まちの みどりは、うみに うかぶ 島

街に残った生きものの地図 ── 緑は「島」である

都市の緑地 ── 島としての緑と、それをつなぐ試み

分野:生きもの

東京の まん中に、大きな 森が あります。

めいじじんぐうの 森です。

ふるくから ある 森だと 思うかも しれません。

ちがいます。

この 森は、人が 植えて つくった 森です[1]

1920年。いまから 100年ちょっと 前の ことです[1]

いま、その 森には 3千しゅるいくらいの 生きものが います[2]

東京のまん中、原宿の駅を出たところに大きな森があります。 明治神宮の森です。

ずっと昔からあった森に見えます。でも、違います。

1920年に、人が植えてつくった人工林です[1]。 まだ100年とすこししか経っていません。

広さは約70万平方メートル。 全国から約10万本が献木され、植えられました[1]

そして、いまその森には約3千種の生きものが暮らしています[2]

この記事で見ること

街の緑は、海に浮かぶのようなものです。

そう考えると、「なぜ緑をつなぐ必要があるのか」が見えてきます。

東京都渋谷区、原宿駅のとなりに約70万平方メートルの森があります。 明治神宮の杜です。

この森は自然林ではありません。 大正9年(1920年)11月1日の鎮座に合わせ、 全国から献木された約10万本を植栽してつくられた人工林です[1]

造営当初、内苑の樹木は在来木等を含め365種 約12万本でした。 それが第二次境内総合調査(報告書は平成25年刊行)では 234種 約3万6千本になっています[2]

種数も本数も減っています。 にもかかわらず、鎮座百年記念の調査では 約3千種の生物が報告されました[2]

この記事では、都市の緑地をとしてとらえる見方と、 その島をつなごうとする政策を見ていきます。

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1. 人が つくった 森

1. 100年前に植えられた森

1. 明治神宮の杜 ── 設計された森の100年

1920年。

ここに 森を つくろう、と いう ことに なりました。

日本じゅうから、木が おくられて きました。

その 数、およそ 10まん本[1]

森の 学もんを した 人たちが、 どんな 木を 植えるかを 考えました[2]

ここで、ふしぎな ことが おきます。

はじめは 365しゅるい、12まん本ありました[2]

100年 たった いま、 234しゅるい、3まん6千本です[2]

へって いるのです。

しっぱい したのでしょうか。

いいえ。

木は 大きく なります。

大きく なると、となりの 木と 日の 光の とりあいに なります。

まけた 木は かれます。

のこった 木は、もっと 大きく なります。

数が へって、1本1本が 大きく なった。 そう 考えられて います。

(これは、森の そだち方から かんがえた せつめいです。 めいじじんぐうが そう 言って いるわけでは ありません。)

そして いま、その 森には およそ 3千しゅるいの 生きものが います[2]

木を 植えた だけなのに、 虫や 鳥や きのこが じぶんで やって きたのです。

1920年(大正9年)11月1日、明治神宮が鎮座しました[1]

そのとき、ここは森ではありませんでした。 森は、これから作るものだったのです。

10万本が集まった

全国から献木された約10万本が植えられました[1]

設計にあたったのは、本多静六、本郷高徳、上原敬二ら、 林学の専門家たちです[2]

減っているのに、育っている

数字を並べてみます[2]

内苑の樹木の変化
造営当初第二次境内総合調査
種数365種
(在来木等を含む)
234種
本数約12万本約3万6千本

種数も本数も、大きく減っています。

森づくりは失敗したのでしょうか。 森林の育ち方を考えると、そうとは限りません。

木は場所を取り合う

木は育つと、大きくなります。 大きくなると、隣の木と日光を取り合うことになります。

光が届かなくなった木は、育たずに枯れます。 残った木は、その分の光と水を得て、さらに大きくなります。

森が育つ過程では、本数が減っていくことがよく知られています。

種数が減ったのも、その土地に合わなかった種が残らなかったため、 という説明ができます。

(ただし、この説明は一般的な森林の性質を当てはめたもので、 明治神宮がそう説明しているわけではありません。)

植えていない生きものが来た

そして、鎮座百年記念の調査では 約3千種の生物が報告されました[2]

人が植えたのは木だけです。

虫、鳥、菌類、土の中の小さな生きもの。 これらは、誰も植えていません。

森ができたら、勝手にやって来た。あるいは、残っていた。

森という場所を用意すると、生きものはそこに集まる。 これが、この記事の出発点です。

明治神宮の杜は、設計された森です。 そして、設計どおりにはならなかった森でもあります。

造営

大正9年(1920年)11月1日の鎮座に向けて、 全国から献木された約10万本が植栽されました[1]。 設計は本多静六、本郷高徳、上原敬二ら林学の専門家が担いました[2]

第二次境内総合調査の結果

内苑の樹木の変化
造営当初第二次境内総合調査
(報告書 平成25年刊行)
種数365種(在来木等を含む)234種
本数約12万本約3万6千本

出典:明治神宮「杜・見どころ」[2]

本数は約3分の1、種数は約64パーセントに減っています。

減少をどう読むか

森林の遷移では、この変化は珍しいものではありません。

  • 自己間引き:個体が成長すると、光・水・養分をめぐる競争が起きます。 劣位の個体は枯死し、単位面積あたりの本数は減ります。 残った個体は大きくなるので、森全体のバイオマスは増えます
  • 種の選別:その土地の気候・土壌に合わない種は定着できません。 365種のうち定着できたのが234種、と読めます

本数と種数の減少は、森が成熟した結果として説明できます。

ただし、これは一般的な森林生態学の知見を当てはめた読み方であって、 明治神宮や境内総合調査の報告書がそう述べているわけではありません。 実際にどの種がどう推移したかは、報告書にあたる必要があります。

植栽されていない生物の集積

鎮座百年記念の調査では、約3千種の生物が報告されています[2]

人が持ちこんだのは樹木だけです。 昆虫、鳥類、菌類、土壌生物は、 森という環境が成立したあとに、自力で到達したか、もともといたかのどちらかです。

つまり、この森は次のことを実際に示しています。

この事例が示すこと

植生という「器」を用意すると、そこに生物群集が形成される。

そして、そのためには100年という時間がかかっている。

干潟の記事で、失った環境を戻すことの難しさを書きました。 明治神宮の杜は、その逆側 ── ゼロから作れた例です。 ただし、そこには100年という時間が必要でした。

2. まちの みどりは 「島」

2. 街の緑は、海に浮かぶ島に似ている

2. 都市緑地の島化 ── 分断と孤立

地図を 思いうかべて ください。

町の 中に、みどりの ところが ぽつん、ぽつんと あります。

こうえん。学校の 校てい。 じんじゃの 森。かわの そば。

その あいだは どうでしょう。

ビル、道ろ、家、ちゅうしゃじょう。

コンクリートの 海です。

生きものから 見ると、 みどりの ところは 海に うかぶ 島の ように 見えます。

島だと、こまる ことが あります。

1つめ。せまい。

小さな 島には、 たくさんの 生きものが すめません。

2つめ。行き来が できない。

となりの みどりまで 行きたくても、 あいだが 道ろだと わたれません。

カエルや トカゲは、 道ろを わたるのが とくいでは ありません。

3つめ。1つの 島が だめに なると、 もどれない。

ひとつの 島の 生きものが いなく なって しまった とき。

つながって いれば、 となりから やって きます。

はなれて いると、 もう だれも 来ません。

地図の上で、街の緑を塗ってみてください。

公園、学校の校庭、神社の森、川沿いの土手、街路樹。 点々と散らばっているはずです。

そして、その間を埋めているのは道路と建物です。

生きものから見た風景

カエルやトカゲ、飛べない昆虫にとって、 アスファルトの道路は渡れない場所です。

そう考えると、街の緑地は コンクリートの海に浮かぶ島のように見えてきます。

この見方には名前があります。 緑地が分断されて孤立していく現象を、分断化といいます。

島になると、3つのことが起きる

1. 面積が足りない

生きものが暮らすには、必要な広さがあります。 体が大きいほど、必要な面積は大きくなります。 小さな公園では、暮らせる種が限られます。

2. 行き来ができない

相手を探しに、別の緑地へ移動する。 エサ場を変える。季節で移動する。 道路で切られていると、これができません。

3. 一度消えると、戻らない

ここがいちばん重い問題です。

ある公園から、ある生きものがいなくなったとします。 病気、工事、暑い夏。理由はいろいろあります。

つながっていれば、隣の緑地から入ってきて、また増えます。

孤立していれば、誰も来ません。そこでは絶えたままです。

ヒキガエルの記事とつながる

このサイトのヒキガエルの記事で、 都心の小さな池に毎年カエルが産卵に来る話を書きました。

あのカエルたちは、産卵する池と、ふだん暮らす場所のあいだを移動します。

その道すじが切られたら、どうなるか。 池が残っていても、カエルは来られなくなります。

緑地があることと、そこに生きものが行けることは、別の話なのです。

都市の緑地を考えるとき、有効な見方が 「島」としてのモデルです。

島としての緑地

市街地に散在する緑地は、 生物にとって移動困難な領域(道路・建物・舗装面)に囲まれています。

この状態は、海に囲まれた島と構造的に似ています。 そして島の生物相には、よく知られた性質があります。

  • 面積が小さいほど、維持できる種数が少ない
  • 本土から遠いほど、新しい個体が到達しにくい
  • その結果、絶滅と再定着のバランスで種数が決まる

都市緑地に置きかえると、こうなります。

島と都市緑地の対応
都市緑地
道路・建物・舗装面
島の面積緑地の面積
本土からの距離ほかの緑地との距離
移住による再定着緑地間の移動

孤立がもたらすもの

緑地が孤立すると、次のことが順に起きます。

  1. 個体群の分断:ひとつづきだった集団が、いくつかの小集団に分かれる
  2. 小集団化:それぞれの集団の個体数が減る
  3. 偶然による絶滅の増加:小さな集団は、 気象や病気などの偶然の出来事で消えやすくなります。 大きな集団なら吸収できる変動が、小集団では致命的になりうる
  4. 再定着の失敗:消えた場所へ、外から個体が入って来られない

このうち4番目が、孤立に固有の問題です。 局所的な絶滅そのものは、つながった環境でも起きます。 違うのは、そこから回復する経路が残っているかどうかです。

「あればいい」ではない

ここから、都市の緑地について重要な帰結が出てきます。

同じ総面積の緑地でも、配置によって保全の効果が変わります。

  • 細かく分散した緑地 ── 一つひとつが小さく、互いに遠い
  • まとまった緑地、あるいは連なった緑地 ── 面積を確保でき、移動もできる

面積の合計だけを指標にすると、この違いが見えません。 緑地政策で「つながり」が語られるのは、このためです。

3. 島と 島を つなぐ

3. つなぐという考え方 ── 生態系ネットワーク

3. 生態系ネットワーク ── コアエリア・バッファー・コリドー

では、どうすれば いいのでしょう。

島と 島を つなげば いいのです。

国は、こういう 考え方を 生たいけいネットワークと 言って います[3]

3つの ぶひんで できて います[3]

  • コアエリア 生きものが すむ、まん中の 場しょ
  • バッファーゾーン その まわりを まもる 場しょ
  • コリドー コアエリアと コアエリアを つなぐ 道

「コリドー」は、日本の ことばで 回ろうと 言います。

わたりろうかの ことです。

町の 中で コリドーに なるのは、 こんな ところです。

  • かわの まわりの みどり
  • 道の わきに ならんだ 木
  • 学校や こうえんの 木
  • 家の にわの 木

1つ1つは 小さい。

でも、ならんで いれば 道に なるのです。

孤立が問題なのだとすれば、対策は連結ということになります。

この考え方を、環境省は生態系ネットワーク (エコロジカルネットワーク)と呼んでいます。

生物の生息・生育空間のまとまりとして核となる地域(コアエリア) 及びその緩衝地域(バッファーゾーン)を適切に配置・保全するとともに、 これらを生態的な回廊(コリドー)で有機的につなぐことにより、 生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成に努めます[3]

3つの部品

生態系ネットワークの構成要素
名前役割[3]
コアエリア生きものの生息・生育空間の核となる地域
バッファーゾーンコアエリアを守る緩衝地域
コリドーコアエリアどうしを有機的につなぐ生態的な回廊

コリドーは、日本語では回廊。 建物と建物をつなぐ渡り廊下のことです。

街の中のコリドー

都市でコリドーになりうるものは、身近にあります。

  • 川沿いの緑 ── 街を横切って続いていることが多く、経路になりやすい場所です
  • 街路樹の列 ── 一本ずつは小さくても、並んでいれば道になります
  • 学校や公園の樹木 ── 点在していても、間隔が近ければ足がかりになります
  • 家の庭や生け垣 ── 数が多いので、合わせると広い面積になります

点を線にする

この考え方の利点は、大きな新しい公園を用意しなくても始められることです。

すでにある緑の配置を活かし、あいだを埋める小さな緑を足していく。 点をつないで線にする、という進め方になります。

明治神宮の森は大きなコアエリアです。 ただし、そこに来られない生きものにとっては、 森があること自体が意味を持ちません。 周りの緑とどうつながっているかも見る必要があります。

分断が問題であるなら、対策は連結です。 この考え方が生態系ネットワーク (エコロジカルネットワーク)です。

環境白書は、次のように記述しています。

生物の生息・生育空間のまとまりとして核となる地域(コアエリア) 及びその緩衝地域(バッファーゾーン)を適切に配置・保全するとともに、 これらを生態的な回廊(コリドー)で有機的につなぐことにより、 生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成に努めます[3]

構造

生態系ネットワークの構成要素
要素役割[3]都市での例
コアエリア生息・生育空間のまとまりとして核となる地域大規模な社寺林、まとまった都市公園
バッファーゾーンコアエリアの緩衝地域周縁の樹林、農地、低利用地
コリドーコアエリアを有機的につなぐ生態的な回廊河川沿いの緑地、街路樹の連なり

この設計の意味

3要素に分けることには、実務上の意味があります。

  • 役割ごとに求める性能が違う:コアエリアには面積と質、 コリドーには連続性が要る。同じ「緑地」でも、必要な条件が異なります
  • コリドーはコアエリアより狭くても成り立ちうる: 通り抜けられればよいので、幅の狭い河畔林や街路樹でも機能する場合があります。 ただし、どれくらいの幅が必要かは対象とする種によって変わります
  • 既存の緑を活かせる:新規の大規模用地を確保しなくても、 既存の緑地の配置と接続を改善することで効果を出せます

インターネットの記事で、 ばらばらのネットワークをつなぐことで全体が機能する話を書きました。 ノードとリンクという構造は、ここでも同じです。

コリドーの限界

ただし、つなげば必ず良いというものではありません。

  • 移動能力は種によって違う:鳥にとっての連続性と、 地表を歩く昆虫にとっての連続性は別物です。 「どの種にとってのコリドーか」を決めないと設計できません
  • 望まない移動も起きうる:コリドーは、 外来種や病原体、大型動物の市街地侵入の経路にもなりえます

つまり、コリドーを設計するには どの種の、どんな移動を想定するのかを先に決める必要があります。

4. 会社の 森も、まもる 場しょに なる

4. 30by30と自然共生サイト ── 街の緑を数える

4. 30by30と自然共生サイト ── 保護地域の外側を数える制度

いま、世かいで こういう もくひょうが あります[4]

30by30(さんじゅう バイ さんじゅう)[4]

2030年までに、りくと 海の 30%いじょうを まもろう

「まもる 場しょ」と いうと、 国立こうえんを 思いうかべますね。

でも、それだけでは 30%に とどきません。

そこで、日本は こう 考えました。

国が きめた 場しょでは なくても、 じっさいに 生きものが まもられて いる 場しょが ある。

会社が もって いる 森。 むかしから ある 里山。 町の 中の みどり[4]

そういう 場しょを しぜんきょうせいサイトと いう 名まえで みとめる ことに しました[4]

2026年6月の はっぴょうで、 ぜんぶで 610か所に なりました[5]

あなたの 学校の となりの 森が、 その 1つかも しれません。

ここまでは考え方の話でした。 では、実際にどんな制度が動いているのでしょう。

30by30という目標

いま、国際的にこういう目標が掲げられています。

2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標 (30by30目標)[4]

国立公園だけでは届かない

「保全されている場所」というと、 国立公園や自然保護区を思い浮かべます。

でも、それらを足しても30パーセントには届きません。

そこで、発想を変えました。

自然共生サイト[4]

企業の森や里地里山、都市の緑地など 「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を 自然共生サイトとして認定する取組

国が指定した保護区でなくても、 実際に生きものが守られているなら、それを数えようということです。

どれくらい認定されたか

2026年6月30日の発表で56か所が認定され、 累計610か所になりました[5]

認定されたサイトのうち、条件を満たしたものは OECMとして国際的なデータベースに登録される予定です[5]

OECMは「保護地域以外で生物多様性保全に資する区域」の 略です[4]

対象に「都市の緑地」が入っている

この制度の説明には、認定の対象例として 都市の緑地がはっきり書かれています[4]

会社の敷地の林、社寺の森、公園、学校の緑。 こうした場所が、認定されれば環境省の一覧に載ります。

ただし、認定されればすぐ国際的な数に入るわけではありません。 いまある自然を守り続けるタイプは、保護地域と重ならない部分が今後登録される予定。 荒れた場所を回復させるタイプは、 実際に生きものが豊かになったと判断された時点で登録される予定です[5]

都市緑地の話は、いま政策の側で位置づけが変わりつつあります。 その中心にあるのが30by30目標です。

30by30目標

2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標 (30by30目標)[4]

この目標には、構造的な難しさがあります。 従来型の保護地域だけでは面積が足りないことです。

新たに保護区を設定するには、土地の権利関係、 地域の合意、管理体制が必要になります。 短期間で面積を大きく増やすのは現実的ではありません。

自然共生サイトという解

そこで導入されたのが、実質で数えるという考え方です。

企業の森や里地里山、都市の緑地など 「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を 「自然共生サイト」として、認定する取組[4]

制度上の位置づけではなく、 実際に保全が図られているかどうかで判定する。 これが従来の保護地域制度との違いです。

OECMとしての国際登録

認定されたサイトは、条件を満たすと OECMとして国際データベースに登録される予定です。

OECM(Other Effective area-based Conservation Measures: 保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)[4]

ただし、認定のタイプによって扱いが違います[5]

認定タイプとOECM登録
認定タイプOECM登録の扱い[5]
維持タイプ保護地域との重複を除いた区域を、今後登録する予定
回復・創出タイプ活動の継続により生物多様性の状態が豊かになった時点 (生物多様性の価値基準に合致する時点)で登録する予定

認定されたら自動的に国際登録されるわけではありません。 とくに回復・創出タイプは、実際に状態が良くなったことが条件です。

実績

2026年6月30日の発表では56か所が認定され、 累計610か所となりました[5]

この制度をどう読むか

この仕組みには、次のような性質があります。

  • 既存の土地利用を変えずに保全面積を増やせる: 土地を買い上げたり、規制をかけたりせずに済みます。 コストが低く、合意が得やすい
  • 都市の緑地が明示的に含まれる: 2章で見たとおり、都市緑地は小さく分断されがちです。 それでも保全の枠組みに位置づけられました
  • 認定は申請にもとづく: 土地を規制でしばるのではなく、 取り組んでいる側が申請して認定を受ける形です。 強制ではないため、認定件数は制度の使いやすさに左右されます

一方で、考えるべき点もあります。

  • 面積を数えることと、機能することは別: 3章で見たとおり、緑地は配置と接続によって効果が変わります。 合計面積が30パーセントに達しても、 それが分断されていれば効果は限定されます
  • 認定の継続性:民間の取組であるため、 所有者の事情で保全が終わる可能性があります

制度は「数える器」を用意したところです。 その中身をどうするかは、これからの話になります。

5. まちの みどりを 見て みる

5. 自分の街で確かめてみる

5. 自分で確かめる ── 地図と足で

じぶんの 町で、たしかめて みましょう。

  • 地図を ひらく。 みどりの ところに、色を ぬって みましょう。 どれくらい つながって いますか。
  • かわを たどる。 近くの かわの まわりに、木は ならんで いますか。
  • かえりみちで かぞえる。 学校から 家まで、木が 何本 ありますか。
  • 虫を さがす。 大きな こうえんと 小さな こうえんで、 虫の しゅるいは ちがいますか。

虫や 生きものを 見つけても、 ほかの 場しょへ もって いかないで くださいね。

この記事の話は、自分の街で確かめられます。

  • 地図で緑を塗る。 航空写真でも紙の地図でもかまいません。 緑を塗ってみると、島になっているのか、つながっているのかが見えます
  • 川をたどる。 川沿いに緑が続いているか。コンクリートで固められているか。 川は連続した帯として残りやすいので、コリドーの候補になります
  • 公園の大きさと生きものを比べる。 大きな公園と小さな公園で、鳥や虫の種類は違うか。 2章の「面積」の話が確かめられます
  • 神社の森を見る。 町なかの神社に、古い木が残っていることがあります。 まわりが開発されても、そこだけ残った場所です。 境内は信仰の場なので、参拝の妨げにならないように見せてもらいましょう

関連する記事

調べてみる

  1. 緑地の分布図を作る:航空写真から緑地を抽出し、 面積と最近隣の緑地までの距離を記録する。 2章の2つの変数(面積・距離)を実際に測ってみる
  2. コリドーの候補を探す:河川、鉄道の法面、街路樹の列。 地図の上で、どこが連続しているかを追う
  3. 分断点を見つける:緑が途切れている場所はどこか。 幹線道路か、造成地か、駐車場か
  4. 面積と種数を比べる:規模の違う公園で、 鳥や樹木の種数を記録して比較する
  5. 自然共生サイトを調べる: 環境省のページで、自分の都道府県に認定サイトがあるか探す

調べる入口

考えてみると面白いこと

  • 同じ総面積なら、大きな緑地1つと小さな緑地5つでは、どちらがよいか。 種によって答えは変わるか
  • コリドーが外来種の移動経路にもなるとき、つなぐべきか、切るべきか
  • 明治神宮の森は100年かかった。 いま新しく都市に森を作るとして、100年待てるだろうか
  • 「面積の30パーセント」という目標は、 何を測れていて、何を測れていないか

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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  1. 明治神宮「明治神宮とは」 https://www.meijijingu.or.jp/about/ (鎮座が大正9年(1920)11月1日であること、約70万平方メートルの杜であること、「創建にあたって人々のまごころでつくられた人工林です」という記述、全国から献木された約10万本を植栽して造成されたこと)
  2. 明治神宮「杜(もり)・見どころ」 https://www.meijijingu.or.jp/midokoro/ (全国から約10万本が奉献されたこと、林苑計画を本多静六・本郷高徳・上原敬二ら林学の専門家が担ったこと、造営当初の内苑の樹木が在来木等を含め365種約12万本だったこと、第二次境内総合調査(報告書は平成25年刊行)で234種約3万6千本となったこと、鎮座百年記念調査で約3千種の生物が報告されたこと)
  3. 環境省「令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第2章第2節 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r02/html/hj20030202.html (コアエリア・バッファーゾーン・コリドーによる生態系ネットワーク形成の記述。本文中で引用した一文はこのページからのものです)
  4. 環境省 報道発表「地域生物多様性増進法に基づく『自然共生サイト』の認定(令和7年度第3回)について」(2026年3月17日) https://www.env.go.jp/press/press_03222.html (30by30目標の定義、自然共生サイトが「企業の森や里地里山、都市の緑地など『民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域』」を認定する取組であること、この回の認定が108か所で累計569か所となったこと、OECMの定義と国際データベースへの登録)
  5. 環境省 報道発表「地域生物多様性増進法に基づく『自然共生サイト』の認定(令和8年度第1回)について」(2026年6月30日) https://www.env.go.jp/press/press_05186.html (この回の認定が56か所で累計610か所となったこと、維持タイプは保護地域との重複を除いた区域を今後OECMとして登録予定であること、回復・創出タイプは活動の継続により生物多様性の状態が豊かになった時点で登録予定であること)

第2章の「島」としての見方、面積と孤立が種数に効くという考え方、 第1章の自己間引きや種の選別による樹木の減少、 第3章のコリドーの限界(種によって移動能力が違うこと、外来種の経路にもなりうること)は、 生態学の一般的な内容として書いています。個別の出典は示していません。

明治神宮の樹木が減った理由について、 この記事は自己間引きと種の選別という一般的な説明を当てているだけで、 明治神宮や調査報告書がそう述べているわけではありません。 正確なところは、境内総合調査の報告書にあたってください。

自然共生サイトの認定件数は、2026年6月30日の発表時点の数値です。 認定は継続して行われているため、この記事を読んでいる時点では増えている可能性があります。 最新の件数は環境省のページで確認してください。

なおした ところ

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