ゆきを きめる ことが できるのです。
ユレシュは 1971年の 本で、左と 右の 見え方が はやい ところで ひとつに あわさる、という 考えを しめしました。これを「わたしたちの 中の サイクロプス」と よびました。サイクロプスは、むかしの ギリシャの おはなしに でてくる、ひとつ目の きょじんの 名前です。
では、脳の 中では、どんな ことが おきて いるのでしょう。
1960年、ベラ・ユレシュは、ランダムな点だけで作った左右2枚の絵を使った実験を発表しました。輪郭も物の形もありません。2枚はほとんど同じですが、一部の四角い領域の点だけが、横に少しずらしてあります[3]。
片目で見ても、四角はまったく見えません。形や遠近の手がかりが、片目には何もないからです。ところが両目で見ると、ずらした部分が浮かび上がって見えます[3]。これは、脳が物の形を識別できなくても、左右の点を照合して奥行きを求められることを意味します。
ユレシュは1971年の著書で、左右の像は視覚の早い段階でひとつに合わされるという考えを示し、これを「わたしたちの中のサイクロプス(一つ目の巨人)」と呼びました[3]。
では、この「左右の照合」は、脳の中のどんな細胞が担っているのでしょうか。
1960年に発表されたユレシュの実験は、形を含まないという条件を徹底した点で決定的だった。ランダムに配置した点だけで左右2枚の図を作り、一部の矩形領域の点だけを横にずらす。片眼で見ても矩形は識別できず、物体の輪郭や遠近の手がかりもない。ところが両眼で見ると、その領域が奥行きをもって浮かぶ[3]。
この結果は、両眼の入力から、物体を同定しなくても奥行きが計算できることを示す[3]。つまり脳は、物体の形を識別できなくても、左右の点の対応づけを行える。なお、この発明の年は資料により1959年と1960年があり、論文は1960年である。
ユレシュは1971年の著書で、左右の像が視覚処理の早い段階で一つに統合されるという考えを提示し、これを「わたしたちの中のサイクロプス」と呼んだ[3]。
だが、点どうしの照合を担う回路が実際に脳にあるのか、という問いはまだ残っている。それを示したのが、猫の神経細胞の記録である。
4. 脳の 中の 小さな 細胞は、どんな はたらきを して いるの?
4. 脳の細胞は、ずれの大きさに応じて反応している
4. 視差に選択的に反応する神経細胞:猫の一次視覚野(1967年)
1967年、ある 研究者たちが、猫の 大脳に ある、目から くる しらせを さいしょに うけとる ところを しらべました。7ひきの 猫で、87この 細胞の はたらきを はかりました。
すると、左右の 目の 見える ばしょが あう ところに しげきが きた ときに、つよく はたらく 細胞が ありました。しかも、どれくらいの ずれが すきか は、細胞ごとに ちがって いました。
研究者たちは、ずれの ちがう 細胞が、とおさが ちがう ものに それぞれ いちばん よく はんのうする のでは ないか、と かんがえました。
これは 猫の 研究で、人の 細胞を そのまま はかった わけでは ありません。それでも、脳の 中に、ずれを きく しくみが ありそうだ、と わかって きました。
ところで、この ちからは、どこまで とおくの ものに つかえるのでしょう。
1967年、ホラス・バーローたちは、猫の大脳の一次視覚野で、細胞の反応を記録しました。調べたのは猫7匹で、87個の細胞です[4]。
左右の目の対応する位置に刺激が来たとき、強く反応する細胞が見つかりました。しかも、どのくらいのずれを好むかは、細胞ごとに違っていました。そこで彼らは、ずれの違う細胞が、距離の違う物に最もよく反応するのだろうと提案しました[4]。
これは猫での研究で、人の細胞を直接測ったものではありません。それでも、脳の中に「ずれの大きさに応じて反応する細胞」が並んでいる、という考え方の出発点になりました。
ところで、この力は、どのくらい遠い物にまで通用するのでしょうか。
ユレシュの実験が示した「形が分からなくても成り立つ対応づけ」を支える神経基盤について、1967年にバーロー、ブレイクモア、ペティグルーが報告した。猫の大脳の一次視覚野で、左右の眼の対応する位置に刺激が与えられたときに強く反応する細胞を見いだしたのである。記録は猫7匹・87個の細胞で、好む視差の大きさが細胞ごとに異なっていた[4]。
この結果から、彼らは、視差の違う細胞が距離の違う物体に最もよく反応するのではないかと提案した[4]。ただし、対象は猫であり、人の細胞を直接測ったものではない。人に同様の仕組みがあるかどうかは、別の研究で確かめられる必要がある点に注意したい。
とはいえ、視差の大きさに応じて反応し、奥行きの手がかりを伝える細胞の存在は、ユレシュの結果と整合する。では、この視差という手がかりは、物体がどれだけ遠くても同じように効くのか。第5章では、その限界を考える。
5. とおくの やまは、どうして 遠くに みえるの?
5. 遠くの景色では、視差のほかに何を使っているか
5. 両眼視差が有効な距離の目安と、それを補う単眼の手がかり
ふたつの 目の ずれは、とおくの ものでは とても 小さく なります。そのため、この ちからが よく はたらくのは、ちかくの ものです。10メートルほどを めやすに する せつめいも あります。これは ひとつの せつめいに よる めやすで、ここから きゅうに ダメに なる わけでは ありません。
では、とおくの やまを みて、とおいと わかるのは どうしてでしょう。
ほかにも、てがかりが あります。ものが かさなって みえる ことや、おなじ ものでも とおいほど 小さく みえる ことです。じぶんが うごいた ときに、ちかい ものほど はやく うごいて みえる ことも、てがかりに なります。
この うち、ものが かさなる てがかりは、かなり とおくでも はたらくと いわれます。つまり、脳は、ずれだけでなく、いろいろな てがかりを くみあわせて、奥ゆきを きめて いるのです。
それにしても、この ちからは、いつから そなわって くるのでしょう。
左右の目のずれは、遠くの物ではとても小さくなります。立体感を正確にとらえられるのは、手の届く範囲を中心にした「行動空間」の10mほどとする解説もあります。物が前後に重なって見える「遮蔽」は、かなり遠くでも前後関係の手がかりになるとも紹介されています[5]。
これらは目安で、1つの解説にもとづく数字です。それでも、近くでは視差が大きな力を持ち、遠くでは別の手がかりに引き継がれる、という流れは読み取れます。2mの距離で2cmの前後差を見分けられる、という例も示されています[5]。計算すると、距離の1%の違いです。
つまり脳は、視差だけでなく、重なり、大きさ、自分が動いたときの見え方の変化など、使える手がかりを組み合わせて奥行きを決めています。片目だけでもまったく奥行きが分からなくならないのは、そのためです。
ところで、この「組み合わせる力」は、人がいつから身につけるものなのでしょうか。
両眼視差は、遠い物体ほど小さくなる[1]。したがって、この手がかりが有効な範囲には限りがある。ある解説では、立体感を正確にとらえられる範囲は「行動空間」の10m程度とされ、遮蔽(物の前後の重なり)はかなり遠方でも前後関係の手がかりになると紹介されている。2mの距離で2cmの前後差を見分けられる例も示される[5]。2cmは200cmの1%にあたる。
ただし、10mは厳密な境界ではなく、一つの解説に基づく目安にすぎない。重要なのは数字そのものより、手がかりの種類ごとに有効な距離が違い、近距離では視差が有力な手がかりの一つになり、遠距離では遮蔽なども役立つという構図である。
この構図から、片眼しか使えない状況でも奥行きの判断が完全には失われない理由が説明できる。脳は、視差、遮蔽、大きさ、運動視差などを組み合わせて立体を把握している。視差だけに頼る系ではないからこそ、遠景でも距離感が成り立つ。
では、この統合は、人がいつ頃、どのように獲得していくのか。
6. 赤ちゃんは、いつから 奥ゆきが わかるように なるの?
6. 立体視はいつ育ち、大人になってから変わることはあるか
6. 立体視の発達時期と、成人後の変化の一例
日本の 目の 研究の 論文の はじめの ぶぶんでは、正しい 立体に 見える ちからの 育ちは、うまれて 2か月から 3か月ごろに はじまる、と 書かれて います。2さいごろに やく8わり、5さいごろに できあがる とされます。外国の 研究でも、多くの 赤ちゃんで 2か月から 4か月ごろに はじまると いわれます。
ところで、小さい ころに 立体に 見える ちからが そだたなかった 人は、大人に なってから 見えるように なる ことが あるのでしょうか。
スーザン・バリーさんは、のうの はたらきを しらべる 研究者です。小さい ころの 目の ずれで、立体に 見える ちからが ありませんでした。3回の 手術の あとも、それは かわりませんでした。ところが、47さいの ときに 訓練を はじめると、おぼえている かぎり はじめて、まわりの せかいが 立体に みえたそうです。
これは、ひとりの 人の れいです。だれでも そうなる とは いえません。それでも、「小さい ころを すぎると 身に つかない」という かんがえを、もう 一度 かんがえる きっかけに なりました。
日本の眼科専門誌の論文の導入部には、正常な立体視の発達は生後2〜3か月ごろに始まり、2歳ごろに約80%、5歳ごろに完成すると書かれています[6]。英語の研究でも、多くの乳児で2〜4か月ごろに始まるとされます。
では、幼いころに立体視が育たなかった人は、大人になってから変われるのでしょうか。神経科学者のスーザン・バリーさんは、幼いころの斜視のために立体視がありませんでした。3回の手術のあとも、立体視は得られませんでした。ところが47歳のとき、視能訓練を始めると、記憶にある限り初めて、周りの世界が立体として見えるようになったと書かれています[7]。
これは一人の事例で、誰でも同じように回復するとはいえません。年齢も、資料によって47〜50歳と幅があります。それでも、「立体視は幼少期を過ぎると身につかない」という見方を考え直す、きっかけの一つになりました[7]。
立体視はいつ育つのか。日本の眼科専門誌の論文の導入部によれば、正常な立体視の発達は生後2〜3か月に始まり、2歳頃に約80%、5歳頃に完成する[6]。英語圏の乳児研究でも、多くの乳児で2〜4か月頃に始まるとされる。なお、乳児内斜視の感受性期間(2歳まで)とは別の数字である。
では、この時期を過ぎてからでは遅いのか。神経科学者スーザン・バリーは、幼少期の斜視のために立体視がなかった。3回の手術後も立体視は得られなかったが、47歳で視能訓練を始めると、記憶にある限り初めて、周囲の世界が三次元に見えるようになった[7]。
この例は、立体視は幼少期を過ぎると身につかないという見方を再考させた[7]。ただし、一人の事例であり、誰でも回復するとは言えない。年齢も資料によって47〜50歳と差がある。
7. そとで、とおくの けしきの 奥ゆきを さがして みよう
7. 外で、遠くの景色が奥行きに見える理由を探す
7. 日常で確かめる:視差の効かない距離で、何が奥行きを作っているか
まどの そばか、あんぜんな ばしょで、とおくの けしきを みて ください。あるく ときは、まえを よく みて、くるまや じてんしゃの ちかくでは しないで ください。たいようは、ぜったいに みないで ください。
まず、りょうほうの 目で、とおくの けしきを みます。つぎに、かたほうの 目を とじて、みくらべます。とおくでは、あまり ちがいが わからないかも しれません。
つぎに、なにが とおくに みえる 手がかりか、さがして みます。ものが かさなって いないか。おなじ ものが 小さく みえて いないか。そのとき、脳が、ずれ いがいの 手がかりも つかって いるのが、すこし わかるかも しれません。
かみを 2まい よういして、おなじ けしきを かいて みましょう。2まいめだけ、木や 家を、すこし よこに ずらして かきます。2まいを ならべて みくらべると、右の 目と 左の 目の ちがいを、手で つくった ことに なります。ちかい ものほど、ずらす ぶんを 大きく すると、どうなるでしょう。
窓辺や安全な場所から、遠くの景色を見てみてください。歩きながらは避け、車や自転車の近くでは行わないでください。太陽は絶対に見ないでください。
まず両目で遠景を見て、次に片目をつぶって見比べます。遠くでは、前後の見え方の変化が、近くの指ほどはっきりしないかもしれません。そのうえで、何が遠さを教えているのかを探してみます。物の重なりはないか。同じ種類の物が、小さく見えていないか。歩いたとき、近い物だけが速く動いて見えないか。
こうして探すと、左右のずれ以外の手がかりが、いくつも見つかるはずです。脳が、使える手がかりを組み合わせている様子が、少し実感できるかもしれません。
家にある紙2枚で、左右の目の違いを手で作ってみることもできます。同じ景色を2枚描き、2枚目だけ、木や家を少し横にずらします。近い物ほどずらす量を大きくして、2枚を並べて見比べてみてください。左右の目が受け取る違いを、紙の上で再現していることになります。
遠景を眺め、両眼と片眼で見比べてみる。窓辺など安全な場所で行い、歩行中や車・自転車の近く、太陽に向けては行わないこと。近距離の指では差が明瞭でも、遠景では差が小さいことに気づくかもしれない。
次に、遠さの手がかりを探す。重なり(遮蔽)、同種の物の大きさの違い、自分が動いたときの近景と遠景の動きの差(運動視差)である。第5章の整理では、遮蔽はかなり遠方でも手がかりになるとされていた。
紙2枚でも、視差を再現できる。同じ景色を2枚描き、2枚目だけ、近い物を横にずらして描く。近い物ほどずらす量を大きくし、遠い物はほとんど動かさない。2枚を並べて見比べると、左右の眼が受け取る像の差を、手で作ったことになる。ずらす量を変えると何が変わるかを考えてみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数値は報告された範囲や目安であり、条件によって変わります。猫の研究は人の細胞を直接測ったものではありません。
- コトバンク「立体視」(デジタル大辞泉・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E7%AB%8B%E4%BD%93%E8%A6%96-148994 (立体視と両眼視差の定義)
- Wheatstone, C. (1838) On some remarkable, and hitherto unobserved, phenomena of binocular vision. Philosophical Transactions 128, 371-394(stereosite転載) https://stereosite.com/collecting/the-birth-of-stereoscopy-wheatstone-on-binocular-vision-1838-original-source/ (ステレオスコープの命名と報告)
- Siegel, R. M. (2004) Choices: The Science of Bela Julesz. PLoS Biology https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC423145 (ランダムドットと「わたしたちの中のサイクロプス」)
- Barlow, H. B., Blakemore, C., Pettigrew, J. D. (1967) The neural mechanism of binocular depth discrimination. Journal of Physiology 193, 327-342 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1365600 (猫の視覚野の視差に反応する細胞)
- 臨床眼科の論文(医書.jp) https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/ga.0000004330 (立体視の発達時期)
- Journal of Clinical Investigation 書評 Fixing My Gaze https://www.jci.org/articles/view/41156 (成人後に立体視を得た一例)
なおした ところ
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