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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

トレーという ことばは、もともと どんな ものの ことだったの?

トレーという言葉は、もとはどんな物を指していたのか ── 縁つきの木の板が、食堂とスーパーでどう使われたか

トレー(tray)という言葉の由来 ── 古英語の「縁のある木の板」と、日本の折敷、食堂とスーパーでの使われ方

分野:歴史・文化

スーパーの にくや さかなが のっている しろい トレー。この ことばは、むかしの えいごでは「ふちの ある たいらな きの いた」という いみでした。

にほんで にくや さかなの しろい トレーが でてきたのは、セルフサービスの おみせが ひらいた あとでした。

じゃあ、この かたちは、にほんでは なんと よばれて いたのでしょう。そして、しょくどうや スーパーでは、どう つかわれるように なったのでしょう。

スーパーで肉や魚をのせる白いトレー。その「トレー」という英語は、古い英語では「低い縁のある平たい木の板」を意味していました[1]。プラスチックが生まれる前から、この形に名前があったことになります。

日本で肉や魚の白いトレーが登場したのは、セルフサービスの店が開いたあとでした。

では、日本ではこの形を何と呼んでいたのでしょうか。食堂やスーパーでは、どんな役目を持つようになったのでしょうか。

食品トレーの語源である英語 tray は、古英語の段階では「低い縁のある平たい木の板」を指した語である[1]。発泡スチロールの白いトレーより、ずっと前から、この形には名があった。

では、日本で同じ形は何と呼ばれ、食堂とスーパーではどのように使われるようになったのか。辞書、百科事典、業界団体の資料から、縁つきの板がそれぞれの場面で使われた様子をたどる。日本で肉や魚の白いトレーが登場したのは、セルフサービスの店が開いたあとだった。

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1. トレーは、もとは きの いたの ことだった?

1. 「トレー」はもとは木の板だった

1. 語源をたどる ── 古英語の treg と、木に関わる語根

おぼん の うえに ごはんを のせて はこんだ ことは ありますか。あの おぼんと、スーパーの トレーは、にた ところが あります。

えいごの tray(トレー)の ふるい かたちは、むかしの えいごの treg や trig です。「ひくい ふちの ある たいらな きの いた」を さしました[1]。

ことばの おおもとは、「かたい」「き」に かんけいする ふるい ことばに つながる と いわれます[1]。きで できた ものを さす ことばだったのです。

では、おなじ かたちの ものは、にほんには なかったのでしょうか。

低い縁のある、平たい板

お盆に食べ物をのせて運んだことは、きっとあるでしょう。あのお盆の仲間が、トレーです。英語のtrayの古い形は、古英語のtregやtrigで、「低い縁のある平たい木の板」を指しました[1]。

木に関わる言葉につながる

この語は、さらにさかのぼると、「かたい」「木」といった意味を持つ古い語根につながるとされています[1]。つまりトレーは、古英語では木製の縁つきの板を指していました。ただし、これは語源辞典1冊の説明なので、「tree(木)の親戚」とまでは言わず、木に関わる語根とだけ書いておきます。

縁がある平たい板という形は、英語圏だけのものではなさそうです。日本にも、昔から同じような形の物がありました。

トレーの語源を調べると、まず意味が現在と大きく違わないことに気づく。英語 tray の古い形は古英語の treg、trig で、「低い縁のある平たい木の板」という、形の定義そのものを語義としていた[1]。古い語義が、今のトレーに似た形を表していたのである。

この語は、さらに印欧語根にさかのぼると、「かたい、しっかりした」を意味する語根の、「木、樹木」という限られた意味につながるとされる[1]。このため、もとは木製の物を呼ぶ語だったことになる。ただし、根拠は語源辞典1件であるから、tree と同系と言い切らず、「木に関わる語根」までにとどめる。

では、英語圏の外ではどうか。日本にも、同じような形の道具があった。名前は何と呼ばれていたのか。日本で調べるなら、その候補は「折敷(おしき)」と「盆(ぼん)」である。

2. にほんには、にた かたちの ものが あった?

2. 日本の「折敷」も、縁つきの板だった

2. 折敷(おしき)── ヒノキの片木で作る、縁つきの盆

にほんには「おしき」と いう ものが ありました。ひのきの うすい いたで つくった、ふちの ある ぼんです。おおくは しかくで、しょっきを のせました[2]。

なまえの いわれには、ふたつの せつが あります。ひとつは、きの はを おって しいて、うつわの かわりに した から、という せつです。もうひとつは、たべものを のせる しきものの こと、と する せつです[2]。

よすみを きった かたちや、あしの ついた ものも ありました。へいあんじだいには、いろいろな おしきが つかわれて いたようです[2]。

いまの おぼんと にた かたちが、むかしから あった ことが わかります。

ヒノキの薄い板で作る、縁のある盆

折敷は、ヒノキの片木(へぎ)で作った縁つきの盆です。多くは四角い形で、食器をのせました[2]。英語の古い意味とほとんど同じ説明です。

名前の由来には2つの説がある

名前の由来には、木の葉を折って敷き、食器の代わりにしたことからという説と、食べ物をのせる敷物のことだという説があります[2]。どちらかに決まっているわけではありません。

折敷には、四隅を切り落とした角切折敷や、脚をつけたものなどの種類があり、平安時代にはいろいろな折敷が使われていたらしいと説明されています[2]。

英語の古い意味と似た形の道具が、日本にもあったわけです。その板は、日本ではやがて「盆」という別の名前でも呼ばれるようになります。

日本語で同じ形を探すと、まず折敷に行き当たる。折敷は、ヒノキの片木で作った縁つきの盆で、多くは方形をしており、食器をのせる道具だった[2]。縁つきの板という点で、古英語の tray の定義とほぼ重なる。

名の由来は定まっていない。一つは、木の葉を折って敷き、食器の代わりにしたから、という説である。もう一つは、食べ物をのせる敷物を指す語だ、という説で、どちらも辞書が並べて紹介する[2]。

種類も多く、四隅を切り落とした角切折敷や脚つきのものがあり、平安時代にはさまざまな折敷が用いられたらしい[2]。脚がつけば、持ち運ぶ板から、置いて使う台へと近づく。同じ縁つきの板でも、使い方によって形が変わっていく。

ここまでで、英語の古い語義に似た形の道具が日本にもあったことは分かった。では、日本語では、その板をいつから「盆」と呼ぶようになったのか。言葉の側からも確かめてみる。

3. 「おぼん」と いう なまえは、いつから?

3. 「盆」という呼び名が広まったのは、室町時代

3. 「盤」から「盆」へ ── 呼び名の交代と、語源の諸説

むかしは、いまの ぼんの ことを「ばん」と よんで いました。かまくらじだいを とおして、「ばん」が いまの ぼんに あたる よびかたでした[3]。

「ぼん」と いう なまえが ふつうに なるのは、むろまちじだいの まんなかごろと いわれます。ぼんと かかれた いちばん ふるい ものの ひとつに、さいだいじに のこる きょうとくよねんと きざまれた てんもく ぼんが あります[3]。

ぼんの ことばの もとは、はっきり していません。ぶっきょうの おまつり うらぼんの りゃくだ という せつや、おそなえ ものを のせる「ぼに」と いう うつわの ふるい なまえだ という せつが あります[3]。

ただし、おまつりの「おぼん」と、どうぐの おぼんは、わけて かんがえます。

「盤」から「盆」へ

昔は、今の盆にあたるものを「盤」と呼んでいました。鎌倉時代を通じて盤が盆にあたる呼び名で、盆の名前が一般的になるのは室町時代の中ごろからとされています[3]。盆と名前が記された古い遺品には、西大寺に伝わる享徳4年銘の「天目盆」があります[3]。

盆の語源は決まっていない

語源には諸説があります。仏教行事の「盂蘭盆」の略だとする説と、供え物をのせる「瓫」という器の古い呼び名だとする説があり、どちらとも定まっていません[3]。

お盆の行事と、物をのせる盆の道具は、別のものとして区別して読む必要があります。

こうして呼び名は変わっていきました。では、縁のある板が、大勢の客に食事を出す場所で使われるようになったのは、いつのことなのでしょうか。

日本語の側では、呼び名の交代が起きている。鎌倉時代を通じて「盤」が今の盆にあたる呼称で、盆が一般化するのは室町時代中期ごろとされる[3]。盆と記された遺品としては、西大寺に伝わる享徳4年銘の天目盆が古い例にあたる[3]。

では、なぜ「盆」という字が当てられたのか。語源は定まっていない。一説は仏教の盂蘭盆の略で、もう一説は、供物をのせる瓫(ぼに)という器の古称とする[3]。前者なら行事の名が道具の名になり、後者なら器の名が受け継がれたことになる。どちらを採るかで、物と行事の先後の読み方が逆になる点に注意が要る。

ここまでに出てきた名は、折敷、盤、盆と、時代ごとに違う。資料が述べているのは、こうした呼び名の移り変わりまでで、形そのものが受け継がれたかどうかは別の話である。

縁つきの板は、台所や食卓のほかに、人が大勢集まる食堂でも使われた。次に、19世紀末のアメリカの食堂に目を移す。

4. しょくどうでは、トレーを どう つかったの?

4. 食堂の列に並ぶ「トレー・ライン」

4. 1898年のニューヨーク ── チャイルズ・レストランのトレー・ライン

1898ねん、アメリカの ニューヨークに ある チャイルズと いう レストランの みせで、あたらしい やりかたが はじまった と いわれます[4]。

おきゃくさんが トレーを もって、れつに ならんで すすみます。すすみながら、すきな りょうりを じぶんで トレーに のせて いく のです。この やりかたを「トレー・ライン」と いいます[4]。

チャイルズは、1890ねんごろには 10みせ ほどでしたが、1920ねんまでに アメリカと カナダで、なんびゃくも の みせに ふえました[4]。

ひろい トレーが あれば、りょうりを いくつも のせて、じぶんの せきまで はこべます。

客が自分で、トレーに料理をのせていく

アメリカのチャイルズ・レストランは、客が自分でトレーを持ち、列に沿って進みながら料理を取っていく「トレー・ライン」を、1898年にニューヨークのブロードウェイ130番地の店で始めたとされています[4]。「発明した」とまでは言わず、「考案したとされる」と書くのが、資料に合った書き方です。

10店ほどから、数百店へ

このチェーンは、1890年ごろには10店ほどでしたが、1920年までにアメリカとカナダで数百店になりました[4]。客が自分で運ぶこの方式は、少ない人手で多くの客をさばくのに向いていたと考えられます。

ここでは、縁つきの板が「食べ物を運ぶ台」から「料理を集めて、列を進む道具」へと役目を変えています。この形は、その後どこへ向かったのでしょうか。

食堂でトレーが大きな役目を持った場面が、1898年のニューヨークにある。米国のチャイルズ・レストランが、トレーを持った客が列に沿って進みながら料理を取る「トレー・ライン」を、ブロードウェイ130番地の店で始めたとされる[4]。

この出典は、百科事典の2ページが同じ内容を述べたものである。そのため、チャイルズが発明者だと決めるのではなく、「考案したとされる」という表現が、資料の強さに合う[4]。

チェーンの規模は、1890年ごろの約10店から、1920年までに米国とカナダで数百店に増えた[4]。店が増えた背景に、トレー・ライン方式があったと考えたくなるが、資料は両者の因果までは述べていない。トレーが使われたことと、店が増えたことは、並んで起きた出来事として読むにとどめる。

ここで確かなのは、トレーの役目が変わった点である。折敷は食べ物をのせて運ぶ板だったが、トレー・ラインでは、客が自分で料理を選び集め、列を進むための板になった。

この使い方は、のちに日本の小売店にも広がったのだろうか。次に、肉や魚の白いトレーが生まれた1950〜60年代の日本を見る。

5. スーパーの しろい トレーは、いつ できたの?

5. 日本のスーパーと、肉や魚の白いトレー

5. セルフサービスの店と発泡トレー ── 紀ノ国屋(1953年)から1960年ごろへ

にほんで じぶんで えらぶ やりかたの みせが できたのは、1953ねんです。とうきょうの あおやまに「きのくにや」が セルフサービスの みせとして ひらきました[5]。

それから 7ねん ほど たった 1960ねんごろ、にくや さかなを のせる トレーが うまれました。さいしょは、しろい はっぽうの トレーが おおかったと いいます[5]。

プラスチックの しょくひんようきの かいしゃの あつまりは、セルフサービスの みせと いっしょに そだってきた、と せつめいして います[5]。

自分で選ぶ店の始まり

日本では1953年に、東京・青山の紀ノ国屋がセルフサービス方式の店として開店しました[5]。店の人に頼むのではなく、客が棚から自分で商品を選ぶ店です。

肉や魚の白いトレー

肉や魚をのせるトレーが登場したのは1960年ごろで、当初は白い発泡トレーが主流でした[5]。紀ノ国屋の開店からは、およそ7年後にあたります。

プラスチック食品容器の業界団体は、「プラスチック食品容器は、セルフサービスの小売業とともに成長してきた」と説明しています[5]。セルフサービスの店と、プラスチックの食品容器は、並んで歩んできたことになります。

縁のある板という点は同じでも、トレーの素材は木から発泡プラスチックへと広がりました。その白いトレーは、今は家のごみの中にもあります。

日本のスーパーに白いトレーが並ぶまでには、順序がある。まず、1953年に東京・青山の紀ノ国屋が、セルフサービス方式の店として開店した[5]。客が自分で商品を選ぶ店が先にでき、肉や魚のトレーは、その後の1960年ごろに登場した。当初は白い発泡トレーが主流だった[5]。

この間はおよそ7年である。資料が述べているのは、店の開店年、トレーの登場時期、当初は白い発泡トレーが主流だったことまでで、両者の因果は書かれていない。そのため、この記事も、店が先にでき、トレーが後に登場したという順序だけを書く。

業界団体のプラトレネットは、プラスチック食品容器はセルフサービスの小売業とともに成長してきた、と説明する[5]。この資料は業界団体1件であり、発泡トレーの開発年や開発者、凹凸や仕切りの形の理由までは書いていない。そのため、この記事でも「1960年ごろ」より細かくは言わない。

縁つきの板は、木の道具から食堂の道具、そして店の入れ物へと、素材も使い方も変えて現れた。最後の章では、この形を自分の手と家の中で確かめてみる。

6. おうちの トレーを しらべて みよう

6. 縁の役目を手で試し、家のトレーの素材を見る

6. 縁の働きを試す、食品トレーの素材を見分ける

きょう できること

おうちの 人と いっしょに、ふちの ない いたと、ふちの ある おぼんを よういします。ふちの ない ほうは、ダンボールや したじきで かまいません。

りょうほうに ビーだまを いくつか のせて、ゆっくり かたむけて みましょう。どちらが さきに ころがり おちるかを くらべます。ふちが どんな はたらきを するのか、じぶんの めで みられます。

おでかけで できること

スーパーで しょくひんの トレーを みかけたら、かたちを みて みましょう。ふちや しきりが ついて いるかを、さがして みます。

今日できること

家の人と一緒に、縁のない板(段ボールや下敷き)と、縁のあるお盆を用意します。それぞれにビー玉やみかんをのせ、ゆっくり傾けて、どちらが先に落ちるかを比べてみましょう。縁が何をしているのかが、目で分かります。

家に洗って乾かした食品トレーがあれば、触ってみてください。「軟らかいか、硬いか」が、発泡トレーかどうかを見分ける目安になります。軟らかい発泡スチロールのトレーは、つまようじが刺さるほどの素材とされます[6]。刺すときは、必ず大人と一緒に、手や指に向けないように気をつけます。

出かけたときに

スーパーで食品トレーを見かけたら、縁や仕切りの形を観察してみましょう。リサイクルの出し方は、住んでいる自治体によって違うので、自分の町のルールを確かめてください[6]。

縁の働きを、自分で試す

縁のない板(段ボールや下敷き)と、縁のあるお盆に、ビー玉やみかんをのせ、ゆっくり傾けて落ちるまでの傾きを比べる。縁が物の動きを止める様子を、自分の目で確かめられる。縁の目的を直接述べた公的資料は用意できていないため、この実験は「形の働きを観察する」ことにとどまり、「縁は〜のために作られた」という結論にはならない。

食品トレーの素材を見る

洗って乾かした食品トレーのうち、つまようじが刺さるほどの素材とされるものが、発泡スチロール製のトレーである[6]。刺すときは大人と一緒に行い、手を傷つけないようにする。素材は発泡ポリスチレン以外にも、今は種類がある。回収の仕組みは自治体ごとに違うので、住んでいる自治体の案内を確かめるとよい[6]。

資料を読むなら

語源は Online Etymology Dictionary の tray の項(英語)、折敷と盆はコトバンクで、日本の辞書の説明を読み比べられる。プラトレネットの年表は、食品容器の歴史を日本語で読める。どの資料も、年や由来は「〜とされる」「諸説ある」という書き方になっていることに注意して読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下のリストの番号に対応します。年号は資料の記述にもとづく概略です。

  1. Online Etymology Dictionary「tray」 https://www.etymonline.com/word/tray (trayの語源・古英語の意味)
  2. コトバンク「折敷」 https://kotobank.jp/word/%E6%8A%98%E6%95%B7 (折敷の形・由来の諸説・種類)
  3. コトバンク「盆」 https://kotobank.jp/word/%E7%9B%86 (盤から盆への呼び名の変化・語源の諸説)
  4. Wikipedia「Cafeteria」 https://en.wikipedia.org/wiki/Cafeteria (チャイルズ・レストランのトレー・ライン)
  5. プラトレネット(日本プラスチック食品容器工業会)「プラスチック食品容器の歴史」 https://www.japfca.jp/platore_sp/plastic/his_1950-1960.html (セルフサービスの店と発泡トレー)
  6. 文京区「食品トレイの回収」 https://www.city.bunkyo.lg.jp/tetsuzuki/recycling/kateigomisigen/kyotenkaisyu/shokuhin.html (発泡トレーの見分け方の目安)

なおした ところ

更新履歴

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