1. くうきの つよさが はんぶんに なると、どれくらい おもい?
1. 空気圧が最大の半分になると、ペダルは最大1.63倍重い
1. 空気圧50%・75%での踏力の変化 ── シティ車とロードレーサの測定
くうきの すくない タイヤで じてんしゃに のると、ペダルが おもい。そんな けいけんは ありませんか。
この おもさを、じてんしゃの 会社が あつまる だんたいの ほうこくしょが はかって います[1]。タイヤの よこに かかれた 「いちばん おおい くうきの りょう」を 100と します。それが 50に へると、シティ車は さいだいで 1.63ばいの 力が いりました。75に へったときは、さいだいで 1.12ばいです。
1.63ばいは、いつもの 力に、6わりほど たした 力です。ただし これは、1だい ずつの そくていです。ほかの じてんしゃに、そのまま あてはまる とは かぎりません。
測ったのは「ペダルを回す力」
自転車産業振興協会(JBPI)の報告書は、タイヤの空気圧を変えて、ペダルを回すのに必要な力を測りました。基準の100%は、タイヤの側面に書かれた最大空気圧です[1]。
平坦な道と、傾き2度の坂で調べたところ、重さ19.7kgのシティ車では、空気圧が50%になると最大1.63倍、75%でも最大1.12倍の力が必要でした。ロードレーサでは、50%で最大1.21倍、75%で最大1.09倍です[1]。
1.63倍は、63%増しということです。ただし、どちらの自転車も1台ずつの測定で、結論はその自転車に限られます。世の中の自転車すべてに、同じ数字が当てはまるわけではありません。
2. なぜ、くうきが へると おもく なるの?
2. タイヤがつぶれるたびに、力の一部が熱になる
2. ヒステリシスロス ── 変形のたびに失われるエネルギー
じてんしゃが すすむと、タイヤの ゆかに ふれる ぶぶんは、すこし つぶれて は もとに もどります。くうきが すくないと、つぶれ方が おおきく なります。
タイヤの ゴムは、つぶれる ときに 使った 力の いちぶが、ねつに なって にげて しまう そうです[1]。バネの ように、ぜんぶ かえって くる わけでは ありません。ねつに なった ぶんだけ、ペダルを ふむ 力で おぎなう ことに なります。
たとえば、すなばを あるく ときを おもいだして ください。あしが しずむと、おなじ みちでも つかれます。ただし タイヤの ばあいは、すなに しずむのでは なく、ゴムが ねつを だして いる のです。
ゴムは、バネのようには力を返さない
空気が減ると、地面に接するところで、タイヤが大きくへこみます。へこむたびに、運動のエネルギーの一部が熱になって失われます。報告書は、これをヒステリシスロスと呼んでいます[1]。失われた分は、ペダルをふむ力で補うことになります。
別の資料は、ゴムは力を加えて変形させると、その一部が熱に変わり、理想的なバネのようには力が戻ってこない、と説明します。タイヤの転がりにくさ(転がり抵抗)のうち、変形に伴う損失が9割を占めるともいわれています[2]。
この資料も、自転車の空気が抜けるとペダルが重くなる例をあげて、転がり抵抗を説明しています[2]。ただし「9割」は「いわれている」数字なので、目安として受け取ってください。
報告書は、重くなる理由を、空気圧の低下で接地部のタイヤ変形量が増え、変形のたびに運動エネルギーが熱エネルギーに変わるヒステリシスロスが増すためと説明する[1]。ゴムは粘弾性体で、変形させるために加えた力の一部が熱に変わるので、理想的なバネのようには戻らない[2]。
低燃費タイヤの普及促進協議会の資料は、転がり抵抗のうち最大の要因はタイヤの変形に伴う損失で、全体の9割を占めると「言われている」と記す[2]。この割合は断定された値ではないので、損失の大半が変形に由来するという趣旨の目安として扱うのがよい。変形が大きいほど損失が増えるのだから、空気圧の低下で踏力が増えるという1章の結果とも、理屈の上で合っている。
3. くうきを ぬけば、ふかふかで らくなの?
3. 空気を抜くと、乗り心地はどこまでよくなる?
3. 空気圧を下げたときの振動 ── 室内実験とタイヤ幅の影響
おもく なるなら、くうきは おおい ほうが いいのでしょうか。でも、かたい タイヤは、でこぼこの みちで おしりが いたく なります。
ある 人の 室内の じっけんでは、40psiから 30psiに へらすと、ハンドルに つたわる ゆれが 2わりほど へりました[6]。5psi へらす たびに、3.5〜12.2%ずつ へったと いいます。psiは、くうきの 力を あらわす たんいです。
ただし、へらしすぎると、タイヤが よれたり、パンクしたり、ホイールが こわれたり する おそれが あります[6]。しかも べつの けんきゅうでは、ゆれを へらすには、くうきの 力より タイヤの ふとさの ほうが きいた と ほうこく されて います[7]。
下げると、ハンドルの振動が減った
重くなるなら、空気は多いほどいいのでしょうか。実は、乗り心地には反対の事情があります。空気が多いタイヤは硬く、路面の細かいでこぼこを、そのまま体に伝えやすいからです。
ある室内実験では、チタン製のグラベルバイクに、幅44mmのチューブレスタイヤをつけて、のる 人の おもさを 75kgと して はかりました。でこぼこの 道を まねた 室内の じっけんです。時速8kmと16kmで、空気圧を40psiから30psiに下げると、ハンドルの振動が約20%減ったと報告されています。5psi下げるごとに、3.5〜12.2%ずつ減ったそうです[6]。
空気圧だけでは決まらない
この実験でも、下げすぎるとタイヤのよれ、パンク、ホイールの損傷の恐れがあるとされています[6]。さらに2025年の査読論文は、5種類のタイヤ幅、4種類の総重量、舗装路と石畳で比べました。路面からの振動はタイヤを太くすると大きく減り、空気圧の影響は小さいけれど見分けられる程度だったと報告しています[7]。
実験の条件がちがうので、数字を並べて比べることはできません。ただ、快適さは空気圧だけでなく、タイヤの太さにも左右されるようです。
反対向きの要因もある。空気圧を下げるとタイヤが路面の凹凸になじみ、振動が減る。チタン製グラベルバイク(44mmチューブレス、乗り手75kgを想定)に、5〜18mmの突起つきトレッドミルで荒れた路面を模した室内実験では、時速8kmと16kmの条件で、40psiから30psiに下げるとハンドルの振動が約20%減り、5psi下げるごとに3.5〜12.2%減った。ただし下げすぎると、タイヤのよれ、リム打ちパンク、リム損傷の恐れがある[6]。個人による実験で、太いタイヤと、荒れた路面を模した室内という条件つきの結果だ。
では、快適さは空気圧で決まるのか。Buderらの2025年の学会抄録(Journal of Science and Cycling 14(2))は、5種類のタイヤ幅・4種類の総重量・舗装路と石畳で測り、転がり抵抗は幅・空気圧と非線形の関係にあること、路面起因の加速度(振動)は幅を太くすると大きく減り、空気圧の影響は小さいが検出できることを報告した[7]。上の実験と一見ずれるが、「空気圧だけで快適さは決まらず、幅の寄与も大きい」と読めば矛盾しない。論文は、快適さと転がり抵抗の折り合いを個別に最適化することを勧めている[7]。
4. くるまの タイヤは、なぜ ちょうど よい くうきが いいの?
4. 車のタイヤは、低すぎても高すぎても困る
4. 乗用車の空気圧 ── 燃費・乗り心地・制動距離の折り合い
くるまの タイヤにも、「ちょうど よい くうきの りょう」が きめられて います。くうきが すくないと、ハンドルに でこぼこが つたわりやすく、すすむ ときの ていこうも ふえて、ガソリンが おおく いるように なると いわれます[8]。
では、おおければ いいのでしょうか。たかすぎると、だんさの しょうげきを うまく すいこめず、のりごこちが わるく なる といいます[8]。くるまの せつめいしょにも、てきせいな くうきの りょうで ないと、あんぜんに はしれないだけでなく、のりごこちも わるく なる と かかれて います[5]。
だから ちょうどよい りょうを、くるまを つくった 会社が きめて いるのです。
空気圧が低いと、燃費が悪くなった例がある
自動車のタイヤでも、空気圧が低いと、ハンドルに路面のでこぼこが伝わりやすく、走りの安定に影響するといわれます。接地面積が増えて転がり抵抗が大きくなるため、燃費も悪くなります[8]。
国の協議会が2009年にまとめた資料には、排気量2000ccの乗用車で、空気圧が適正値より50kPa不足した例があります。使い方によって、燃費が2.5〜4.8%悪くなったそうです[2]。古い資料の一例なので、今の車に同じ数字が当てはまるとは限りません。
高すぎても、いいことばかりではない
空気を入れすぎれば安心かというと、そうでもありません。段差の衝撃をうまく吸収できず、乗り心地が悪くなるといわれます[8]。同じ資料は、適正な範囲より空気圧を上げることや、むやみに転がり抵抗を下げることは、濡れた路面でブレーキが効くまでの距離が伸びる傾向があるので避けるべきだとしています[2]。
ホンダの取扱説明書にも、適正でないと安全な走行ができないばかりか、乗り心地も損なわれる、と書かれています[5]。
乗用車でも、空気圧の過不足は逆向きの損をつくる。一般には、低いとハンドル操作に路面の凹凸が伝わりやすく走行安定性に影響し、接地面積が増えて転がり抵抗が大きくなって燃費が悪化する。高すぎると段差の衝撃を吸収しきれず乗り心地が悪くなる、と説明される[8]。ただしこれはメディア記事の一般論で、数値つきの一次資料ではない。
数値の例としては、低燃費タイヤ等普及促進協議会の2009年の資料に、2000ccの乗用車で空気圧が適正値より50kPa不足すると、使い方によって燃費が2.5〜4.8%悪化したというデータがある[2]。同じ資料は、適正範囲以上に空気圧を上げることや、転がり抵抗をむやみに下げることは、濡れた路面での制動距離が伸びる傾向があるため避けるべきだとする[2]。つまり転がり抵抗は、低ければよいとは限らない。ホンダの取扱説明書も、適正でない空気圧は安全な走行を妨げ、乗り心地も損なうと明記している[5]。ただし2009年の数字は、50kPa不足という条件つきの一例にとどまる。
5. くうきは、さわらなくても ぬけるの?
5. 空気は自然に抜けて、減っても気づきにくい
5. 自然に抜ける空気と、体感では分からない低下
じてんしゃの タイヤは、あなが あいて いなくても、すこしずつ くうきが ぬけます。くるまの タイヤも おなじです。ゴムの せいしつの ためだ と、じどうしゃの ほうの 人は せつめいします[4]。
JAFの せつめいでは、くうきは 1か月に 5%ほど しぜんに ぬける めやすだ と されて います[3]。しかも、すこし へった くらいでは、見た目や のりごこちで わかる 人は なかなか いない そうです[4]。
ちょうど、おふろの おゆが すこしずつ さめるのに、きづきにくいのと にて います。ただし くうきは、はかれば かならず かずで わかります。
6. くうきの りょうは、いつ はかれば いいの?
6. 空気圧は、走る前の冷えたときに測る
6. 空気圧と温度 ── 冷間時測定と適正値の確認先
くうきの りょうは、きおんと いっしょに かわります。あつい 日は たかく、さむい 日は ひくく なります。ひなたと ひかげの タイヤでも、ちがいが でます[4]。
だから はかるのは、はしる まえ、タイヤが ひえて いる ときが よいと されて います[5]。
ちょうど よい りょうは、くるまの せつめいしょか、うんてんせきの ドアを あけた ところの ラベルで わかります[3][5]。
気温でも、日なたでも変わる
空気圧は気温の影響を受けます。気温が高いと高く、低いと低くなります。日なたと日陰でも、タイヤごとに値が変わります[4]。そのため、測定は走る前の、タイヤが冷えた状態がよいとされています。ホンダの取扱説明書も、測定はタイヤ温度が低いときにするよう書いています[5]。
適正値は、どこに書いてある?
車の適正な空気圧は、取扱説明書か、運転席のドアを開けたところのステッカー(ラベル)で確認できます[3][5]。自転車の場合は、タイヤの側面に最大空気圧が書かれています[1]。
こうして見ると、空気圧は「軽さ」と「乗り心地」の間でゆれ動き、しかも自然に変わっていく数字だと分かります。
7. タイヤの よこの かずを さがして みよう
7. タイヤの横に書かれた数字を探してみよう
7. 出口 ── 側面表示を探す観察と、資料の読みどころ
おうちの 人と いっしょに、じてんしゃの タイヤの よこを 見て みましょう。「MAX」や 「PSI」と かかれた かずが あるかも しれません。
つぎに、ゆびで タイヤを ぎゅっと おして、かたさを おぼえます。空気入れに メーターが ついて いたら、かずも 見て みましょう。ゆびの かんじと かずが、どれくらい ちがうか くらべられます。
くるまが とまって いる ときは、おうちの 人と、うんてんせきの ドアを あけた ところに ラベルが ないか 見て みましょう。
もっと しりたく なったら、じてんしゃの 会社の だんたいの ほうこくしょ[1]を ひらいて みて ください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:自転車産業振興協会の報告書、国の協議会の資料、JAF・JATMAの記事、ホンダの取扱説明書、自転車の実験の記事と論文を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 自転車産業振興協会(JBPI) 平成29年度 事業実施報告書①「タイヤ空気圧の違いが及ぼすペダリングへの影響」。https://jbpi.or.jp/wp-content/uploads/2022/12/rept_170508.pdf (空気圧とペダルの力、ヒステリシスロスについて)
- 低燃費タイヤ等普及促進協議会『低燃費タイヤ等に関する普及促進のあり方について』(2009年7月)。https://www.mlit.go.jp/common/000047550.pdf (転がり抵抗、燃費と制動距離について)
- JAF Mate「安全・タイヤ空気圧」。https://jafmate.jp/safety/sp_20230518.html (空気の自然な低下と点検の目安について)
- 日本自動車タイヤ協会(JATMA) 掲載「タイヤ空気圧点検の重要性」(菰田潔氏インタビュー)。https://www.jatma.or.jp/docs/tyre_user/report_200407_01.pdf (空気が自然に抜けること、気温との関係について)
- Honda N-VAN 取扱説明書(2026年)。https://www.honda.co.jp/ownersmanual/webom/jpn/n-van/2026/details/136267090-12272.html (適正空気圧と測定のしかたについて)
- CyclingAbout「Lab test: lowering tyre pressure improve bike comfort?」。https://www.cyclingabout.com/lab-test-lowering-tyre-pressure-improve-bike-comfort/ (空気圧を下げたときの振動の実験について。個人の実験)
- Buder, Fouchard, Schwanitz (2025) "The impact of tyre width, pressure and surface condition on rolling resistance and vibration transmission of bicycle tyres", Journal of Science and Cycling 14(2)。https://www.sponet.de/sponet/Record/4096941 (タイヤ幅・空気圧と振動の関係について)
- くるまのニュース「タイヤの空気圧」の解説記事。https://kuruma-news.jp/post/637288 (空気圧が低い・高いときの一般論について。報道)
なおした ところ
更新履歴
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